[DC] フランソワ・デンヌの完璧なレース、ナタリー・マクレアが女子を制して優勝、鏑木毅は94kでリタイア・グラン・レイド・レユニオン 2013 リザルト #diagonale des fous

南インド洋・レユニオン島で開催されるグラン・レイド・レユニオン/Le Grand Raid Réunionの164kmのレース、La diagonale des fous(ディアゴナル・デ・フゥ)。レースはFrançois D’Haene/フランソワ・デンヌ(フランス・)が終始リードを維持し続け、2位に2時間42分の大差をつけて22:58で優勝。女子はそれぞれSkyrunning World SeriesとIAUの世界チャンピオンのタイトルを持つ二人の勝負となり、IAUのタイトルホルダーである/ナタリー・マクレア(フランス)が28時間45分で優勝しました。日本から参加の Kaburaki/鏑木毅)は順調なスタートで徐々に順位を上げていたものの、補給の失敗からハンガーノックとなり、94km地点でリタイアしました。

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レースの展開

Diagonale des Fousは10月17日(木)午後11時(日本時間18日金・午前4時)にレユニオン島の南岸の街、サンピエールの海岸をスタート。天候にも概ね恵まれ、ランニングに適したコンディションの中、盛大な花火を合図にスタート。

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スタートを待つランナー。 by Koichi Iwasa/DogsorCaravan.com

序盤は順当な展開

レースはFrançois D’Haene/フランソワ・デンヌ(フランス・Salomon)、/キリアン・ジョルネ(スペイン・Salomon)、/パスカル・ブラン(フランス、レユニオン・Hoka OneOne)がリードする展開に。Nortre Dame de la paix(24.6km地点)では48歳でこのレースの上位常連で2011年に2位のPascal Blancがトップ。

Piton Textor(40km)に最初に到着したのはFrançois。続いて2分でKilian、さらに4分でPascalという展開に。4位、5位にレユニオン在住のFreddy Thevenin/フレディ・テベニンDidier Mussard/ディディエ・ムサーが続きます。その後にはAntoine Guillon/アントワーヌ・ギュイヨン(フランス・Hoka OneOne)を中心とした集団が続き、鏑木毅(The North Face)もその集団の中で17位でPiton Textorを通過。

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Piton Textorにトップで到着したFrançois。終始余裕のある表情が印象に残った。Photo by Koichi Iwasa/DogsorCaravan.com

その後もFrançoisは順調にリードを広げ、Cilaos/65.9kmでは2位のKilianとの差は11分に拡大。KilianはCilaosですでに左ひざの違和感を訴えはじめますが、先に進みます。9分後にPascalが続きます。日本の鏑木毅はトップのFrançoisから1時間15分後に17位でCilaosに到着。徐々に集団から抜け出し、順位を上げており、体調もよく余裕のある表情で出発します。女子はIAUの世界チャンピオンのフランスのナタリー・マクレア/Nathalie Mauclairがトップ、7分後にSkyrunningのチャンピオン、エミリー・フォスバーグ/Emelie Forsberg(スウェーデン、Salomon)が続きます。

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Cilaosに2位で到着したPascal Blanc。このレースがきっかけで2年前からレユニオンに引っ越したという彼は終始周囲の人たちに笑顔を向けていた。Photo by Koichi Iwasa/DogsorCaravan.com

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Cilaosに17位で到着した鏑木毅。レユニオンのダンサーに迎えられてエイドステーションに入る。Photo by Koichi Iwasa/DogsorCaravan.com

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女子トップのNathalie Mauclair。終始女子のリードを維持し続けた。Photo by Koichi Iwasa/DogsorCaravan.com

今年も波乱の展開の中盤

Cilaosからは山深くアップダウンの激しいマファテ圏谷に入り、ここを抜けるまでの約50kmは上位選手が例年リタイアしたり大きく後退するなどドラマティックな展開を見せる区間。

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2018年トレイル世界選手権のコースマップが発表に。スペインのカステリョー・デ・ラ・プラーナで5月12日に開催。

まず、Kilianがこの区間で順位を落とし始め、Maido/115kmへの到着はトップから2時間40分後の7位。2位にPascalが上がります。3位、4位はレユニオンの強豪ランナー、デディエ・ムサー/Didier Mussard、フレディ・テベニン/Freddy Theveninが一緒に到着。昨年のこのレースで2位で毎回スマートなレース展開をみせるアントワーヌ・ギュイヨン/Antoine Guillon(フランス、Hoka OneOne)はCilaosでの10位からMaidoでは5位に浮上します。トップのFrançoisのリードは拡大する一方で、2位のPascalに1時間33分もの大幅なリードでMaidoを笑顔と軽い補給だけで通過していきます。

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Maidoでシューズを替えるなど入念に装備を整えるPascal Blanc。この辺りからやや疲れが表情にうかがえる。Photo by Koichi Iwasa/DogsorCaravan.com

女子でもトップのNathalieが快調な走りをみせてMaidoにも19:08で到着したものの、100kmのレースを走るのは今回が初めてというEmelieは徐々にNathalieとの差が開き始めます。MaidoでのNathalieとの差は20分に拡大。昨年優勝のエミリー・ルコント/Emilie LeComte(フランス)は胃の不具合を訴え始め、マファテ圏谷の真ん中のSentier Scout/86kmでリタイア。

日本の鏑木毅もこのマファテ圏谷の低血糖によるハンガーノックで意識が朦朧とする中で転倒して軽傷を負い、Ilet a Bourse/94kmでリタイアという意外、そして波乱の展開となりました。

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Ilet a Bourseでリタイアした鏑木毅。Photo by Trails Endurance Mag

終盤も激しい展開に

Maido/115kmからは標高差2000mの比較的走りやすい長い下りを駆け下りて海岸の町、Possessionへ。さらに海岸沿いの巨大な岩壁への登り、溶岩の黒い石が敷き詰められたトレイルなどタフなコースを経てフィニッシュに向かいます。

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Possessionから岩壁へ登るトレイル、Chemin ANglaisへの入り口。 Photo by Koichi Iwasa / DogsorCaravan.com

男子トップのFrançoisは順調にリードを広げ、2位に2時間42分という大差をつけて22:58で優勝。このレースのコースは毎年少しずつ変更されているので過去の優勝者の記録と比較するのは難しいものの、グラン・レイド・レユニオンの歴史に残る記録。

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優勝したFrancois D’Haeneのフィニッシュ。Photo by Koichi Iwasa / DogsorCaravan.com

男子の2位以降は終盤も激しい競り合いになりました。レユニオン在住のFreddy は、一緒に走っていたDidierがペースを落として結局リタイア。しかしFreddyはペースを挙げ始め、Possesion Ecole/143kmから先の巨大な岩壁の上を通るChemin Anglaisで2位のPascalをとらえて、Grande Chaloupe/150kmでは2位に。結局そのまま2位でフィニッシュしました。またAntoineも粘り強い走りで一つ順位を上げて4位でフィニッシュ。

女子はNathalieが総合12位となる28:45でフィニッシュ。Emelie Forsbergは徐々にNathalieとの差が開いていきます。Sans Sousi/124kmからは膝の痛みで順位を落としていたKilianがEmelieに付き添うようにして一緒に走り、31:29でフィニッシュ。KilianとEmelieのカップルが手を取り合ってフィニッシュする姿は現地でも大きな話題になりました。

リザルト(大会公式速報サイトより

(男子)

  1. フランソワ・デンヌ/François D’Haene (フランス、Salomon) 22:58:00
  2. フレディ・テベニン/Freddy Thévenin (フランス・レユニオン) 25:40:16
  3. パスカル・ブラン/Pascal Blanc (フランス・レユニオン、Expertrun – Hoka) 25:47:18
  4. アントワーヌ・ギュイヨン/Antoine Guillon (フランス、Hoka OneOne) 25:58:44
  5. デビッド・パスキオ/David Pasquio (フランス)25:58:44
  6. ベノワ・ジロンデル/Benoît Girondel 26:25:32
  7. セバスチャン・カミュ/Sebastien Camus (フランス) 26:41:17
  8. シルバン・クショー/Sylvain Couchaud 27:41:15
  9. ニコラス・ダルマイラック/Nicolas Darmaillacq 27:41:18
  10. セバスチャン・ビュファード/Sebastien Buffard (フランス) 28:05:45

(女子)

  1. ナタリー・マクレア/Nathalie Mauclair (フランス、Lafuma) 28:45:32
  2. エミリー・フォスバーグ/Emelie Forsberg (スウェーデン、Salomon) 31:29:05
  3. クリスティン・ベルナール/Christine Bénard(フランス・レユニオン) 34:19:40
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日本関係のランナーのリザルト

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レポート・写真集へのリンク

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観戦記・圧倒的な自然美と容赦なく深い山々、癖のあるトレイルが冒険心をそそるレース、世界最高レベルのFrançoisの実力と鏑木毅の屈辱

このリザルト記事をまとめている今も、グラン・レイド・レユニオンの164kmのレース、La は終わっていない。制限時間の65時間が経過するまであと4時間あまり。

当サイトはスタート地点から上位選手を追ってコース上のポイントを回ったが、このレースのスケールの大きさを改めて実感することになった。レユニオン島の海岸からスタートして、巨大な圏谷の中を登ったり下りたりして、北岸のサンドニの街へと向かう。その自然は息をのむ迫力だが、ランナーにとっては長く険しい登り下りが無数に続くことを意味する。トレイルの表面も泥でぬめりけがあったり、岩が露出していたり、石畳のトレイルの「石」は丸みのある溶岩石だったりと気持ちよく走れる箇所は多くない。世界で最もハードな100マイルトレイルランニングレースの一つに違いない。南インド洋の島という地理的な要素もこのレースの神秘性を高めているように思う。

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巨大な圏谷の中にある秘境というべき町、Cilaos。周囲を高い稜線に囲まれている。Photo by Koichi Iwasa / DogsorCaravan.com

このようなレースでは、トレイルをよく知っているランナーが自ずと有利になる。何度もこのレースに出場しているランナー、地元レユニオンのランナーが上位に入るのもうなづける。とはいうものの、この人口85万人の島に世界のレースで活躍するトレイルランナーと互角に走ることができるランナーがこれほど多くいることには驚きだ。このグラン・レイド・レユニオンが21年にわたって続く中で、多くの強靭なトレイルランナーがこの島に生まれていることがうかがえる。

その意味では今回のFrançois D’Haeneの圧勝は驚くべき結果だといっていい。Françoisがこのレースに出るのは2回目だが、このレースの経験値は多くないといっていいはずだ。今年は昨年のように多くのレースに出ていない彼が、このグラン・レイド・レユニオンに向けて我慢強くトレーニングを重ねていたというのは本当だった。このレースは過去4回、Kilianとジュリアン/Julien Chorierが2回ずつ優勝しているが、28歳のFrançoisも二人と同じかそれ以上に世界トップレベルの強さを持っていることを示した。

女子についても、優勝したNathalie Mauclairの総合12位という結果は驚異的なものだ。2位のEmelie Forsbergはコロラドでの100km、UROCから3週で初めての100マイルレース。その実力の確かさを示した。

以上、注目すべき話題を挙げたが、日本のランナーにとっては鏑木毅のリタイアという事実に驚かされたに違いない。45歳を迎えたばかりの鏑木の長いランナーとしてのキャリアの中で、レースを途中で棄権したのは今回が初めてだという。レース前だけでなく、レース中のCilaos/65.9km地点で鏑木とあった際にも、表情は明るく調子の良さをうかがわせた。実際、Cilaosを17位で通過してから、リタイアすることになるIlet a Bourse/115kmには10位で到着するまで順位を上げていた。

レース後の鏑木とサポートクルーに話を聞いたところでは、Cilaosでサポートクルーから補給を受ける際に、鏑木は次にサポートクルーの補給を受けるCol des Boeufs/83kmまでの最小限の補給食しか受け取らなかった。そして、鏑木はCol des Boeufsに到着したもののそこにはサポートクルーはまだ到着していなかった(5分差で間に合わなかった)。鏑木は補給食を受け取れないまま先を進むことになり、結局補給食が尽きたところでハンガーノック状態となり、それが原因で転倒したことがきっかけとなって、それ以上進むことは生命の危険に関わると判断してリタイアした。

事の経緯を後からたどれば、いくつかの失敗があってリタイアにつながったことがわかる。CilaosからCol des Boeufs/83kmにクルマで移動してランナーをサポートするには時間が足りないというアドバイスを地元のランナーから受けていたにも関わらず、なぜそこでサポートすることにしたのか。そこでサポートを受けるとしても、なぜCilaosで保険として予備の補給食を持たなかったのか。途中で手持ちの高効率のジェルがなくなったとしても、エイドステーションの果物やパン等で食いつなぎながら先に進むことはできなかったのか。そんなことを当方も鏑木やサポートクルーに聞いてみた。ここでその答えを子細に記すことはしないが、それぞれにうなづける理由があってのことだった。

グラン・レイド・レユニオンはUTMBやその他の100マイルレースにくらべれば、エイドやコース、エイドステーション間の移動については情報が得にくいレースだ。たくさんの日本人が参加して多くのレポートを残しているUTMBなら、事前に入念な準備をしてレースに臨むことができるだろう。しかし、このグラン・レイド・レユニオンは現地まで来てようやくわかった情報が多くあり、鏑木へのサポート体制も多くのリスクを抱えたものとなることが避けられなかった。

レースをリタイアした翌日、鏑木はレースが続いているMaido/115kmのエイドステーションに向かい、そこからレースを続けているランナーに交じって走り始めた。今回走ることができなかったパートの一部だけでも体験しておきたいとの思いからだったとのことだが、結局そのまま50kmを走り続け、フィニッシュ地点のサンドニの競技場に戻ってきた。そんな姿を見つけた大会のMCは鏑木に簡単なインタビューをした。鏑木は大会会場に響き渡るマイクに向かって日本語で話した。「私を”Kaburaki!”と読んで応援してくれた全ての人たちと会うために、きっとレユニオンに戻ってきます。」その声にはいつもの朗らかな鏑木の素顔が戻っているように感じた。

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フィニッシュ地点でMCのインタビューに日本語で答える鏑木毅(左は通訳の当サイト・岩佐) Photo by Trails Endurance Mag

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