2019年 UTMB®︎ プレビュー #UTMB

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コートニー・ドウォルター Courtney Dauwaterはどんな記録を出すのか。グザビエ・テベナール Xavier Thevenardは4回目の優勝を勝ち取るのか、テベナールに挑むことになるのは誰か。

UTMB®︎ウィークのクライマックスは8月30日金曜日午後6時(日本時間土曜日午前1時)にスタートする170km 10,000mD+のUTMB®。2003年にはじまった世界最高峰のトレイルランニング・レースは今年で17回目の開催。世界中から集まる2300人の選手が参加するUTMB®︎はUltra-Trail® World Tourの第16戦、”Serie Bonus”レーベルのレースです。今年のコースは例年から大きな変更はありませんが、昨年との比較ではトリアン Trient(26km)の先のトレイルの登山口、フレジエール Flégère(49km)からシャモニーへと下りるトレイルとシャモニー市街に入るセクションで変更されています。

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2019年のUTMB®︎のコース概要図。 2019年のUTMB®︎のコース概要図。

大会期間中はインターネットのストリーミング番組「UTMB®︎TV」がリアルタイムでコース上の選手の様子をお伝えします。昨年から始まった日本語チャンネルのMCは今回も当サイトの岩佐幸一が務めます。各レースのスタートからレースの経過速報はもちろん、コース上での各選手の様子、印象的なシーンのプレイバックを日本語でご紹介するほか、途中でゲストをお迎えすることも予定しています。

ライブ配信はTDS®︎がスタートする直前、日本時間の8月28日水曜日の午前10時ごろから始まる予定です。UTMB®︎についてもスタートから上位選手のフィニッシュまで随時レースの模様を現地からの映像とともにお伝えしていく予定です。

(Photo courtesy of UTMB®︎)

グザビエは前人未到の4回目の優勝となるのか

今年4月のUTMFで日本のファンにその圧倒的な強さをみせてくれたグザビエ・テベナール Xavier Thevenard。UTMB®︎では2013年、2015年、2018年と3度優勝。さらに2010年にはCCC®︎、2014年にTDS®︎、2016年にOCCで優勝。2017年にUTMB®︎で4位となったほかは、UTMB®︎のレースには出れば優勝しているところからもUTMB®︎との相性の良さがわかります。4月に来日した際には7月のHardrock 100を予定していたので今年のUTMB®︎に出るかどうかは決めていないとのことでしたが、Hardrockは積雪のためキャンセルされたので早い時期にUTMB®︎にフォーカスし直していることでしょう。今年6月には90km du Mont-Blancで優勝しています。

アメリカの男子選手はUTMB®︎に向かないのでは、とかつては言われましたがここ数年のリザルトをみればそうは言えなくなりました。ティム・トレフソン Tim Tollefson(アメリカ)はその中でも最も優勝に近いアメリカ人選手に違いありません。2015年のCCC®︎で2位、2016年と2017年のUTMB®︎ではともに3位。昨年のUTMB®︎ではDNFとなりましたが、今年に入って4月のMIUTで3位、6月のLavaredoで優勝。

日本のトレイルランニングファンにとってはパウ・カペル Pau Capell(スペイン)といえば2018年UTMFでのディラン・ボウマンとのラスト3kmの逆転劇を思い出すことでしょう。カペルは2015年のCCC®︎で6位、2016年のTDS®︎で優勝、2017年UTMB®︎で6位、2018年CCC®︎で3位。今年も2月にTransgrancanariaで3連覇したほか、4月にPatagonia Run 100マイル、6月にMozart 100で優勝しています。今回のUTMBをリードする存在です。

以上の3人が今回の優勝候補トップ3というのが当サイトの見立てです。しかしポテンシャルをみれば優勝に手の届く選手がいます。ザック・ミラー Zach Miller(アメリカ)は2015年のCCC®︎優勝でUTMB®︎にデビュー、翌年からはUTMB®︎に出ていて2016年は6位、2017年に9位、2018年はDNF。序盤からむき出しのガッツで走る姿はスマートには見えませんがだからこそ応援したくなる存在です。昨年のUTMB®︎では早朝にラ・フーリー La Foulyにテベナールと並んで下りてきた時には、寒さに震える姿が痛々しかったですが、今年はどんな走りを見せるか。2017年のCCC®︎チャンピオンのヘイデン・ホークス Hayden Hawks(アメリカ)はトップクラスのスピードの持ち主ですが、距離が長くなると自分の走りができなくなる場面があるようです。昨年のTDS®︎ではトップを走りながらも中盤でリタイア。今年はUTMB®︎を選んだということは心に期するものがあるのかもしれません。今年のリザルトの中では6月のBroken Arrow Skyrace 52kでの優勝が印象的です。中国のチー・ミン Min Qiは中国勢の躍進を象徴するアスリート。昨年のHK100優勝、CCC®︎2位は話題になりました。今年に入ってからは中国国内のレースでの圧勝ぶりに比べると欧州のレースではふさわしい結果は出ていません。昨年のCCC®︎での経験をどう生かすかが今回の出来を分けるかもしれません。昨年のUTMB®︎で2位を勝ち取ったのは、それまで無名の存在だったロベルト・ハイナル Robert Hajnal(ルーマニア)。その後は今年の4月にMIUTで4位、6月のトレイル世界選手権・Abutresでは73位になっています。今年もサプライズがあるか。マルチン・スビレチ Marcin Świerc(ポーランド)が昨年のTDS®︎で優勝したのはサプライズというのは失礼かもしれません。2017年CCC®︎2位のスビレチは今年のUltra-Trail Australiaで優勝していて、今回170kmのUTMB®︎に初挑戦です。

さらに有力選手は次のように続きます。日本の選手では小原将寿 Masatoshi Obara、大瀬和文 Kazufumi Ose、土井陵 Takashi Doiに注目。三選手ともUTMB®︎ではトップ20に入れる実力の持ち主で、今回トップ10に入って表彰台に立てば大金星となります。このほか日本からは2013年UTMFチャンピオンの原良和 Yoshikazu Hara、2009年UTMB®︎でそれぞれ3位、6位の鏑木毅 Tsuyoshi Kaburaki横山峰弘 Minehiro Yokoyamaが出場。鏑木、横山は2012年以来のUTMB®︎でファンの注目を集めています。

  • ハビエ・ドミンゲス Javier Dominguez Ledo (スペイン):2013年UTMB®︎で3位。2019年Lavaredo Ultra-Trailで4位。
  • ジェイソン・シュラーブ Jason Schlarb (アメリカ):2014年UTMB®︎で4位。2019年Tushars Mountain Runs 100kで優勝。
  • トム・オーウェンス Tom Owens (イギリス):2017年CCC®︎で5位。2019年Eiger Ultra Trail E101で6位。
  • クリス・モッコ Chris Mocko (アメリカ):2019年Bandera 100kで2位、ウェスタンステイツで12位。
  • アレックス・ニコルス Alex Nichols (アメリカ):2017年Templiers 76kで3位、2018年HK100で2位。
  • アンドリス・ロニモイス Andris Ronimoiss (ラトビア):2018年CCC®︎で6位。2019年はMozart 100、Eiger Ultra Trail E101でそれぞれ2位。
  • ジェルマン・グランジエ Germain Grangier (フランス):2018年CCC®︎で5位。2019年90km du Mont-Blancで3位。
  • リャン・ジン Jing Liang (中国):2019年HK100で2位、UTMFで2位。
  • 小原将寿 Masatoshi Obara (日本):UTMFで2018年に9位、2019年に4位。UTMB®︎では2016年に16位。昨年のハセツネCUPで4位。
  • 大瀬和文 Kazufumi Ose (日本):2018年UTMFで6位。2014年UTMB®︎で22位、2018年TDS®︎で22位。2019年は9 Dragons Ultra 50/50、Translantau 100k、100 Miles of Istriaで優勝。
  • 土井陵 Takashi Doi (日本):2015年UTMB®︎で11位。UTMB®︎では2016年に39位、2017年に25位。UTMFでは2018年7位、2019年9位。
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さらに、次の選手の皆さんも上位に入る可能性は高いでしょう。今年のUTMB®︎への有力選手の集まり具合を昨年と比較すると次のようになります。ITRA成績指数で850点以上(UTMB®︎でトップ20位以内に入るレベル)に27人(一昨年は23人で、昨年は17人)。800点以上まで含めると71人(一昨年は60人、昨年は48人)、750点以上まで含めると126人(一昨年は118人で今年は昨年85人)。トレイルランニングの競技者層の広がりとともに選手層は確実に厚くなっています。

なおディエゴ・パゾス Diego Pazos(スイス)、イアン・シャーマン Ian Sharman(イギリス、アメリカ在住)、山田琢也 Takuya Yamada(日本)はそれぞれケガや故障のため出場を見送る模様です。

  • アレクセイ・トルチェンコ Aleksei Tolstenko (ロシア)
  • ”ジェイ” ジャンタラブーン・キアンチャイパイファナ Jantaraboon Kiangchaipaiphana (タイ)
  • ヘス・ヘルナンデス Jessed Hernandez Gispert (スペイン)
  • ダニエル・ガルシア Daniel Garcia Gomez (スペイン)
  • シルバン・コー Sylvain Court (フランス)
  • シルバン・カミュ Sylvain Camus (フランス)
  • ジョン・アイスプル Jon Aizpuru Larrañaga (スペイン)
  • ハリー・ジョーンズ Harry Jones (イギリス)
  • ロー・カンファ Canhua Luo (中国)
  • アンディ・サイモンズ Andrew Symonds (イギリス)
  • マーク・ハモンド Mark Hammond (アメリカ)
  • パトリック・ブリンジャー Patrick Bringer (フランス)
  • イオン・アスピロス Ion Azpiroz (スペイン)
  • ベノワ・コリ Benoit Cori (フランス)
  • フランコ・コレ Franco Colle (イタリア)
  • デン・ゴーミン Guomin Deng (中国)
  • セバスチャン・カミュ Sébastien Camus (フランス)
  • アンドレア・マッキ Andrea Macchi (イタリア)
  • アンドリュー・ミラー Andrew Miller (アメリカ)
  • バンサン・ビエ Vincent Viet (フランス)
  • パディ・オレアリー Paddy O’leary (アイルランド)
  • ギヨーム・ボージス Guillaume Beauxis (フランス)
  • ヤノシュ・クウォルジック Janosch Kowalczyk (ドイツ)
  • ホセ・ルチャルド José David Lutzardo Barroso (スペイン)
  • ジュリアン・ショリエ Julien Chorier (フランス)
  • トールベルガー・ジョンソン Thorbergur Jonsson (アイスランド)
  • スコット・ホーカー Scott Hawker (ニュージーランド)
  • リー・クオ Kuo Li (中国)
  • ジェラルド・フィスター Gerald Fister (オーストリア)
  • ティモシー・オルソン Timothy Olson (アメリカ)
  • サンゲ・シェルパ Sangé Sherpa (ネパール)
  • フロリアン・グラーゼル Florian Grasel (オーストリア)
  • 奥宮俊祐 Shunsuke Okunomiya (日本)
  • 小島弘道 Hiromichi Kojima (日本)
  • 木幡帝珠 Kohata Teishu (日本)
  • 田中裕康 Hiroyasu Tanaka (日本)
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コートニー・ドウォルターが強いが混戦となるかも

2019年夏の時点でコートニー・ドウォルター Courtney Dauwater(アメリカ)は世界最高の女性ウルトラトレイルランナーといって間違いないでしょう。昨年は春のUTMFで優勝したのち、ウェスタンステイツでは大会新記録で優勝。9月にはTahoe 200を男女総合2位で完走、年が明けて今年2月にTarawera 100k、4月にMIUTで優勝しています。ただ、6月のウェスタンステイツではレース中に筋肉を傷めてリタイアしています。今回のUTMB®︎ではこの故障からのリカバリーがどうなっているか気になるところです。

有力選手が次々と脱落していった昨年の女子のUTMB®︎のレースでトップ10に入った選手のうち7人が今年のレースに再びエントリーしています。昨年優勝のフランチェスカ・カネパ Francesca Canepa(イタリア)は今年のウェスタンステイツで17位。昨年2位のウシュエ・フライエ Uxue Fraile Azpeitia(スペイン)は7月のEhunmilak 91kで優勝。昨年4位のベス・パスコール Beth Pascall(イギリス)は今年のウェスタンステイツで4位に。昨年5位のカティア・フォリ Katia Fori(イタリア)はThe Abbots Way 125kで優勝。昨年6位のジュリエット・ブランシェ Juliette Blanchet(フランス)は昨年秋のレユニオン・Diagonale des Fousで2位。昨年7位のイルディコ・ベルミシャー Ildiko Wermescher(ハンガリー)はTransgrancanariaで5位。昨年10位のケイシー・リックタイ Kaci Lickteig(アメリカ)は今年のウェスタンステイツで3位に。

昨年のUTMB®︎ではDNFでしたがミンミ・コトカ Mimmi Kotka(スウェーデン)は2016年のCCC®︎、2017年のTDS®︎で優勝。ただ、昨年のUTMB®︎以後のリザルトをみるとまだその力強い走りは取り戻せていないように思えます。ヤオ・ミャオ Miao Yao(中国)は昨年のCCC®︎を男女総合11位で優勝して世界にその名をはせました。今年も中国国内でのレースでは勝利をおさめていますが、2月のTransgrancanaria、6月の90km du Mont-Blancではリタイア。初めての100マイルへの挑戦で昨年のような鮮やかな走りを見せることができるか。一方その昨年のCCC®︎でヤオに次いで2位だったケイティ・シード Katie Schide(アメリカ)。こちらは今年4月のMIUTでドウォルターに26分差で2位、6月の90km du Mont-Blancでは優勝と快調なシーズンを迎えています。

加えて、ファンにとってはUTMB®︎優勝経験者の二人に注目です。ヌリア・ピカス Núria Picas(スペイン)は2017年、ローリー・ボジオ Rory Bosio(アメリカ)は2014年にUTMB®︎で優勝。ボジオはその後も2017年のOCC(6位)、昨年のTDS®︎(2位)に出ています。

続く有力選手は次のとおり。日本からは今回UTMB®︎初挑戦の高島由佳子 Yukako Takashimaが出場。昨年9月の信越五岳100マイルチャンピオンで今年のUTMFでは6位となっています。

  • マイテ・マイオラ Maite Maiora Elizondo(スペイン):2017年CCC®︎で2位。
  • ケリー・エマーソン Kellie Emmerson (オーストラリア):2018年Ultra-Trail Australia 100kで優勝、TDS®︎で11位。
  • エカテリーナ・ミチャエワ Ekaterina Mityaeva (ロシア):2019年Transvulcaniaで4位。
  • マグダレナ・ラジャク Magdalena Laczak (ポーランド):2018年、2019年Transgrancanariaで優勝。2019年Zugspitz Ultratrail 63kで優勝。
  • シャン・フージャオ Fuzhao Xiang (中国):2019年UTMFで優勝、Livigno Skymarathonで11位。HK100では2017年4位、2018年3位、2019年2位。
  • クリスティン・ベルグルンド Kristin Berglund (スウェーデン):2019年Transvulcaniaで5位。2017年CCC®︎で11位。
  • ルチア・ビューラー Luzia Bühler (スイス):2019年Georgia Death Raceで優勝、Swissalpine Davos 85kで優勝。
  • エバマリア・スペルガー Eva-Maria Sperger (ドイツ):2019年Grossglockner Ultra-Trail 108kで優勝、Transvulcaniaで9位。
  • ジョー・ミーク Jo Meek (イギリス):2016年CCC®︎で2位、2018年UTMB®︎で19位。
  • サラ・キーズ Sarah Keyes (アメリカ):2018年Cayuga Trails 50で2位。
  • フェルナンダ・マシェール Fernanda Maciel (ブラジル):Transgrancanariaで2018年6位、2019年3位。2018年Penyagolosa CSPで優勝。2018年UTMB®︎で11位。2014年UTMB®︎で4位。
  • マリー・マクノートン Marie Mcnaughton (ニュージーランド、香港在住):2018年HK100で4位、2019年Ultra-Trail Australiaで9位。
  • 高島由佳子 Yukako Takashima(日本):2018年信越五岳100マイル優勝、2019年UTMFで6位。
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なお、昨年のUTMB®︎3位・キャト・ブラドレー Catherine Bradley(アメリカ)はエントリーしていますが出場を見送る見込み。ケイトリン・ガービン Kaytlyn Gerbin(アメリカ)、アンドレア・ヒューザー Andrea Huser(スイス)もケガなどのため出場しない模様です。

今年のUTMB®︎観戦に役立つリンク

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