恵まれた天候のなか、ハイレベルなレースとなりました。3連休の週末、9月14日(日)に開催された信越五岳トレイルランニングレース/SHINETSU FIVE MOUNTAINS TRAIL 110kmは658人のランナーが参加して、午前5時半に斑尾高原スキー場をスタート。斑尾山、黒姫高原、笹ヶ峰、戸隠、瑪瑙山など新潟県と長野県にまたがる110km / 4670mD+のコースで開催されました。
優勝したのは、男子は2012年のこの大会のチャンピオンであり、2013年UTMF優勝の原良和/Yoshikazu Hara(HOKA OneOne)。10時間17分と大会記録を49分と大幅に短縮する驚異的なタイム。女子では、昨年のこの大会3位の地元妙高市在住の高島由佳子/Yukako Takashimaがこちらも大会記録を13分上回る11時間56分で優勝しました。
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22時間のフィニッシュ締切時刻となる午前3時半までには飯綱高原スキー場に全体の81.9%のランナーがフィニッシュ。6回目となるこの大会で最も高い完走率となりました。
この日のレース展開
午前5時半のスタート時、斑尾高原は晴れ。気温も寒すぎず、快適なコンディション。結局この日の天候は晴れのままで気温も平年並み。照りつける暑さで知られる3A / 38.5k 妙高高原兼俣からの関川沿いの登りも例年程の暑さではありませんでした。
上位選手は、序盤から原良和、山田琢也、廣岡隆二、中野正道がトップ集団、そのすぐ後に中野賢一、山谷良登、小原将寿、西城克俊、三浦誠司、中辻悠貴が続きます。しかし上位選手はすぐに一人ずつわずかの差を開けるようにして走るようになります。当サイトが取材した沼の原湿原 / 24.5kではトップの原良和に続いて山田琢也、廣岡隆二、小原将寿、山谷良登、中野正道と続く上位6人は7分差に収まりました。この日の原は「目標はコースレコードの更新。各ポイントの間を目標タイムで走ることを意識した」とのこと。
しかし、3A / 38.5k 兼俣から徐々に原良和がリードを拡げ始めます。4A / 51.5k 黒姫高原で原は自身の想定タイムより「10分早い」と話してエイドを後にします。その言葉とあわせるかのように、2位の山田琢也は9分差で4Aを通過します。上位陣では、中野賢一、山谷良登が徐々に遅れ始め、トップ10圏外へ。
ペーサーが待つ5A / 66.6k 乙見湖に原良和は5時間58分で到着。2位の山田琢也との差を17分に拡げます。後半に入っても原の足取りは軽いまま。上位選手では西城克俊がトップから33分の6位と徐々に順位を上げ始めます。
黒姫高原のトレイルから一旦ロードに下りて、戸隠キャンプ場 / 83.3kでは原良和の山田琢也へのリードは20分。西城克俊が小原将寿を交わしてトップから31分の3位に浮上します。このあたりからこの日上位を走っていた廣岡隆二が遅れ始めます。
戸隠のトレイルを経て、瑪瑙山へ登る入り口となる8A / 92.3k 戸隠スキー場でも原の勢いは止まらず。山田琢也を30分差まで引き離すと同時に、大会記録(2011年の相馬剛による11時間5分57秒)の更新が視野に入ってきました。
結局、原良和は瑪瑙山の登り下りでもペースを落とすことなく、そのまま10時間17分17秒の大会新記録でフィニッシュしました。2位には、8A / 戸隠スキー場からの最終盤で原との差を縮めて27分差で山田琢也。3位にはこの大会で第一回から5回連続で入賞(6位以内)となる西城克俊。4位からはこの日、安定して上位を守った小原将寿、中野正道、中辻悠貴、三浦誠司、西原隆之。9位には序盤はトップ20前後だった井原知一がじわりと順位を上げてトップ10入り。10位には大河内宏幸が入りました。
女子のレースは、昨年のこの大会で2位など信越五岳の経験豊富な上宮逸子/Itsuko Uemiyaが総合20位圏内のハイペースで序盤をリード。しかし「この日は体調もコンディションもよく、サポートにも恵まれていたのに、つい序盤にペースを上げすぎてしまった」といい、3A / 38.5k 兼俣から胃腸の調子を崩してペースダウン。
その一方で、安定したレース展開で4A / 51.5k 黒姫高原に上宮に5分差をつけてトップでやってきたのは高島由佳子。その後も高島は安定したペースで「自分のペースで走っていただけなのに、サポートの仲間から去年と比べて速すぎるといわれるほど」と、徐々にリードを拡げ始めます。結局、高島は11時間56分24秒でフィニッシュして優勝。女子のこれまでの大会記録である12時間9分25秒(2011年、ジェン・シェルトン/Jenn Shelton)を13分短縮して12時間を切るという見事な結果を残しました。
女子の2位には上宮逸子が13時間6分でフィニッシュ。途中でペースは落としたものの、昨年の2位だった自身のタイムを30分近く短縮する好タイムです。3位からは澁谷佳代、栗原葉子、宮崎美智子、高橋瑞樹がトップ6人の表彰台に立つことになりました。
リザルト
(男子)
- 原良和 / Yoshikazu Hara(HOKA OneOne) 10:17:17
- 山田琢也 / Takuya Yamada (Montrail / MHW) 10:43:03
- 西城克俊 / Katsutoshi Saijo(patagonia / Altra) 11:04:25
- 小原将寿 / Masatoshi Obara(Inov–8) 11:14:34
- 中野正道 / Masamichi Nakano(ミズノRC) 11:16:36
- 中辻悠貴 / Yuki Nakatsuji(patagonia / Altra)11:17:30
- 三浦誠司 / Seiji Miura(RWS)11:22:12
- 西原隆之 / Takayuki Nishihara 11:23:22
- 井原知一 / Tomokazu Ihara 11:41:11
- 大河内宏幸 / Hiroyuki Okochi 11:45:16
- 荒井辰央 / Tatsuo Arai 12:21:52
- 江島良 / Ryo Eshima 12:22:13
- 鈴木智博 / Tomohiro Suzuki 12:25:42
- 物部克彦 / Katsuhiko Monobe 12:50:10
- 島本卓啓 / Takahiro Shimamoto 12:52:22
- 仲川貴士 / Takashi Nakagawa 12:56:14
- 蛭間厚 / Atsuhi Hiruma 12:59:15
- 中田匤俊 / Masatoshi Nakata 13:04:30
- 廣岡隆二 / Ryuji Hirooka 13:11:06
- 柏原宏紀 / Hiroki Kashihara 13:18:26
(女子)
- 高島由佳子 / Yukako Takashima 11:56:24
- 上宮逸子 / Itsuko Uemiya(patagonia) 13:06:49
- 澁谷佳代 / Kayo Shibuya(Inov–8) 14:20:55
- 栗原葉子 / Yoko Kurihara 14:43:46
- 宮崎美智子 / Michiko Miyazaki 15:10:37
- 高橋瑞樹 / Mizuki Takahashi 15:12:40
- 奥薗由紀子 / Yukiko Okuzono 15:24:32
- 鹿島田真理子 / Mariko Kashimada 15:33:12
- 原田とも子 / Tomoko Harada 15:36:58
- 川井朋子 / Tomoko Kawai 15:53:51
観戦記・ハイペースなレース展開と美しいコース、日本のトレイルランニングを代表する存在となることに期待
男子のレースではUTMF優勝経験を持つ原良和が10時間17分まで優勝タイムを引き上げたのはまさにこの大会が世界レベルのレースとなったことを示しているように思えます。原は、8月のUTMBに向けて日本での高地トレーニングや早めに現地に入ってトレーニングを積んできたものの、直前に体調を崩して本番のUTMBではリタイアという不本意な結果に。しかし、この夏のトレーニングが実を結んで今日の結果を残せたといいます。2位の山田琢也の10時間43分、3位の西城克俊の11時間4分もこれまでのコースレコードを上回る好タイムでした。
こうした好成績の背景にはトレイルランニングには最高のコンディションだった、この日の天候があるでしょう。大会新記録更新だけではなく、大会全体でみても完走率は81.9%に達しました。
しかし、原、山田、西城が揃ってレース後に話していたのは、大会記録を持つ相馬剛の存在でした。今年7月にレース遠征後のマッターホルン登山中に遭難し、未だ行方が分かっていない相馬剛は第一回から三回まで三連覇をするなど、この大会を象徴する存在です。相馬と様々なレースでともに走り、普段から交流していた3人は今回のレースで相馬の存在を意識しながら走ったといいます。レース後に山田は「相馬さんならここをどんなふうに走るだろうか、と考えながら走った」といい、原は「今日のこのレースで相馬さんの大会記録をぶっちぎりで更新することで相馬さんにメッセージを送りたかった」と話しました。今回の好成績を支えていたのは、相馬剛だったのかもしれません。
女子でも、高島由佳子が12時間を切る好タイムで優勝しました。地元の妙高市在住の高島は、学生自体はクロスカントリースキーの選手として活躍し、その後はランニングに転向。フルマラソンでは2時間45分52分【訂正しました。2014.9.17】というタイムを持つエリートランナーでしたが、結婚後は10年近く競技からは離れていました。40歳近くになって再開したランニングで、トレイルランニングのレースは昨年3位になった信越五岳が初めて。その後は地元のROCKIN BEARモントレイル黒姫トレイルランニングレース(36km)で優勝、モントレイル戸隠マウンテントレイル(20km)で2位などの結果を残していますが、地元以外のトレイルランニングレースは出たことがないといいます。全く予期しないところから現れた日本トップクラスのトレイルランナーにこれから注目です。
参考
- 大会ウェブサイト
- 当サイトのプレビュー記事・[DC] 信越五岳トレイルランニングレース / Shinetsu Five Mountains Trail 110k 2014 プレビュー #SFMT #信越五岳 | DogsorCaravan.com
- 当サイトの写真集(Facebookページ)、前日 / Pre Race Day 、スタート / Start、沼の原湿原 / Numanohara、3A兼俣 / 3A 38.5k、4A黒姫・5A乙見湖 / 4A 52k, 5A 67k、戸隠キャンプ場 / Togakushi、フィニッシュ / Finish line、表彰式 / Award Ceremony、深夜の8A / 8A in midnight
- (その他、写真集やレースレポートを随時追加します)
当サイトによるレース中のライブ速報のログ
2014 Shinetsu Five Mountains Trail 110k / 信越五岳トレイルランニングレース ライブ速報 – Togetterまとめ
謝辞
今回の信越五岳トレイルランニングレースのライブ速報をお送りするにあたっては米山健司さんにご協力いただきました。また大会実行委員会からは情報提供や移動に当たっての便宜などご協力いただきました。御礼申し上げます。