山に行くならどんな天気でも防水レインジャケットを持って行く。そんなアウトドアの鉄則はトレイルランニングにも当てはまります。しかしほんの数年前まではレースなのか、ファンランなのか、といった状況に応じて、耐久性、透湿性、軽量性のどれを重視するかを考えてジャケットを選ぶ必要がありました。しかし、今日ではトレイルランナーが求める防水レインジャケットの機能を高いレベルでバランスさせた製品が登場しています。そうしたジャケットの代表的な存在で、昨年登場したパタゴニア Patagoniaのストームレーサージャケット Storm Racer Jacketをレビューします。
あわせて、パタゴニアの2018年春夏シーズンのおすすめである、ウィンドチェイサーシャツ Windchaser Shirt、ストライダープロショーツ Strider Pro Shorts、そして今シーズン初登場のエアディニ・キャップ Airdini Capを紹介します。
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これがトレイルランナーのための防水レインジャケットの新定番、ストームレーサージャケット
このレビューを書いている当サイト岩佐の中ではトレイルランニングのための防水レインジャケットに万能なものはない、というのが持論でした。UTMB®︎をはじめとする長距離の本格的な山岳トレイルレースでは快適さが重要。ライニングのついた3層構造で透湿性が高い素材を使っているものを選ぶと、ある程度の重さとかさばり(そして普通のアウトドア用のレインジャケットと比べて高価なお値段も)は受け入れざるを得ませんでした。一方で天気のいい日によく整備された里山を走って半日ほどで戻ってくる、という場合には汗で肌に張り付くことがあったとしても2層構造の軽くてかさばらないジャケットが使いやすい。レース取材の時もこういうジャケットが必携品でした。
しかし!2018年の現在は(正確にはストームレーサージャケットが発売された昨年からは)そんな取捨選択はしなくてもよくなっていました。UTMB®︎のレギュレーションを満たすことをうたっているパタゴニア Patagoniaのストームレーサージャケット Storm Racer Jacketは、トレイルランニングのほぼ全てのシーンで妥協することなく活用できる防水レインウェアなのです。
その生地はパタゴニア独自の防水透湿素材であるH2Noパフォーマンス・スタンダード。これは表面の耐久性撥水加工(DWR)されたリップストップ・ナイロンと裏側の肌触りのいいトリコットの間に防水性と透湿性を兼ね備えたバリヤーという3層構造。しかし、手にとってみるとしなやかな感触で防水性のないウィンドジャケットと間違えそうです。実際に着てみてもゴワゴワした感じがほとんどしないので3層構造のジャケットとは思えないほど。Tシャツの上から着て、走っているうちに汗をかき始めても、腕の素肌に張り付くような感触がしないことに驚きます。これなら、今までならウィンドジャケットを着ていたような風の強いときや少し肌寒い時にも積極的に活用できそうです。重さは170g。ちなみにパタゴニアの防水ジャケットの名作、M10ジャケットが266g、防水性こそないものの耐風性に優れたフーディニ・ジャケットは102gです。
こうした軽量でシンプルなジャケットではありますが、フードには頭の後ろのコードを引っ張ると額のあたりまでしっかりと締めることができるようになっています。この調節機能はアウトドア用のレインウェアには不可欠なディティールです。
ポケットは胸のチェストポケットのみでベンチレーションのためのジッパーなどはなし。チェストポケットは内側にカラビナにつけられるループが付いていて、ひっくり返すとジャケット本体を収納可能。これも念のための装備としてバックパックなどに入れる際には役立つ機能です。
また、袖口は手首の側だけにゴムが入っていて手の甲の側はフラットなつくりです。これもGPSウォッチを腕につけている時に煩わしくないように、という配慮かもしれませんが、ここはベルクロのついたフラップで留められたほうが防寒の面では安心かもしれません。
見た目のさりげなさと工夫された快適さがすごい、ウィンドチェイサーシャツとストライダープロショーツ
春から秋までのランニングウェアといえばシャツとショーツ。パタゴニアのシャツとショーツは見た目はスポーツウェアにはみえないカジュアルなスタイルなのに、快適さと機能を追求しているのが魅力です。
腰回りにジェルなどを入れられるポケットがついたランニングショーツを当サイト岩佐が最初に見つけたのはアメリカのランニングショップで、その時買ったRaceReadyのショーツは今でも使っています。同じアイディアをパタゴニアが製品にするとこのエレガントなストライダープロショーツ Strider Pro Shortsになります。最大の特徴は腰の左右に二つずつ設けられたポケット。エナジージェルを入れる他にも手前側の大きい方のポケットにはフーディニジャケットや下で紹介するエアーディニキャップを丸めて入れておくこともできます。さらに背中の中央部にはジッパー付きのポケットがあるので、カギやカードなどはここへ。
なお、この記事で紹介している股下13センチ(5インチ)のタイプに加えて、もう少し股下が長い股下18センチ(7インチ)のストライダープロショーツもラインナップされています。この二つは股下の長さの他にも、素肌に触れるインナーショーツが股下13センチの方はブリーフ型で股下18センチの方はボクサー型という違いがあり、ちょっと気温の低い時にはこの股下18センチの方が快適です。
ウィンドチェイサーシャツ Windchaser ShirtはツートンカラーのシンプルなTシャツなのですが重さはわずか82gと手に取るとその軽さを実感します。肩と身頃の上半分にはベンチレーションに優れるメッシュ生地が使われています。そしてこだわりを感じるのは、袖口、襟口、裾口以外は生地が超音波接合されていて完全にシームレスとなっていること。可能な限りランニング中のストレスを少なくしようという強い意志を感じます。
なお、ストライダープロショーツもウィンドチェイサーシャツもポリジン永続的防臭加工済み。汗でにおいやすいというポリエステル素材の弱点にも対策済みです。
ポケットに入れておける夏の必需品、エアディニ・キャップ
今シーズンから登場したのがこのエアディニ・キャップ Airdini Cap。ちょっと小さめのつばがついた重さわずか28gのキャップで、小さく丸めてしまえるというユニークなアイテムです。しかし、このかわいいキャップにも機能と工夫が満載なのです。
まずつばと頭の上部に当たる部分には耐久性撥水加工(DWR)のされたリップストリップナイロン。これはフーディニジャケットでおなじみの素材。そして頭の後ろのバックパネルには伸縮性のある素材が使われていて、ここが伸び縮みすることで頭にフィットする仕組みになっています。
さらに、このバックパネルは生地が二重になっていてポケットとなっています。内側にはループもあるのでここに鍵をつけておいたり、ジェルを入れておくことも可能。ポケットを裏返せばそのままキャップをしまうこともできる、という仕組みになっています。
春夏のシーズンでも雨や風、強い日差しから頭を守るのにキャップはトレイルランニングに必要なアイテム。かさばらないこのエアディニ・キャップがあれば安心です。
(協力・パタゴニア)