[DC] あらゆる出来事を受け入れて(その4・完)・62マイルからフィニッシュまで 岩佐のウェスタン・ステイツ/Western States 100 レースレポート #WS100

6月29日土曜日に開催されたウェスタン・ステイツ/ (WS100)で24時間以内の完走賞、「シルバーバックル」を手にした当サイト・岩佐のレースレポート。ペーサーとともに走ったForesthill(62マイル地点)からフィニッシュまでの模様をまとめた完結編。

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  • コースの概要図とプロファイル(詳細は大会サイトにて)
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心も身体もボトムを打つが、ペーサーのRoxanaの容赦ないプッシュのおかげで前進ーForesthill(62マイル地点)からGreen Gate(80マイル地点)まで

応援やランナーをサポートするクルーで賑やかなForesthill(62マイル地点)のエイドステーションからはAmerican RiverのMiddle Forkが深く削った渓谷へと標高差で700m近くを下りていくCal Streetといわれるトレイルを下って、American Riverを渡るRucky Chucky(78マイル地点)まで至る。この間に3つのエイドステーションがある。途中に一箇所まとまった登り返しがある他は下り一辺倒だといっていい。おそらく普通に試走したら、気持ちよくあっという間に走ってしまうだろう。

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Foresthillを出る前にクルーに囲まれて準備。 by Sabrina Okada

昨年はForesthillに到着した時点でジェルを飲み込もうとすると吐き気がして、脚の腫れやITB(腸徑靭帯)の違和感で走れず、ついには眠気まで感じて大きくペースを落としてしまったパートだ。しかし今年は調子は悪くない。ペーサーのRoxanaには後ろについてもらい、ランナーである自分がペースをむやみに落とさないように見張ってもらうことにした。ペーサーの役割についてはいろいろな考え方があるが、今回は自分の力にあわせて無理なストレッチをしない形にしてみた。Foresthillまでの感想や今の体調などをRoxanaに話しながら軽快にダウンヒルを下っていく。

Roxanaと知り合ったのは昨年のウェスタン・ステイツの前々日の木曜日のSquaw Valleyでだった。恒例行事のEmigrant Pass(コース最初の登りのピーク)へのトレッキング・イベントに参加した時に、当方が履いていたシューズ(AltraのLone Peak)をみて彼女が話しかけてきたのをきっかけに日本やアメリカのトレイルレースの話で盛り上がり、その後彼女と一緒に来ていたボーイフレンドのWilly(彼はレースを走った)やそのお母さん、友達が泊まっているホテルの部屋まで招かれて冷たいスイカをご馳走になったのだった。その後も時々Facebookでやり取りをしていたのだが、当方が今年もまたウェスタン・ステイツに当たったのを知って、「ペーサーをしてあげる」と連絡してきてくれたのだ。彼女は例えば今年4月のLake Sonoma 50を9時間23分、女子11位でフィニッシュしていて実力は当方と同じか少し上くらい。陽気で賑やかな彼女と走れば苦しいレース後半もきっと楽しくなるに違いない、と考えてペーサーをお願いすることにした。

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フィニッシュ後にRoxana, Willyとともに。今回のウェスタン・ステイツでは二人に助けられた。

Roxanaはペーサーの役割をよく心得ていて、エイドが近づくとボトルに何が欲しいかを聞いてボトルを寄こせという。ボトルは任せてエイドで何かを取って食べろ、そしてすぐにエイドは出ようというわけだ。走っている途中でもジェルを取ればそのゴミを持っていてやるから寄こせ、暑いとみれば時々後ろから当方の背中に自分のボトルの水をかけるという具合。ペーサーと走る初心者の当方としては申し訳ない気がするがこの際遠慮なく頼ることにした。一方で彼女が持っているヘッドランプはなんだか小さくて暗い。聞けばどこかで20ドルで買ったもので、昨年のウェスタン・ステイツで仲間のペーサーをしたときに使ってから一度も使ってなくて電池も替えていない、普段ライトなんて使わないから、といってケラケラと笑っている。しっかりしているんだかおっちょこちょいなんだか。

Cal Streetの一つ目のエイド、Dardanells(Cal-1、65.7マイル地点)までは順調に到着。ここから二つ目のエイドまでの5マイルは小さなアップダウンがある。このあたりで少し身体がふらつくような感覚。こうなるのを防ぐためにジェルは最低でも30分に一個、この辺りでは20分おきにとっていたのだが、エネルギー不足の感覚。登りのパートが出てきたこともあり、ペースは落ち気味。なんだか少し眠気もある。

Roxanaは暑さのせいで身体が糖分や水分の補給を受け付けるペースが落ちているんだ、という。補給のみペースを落としてしばらくゆっくり行こう、でも決して立ち止まらず進もうという。少し走っては登りは早歩きの繰り返しだが、Roxanaは後ろからよく頑張ってる、偉いとしきりに褒め言葉をかけてくる。いろいろ話しかけてくれて、励ましの歌をうたってくれたり。

そして二つ目のエイド、Peachstone(Cal-2、70.7マイル)に8:34pmに到着(24時間ペースは8:45pm、昨年は9:18pm)。この辺りで体調のボトム。コーラのカップを片手にエイドの脇に腰を下ろしてしまうが、Roxanaは先に行こう、少しでも進もう、という。こっちもそれは分かっている、ここで座ったところで何かがよくなるわけでもない。腰を挙げると当方が手にしているコーラの カップを奪い取って捨ててしまった。何という名ペーサー!しかし、彼女の遠慮ない叱咤のおかげで何とかこの苦しい区間を進み続けることができた。

三つ目のエイドステーション、Ford's Bar(Cal-3、73マイル)ではペーサーのお許しを得て少しだけコーラとチキンスープを楽しんで、American River沿いの緩やかな起伏のトレイルを5マイル。ここはできるだけ走ったが、まだ調子は上がってこない。サクラメント近郊に住むRoxanaにとってこのレースは地元、途中で会うランナーやペーサーにも知り合いがたくさんいるようで元気に話している。

楽なはずなのに長かった5マイルの最後にようやく明るく人の声がするRucky Chucky(78マイル)に到着、ここでいよいよAmerican Riverを渡る。10:28pmに到着(24時間ペースは10:40pm、昨年は11:23pm)。川の手前のエイドでコーラでも飲もうとすると、「渡った向こうにもエイドはあるから行こう」とRoxana。

橋のかかっていないこの箇所で川を渡るのはこのレースの名シーンの一つ。水量が多い年や上位の選手はゴムボートでここを渡るが、今回は昨年に続いて川を横断して張られたワイヤーを手で伝い、胸まで水に浸かって川を渡る。ほんの30mほどだが、雪解け水は冷たく川の流れも速い。スタッフの方が一メートルおきにワイヤーを支えながら立っていて、川底の岩で足を滑らせないように注意してくれる。冷たい水の中の仕事は大変なことで本当にありがたい。Roxanaがキャーキャーいいながら楽しそうに渡る前で、当方は余裕なく足下ばかりみて渡った。渡った先のエイドで何か飲もうとすると「次のGreen Gateまで2マイルしかないからそこで補給しよう」。全く優秀なペーサーでいい仕事で本当に助かるが、コーラは飲みたかった。

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78マイル地点のRucky Chuckyの渡渉。30mほどの川幅だが胸まで水につかりながら渡るここはこのレースの名所。後ろにペーサーのRoxana。Photo by Facchino Photography

Green Gateまでは2キロほどの未舗装林道の登り。Green Gateはクルーがアクセスできるエイドで、向こうからはランナーを待ち受けてクルーの人たちが歩いてくる。早歩きで進んでいると、RoxanaのボーイフレンドのWillyがやってきた。そしてサブリナさんとYazさん、この先のペーサーをしてくれるShyamalも。ここまでのことや上位選手のことをワイワイ話しながらGreen Gateへと歩いていく。Green Gateはクルーがアクセスできるといってもクルマで未舗装のダートを進んで駐車してからしばらく歩かなくては来れないところ。そんな不便なところを真っ暗闇の中、こうして思いがけずたくさんの仲間に囲まれて歩いている。感謝感激なのだが、この時はどこか不思議な気持ちだった。Roxanaと一緒のここまではかなり苦しかったが、ここにきて少し力が出てきた気がする。

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Roxana、この後からペーサーをお願いするShyamal、その仲間でクルーをしてくれた皆様と一緒にGreen Gateへ向かう。昨年一人でここを歩いていたことを思うとこんな大勢に囲まれていることが感慨深い。Photo by Sabrina Okada

Green Gate(79.8マイル)の少し手前からは走り始めてエイドに到着。11:08pm(24時間ペースは11:20pm、昨年は0:06am)。RoxanaとWillyに礼をいい、フィニッシュ地点で会おうと告げる。交代してここからペーサーをお願いするShyamalと残りの20マイルを走り始めた。

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Green Gateでここまでの約20マイルのペーサーをしてくれたRoxana(中央)。明るく優しく、しかし厳しいペーサーの仕事ぶりで苦しかったパートを引っ張ってくれた。Photo by Sabrina Okada

最後の20マイルのミラクル、ペーサー・Shyamalと自分の限界を探るーGreen Gate(80マイル地点)からフィニッシュ(100マイル地点)まで

Green Gateからは昨年と同じくShyamalにペーサーをお願いした。昨年初めての走ったこのウェスタン・ステイツでは本当に一人で走るつもりで、ペーサーはなしのつもりでスタートした。ところがレース中のエイドステーションでサブリナさんと出会い、途中のエイドステーションで何度か顔を合わせているうちに、何とサブリナさんが深夜のGreen GateにShyamalをペーサーにと連れてきてくださっていた。会ったこともない日本から来たランナーのために急にペーサーを頼まれてそれを引き受けてくれた、ということに感激した。しかし、肝心の走りの方は当方がここまでで脚のダメージが大きくてまともに走り続けることができず、せっかくのペーサーのサポートを活かすことができなかった。そんな雪辱を晴らしたいという思いで、今年も同じShyamalに同じ区間のペーサーをお願いしたところ、快く引き受けてくれた。

Green Gateからの最後の20マイルは小さなアップダウンを繰り返しながら進む走りやすいトレイルが大半だ。Shyamalとここまでのことを話したりしながらスタートしたが、大きな林道の急な下りを進んで行った先に、明かりの点いたトレーラーハウスがあり、その前の林道の真ん中に手書きで ‘NO TRESPASSING”(この先通行止め)と書いた看板が立ててある。おや、と思いながらその前を通ろうとすると、トレーラーハウスの中から何やらがなり立てるおじさんの声がする。どうやらここはコースじゃないから先に行ったってダメだといっているらしい。よくみるとコースマークも途絶えてしまっている。コースをロストした。Shyamalと二人で下ってきた急坂を登り返す。つられて後ろからきた人も何人かいたようだ。登り返してコースマークを確認するまでの時間はあえてその時は計らなかったが、10分くらいかと思っていた。レース後にGPSログをみて確認したところではこのロストした区間は距離にして往復1マイル強、ロストに気づいた地点まで標高差で140mを下っていて、再びコースに戻るまで25分かかっていた。

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Green Gateの先でロストして引き返した際のGPSログ。約25分のロスだった。

ただ、ロストした時も特にあわてることもなく、ましてや誰かを責めようという気も全くしなかった。のレースでロストは起こりうること、一度失った時間は慌てたところで取り返せるわけではない。これで24時間以内の完走が危ない、というようなことも頭には浮かばなかった。淡々と登り返すだけだが、かなりの急坂で登り返すのは一苦労だ。ようやくコースマークを確認。今度も当方が前を走ってShyamalに後ろからぴったりとついてもらう。

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すると、Cal Streetまでの調子の悪さが嘘だったかのように軽々と走ることができる。登りは脚が続かないが、残るゆるい下りやフラットなトレイルは自分でも驚くほど走れる。果たしてどこまで続くかわからないが、自分でも面白くなってどんどん先へ進み、先行するランナーを時折追い越す。後ろを走るShyamalが驚いている。そりゃそうだろう、昨年この区間は先を走るShyamalに追いつけず、少し走っては歩くことの繰り返しだった。

このあたりから24時間以内に完走して、馬のレースでGordy Ainsleighが一人自分の足で24時間以内で完走したストーリーを自分で経験できたら素晴らしいな、と思い始めた。ペーサーやクルーをしてくれたみんな、そして日本で多分ネットの速報をみながら応援してくれているランナー仲間のみなさんもきっと喜んでくれるだろう。それに、もしさっきのロストをShyamalが自分のせいだと気にしているとしたらとても申し訳ない。24時間以内に完走できたら彼に後ろめたい思いをさせずに済むかもしれない。そんなことを考え始めたが、はたして自分が今、24時間以内完走ができるくらいのペースで走っているのかどうかはよくわからない。

それと同時に思い出したのは、この2週前に鏑木毅さんが走ったワイオミング州のBighorn 100のことだ。鏑木さんのクルーとして主なエイドを周り、鏑木さんの補給をサポートしたのだが、82マイル地点のエイドで20分も離された2位の鏑木さんは調子が悪そうで、このまま2位でフィニッシュできれば成功だと思っていた。ところがトップでフィニッシュしたのは2位に11分も差をつけた鏑木さんだった。呆気に取られたのち、100マイルのレースの奥深さとチャンスを捉えたら決して手放さない鏑木さんの走力を超えた執念に心が震えた。鏑木さんと自分を一緒にするのもおこがましいが、もしかしたら自分にも最後の20マイルでそれまでからは信じられないような力が出てくるかもしれない、いやきっと出てくるに違いない。今のこの状態がそうなんだ、とも思い始めた。

次のエイド、ALT(85.2マイル)には00:47amに到着。24時間ペースは00:50amだから3分の「貯金」ができたとShyamalが教えてくれた。当方はまだそんなものか、と思ったが25分もロスしたことを考えるとかなりのハイペースでここまできたことになる。体重を計ったところ、少し減り幅が大きいというので、コーラや水を4杯ほど飲んで出発。

次のエイドBrown's Barまでの4.7マイルもまだ当方の走りの勢いは衰えない。実際のペースはさほど早いわけでもなかったはずだが、走れるところは徹底的に攻めるつもりで走った。やがて賑やかな音楽で知られているBrown's Bar(89.9マイル)に到着。1:50amに到着で24時間ペースは2:05amだから貯金は15分になった。

ただ、この辺りから少しまた胃の具合がおかしな感じ。空っぽな感じで力がはいらない。水分を摂ろうとエイドでドリンクを飲むのだが、エイドを出る前に吐き戻してしまう。エイドを後にするが、Shyamalからは体温の急な変化で胃の機能が落ちているから無理に水分を取らない方がいいとアドバイス。一方コースはエイドを出てからしばらくは下りやフラットなトレイルが続き、まだ走れる。

Highway 49(93.5マイル)には2:50amに到着。24時間ペースは3:10amだから貯金を20分まで拡げた。ここでも体重の減りを指摘されたので水分を摂ったがエイドを出た途端に吐き出してしまう。ここからの短い登りを歩きながら、Shyamalは「24時間で確実に完走できるようにあまり無理はしすぎないようにしよう。もう少しだからもう水分は取らなくても大丈夫」という。ここからはShyamalに先に走ってもらってついて行く形にした。やがてコースはNo Hands Bridgeへと下り始める。途中でShyamalが立ち止まる。ガラガラヘビ(ラトルスネイク)がいるという。立ち止まって音がしなくなってから通過。下りはゆっくりと走るが、先ほど抜いたランナーが一人、二人追い越して行く。

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Highway 49 (93.5マイル)のエイドステーション。Photo by Sabrina Okada

No Hands Bridge(96.8マイル)には4:15amくらいに到着で24時間ペースから25分の貯金。Shyamalは「ここまでくれば動き続けていれば24時間以内に完走できる。無理しないようにしよう、でもエイドではもう何も取らずに行こう」という。さらにペースを落としてゆっくりと進む。途中でRobie Pointへの少し急な短い登りがあるがここで心拍数が上がったせいか、吐き気を催す。ただもう何も吐き出すものが残っていない。気分は悪いがそのまま進む。登りが落ち着くと幸いにも治った。Robie Point(98.9マイル)到着は4:24amで24時間ペースに16分の貯金。ここからはロードの1マイルでフィニッシュ地点のPlacer High Schoolのトラックを目指す。どうにか完走がみえてきた。手前からサブリナさんとYazさんが出迎えてくれた。みんなで歩きながらいよいよトラックの入り口が見えてきた。ゆっくりとShyamalと走り始める。夜明け前のトラックに人は少ないが、John Medingerのいい声で名前を呼ばれる。前で喜びを噛みしめる人のランナー、Di Wu(彼とはスタートから何度も前後しながら走っていた)がフィニッシュするのを待って、 4:44amに23時間44分13秒、総合89位で静かにフィニッシュした。

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Robie Pointをすぎフィニッシュ地点まであと数百メートル。ペーサーのShyamal、出迎えてくれたサブリナさん、Yazさんと一緒に進む。Photo by Sabrina Okada

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とうとうフィニッシュ。Photo by Facchino Photography

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フィニッシュ直後。苦しみを受け止めつつ自分の可能性を押し広げた。Photo by Sabrina Okada

その後

フィニッシュ直後の計量でやはり体重が減っている、と指摘され水分を補給するようにといわれた。レース中にのボトムの時と比べれば体調はまだマシだが、サブリナさんのアドバイスを受けてフィニッシュ地点のテントで点滴(IV、アイヴィー)を受けることにした。

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フィニッシュ直後に念のため点滴を受ける。ペーサーをしてくれたShyamalとともに。Photo by Sabrina Okada

もちろん疲労はあるが、捻挫や外傷など大きなケガは幸いにしてない。去年はひどかった足首や膝の腫れも今年は気にならない。その代わり、序盤から少しずつ大きくなっていったマメの水ぶくれは前足部の拇指球の内側からアーチにかけて大きく広がってしまって歩くのに一苦労。結局このマメの状態が落ち着いて自由に歩けるまで1週間近くかかった。

胃腸などの消化器は特に痛みや不快感はなかったが、レース後も翌々日くらいまで食欲がわかない状態が続いた。これは今まで経験しなかったことだ。

今回のレースを振り返って

昨年のウェスタン・ステイツは当方にとって初めて走るアメリカの100マイルレースで、伝統あるレースでありながら、ランナーとペーサー、クルー、エイドのスタッフ、オーガナイザーが一つのコミュニティを作って運営して、どこかゆるい雰囲気のあるこのイベントに参加できたことに感激した。ペーサーもクルーもいなかった日本のランナーにいろんな人が声をかけてくれて、最後には思いがけずペーサーと一緒に走れたのにも感激して驚いた。

今年は昨年の経験といろいろな人とのつながりを活かすことができて、このウェスタン・ステイツでレースをすることができた。24時間以内の完走でシルバーバックルをもらった、といっても、それは例年完走者の3分の1のランナーがもらっているものなので、レースの成績として特別な意味はない。日本の仲間のランナーでもこのレースに出れば24時間以内に完走できる人はたくさんいる。

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レース後の表彰式の最後で一人ずつ完走の証、バックルをJohn Medingerから受け取る。

当方にとっては、厳しい暑さの中で長時間に渡って自分のコンディションを保ち続けることができたこと、途中で調子が崩れてボトムを打ったとしても投げ出したり立ち止まったりせずに苦しみながらなんとかやり過ごしたこと、その後に(80マイル以降に)自分でも信じられないような力強い走りをすることができたこと、が素晴らしい成果だった。今回5回目の100マイルレースへの挑戦で初めて最初から最後まで工夫して自分の力を出し切った、自分の限界を探ってそれを押し上げることができた、という大きな達成感を感じることができた。

そしてそれらは、自分一人の力ではなく、RoxanaとShyamalという二人のペーサー、サブリナさんたちのクルーが途中で支えてもらうことで成し遂げることができた。当方もペーサーと一緒に走ることがどこか人に頼るような気がして気が引ける気がしていたが、ペーサーと一緒に走ることで自分の力の限界を探ることができるのは素晴らしいことだと思うようになった。

100マイルのような長いトレイルランニングレースの魅力の一つに自分の限界を試すワクワクした気持ちと完走した時の達成感があると思う。ただ、もしそれがまだ一度か二度の経験で、レースでは途中で立ち止まり、休憩し、フラフラになりながらやっと完走したという経験なのだとしたら(それはまさに今回のウェスタンステイツを経験する前の当方のこと)、100マイルレースの魅力はまだ掘り尽くしていない。厳しいコンディションにコテンパンにやられ、苦しくて仕方がない状態を乗り越えた後に、自分でも信じられないような力強い走りができる自分を知ることは、多分かなり多くの人に可能なことなのだ。それは自分がまだ知らない自分の中に潜む力を知る経験だ。

今回、当方は自分が知らなかった自分の力を少し見ることができた気がする。これで100マイルレースの秘められた魅力を知り尽くしたことになるのか、それともまだ何かが残されているのか。それを確かめるためにまだこのスポーツを続けていくことになりそうな予感がしている。

最後には、ペーサーをしてくれたRoxanaとShyamal、クルーをしてくださったサブリナさんとYazさん、Willy、斉藤さんご夫妻に心から感謝。特にサブリナさんは昨年からいろいろな情報を教えていただき、今回のカリフォルニア滞在中もいろいろお世話になり、大いに刺激を受けました。ウェスタンステイツというイベントを支えるコミュニティの皆様、日本でウェスタンステイツや当方の参加に興味を持って応援してくださった皆様にも大感謝、ありがとうございました。

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