前日のVKで優勝したスティアン・アンゲルムンド-ビク / Stian Angermund-VikがSKYカテゴリーでも優勝という快挙。日本勢が上位のレース展開に食い込みました。
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松本大が8位、上田瑠偉が12位に
スペイン・ピレネー山脈で開催されたBuff Epic Trailは二日目となる7月23日土曜日に42kのレースが行われました。このレースで2016年のスカイランニング世界選手権・SKYカテゴリーの世界チャンピオンが誕生します。初日は雨が一時強く降りましたが、二日目は概ね天候に恵まれました。コースはカタルーニャのアイゲストルタス・イ・エスタン・サン・マウリシ国立公園の東側の入り口となるリゾート地・アスポット / Espotをスタートして、この大会の拠点となるバルエラ・Baruerraへ向かう42km、累積獲得高度3,200mD+。この日、合わせて開催されたUltraカテゴリーの105kのコースの後半部分に該当します。
午前9時半、爽やかなアスポットの町に集まった452人(うち女子が55人)のランナーがスタート。コースの最初となる町の中を通り抜ける1キロちょっとを走って再びスタートゲートを通り抜けるときには、日本の牛田美樹 / Miki Ushida、上田瑠偉 / Ruy Uedaが先頭をリード。その後、6km地点では上田瑠偉が先頭に立っていて、その後のレースでの日本勢の活躍に期待が高まります。
15.3km地点となるEstany Gentoを男子トップで通過したのは優勝候補の一人であるトム・オーウェンス / Tom Owens(イギリス)で、ユーゲニ・ギル / Eugeni Gil Ocaña(スペイン)に続いて上田瑠偉 / Ruy Uedaが3番手で通過。トップから47秒差という僅差です。しかし、このとき4位だったスティアン・アンゲルムンド-ビク / Stian Angermund-Vik(ノルウェー)がこの後のレースをリードします。28km地点過ぎから長い下りに入ってスティアンはリードを拡大。そのままバルエラの町でフィニッシュして優勝。タイムは3時間56分47秒で2位のトム・オーウェンスに5分12秒もの差をつける圧勝でした。スティアンは前日のバーティカル・キロメーターでも優勝しており、今回のスカイランニング世界選手権で二冠を獲得する快挙となりました。
2位にはトム・オーウェンスが4時間1分59秒、3位にイスマイル・ラスガ / Ismail Razga(スペイン)が4時間5分56秒で続きました。上田瑠偉は序盤のハイペースがたたったのか、後半の下りに入って足の攣りに苦しむことになり、大きくペースを落とすことに。一方、松本大 / Dai Matsumotoは着実なレース展開で先行する選手を追い、4時間16分55秒でフィニッシュして8位、世界選手権でのトップ10入りを果たしました。上田瑠偉は4時間24分7秒で12位でのフィニッシュ。このほか日本代表選手では、近藤敬仁 / Yoshihito Kondoが4時間33分18秒で16位、牛田美樹 / Miki Ushidaが4時間38分17秒で21位でした。
女子のレースはスペインのランナーで昨年のゼガマ・マラソン優勝のアザラ・ガルシア / Azara Garcíaが序盤の6km地点でリードしていましたが、同じくスペインのトップアスリート、マイテ・マイオラ / Maite Maioraが逆転し、4時間42分15秒でフィニッシュ。女子の世界選手権チャンピオンの座を獲得しました。マイテ・マイオラは前日のVKの3位に続く好成績を挙げました。アザラ・ガルシアが2分差で2位に入りました。3位はイタリアのエリサ・デスコ / Elisa Descoでした。日本代表の長谷川香奈子 / Kanako Hasegawaは6時間47分50秒で28位。このほか大松知恵 / Chie Omatsuが6時間49分56秒で29位でした。
今回の世界選手権のバーティカル・キロメーター(VK)と42k(SKY)の両方に出場した選手についてタイムを合算してランキングを決めるコンバインドでは、男子が両レースで優勝のスティアン・アンゲルムンド-ビク、女子はマイテ・マイオラ(VK3位、SKY優勝)がチャンピオンとなりました。またこのコンバインドで上田瑠偉が男子2位(VK10位、SKY12位)となり、表彰台に登りました。
着実に一歩前進した松本大、派手なデビューを果たした上田瑠偉
一昨年のモンブラン・マラソンが舞台となったスカイランニング世界選手権がキリアンをはじめとする世界のトップ選手が勢ぞろいしたのに比べると、今回の世界選手権のSKYカテゴリーはやや有名選手が少ない印象でした。しかし、欧州を中心に今のスカイランニングのレベルを示す大会となりました。
松本大は前回2014年の世界選手権(モンブラン・マラソン 42k)で18位。現地で取材した際には世界の壁の厚さに悔しさが隠せない松本の表情が印象に残りました。この経験をバネに、昨年2015年はアジア選手権(MSIG Sai Kung 28k)で優勝、欧州の著名大会であるゼガマ・マラソンで13位と世界的なイベントで存在感を示しました。そうした中で、トップ10入りの8位という今回の結果は松本にとって世界の頂点への着実な一歩を記したといえるでしょう。次の世界的なレースでの表彰台に王手がかかりました。
上田瑠偉は前日に続いてこの42kのレースでも全力をぶつける走りを見せました。結果からみれば序盤に飛び出しすぎて後半に失速するという残念なレース展開、とりわけスカイレースで勝敗を決めるといわれる下りで失速したことは今後に課題を残しました。しかし、世界のトップ選手が集まる中で引けを取らない素質を持つことを示したことは明らかです。思えば、ハセツネカップで2014年に記録を更新する前年のハセツネカップで上田は思い切ってスタートから先頭に飛び出していました。国際的なスカイランニングのデビュー戦での経験が次に繋がることに期待したいところ。上田は早速、今週末のスカイランニング世界ユース選手権となるGran Sasso Skyraceに出場します。
Buff® Epic Trail / スカイランニング世界選手権・SKYカテゴリー リザルト
全体のリザルトはこちら。
Men / 男子
- スティアン・アンゲルムンド-ビク / Stian Angermund-Vik(Salomon、ノルウェー) 3:56:47
- トム・オーウェンス / Tom Owens(Salomon、 イギリス) 4:01:59
- イスマイル・ラスガ / Ismail Razga(スペイン) 4:05:56
- マヌエル・メリラス / Manuel Merillas(スペイン) 4:11:29
- エフゲニー・マルコフ / Evgeny Markov (Salomon、ロシア) 4:14:03
- ユーゲニ・ジル / Eugeni Gil Ocaña(スペイン) 4:15:06
- ペドロ・ヘルナンデス / Pedro Jose Hernandez Sanchez(スペイン) 4:15:43
- 松本大 / Dai Matsumoto(Salomon、日本) 4:16:55
- ミゲル・カバレロ / Miguel Caballero Ortega(スペイン) 4:17:07
- ベナト・マルミソル / Benat Marmissolle(スペイン) 4:17:37
- 12. 上田瑠偉 / Ruy Ueda(montrail/MountainHardwear、日本) 4:24:07
- 16. 近藤敬仁 / Yoshihito Kondo(The North Face、日本) 4:33:18
- 21. 牛田美樹 / Miki Ushida(inov–8、日本) 4:38:17
Women / 女子
- マイテ・マイオラ / Maite Maiora(La Sportiva、スペイン) 4:42:15
- アザラ・ガルシア / Azara García(スペイン) 4:44:04
- エリサ・デスコ / Elisa Desco(Scott Sport、イタリア) 4:46:43
- イーダ・ニルソン / Ida Nilsson (Salomon、スウェーデン) 4:53:52
- オイハナ・コルタザ / Oihana Kortazar (Salomon、スペイン) 4:57:36
- ミカエラ・メルトワ / Michaela Mertova(チェコ) 5:02:35
- ラウナ・デバツ / Ragna Debats(スペイン) 5:06:31
- エカテリーナ・ミチャエワ / Ekaterina Mityaeva(ロシア) 5:08:03
- シルビア・ランパッツオ / Silvia Rampazzzo(イタリア) 5:12:36
- カトリーナ・マトラソワ / Katerina Matrasova(チェコ) 5:16:49
- 28. 長谷川香奈子 / Kanako Hasegawa(Dynafit、日本) 6:47:50
- 29. 大松知恵 / Chie Omatsu(日本) 6:49:56