佐藤圭介のスカイランニング世界シリーズ最終戦、リモーネ・エクストリーム / Limone Xtreme参加レポート(1/3)

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【編者より・10月に開催されるリモーネ・エクストリーム / Limone Xtremeはイタリア北部のリゾート地、ガルダ湖に面したリモーネの街を拠点に湖を取り囲む山岳地帯で行われる大会で、23kmのスカイレースや標高差1,000mを一気に駆け上がるバーティカルなどのレースが行われます。今年2015年の大会でバーティカルとスカイレースの二つに挑戦した佐藤圭介 / Keisuke Satoさんにレポートを寄稿していただきました。佐藤さんは今シーズンはスカイランニング日本選手権・美ヶ原80kで7位となるなど、実力あるアスリートの一人です。レポートは3回に分けて掲載し、今回はその第一回となります。】

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10月16日、17日にイタリアのガルダ湖湖畔で行われたリモーネ・エクストリーム / Limone Xtremeのバーティカル・キロメーター(VK)とスカイレースの2種目に出場してきたので、備忘録の意味も込めてレ ポートとしてまとめてみます。このレースに出場したいと思ったのはSWS(Skyrunnner World Series、国際スカイランニング協会<ISF>が主催するスカイランニングの世界シリーズ戦)の第5戦、最終戦に指定されており、来年の世界選手権を前にヨーロッパのスカイランニング文化を肌で感じたいと思ったからです。2種目のコンバインドに出たかったのもその理由です。

リモーネに向けた準備

エントリーはオンラインで

リモーネ・エクストリーム / Limone Extremeは昨年に続いて今年2015年もスカイランナーワールドシリーズの最終戦(SKYカテゴリー)となっていました。今年の年明けには松本大さんたちからこのイベントについて話を聞いて、エントリーを決めました。

5月1日朝7時(日本時間)にスマホとクレジットカードを持ってウェブページを立ち 上げて、日本のランネットと同じようなエントリーサイトである「Enter now」に事前に個人の情報を入れた状態でエントリーに臨みました。ところがエントリー当日はイタリア語でどこの項目にどの情報を入れるか苦戦、スマホだったのでウェブを開くのに時間がかかったりしましたが、クレジットカード情報を無事打ち込めてスカイレースにエントリー成功。続けてバーティカルキロメーターにも個人情報とクレジットカードの情報を入れて、2種目のエントリーを終えました。大会直前に現地で初めてお会いしたフランス在住の山本さんには、この時から大会についていろいろ教えて頂きました。

エントリーに関して3月に大会ウェブサイトが立ち上がった段階では、クレジットカード決済ではなく海外送金でないとエントリー料の支払いができないという情報が流れていたのですが、エントリー直前に「Enter now」に大会が登録され、クレジットカードでも決済できると分かり安心しました。 エントリー合戦になる情報もありましたが、スカイレースはしばらくエントリーを受け付けていたようで、バーティカルは直前まで埋まらなかったようです。 大会サイトには健康診断書と誓約書(PDFと WORD形式のファイル)をダウンロードできるページがあります。それぞれダウンロードして健康診断書については記載された大会事務局のFAX番号、またはメールアドレスあてに後日送信します。 他の日本人選手のうち、松本大選手たちは主催者を通じて招待選手としてエントリーしていました。

現地へはヴェネチアかヴェローナから移動

僕たちは同行する4人で羽田深夜1時発・ドーハ経由ヴェネチア行きのカタール航空のチケットを取りました。往復6万8000円〜7万3000円くらいです。ドーハではすぐに乗り継ぎ便に乗ってヴェネチアには14時過ぎに到着。空港からレンタカーに乗り込み、アウトストラーダ(イタリアの高速道路網)で3時間弱。ヴェローナからガルダ湖の東側を回り込んで現地へ向かいます。現地には夕方に到着しました。
他の仲間は羽田からエミレーツ航空でパリへ向かってそこで合流してから、ヴェローナの空港へ到着。そこから電車、バスを乗り継いで目的地のリモーネ・スル・ガルダへ入ったようです。空港からヴェローナ駅、鉄道でデセンツァノという町まで行き、そこで路線バスに乗り換えてリモーネに来るという行程だと思います。

寒暖差が激しく、冬用の防寒対策が必要

到着時の天気は雨でした。滞在中、特に朝晩は雨のことが多く、レース当日の日中に晴れ間が広がったのは幸運でした。晴れた昼間は温かいのですが、夜は冷え込み寒暖の差があります。リモーネが面する湖越しの対岸の山は標高2000m級の山ですが、1500m以上は降雪がありました。冬用の重ね着できる衣類を持っていきました。

宿泊は非常に快適

日本から同行したグループは大会オーガナイザーが手配してくれたホテルヨーロッパ、ホテルリモーネに分かれて宿泊しましたが、僕が宿泊した宿は8畳くらいの部屋にダブルベット。クローゼット、シャワー、トイレがついていて、ベランダからガルダ湖を見渡せる申し分ない宿でした。バスルームで湯船につかることができ、非常に快適に過ごすことができました。

ホテルでは朝食のみをとり、パンやハムチーズ、シリアルやヨーグルト、果物などで簡単に。昼食と夕食は外食(ほとんどパスタ、ピザ、ズッパなどのイタリア料理)に出かけましたが、レース当日の朝などは日本から持って行ったフリーズドライ製品やレトルト食品などを食べました。

バーティカルの参加賞のカウベルがうれしい

当日の受付はバーティカルレースが行われる当日の正午から。ガルーダ湖畔のテントの中で4〜5名のスタッフが受付をされていました。誓約書と健康診断書を手渡し、大会Tシャツとサロモンのフラスク、ジェルなどが入ったバックとゼッケンをもらいます。僕は2種目エントリーしたので2組分もらいましたが、バーティカルの方には参加賞としてサロモンの赤い大きなカウベルが入っていたのがうれしかったです。ゼッケンにはチップが輪ゴムで取り付けられていました。

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リモーネ・エクストリーム / Limone Xtremeで配布された参加賞。バーティカルにはカウベルも。All Photos courtesy of Keisuke Sato unless mentioned

コースガイダンスで急にコース変更が発表に

ブリーフィングはレースの30分前に行われたのですが、イタリア語がよく分からず内容はよくわかりませんでした。バーティカル、スカイレースともにコースが変更されたことが受付テント前のボードに張り出されており、 Google Earthの画像に変更後のコースとエイドの場所、距離、標高差が書き込まれていました。前日の雨の影響とスカイレースは標高1600m付近の稜線部の積雪の影響で変更となったようです。

直後に開催されるバーティカルでは、レースの開催時刻も変更されました。当初は第1グループが18時30分、最後にスタートするエリート選手は19時30分にスタートとされていて、その間にいくつかのグループに分かれてウェーブ方式である程度の人数がまとまってスタートすることとなっていたと思います。それがコース変更により序盤が幅の広い林道となり選手の間隔がそこでばらけることが予想されるからか、全員19 時に一斉スタートの変更されました。

コース変更により距離、獲得標高差も変わり、バーティカルに関してはリモーネの街の夜景をバックに絶壁を登るようなコースから、森の中を走るコースに変更になったのがかなり残念でした。

  • バーティカル:コース変更前は3.7km / 1,100mD+、変更後は6km / 1,200mD+
  • スカイレース:コース変更前は23km / 2,300mD+、変更後は23.5km / 2,850mD+

日本からも多くの選手が参加  

今回のリモーネではバーティカルで240人(うち53人が女性)、スカイレースで507人(うち73人)が完走しました。SWS(スカイランナー世界シリーズ)最終戦となったこの大会ではランキングで集計されるポイントが20%増となることもあって、世界ランキングの男子トップの10人、女子の8人が世界から顔をそろえました。

日本からは松本大星野和昭山本厚司佐藤圭介山本大賀菊池健太が参加。松本選手、星野選手は今年2015年のシーズン初めからSWSのSKYカテゴリーを転戦しており、この大会直前の世界ランキングではそれぞれ10番台の上位につけていました。

暗闇の中を駆け上がるバーティカル・キロメーター

試走してみたコースの詳しい様子

バーティカルのコースは大会ウェブサイトに示されていましたが、等高線などは引かれておらずイメージがわきづらかったので、事前に市販の等高線入りの地図を探しました。しかしAmazonで探してもあまり良いものがなく、唯一見つかったリモーネを含む地図はとても高額。大会直前に山本選手に相談したところ、Compass社のガルダ湖とリモーネを含む2万5千分の1の地図があるとのことで、スキャンしてデータで送って頂きました。おかげで出国間際に地図でイメージをすることができました。現地到着後、地図はすぐに街中で手に入れることができました。観光向けの地図にスカイレースとバーティカルのコースが記載されたものも見つけました。

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ガルダ湖が広がる眺望がダイナミック。

現地にはバーティカルのレースが行われる2日前の夜に到着したので、 翌日はバーティカルのコースの下見へ。この時点ではまだコース変更は発表されていません。天気も割とよく、下見には絶好でした。試走しているランナーを5、6人見かけました。以下は備忘録としてコースについて気づいたことを書き留めたメモから。

  • 標高500mあたりに階段と滑落防止用ネット
  • 800mあたりから5m〜10mくらいの下りが3本。3.0km看板あり。
  • 900m地点に10mから20mくらいに渡ってロープあり。
  • 800mより下は岩や石がゴロゴロしたガレ場が多く、それより上は低木に囲まれた土のトレイルがある印象。
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コースにはかなり急な傾斜も。

ゴール地点はピークの手前のベンチがあるところで、手元の時計で標高1,200m弱を示します。バーティカルは登りだけのレースですが、レース後の帰りではこの斜度と狭いトレイルで登りのランナーとすれ違うのかと思いました。しかし、案の定ゴール地点のベンチの先にピークを巻くようにトレイルが付いており、西側の谷あいに下りていくコースで下山することになっていました。ちなみにスカイレースの変更後のコースは、変更前のバーティカルのコースの途中から合流して谷に下りてくるまでは同じルートを辿ります。そこからはリモーネの街に向かう道で5kmほど。下山コースにもすでにマーキングが付けられており、この時すでにスカイレースのコース変更を前提に準備していたのではないか、と後で思いました。

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コースの下見をする佐藤圭介さん

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リモーネの小さな街が見渡せる。

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コース上にははしごで登る場所も。

入念にレース前の準備、しかし予想外のことも

バーティカルは夜に開催されるため、暗闇の中で登山をすることになります。明るいうちの下見は必須でした。大会当日は夜間でコースの形状や危険個所が判別できない可能性もあり、ましてピーク目掛けて心拍数を高めて、無我夢中で登っていきます。滑落しないように気をつけるべきポイントを事前に見ておこうと考えました。現地に行く前に参考になったのは前回大会の様子を撮影したYouTubeのビデオだけでした。

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大会からはヘッドライトとシェル(防水性のあるジャケット)が必携品として指定されていましたが、実際に携帯しているかどうかはチェックされませんでした。僕はこれに加え、250mlのフラスクに凌駕アクアチャージを150–200mlほど、そしてアスリチューンのジェルを一つ持っていきました。

失敗したのは、フィニッシュ地点に荷物を預けられたのを知らなかったこと。バーティカルでは登り切って夜間の山頂部にフィニッシュするので、レース後に体が冷えます。出発前から風邪気味だったので、事前に着替えを預けておけばよかったと思いました。前回の大会のビデオで、フィニッシュ地点にある山小屋で選手がエマージェンシーシートをもらっている様子を見ていたので、それを当てにしていました。大会当日の17時までに山頂で受け取る荷物を預けることとなっていたようです。また変更後のコースにエイド(ristoro)が一つだけあることもレース中に知りました。

エントリーリストは大会ウェブサイトには載っておらず、受付後に初めてみました。それによると僕は当初エリート選手のグループ(約80人)で19時30分スタートとなっていました。その他の一般選手のグループは先行して順次スタートすることとなっていたようです。

(続く)

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ABOUTこの記事をかいた人

佐藤圭介(さとう・けいすけ)1986年12月生まれ。高校・大学と陸上競技の競歩に取り組む。2013年上州武尊スカイビュートレイルから標高差のあるスカイレースに取り組む。JST南関東所属。チームチョキ、!竹トレらん部!でも活躍中。