松本大/Dai Matsumotoが勝負強さをみせて栄冠を手に。女子は台湾在住で昨年のキナバル・クライマソン/Kinabalu Climbathon優勝、この日に向けて力をつけてきたルース・クロフト/Ruth Charlotte Croftがその実力を発揮しました。日本のシンボル、富士山の山頂へと富士吉田市役所から標高差3000m、21kmを一気に駆け登る名レース、富士登山競走。トレイルランナーも普段はロードを走るランナーも含め、日本のランニング界の夏のビッグイベントであるこのレースが、今年も第67回大会が7月25日(金)に開催されました。
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厳しい参加資格を満たして約2500人が参加した山頂コースのレースを制したのは松本大とルース・クロフト/Ruth Charlotte Croftでした。松本大は昨年に続いての優勝、ルース・クロフトは昨年初参加で9位から今年念願の女子優勝をつかみました。
レースの展開
富士吉田市内の最高気温が30℃を超える暑さとなったこの日、レースは午前7時に富士吉田市役所(標高770m)をスタート。序盤の馬返し(10.8km / 1450m)までの舗装路の区間を経て、序盤の樹林帯のトレイルが続く五合目(15.0km / 2230m)までは江本卓、加藤聡、加藤淳一、松本大の3人が集団でリード。その後1分以内の差で小川壮太、石井克弥、大瀬和文が続きました。集団のペースはやや控えめで互いを牽制し合うような展開でした。注目された近藤敬仁、菊嶋啓は五合目でトップからともに15分近く遅れ、近藤はその後リタイア。
五合目を過ぎたあたりから、江本卓が急にペースを落とし(その後リタイア)、トップ集団は松本大、加藤聡、加藤淳一の3人となりました。3人はぴったりと連なるようにして八合目(本八合目・富士山ホテル、18.8km / 3400m)を通過。そして距離にして残り1kmとなる最終盤、八合五勺(20km / 3450m)で松本大が勝負をかけて加速。続く二人を引き離して富士山頂にフィニッシュ、昨年に続き連覇を成し遂げました。優勝タイムの2時間47分45秒は昨年の自身の優勝タイム2時間49分40秒を上回る記録です。
わずか20秒差で2位には加藤聡。2011年から4年連続でトップ3入りです。3位には加藤淳一が続き、4位にはベテランの粘り強さをみせた小川壮太。5位から10位に石井克弥、真田卓也、深澤俊明、渡辺良治、福永基晴、大瀬和文がそれぞれ入りました。
女子はルース・クロフト/Ruth Charlotte Croftが序盤からリードし、馬返しですでに2位の小川ミーナに2分40秒差。馬返しからのトレイルの区間に入ってからも小川ミーナとの差を次第に拡げる力強い走りをみせ、 3時間11分44秒という好タイムで優勝。ルース・クロフトは現在25歳、ニュージランド出身で台湾在住。昨年初出場のこの大会で9位で「もっと上位を目指したい」と再び参加した今年、見事に勝利を手にしました。
2位にはこの大会で二連覇の経験を持つ小川ミーナが17分差で続きました。3位には昨年2位の荻原真紀。4位から10位に山口季実子、白川清子、小林知美、大庭知子、高橋えりか、中村久美、松原衣里が入りました。
同日開催の五合目コースでは、今シーズン好調な大石由美子が女子で優勝。男子では松本翔が1時間19分台でフィニッシュ、五合目コースの大会歴代3位となる好タイムで優勝しました。
なお、山頂コースについて事前に当サイトが注目していた選手の中では飯田祐次郎、小出徹、貝瀬淳、リア・ダーティ/Leah Daugherty、星野芳美が当日の出場を見送っています。小出徹は出場したものの序盤で体調を崩してリタイアした模様です。【編者:小出徹さんについて修正、追記しました。】
富士登山競走・リザルト
(大会会場での速報掲示より。正式なリザルトが公表され次第リンク先として紹介します。)
山頂コース
男子
- 松本大 / Dai Matsumoto(Salomon、長野県) 2:47:45
- 加藤聡 / Satoshi Kato(愛知県) 2:48:05
- 加藤淳一 / Junichi Kato(山梨県) 2:50:21
- 小川壮太 / Sota Ogawa(Salomon、山梨県) 2:51:44
- 石井克弥 / Katsuya Ishii(埼玉県) 2:54:28
- 真田卓也 / Takuya Sanada(山梨県) 2:57:46
- 深澤俊明 / Toshiaki Fukasawa(長野県) 2:58:48
- 渡辺良治 / Ryoji Watanabe(東京都) 2:59:35
- 福永基晴 / Motoharu Fukunaga(兵庫県) 3:00:00
- 大瀬和文 / Kazufumi Oose(TEAM TARZAN、東京都) 3:00:07
女子
- ルース・クロフト/Ruth Charlotte Croft(The North Face、ニュージランド) 3:11:44
- 小川ミーナ / Mina Ogawa(PUMA R.C、東京都) 3:28:46
- 荻原真紀 / Maki Ogihara(山梨県) 3:32:15
- 山口季実子 / Kimiko Yamaguchi(東京都) 3:34:43
- 白川清子 / Kiyoko Shirakawa(神奈川県) 3:38:33
- 小林知美 / Tomomi Kobayashi(東京都) 3:41:26
- 大庭知子 / Tomoko Ooba(東京都) 3:45:49
- 高橋えりか / Erika Takahashi(東京都) 3:50:01
- 中村久美 / Kumi Nakamura(東京都) 3:52:09
- 松原衣里 / Eri Matsubara(東京都) 3:54:34
五合目コース
男子
- 松本翔 / Sho Matsumoto(東京都) 1:19:38
- 千田尚孝 / Naotaka Senda(愛知県) 1:22:07
- 高橋幸二 / Koji Takahashi(千葉県) 1:24:16
- 小原将寿 / Masatoshi Obara(Inov-8、神奈川県) 1:26:10
- 宮川鉄也 / Tetsuya Miyagawa(長野県) 1:26:47
- 青木純 / Jun Aoki(茨城県) 1:27:10
- 島村清孝 / Kiyotaka Shimamura(東京都) 1:27:38
- 野永健宏 / Takehiro Nonaga(東京都) 1:28:04
- 星野和昭 / Kazuaki Hoshino(群馬県) 1:28:59
- 三浦裕一 / Yuichi Miura(神奈川県) 1:29:56
女子
- 大石由美子 / Yumiko Ohishi(La Sportiva、静岡県) 1:43:19
- 廣瀬光子 / Mitsuko Hirose(東京都) 1:45:39
- 長谷川奈々 / Nana Hasegawa(新潟県) 1:46:41
- 杉浦美由紀 / Miyuki Sugiura(愛知県) 1:49:58
- 小林聡子 / Satoko Kobayashi(東京都) 1:51:21
- 榎本久子 / Hisako Enomoto(神奈川県) 1:51:40
- 遠藤麻美 / Asami Endo(東京都) 1:51:47
- 鈴木遥 / Haruka Suzuki(東京都) 1:51:54
- 石塚弓子 / Yumiko Ishiduka(東京都) 1:54:44
- 真鍋明佳 / Haruka Manabe(香川県) 1:56:30
観戦記・順当な結果、しかし注目すべき結果も多くみられた伝統の一戦
プレビュー記事では、富士登山競走に番狂わせの意外な結果というのはあまりなく、実力通りの結果が如実に現れる、と書きました。今年もその通りと思ったものの、意外な活躍をみせたランナーも現れました。
男子優勝の松本大は、この日のレースに向けた調整は万全ではなく、レースが始まってからは得意とする山頂直下の急でテクニカルな登りまでは脚を温存したとのこと。山岳レース、スカイランニングの第一人者らしいスマートな走りで二連覇を手にしました。
女子優勝のルース・クロフト/Ruth Charlotte Croftはニュージランド出身で台湾在住。昨年出場して9位という結果でしたが、「もっといい結果が出せるはず」と早くから再挑戦を決意。エベレストでの山岳レースに参加したことが富士登山競走に向けてもよい経験になったといいます。これまで地元台湾のThe North Face 100 Taiwanで二度優勝するなどの結果を残しています。
加藤聡は昨年に続いて松本大と最後まで競り合う形となりました。優勝は成らなかったものの、トップレベルの実力を今年も発揮しました。3位に入った加藤淳一は多くのトレイルランニングレースで活躍していますが、意外にも山頂コースは今回初参加でした。6位の真田卓也は地元の消防所属でこの日は救護スタッフとしてオレンジのビブを身につけて参加。Cブロックからのスタートでした。五合目コース優勝の松本翔の1時間19分台というタイムはかなり高いレベルで来年山頂コースに参加するなら注目の存在となりそうです。
世界に誇る富士山という環境と、一気に頂上へ駆け登るというコースの魅力、67回という歴史と伝統。これからも富士登山競走は魅力ある夏のランニングイベントとして愛されるのはもちろん、ここにもし世界のトレイルランニングの先進的な取組みを組み合わせることができれば、世界的に注目される大きなイベントとなり得る可能性も秘めていると感じました。
参考
謝辞
今回のDogsorCaravan.comの富士登山競走の大会当日のライブ速報を行うに当たっては、佐藤圭介さん、山口博美さん、長谷川香奈子さんにコース上で多くの情報をご提供いただきました。渡邊孝浩(a.k.a. ナミネム)さんからは事前の情報収集、フォトグラファー・藤巻翔さんには現地での移動についてご協力いただきました。心より御礼申し上げます。