今年も先週末の11月10日に群馬県・神流町で神流マウンテンラン&ウォークが開催されました。
【追記・リザルトについて追記しました。2013/11/19】
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天気予報はよい方に外れて夕方まで雨は降り出さずランニングには適した一日。50kmのスーパー、40kmのロング、27kmのミドルとあわせて800人ほどが神流川を挟んだ父不見山(ててみえじやま)、西御荷鉾山(にしみかぼやま)、赤久縄山(あかぐなやま)などをめぐるコースを走りました。
レース前日にはこの大会のプロデューサーであるトレイルランナー・鏑木毅さんのトレイルランニングクリニックののち、恒例のウェルカム・パーティーが開催されました。鮎の塩焼きや野菜の煮物、漬け物など、どこか懐かしい神流町らしい郷土料理が日本酒やワインとともにふるまわれます。限られたスペースながら、参加者全員分のテーブルと椅子を用意してゆっくりとパーティーを楽しめるのがこの神流マウンテンラン&ウォークのこだわりです。
パーティではフランスの姉妹大会であるTrail Nivolet Revard(トレイル・ニヴォレ・リヴァード)からの招待選手であるセバスチャン・ジュウ/Sébastien Jeu(SCOTT/odlo/Saisies/LED LASER)さんをはじめとする有力選手が紹介されたほか、地元・群馬県のジャズバンドや福田六花さんの演奏で盛り上がります。また、パーティの冒頭では生みの親で著名な隻腕のランナーであったベルナー・ドンゼル/Bernard Donzelさんが今年6月に事故で亡くなられたことが紹介され、参加者一同で黙祷を捧げました。
翌日10日日曜日は肌寒いながらも予想された雨は降らず、レースには恵まれた一日となりました。50kmのスーパーは午前6時、40kmのロングは午前7時にコイコイ橋をスタート。スタート地点を中里支所前に移して午後9時に27kmのミドルがスタートしました。
レースはロングでは前日からやや風邪気味だったという近藤敬仁(La Sportiva)が序盤からトップに立ち、続く武藤尚一郎の気配を感じながらも、西御荷鉾山山頂(21km)では3分のリードを安取峠(あとりとうげ、32km)では6分に広げ、フィニッシュでは8分までリードを広げて3:43で優勝。武藤に続いたのは代田渉。みかぼスーパー林道でセバスチャン・ジュウと並走した後のトレイルで先行して3位に入りました。セバスチャンは今年の夏に入る前にUTMBに向けてのトレーニングで傷めたアキレス腱がまだ完治しないなかで4位に入る健闘。女子ではハセツネに続いて大石由美子(La Sportiva)が4:40で優勝。男子、女子の優勝者である近藤敬仁と大石由美子は来年5月のTrail Nivolet Revardに派遣される権利を得ました。その他、スーパーペア(50km)で昨年に続いて村井涼・青木光洋のペアが優勝、スーパーシングルで清水勝一が男子で優勝しました。
全ての選手が通過する標高1000mの天空の里、持倉(もちぐら)のエイドステーションでは、地元の皆さんが手作りのそばを振舞われ、ランナーは目の前に広がる紅葉に彩られた山々の眺めを楽しみながら舌鼓を打ちました。
リザルト(大会サイトのリザルトはこちら)
スーパーペアクラス(50km)
- 村井涼・青木光洋 5:43:46
- 丸山智明・山谷良登 5:54:06
- 堀内祐児・上木原寛和 5:59:22
- 岡本直也・松林正芳 6:02:44
- 塚越幹・眞舩孝道 6:15:54
- 木村豪文・大内直樹 6:27:09
- 増田佳輔・並木雄一郎 6:37:24
- 江田良子・栗原孝浩 6:42:23
- 大柴結人・依田鷹樹 6:46:25
- 鹿島田真理子・鹿島田浩二 6:49:12
スーパーシングルクラス(50km)
(男子)
- 清水勝一 5:45:01
- 白石忠章 6:02:50
- 浅見大紀 6:04:45
- 岡田勇 6:10:17
- 塩見悠 6:11:53
- 相浦勇人 6:18:14
- 松村博史 6:21:52
- 神原文和 6:23:51
- 高橋聰 6:24:41
- 大野拓平 6:32:35
(女子)
- 山ノ内はるか 6:35:59
- 岩楯志帆 6:50:17
- 黒田清美 6:59:52
- 緒方雅子 7:00:03
- 野間陽子 7:15:17
- 吉田楓 7:29:36
- 杭田みのり 8:10:51
- 浅野宏美 8:20:07
- 中澤順子 8:31:32
- 小林有美子 9:14:33
ロングクラス(40km)
(男子)
- 近藤敬仁(La Sportiva) 3:43:20
- 武藤尚一郎 3:51:28
- 代田渉 4:08:22
- セバスチャン・ジュウ/Sébastien Jeu(SCOTT/odlo/Saisies/LED LASER) 4:11:15
- 渡邉孝浩 4:18:08
- 渡辺幸一 4:21:40
- 吉田徹哉 4:28:49
- 福田英則 4:29:06
- 那須野由幸 4:30:22
- 三好拓人 4:33:54
(女子)
- 大石由美子(La Sportiva) 4:41:42
- 弘中志保 5:06:12
- 中村久美 5:08:04
- 藤澤美希 5:21:31
- 三牧奈保美 5:44:52
- 鴨下奈穂 5:49:28
- 竹内美香 5:58:11
- 大松知恵 6:07:41
- 井上薫 6:09:11
- 樫留美 6:11:48
ミドルクラス(27km)
(男子)
- 根岸純 2:40:52
- 矢島保志 2:43:16
- 田村貴之 2:44:31
- 篠原聡 2:45:12
- 久保田光俊 2:46:10
- 小池諭 2:47:22
- 萩原久也 2:49:07
- 高山輝充 2:51:26
- 阿部吉朗 2:53:46
- 志賀淳一 2:54:27
(女子)
- 上野朋子 3:06:13
- 川崎恵子 3:19:52
- 小野美知江 3:20:36
- 青木清美 3:42:12
- 中村美由紀 3:50:12
- 朝倉由香 3:52:56
- 横尾久美子 3:55:10
- 佐藤永子 4:05:08
- 長岡麻衣 4:05:08
- 落合美菜子 4:06:02
関連記事・写真集
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観戦記・すっかり定着した秋のトレイルランニングのお祭り、地域とトレイルランニングの関わり方のモデルケースに
西上州の山々の間に神流川が流れる神流町。過疎化が進む小さな町を囲むハイキングコースやかつての生活や往来のための山道は顧みられることも少なかったという。トレーニングのためにこれらの山々に鏑木毅さんが通っていたのがきっかけとなって、トレイルを整備して初めて神流マウンテンラン&ウォークが開催されたのが2009年。地元の皆さんによる手厚い大会運営と、前夜のウェルカムパーティや持倉をはじめとするエイドステーション、万場の町並での応援など温かいもてなしの気持ちにあふれたこの大会は、日本のトレイルランナーの間で人気を呼び、秋の紅葉とともにシーズンを締めくくるイベントとして定着した。今年は来年初に放送予定のテレビ番組の取材も行われ、このイベントはこれからますます多くの人たちに知られるようになるだろう。
ウェルカムパーティでは会場の体育館に多くの人が集まり、懐かしい味のする郷土料理と地酒を楽しみながら仲間同士で話に花が咲く。毎年出会うようになった地元の皆さんとはお互いに最近の様子を伝え合う。レース当日はいまではすっかりしっかりしたトレイルとなり、道標がつけられてわかりやすくなったコースで秋のひんやりした空気と紅葉を楽しみ、落ち葉を踏みしめながら走る。フィニッシュ間近の黒田の集落で振舞われる田楽や焼き芋を手にしながらランナーがフィニッシュするのがこのレースの定番だ。
また、フランスの姉妹レースであるTrail Nivolet Revardとの交流も年を追うにつれ深まりつつある。今年も招待選手のセバスチャン・ジュウ/Sébastien Jeuさんは「神流の皆さんの親切な心配りやもてなしの気持ち触れることができて感激した」と話していた。今年のNivolet Revardにこの大会から派遣されて参加した村井涼さん、青木光洋さんも現地では手厚いもてなしを受け、地元の皆さんに愛嬌を振りまきながらレースを楽しんだという。神流町という日本の小さな町のチャレンジはトレイルランニングのホットスポットであるフランスとも直接つながっている。
ただ、大会として成功し、人気を呼ぶほどに運営する苦労は増してくるに違いない。小さなこの町で宿泊できる人数には限界がある一方で、前回宿泊した先で泊まってお世話になった地元の方とまた話したいという希望を叶えるための調整作業は容易でなかったと聞く。その結果としてだろうか、一部の参加者には事前に聞いていたのとは違う宿泊条件になってしまったことについて不満もあったようだ。また、例年エイドで振舞われるそばが好評の持倉のエイドステーションでは、この大会が終わると、そばを手打ちしていた地元の年配の皆さんはマッサージ通いすることになる、とも聞いた。これは半分は笑い話なわけだが、大会が大きくなるにつれて地元の皆さんの負担も増していることも確かだろう(ちなみに今年からそばは地元の業者さんに頼んで機械打ちにしたとのこと)。
この大会が始まった5年前と比べても神流町の過疎化、高齢化は少しずつ進んでいる。この大会がそうした動きを食い止める力にはならないかもしれないが、この大会を通じて一人でも多くの人が神流町の人や自然、歴史を知り、実際に足を運び、その魅力を伝えていくことができるなら、地元の皆さんの期待に応えることになるだろう。加熱する人気と増す一方の大会運営の負担のバランスをとりながら、神流マウンテンラン&ウォークが日本のトレイルランニング・コミュニティの宝として続いていくことに期待したい。