バーティカルキロメーター界の皇帝・宮原徹 Toru Miyaharaと女王・吉住友里 Yuri Yoshizumiの無敵ぶりは変わりありませんが、続く選手は接戦でした。
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尾瀬岩鞍バーティカルキロメーター Oze Iwakura Vertical Kilometerは先週末の10月14日日曜日に群馬県片品村の尾瀬岩倉ホワイトワールドで開催されました。エキスパートコース(5km 1000mD+) はスカイランナー・ジャパンシリーズ Columbia Montrail Skyrunner® Japan SeriesのVKシリーズ全5戦の最終戦となり、宮原徹 Toru Miyaharaが40分57秒で優勝。昨年優勝したジョー・グレイ Joseph Gray(アメリカ)のタイムにわずか8秒差に迫る好記録でした。女子は吉住友里 Yuri Yoshizumiが49分30秒で優勝。この大会は今年のスカイランニング・ユース日本選手権ともなっており、山田雄喜 Yuki Yamada(44分45秒)と安ヶ平萌子 Moeko Yasugahira(56分55秒)がそれぞれ男女のユース日本チャンピオンと決まりました。大会ではチャレンジコース(3km、700mD+)のレースや小学生によるキッズスカイレースも開催されました。
(写真・尾瀬岩鞍VKのスタート。Photo by Koichi Iwasa, DogsorCaravan)
大会前日の天気予報では雨が見込まれていましたが、当日は曇り空ながら雨は降らず。標高1700m近いフィニッシュ地点の気温は11℃で、例年より早い紅葉が進んだ尾瀬岩鞍ホワイトワールドのスキーゲレンデは、バーティカルキロメーターには恵まれたコンディションとなりました。コースはスタートから約1.5kmで標高差400mを登ったところから、標高差200m強の下りを挟んで再び登り返し、途中で再び標高差100mの下り。最後は残り1kmで標高差300mを登ります。スタートから3km地点の二度目の登りの最後には斜度40度近い泥の急坂・ジャイアントウォールが待ち受けます。
宮原徹と吉住ゆりが優勝
今年の尾瀬岩鞍VKはコースのコンディション、天候ともに恵まれたことから全体にタイムも速くなりました。男子のレースはバーティカルの皇帝・宮原徹 Toru Miyaharaが優勝。この大会は前年圧勝したジョー・グレイ Joseph Grayのタイムにあと8秒差に迫りました。今シーズンの宮原は4月にジャパンシリーズ開幕戦の粟ケ岳VK(新潟県三条市)で上田瑠偉に優勝を許した他、9月には酷寒のスカイランニング世界選手権(スコットランド)で7位にとどまるなど、厳しいレースもありましたが、最終戦は鮮やかな勝利。ジャパンシリーズでVKシリーズが設けられた2016年から3年連続の年間チャンピオンとなりました。
2位には宮原から1分半差の42分25秒で永里剛城 Goki Nagasato。この日の永里は宮原の20秒前にスタート。コース上の登りで宮原に追いつかれても下りでは宮原を抜き返して1分ほどまでリードするというガッツを見せました。今シーズンの永里は粟ケ岳では5位でしたが、上田、びわ湖、烏帽子でいずれも宮原に続いて2位となっていて、年間ランキングでも準優勝を勝ち取りました。
3位の牛田美樹 Miki Ushidaは永里から約2分差の44分31秒。牛田から4位の藤飛翔 Tsubasa Fuji、5位の八田康裕 Yasuhiro Hatta、6位の山田雄喜 Yuki Yamada、7位の川崎雄哉 Yuya Kawasaki 、8位の近江竜之介 Ryunosuke Ohmiまではわずかに27秒の差しかなく、上位選手は接戦でした。この中に実業団アスリートで7月の富士登山競走・五合目コース優勝の山田雄喜、高校生で粟ケ岳VKで3位となりユース世界選手権で金メダルの近江竜之介も入っています。
女子は昨年のジャパンシリーズで全7戦優勝の吉住友里 Yuri Yoshizumiが後続に7分以上の差をつけて49分30秒で今回も圧勝。昨年のタイム(49分46秒)を上回っただけでなく、コースが少し異なるものの一昨年の49分31秒も上回る自己ベストでした。今シーズンは目標としていた9月のスカイランニング世界選手権の直前に手にケガを負い、レースは不本意な結果に。しかし春のSTY優勝、7月の富士登山競走二連覇という成績を残しています。女子2位には実業団で長距離ランナーとして活躍した経験を持つ黒澤莉楠 Rina Kurosawaが入りました。VKに初挑戦で56分51秒でした。3位の安ヶ平萌子 Moeko Yasugahira、4位の稲毛日菜子 Hinako Inage、5位の滝澤空良 Sora Takizawaはいずれもユース世代の若手で、60分を切る好記録でした。
スカイランナー・ジャパンシリーズのVKチャンピオンが決定
今年もジャパンシリーズのVKシリーズは今回の尾瀬岩鞍VKが全5戦の最終戦でした。ボーナスレースとなる尾瀬岩鞍VKのポイントは50%加算された結果、男子は宮原徹 Toru Miyaharaが金メダル。銀メダルは昨年に続いて永里剛城 Goki Nagasatoに決まり、銅メダルは八田康裕 Yasuhiro Hatta。女子は尾瀬岩鞍VKには参戦しませんでしたが、上田、烏帽子で優勝の立石ゆう子 Yuko Tateishi が金メダルに、粟ケ岳優勝の高村貴子 Takako Takamuraが銀メダル、吉住友里 Yuri Yoshizumiが銅メダルと決まりました。
スカイランナー・ジャパンシリーズ Columbia Montrail Skyrunner® Japan Seriesは今週末に開催されるSky Classicカテゴリーの最終戦、志賀高原エクストリームトレイルのミドル(32km 2,000mD+)で今年の全日程を終えます。
ユース世界選手権報告会
大会前日の前夜祭に先立って、8月にイタリア・ラクイラ近郊で開催されたGran Sasso Skyraceの中で開催されたスカイランニング・ユース世界選手権 Youth Skyrunning World Championshipsについて、日本代表選手チームのメンバーが報告会を行いました。
ユースA(16-17歳)男子の日本代表として参加し、VKで2位、スカイレースで優勝した近江竜之介 Ryunosuke Ohmiはこのレースへの参加が初めての海外旅行でした。大会が開催されたグラン・サッソのコースについては「いつも行っている近畿の山とは全く違い、圧倒された」といいます。さらに「海外の選手は日本の選手と違い、レース前のウォームアップの仕方も様々。応援の盛り上がりのすごさにも驚いた。」と初めての海外遠征を振り返りました。スカイレースのコースには本格的な岩場もあり、陸上競技を中心に取り組む加藤晟人 Akihito Katoは「死ぬかと思った」、昨年のアンドラでのユース世界選手権に参加している滝澤空良 Sora Takizawaは「アンドラよりもさらにテクニカルなコースだけれど、そこでも欧州の選手は速い」と話しました。
ユース世界選手権には3度目の参加で今回最年長で最後の代表としての参加となった鈴木龍弥 Ryuya Suzukiは「初めて参加した時は日本代表のメンバーは初めての欧州でのスカイランニングにみんな苦戦したが、今回は悔いなく実力を発揮できた」といいます。「ユースの選手のレベルは年々上がっている」としながらも「絶対に勝てないということはない」と今後のユース日本代表チームにエールを送りました。
今年のユース世界選手権の日本代表チームの成績についてはこちらの記事(VK、Skyrace)でご紹介しています。
リザルト
大会全体のリザルトはこちら。
エキスパートコース(5km/1000mD+)
男子 / Men
- 宮原徹 Toru Miyahara(滝ケ原自衛隊) 40:57(昨年のJoe Gray 40:49)
- 永里剛城 Goki Nagasato(国分自衛隊) 42:25
- 牛田美樹 Miki Ushida 44:31
- 藤飛翔 Tsubasa Fuji 44:38
- 八田康裕 Yasuhiro Hatta 44:42
- 山田雄喜 Yuki Yamada(コモディイイダ) 44:45
- 川崎雄哉 Yuya Kawasaki (滝ケ原自衛隊) 44:47
- 近江竜之介 Ryunosuke Ohmihs 44:58
- 近藤敬仁 Yoshihito Kondo 45:55
- 今井洋二 Yoji Imai 46:00
女子 / Women
- 吉住友里 Yuri Yoshizumi 49:30(昨年49:46)
- 黒澤莉楠 Rina Kurosawa 56:51
- 安ヶ平萌子 Moeko Yasugahira 56:55
- 稲毛日菜子 Hinako Inage 59:19
- 滝澤空良 Sora Takizawa 59:31
- 須藤吉仕子 Kishiko Suto 1:01:07
- 木下久美 Kumi Kinoshita 1:01:47
- 板橋美紀 Miki Itabashi 1:02:13
- 笹川茉由 Mayu Sasagawa 1:03:05
- 斎藤綾乃 Ayano Saito 1:03:26
2018年ユース日本選手権(16-23歳)
男子 / Men
- 山田雄喜 Yuki Yamada 44:45
- 近江竜之介 Ryunosuke Ohmi 44:58
- 星野誉貴 Yoshiki Hoshino 46:22
- 佐藤大気 Taiki Sato 47:08
- 加藤晟人 Akihito Kato 47:17
- 服部一輝 Kazuki Hattori 47:37
女子 / Women
- 安ヶ平萌子 Moeko Yasugahira 56:55
- 稲毛日菜子 Hinako Inage 59:19
- 滝澤空良 Sora Takizawa 59:31
- 笹川茉由 Mayu Sasagawahs 1:03:05
- 峰村かな Kana Minemura 1:06:24
- 柿本恵理 Eri Kakimoto 1:08:41
2018年スカイランナー・ジャパンシリーズ Columbia Montrail Skyrunner® Japan Series・VKシリーズ
全体のリザルトはこちらから。
男子 Men
- 宮原徹 Toru Miyahara 450ポイント
- 永里剛城 Goki Nagasato 360ポイント
- 八田康裕 Yasuhiro Hatta 259ポイント
- 藤飛翔 Tsubasa Fuji 216ポイント
- 牛田美樹 Miki Ushida 213ポイント
女子 Women
- 立石ゆう子 Yuko Tateishi 280ポイント
- 高村貴子 Takako Takamura 260ポイント
- 吉住友里 Yuri Yoshizumi 250ポイント
- 木下久美 Kumi Kinoshita 247ポイント
- 須藤吉仕子 Kishiko Suto 244ポイント