トレイルランニングにおいては、IAU(国際ウルトラランナーズ協会)とITRA(国際トレイルランニング協会)により「トレイル世界選手権 Trail World Championship」が毎年開催されています。今年2018年はスペインのカステリョー・デ・ラ・プラーナ Castelló de la Planaで開催されている大会、ペニャゴロサ・トレイルズ Penyagolosa Trailsがこの世界選手権の舞台となります。先週、今年の世界選手権となる85km 4,900mD+のコースの詳細が発表されました。日本を含め各国の代表選手が集まって5月12日に開催される今年のトレイル世界選手権についてご紹介します。
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トレイル世界選手権の位置付け
トレイルランニングの世界選手権の歴史は2007年にアメリカ・テキサス州で開催された50マイルのレース(Sunmart Texas Trail)に遡ります。第一回IAUトレイル世界選手権として開催されたこの大会では日本の櫻井教美が男女総合4位となる成績で初代女子世界チャンピオンとなっています。その後、第二回は2009年にフランスの68km(現在のSerre Chevalier Skyrace)、第三回は2011年にアイルランドの71.5km、第四回が2013年にイギリスの75km、第五回が2015年のフランスの84km(MaXi Race Annecy)と2年に一度開催されてきました。
これ以後は、2013年に設立されたITRAがIAUの主管するトレイル世界選手権に共同主管として加わるようになります。2016年のポルトガルの85km(Trans Peneda-Gerez)が第六回、そして昨年2017年にイタリアの50km(Trail Sacred Forests)が第七回となりました。
これまでのところ、2015年からは毎年トレイル世界選手権が開催されており、2016年からは80km前後の長距離のレースと50km前後の中距離のレースを交互に開催する形になっています。
このほか普通のトレイルランニングのレースと異なる点として、トレイル世界選手権は各国の陸上競技競技団体によって選考された選手のみが参加可能。世界選手権となるレースは一般参加者が出場するレースとは別に開催されます。具体的には、既存の大会の中に一般のレースとは異なるコースを設定する場合、一般のレースとコースは同じだがスタート時間が異なる場合、既存の大会ではない世界選手権のためだけのイベントを開催する場合がこれまでありました。
ペニャゴロサ・トレイルズで行われる85kmのレース
今年2018年のトレイル世界選手権は80km前後の長距離レースがペニャゴロサ・トレイルズ Penyagolosa Trailsの中で開催されます。
コースは地中海に面したカステリョー・デ・ラ・プラーナ Castelló de la Plana(バレンシア州カスティリョン県)をスタートし、このエリアを代表する山であるペニャゴロサ Penyagolosa(巨大な岩、の意)の山中にあるサンホアン・ペニャゴロサ聖堂 Ermitorio de Sant Joan de Penyagolosaにフィニッシュします。中世に聖堂への参詣道として親しまれていたトレイルをたどるコースは概ね上り基調の85.3kmで、累積高度は獲得高度が4,900mD+、喪失高度が3,690mD-。途中は山の上にある小さな町である、ウシェレス Useres、アツェネータ Azteneta、ビスタベラ Vistabellaのエイドをたどるほか、4箇所の給水所が設けられます。コース最終盤には、ペニャゴロサの頂上から南側に広がる巨大な岩の絶壁を右手にみながらフィニッシュを目指すことになります。
世界選手権に出場する選手については各国の代表選手リストが4月に公開される予定です。当サイトでは出場選手が明らかになり次第改めてご紹介します。
このほか一般から参加申し込みを受け付けるオープンレースとして、1998年の第一回大会から続く63kmの「MiM」、2013年にスタートして昨年2017年からはUltra-Trail World Tourのシリーズ戦ともなっている108kmの「CSP」も、世界選手権と並行して同じ週末に開催されます。当サイトでは昨年のこの大会を取材し、大会の背景にあるエピソードやコースの特徴をご紹介しています。
なお今年の大会についてはすでにプレエントリーと抽選が済んでいて、今年秋に来年2019年大会のプレエントリーの受付が行われる予定です。
トレイル世界選手権の今後
2016年のポルトガルでの世界選手権からIAU(国際ウルトラランナーズ協会)が主管し、ITRA(国際トレイルランニング協会)が協力するという体制で世界選手権は開催されています。IAUは財務や選手団の宿泊や移動といった運営実務の全般を統括する一方、ITRAはレース運営の技術面や広報・PR、QUARTZプログラム(アスリートについて大会前後だけでなく日常時にも定期的に健康診断を受けてその結果を共通のプラットフォームで管理、分析する仕組み)による反ドーピングの推進と選手の健康管理などを担っています。
現在、ITRAでは2020年以降のトレイル世界選手権について、レースの種目や開催の頻度、出場者の選び方などを検討しているとのこと。今後、世界のトレイルランニングコミュニティの議論によってトレイル世界選手権のあり方が変わっていくこともありそうです。