ペニャゴロサ・トレイルズ Penyagolosa Trails 2017 リザルト #UTWT

 

アメリカのティモシー・オルソンが久々に見事な勝利を収めました。女子はスペインのトップ選手、ジェマ・アレナスが優勝。日本の大瀬和文も8位と健闘。今年からUltra-Trail World Tourに加わって注目されるペニャゴロサ・トレイルズ Penyagolosa Trailsが4月22日土曜日にスペインで開催されました。

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(写真・終盤に入って先頭に立ってリードを広げるティモシー・オルソン Timothy Olson。Photo by Koichi Iwasa)
この大会の舞台となるのはスペインの地中海に面した町、カスティリョン・デ・ラ・プラーナ Castelló de la Plana。カスティリョンからこの地域を代表する山であるペニャゴロサ山のサンホアン・ペニャゴロサ聖堂への参詣道を復活させたトレイルがコースとなっています。1998年から続く大会はスペインの人気トレイルランニングレースの一つとして知られていましたが、115km 5,439mD+のレースである「CSP」が今年からUltra-Trail World Tourに加わりました。さらに来年2018年はこの大会においてIAUトレイル世界選手権が開催されることが決まっていて、地元ではこの大会を通じてペニャゴロサの魅力を広く世界に伝えていこうという意欲が高まっています。

深夜にペニャゴロサ・トレイルズ の115kmのレースであるCSPがスタート。

今年のCSPではアメリカのティモシー・オルソン Timothy Olsonが優勝。2012年、13年にウェスタンステイツを連覇し(2012年には大会記録を更新)、2013年のではアメリカ人として最高位となる4位となってその名前を世界に知られているオルソンはスペインでも人気者です。しかし2014年以降のレースでは国際的なレースでの勝利からは遠ざかっていました。今回はスペインのトップ選手たちが揃う中で鮮やかなレース展開で復活を強く印象付けました。

久々に勝利を手にしたティモシー・オルソン Timothy Olson。

2位にはカナリア諸島・グランカナリア島在住のジェライ・デュラン Yeray Duranが続きました。昨年はTDSで2位、スカイランニング世界選手権・ Epic Trailで6位となっているスペインのトップ選手です。3位、4位に続いたレミ・ケラール Remi Queral、ホセ・マルチネス Jose Esteban Martinezもスペインの大会では毎回上位を走る選手です。ケラールは昨年のこの大会で2位でした。こうした中で日本から参加した大瀬和文 Kazufumi Oseはこの日は手堅い走りでトップ10圏内を維持。最終盤では順位を少し下げることになったものの8位でフィニッシュ。吉原稔 Minoru Yoshiharaは序盤に思い切って先頭を走って驚かせたあと、中盤に入ってもトップ10にとどまっていましたが終盤にはやや失速。それでも20位でフィニッシュし、大瀬とともに日本のトレイルランナーの実力を示しました。

大瀬和文 Kazufumi Oseが8位でフィニッシュ。

女子では昨年のUltra Skymarathon 55kで優勝、IAUトレイル世界選手権・Trans Peneda-Gerez 85kで5位などの実績を持つスペインのジェンマ・アレナス Gemma Arenas Alcazarがレースを終始リード。しかし、その差数分で昨年のこの大会優勝のマリア・ピラ Maria Mercedes Pila Viracochaが追い続け、フィニッシュでもわずか2分半のデッドヒートでした。3位はスペインのレイラ・マルチネス Leire MARTINEZ HERRERAでした。

レースの展開

115kmのCSPがスタートするのは深夜0時。スタート地点のあるカステリョンの町ではさほど寒いと感じませんでしたが、48km地点となるアツェネータ Atzenetaでは夜明け前の午前5時半の気温は3℃ほどでした。この日は1日を通して晴れました。

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スタートからしばらくはスペインと海外からのトップ選手が集団で舗装路や林道を中心としたコースを駆け上がっていきます。23km地点(La Bassa de les Oronetes)ではノルウェーのスピードランナーでロードのウルトラマラソンでもUTWTのシリーズ戦でも安定して上位を占めているディドリク・ヘルマンセン 、そして日本の吉原稔 Minoru Yoshiharaが先頭を走り、その30秒後にフルビオ・ダピ Fuvio Dapit。そこから3分で後続が集団で続くという展開。32km地点(Les Useres)でも、ヘルマンセンがリード、吉原とダピが続き、そのあとに後続集団、という展開でした。

この日のレースを引っ張ったディドリク・ヘルマンセン。この後リタイアすることに。

ここまでのコースが比較的走りやすいコースであったのに対し、32km地点を出てからは次第に本格的なトレイルへと入り、登りも長くなります。大きな登りと下りを終えて一旦村に戻ってくる48km地点(Atzeneta del Maestrat)ではヘルマンセンは後続のアレハンドロ・フラグエラ Alejandro Fraguelaやジェライ・デュラン Yeray Duran Lopezに7分以上もリードしていました。この時、ティモシー・オルソンはトップから12分近くの差で7位。大瀬和文は10分半の差で6位を走っていました。

中盤になり、夜明けが近づき始めると上位選手の明暗が分かれ始めます。10km近くで標高差400mを登ったところにある57km地点(Benafigos)までにフルビオ・ダピがペースを落としはじめ、結局71km地点でリタイア。早朝の71km地点(Culla)ではヘルマンセンが力強くリード、その8分差でジェライ・デュラン、10分差でアレハンドロ・フラグエラが続いたのは変わりませんが、他のランナーが集団が脱落していく中で、ティモシー・オルソンはトップから11分差を保って4番手になります。

一方、トップを走っていたヘルマンセンがここにきて胃腸のトラブルからペースを落としはじめ、90km地点でリタイア。大きな谷への下りと登り返しの先にある90km地点(Vistabella)にトップでやってきたのはオルソンでした。しかし1分差でジェライ・デュランが続きます。ここから99km地点(Xodos)、104km地点(Mas del Collao)は小さなアップダウンが続く区間ですが、ここでオルソンは一気に後続を引き離す華麗なレース展開を見せつけます。やや疲れもみえたデュランに対して99km地点では約14分、104km地点では約18分とグングンと差を広げ、最後は20分以上の差でフィニッシュ。ティモシー・オルソンはレース後半に圧倒的な強さをみせての見事なレース展開で久々の勝利を勝ち取りました。

チョドス Xodosでティモシー・オルソンを追うジェライ・デュラン Yeray Duran.

2位はジェライ・デュラン。3位と4位にはレミ・ケラールホセ・マルチネス が続きました。ケラールとマルチネスはコース中盤の50km地点あたりから10位前後を走っていたところから一緒に走りはじめ、その後は上位選手を次々にとらえて順位を上げていきました。5位はアレハンドロ・フラグエラ。後半に入ってケラールとマルチネスに先を譲ったものの、5位を守りました。6位はビクター・ベルナド Victor Bernad Blascoで序盤から10位前後を走り、後半に他の選手が落ちてくる中で安定した走りでした。

3位と4位のレミ・ケラール(左) とホセ・マルチネス。

日本の大瀬和文のこの日は序盤に10位前後で先頭集団には無理についていかない手堅い走り。その後中盤で4位に上がり、71kmのエイドの手間では5番手を走っていました。その後は巧みなレース展開を見せたオルソンやケラール、マルチネスの後塵を配することとなり、最終盤では補給のリズムも崩れてペースを落とします。しかし、なんとか持ちこたえる形で8位でフィニッシュするという結果を出しました。吉原稔はレース序盤に先頭を走り、その後も99km地点まではトップ10圏内を走りました。しかし最後の山岳セクションではコース上で捻挫したこともあって大きくペースを落とすこととなり、フィニッシュでは20位という結果でした。初めて迎えた日本の有力選手の健闘ぶりをみた地元スペインのファンから二人は注目を集めました。

早朝に71kmのエイドに向かう大瀬和文 Kazufumi Ose。

序盤に先頭を走って驚かせた吉原稔 Minoru Yoshihara。

女子のレースはジェマ・アレナスが終始リードしますが、マリア・ピラもアレナスを懸命に追い、71km地点でも差はわずか4分。90km地点は14分までさは広がりましたが、その後も諦めることはなく、フィニッシュではアレナスを2分23秒差まで追い詰める気迫のこもった走りを見せ、ファンを喜ばせました。イタリアのフランチェスカ・カネパ Francesca Canepaは上位の二人に続いて3位を走っていましたが、71km地点でリタイア。3位になったのはレイラ・マルチネス Leire Martinez Herrera、4位はハンガリーのウルトラランナーであるイルディコ・ベルミシャー Ildiko Wermescher、5位はチャリ・アドリアン Xari Adrian Caroでした。

終始リードしたジェマ・アレナス Gemma ARENAS ALCAZAR。

最後まで諦めないレースをみせたマリア・ピラ Maria Mercedes PILA VIRACOCHA。

全般に走れるパートが多いトレイルだが長い夜は明暗を分ける、終盤のペニャゴロサの景観が圧巻

スペインはヨーロッパではフランスと並んでトレイルランニング、スカイランニングにおいて存在感のある国で、キリアンをはじめとしてたくさんの有力選手を輩出している他、様々な大会が開催されています。昨年のスペイン、アンドラでの取材をきっかけに当サイトではスペインの大会に注目しています。今回のペニャゴロサ・トレイルズ Penyagolosa Trailsは今年からUltra-Trail World Tourに加わったうえ、来年のIAUトレイルランニング世界選手権となることが決まっており、スペインの中でも国際的な注目度が高まることになりそうです。今回のアメリカのトップ選手であるティモシー・オルソンの復活を印象づける勝利や、日本から参加した大瀬和文、吉原稔の健闘ぶりは来年の世界選手権に向けたプレリュードとなりました。

CSPの完走者に贈られるメダル。

一般的なランナーにとっては、コースや大会運営がどんなものなのかが気になるところでしょう。コースについては、目玉はコースの最終盤に現れるペニャゴロサ山の巨大な岩壁です。巨大な断層によって生まれたペニャゴロサは北側が比較的穏やかな斜面でこちらからの登山道で頂上に立つことは容易ですが、南側はスパッと切れ落ちた断崖絶壁で、クライミングの名所ともなっています。CSP 115kmのコース最終盤はこの南側の岩壁のすぐ下を通っていて、そこからの眺めがコース最大の見所です。そのほかは夜間に通過する町から近いコース序盤では林道や舗装路ややや多くなりますが、コース後半にはかなりテクニカルなガレ場も現れます。完走するにはこうしたメリハリのはっきりしたコースに対応する経験が大事になりそうです。大会運営については非常に充実した体制で、エントリーから当日の受付、レース後の選手の町への搬送まで、今回も大きなトラブルなく運営されていました。フィニッシュ地点のサンホアン・ペニャゴロサ聖堂は普段は山の中の静かな場所ですが、この日はフィニッシュゲートはもちろん、パエリャやスープ、飲み物も振る舞われたほか、選手のためのシャワーブースも臨時に用意されていました。多くの人でにぎわう様子はかつて巡礼者を集めた頃の聖堂もこんな様子だったのかもしれないと往時を偲ばせます。

会場ではパエリャをはじめ、様々な食事や飲み物が振る舞われた。

巨大な風船人形の股下をくぐってエイドへ。ペニャゴロサ(巨大な岩)の言葉からこの岩の巨人という発想だろうか。

日本からの参加者にとって、国際化を目指すこの大会はスペイン語以外にも英語での情報提供や当日の案内がされていて参加しやすいといえます。当サイトではこれからもスペインのトレイルランニング、スカイランニングの大会に注目していきますので、ご期待ください。

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リザルト

大会公式のリザルトはこちらから。【追記・大会開催後の2018年1月、大会はCSPの男子で3位のレミ・ケラール Remi QUERAL IBAÑEZ(スペイン)が禁止薬物の使用により失格となったことを発表しました。これにより、続く選手の順位が繰上げとなったため、リザルトも訂正しました。2018.1.30】

CSP (115km)

CSPの表彰式より

男子 Men

  1. ティモシー・オルソン Timothy OLSON (アメリカ, ) 12:23:58
  2. ジェライ・デュラン Yeray DURAN LOPEZ (スペイン, BUFF PRO TEAM) 12:45:34
  3. ホセ・マルチネス Jose Esteban MARTINEZ TECLES (スペイン, LIKE SPORT LURBEL) 12:52:53
  4. アレハンドロ・フラグエラ Alejandro FRAGUELA (スペイン, STUDIO54) 13:09:32
  5. ビクター・ベルナド Victor BERNAD BLASCO (スペイン, TEAM SPORTHG – AMLSPORT) 13:24:08
  6. アルバロ・ロドリゲス Alvaro RODRIGUEZ BARREIRO (スペイン, TEAM SPORTHG – AMLSPORT) 13:29:28
  7. 大瀬和文 Kazufumi OSE (日本, SALOMON / SUUNTO) 13:31:08
  8. クラウディオ・ベトレット Claudio BETORET CASANOVA (スペイン, C.M. GR-33) 14:06:00
  9. アグスティン・ルハン Agustin LUJAN MALDONADO (スペイン, TRIJOTE) 14:07:15
  10. ホセ・ロハーノ Jose Antonio ROJANO NOVA(スペイン)14:21:40

19 吉原稔 Minoru YOSHIHARA (日本, ) 15:19:40

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女子 Women

  1. ジェマ・アレナス Gemma ARENAS ALCAZAR (スペイン, DYNAFIT) 15:01:19
  2. マリア・ピラ Maria Mercedes PILA VIRACOCHA (スペイン, TEAM SPORTHG – AMLSPORT) 15:03:42
  3. レイラ・マルチネス Leire MARTINEZ HERRERA (スペイン, TEAM SPORTHG – AMLSPORT) 15:53:43
  4. イルディコ・ベルミシャー Ildiko WERMESCHER (ハンガリー, MAMMUT) 16:20:29
  5. チャリ・アドリアン Xari ADRIAN CARO (スペイン, TEAM SPORTHG – AMLSPORT) 16:21:16
  6. ロクサーヌ・アルディエ Roxane ARDIET (フランス, CEVENNES TRAIL CLUB) 16:25:09
  7. ラウリ・アツェニ Laurie ATZENI (フランス, TEAM ENDURANCE SHOP 13) 17:38:04
  8. エスター・ヘルナンデス Esther HERNANDEZ PEREIRA (スペイン, WAA TEAM) 17:38:40
  9. レティシア・ブジャリド Leticia BULLIDO VENTURA (スペイン) 18:09:20
  10. アリシア・シャヴェリ Alicia CHAVELI PERIS (スペイン, TEAM SPORTHG – AMLSPORT) 18:41:23

優勝したジェマ・アレナス Gemma ARENAS ALCAZARのフィニッシュ。

MiM (65km)

男子 Men

  1. ミゲル・カバレロ Miguel CABALLERO ORTEGA (スペイン, LA SPORTIVA) 05:22:08
  2. クリストバル・アデル Cristobal ADELL ALBALAT (スペイン, LA SPORTIVA) 05:30:03
  3. イヴァン・オルティズ Ivan ORTIZ CARRION (スペイン, GIRONBIKE – CANTINA ZAPATA) 05:31:37
  4. クリスティアン・カジャウ Cristian CALLAU ALEDON (スペイン, MUR I CASTELL-TUGA) 05:33:40
  5. アベル・アバド Abel ABAD FONT (スペイン, MUR I CASTELL-TUGA) 05:40:37
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女子 Women

  1. ライア・カニェス Laia CAÑES BADENES (スペイン, TEAM SPORTHG – AMLSPORT) 06:09:49
  2. エバマリア・モレダ Eva Maria MOREDA GABALDON (スペイン, CLUB ESPORTIU GARDEN HOTELS) 06:28:16
  3. アインホア・オストラザ Ainhoa OSTOLAZA MARTIN (スペイン, ELNESVAGEN FRIIDRETT) 06:37:05
  4. モニカ・ビブス Monica VIVES VILA (スペイン) 07:01:04
  5. エバ・メサド Eva MESADO ORTIZ (スペイン, MUR I CASTELL-TUGA) 07:11:26
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