5月22日土曜日、中国・甘粛省白銀市近郊で開催された100kmのトレイルランニングレース「黄河石林山地马拉松百公里越野赛」の開催中にコース上で天候が急変。深い山岳エリアで気温の急低下、ひょう、突風といった悪天候に見舞われた21人がコース上で意識がない状態で発見されました。その後、23日朝までに151人の参加選手が救助され、うち8人が軽傷を負った模様です。
(写真・2019年のUTMFで富士浅間神社を通過するリャン・ジン。Photo by DogsorCaravan)
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亡くなった21人の中には、2019年のウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)で男子2位となったリャン・ジン Liang Jing 梁晶も含まれています。
現地メディアによれば、22日朝に172人が参加して今回で4回目となるレースがスタート。午後1時ごろ、コースの20-31kmの区間は「黄河石林」(Yellow River Stone Forest)にあたり、ここで天候が急激に悪化。参加者からの緊急メッセージを受け取った大会側はレスキューチームを現地に派遣。18人の選手が救助されました。
その後、午後2時ごろに天候はさらに悪化して大会は中止、地元当局による700人の救助チームが向かったものの、その後夜間も厳しい天候が続いたため救助は難航することとなりました。
Weiboでは「この大会ではジャケットが必携装備となっていなかった」といった投稿もあり、大会のコース設定、安全対策に問題があったのではないかといった見方もあるようです。
- クロスカントリー競技、悪天候で21人死亡 中国・黄河石林(AFPBB News)
- 21 runners dead as extreme weather hits China ultramarathon(AFP)
- Twenty-one dead as extreme weather hits ultramarathon in China(The Guardian)
- 中国 甘粛省 山中100kmランニング大会で21人死亡 低体温症か(NHK)
- 马拉松越野赛已发现20人遇难,白银市长称内疚!景区已闭园(南都即时)
- 甘肃景泰一马拉松百公里越野赛已发现16人遇难(CCTV)
- 宁波江南百英里冠军梁晶参加甘肃山地马拉松不幸遇难(CNNB)
【追記】京报体育の記事より、この事故に関する情報を紹介します。
「黄河石林山地马拉松百公里越野赛」は2018年に始まった大会で今年で4回目の開催。100km、21km、5kmのレースが行われ、100kmについては18歳以上60歳未満で一年以内に50km以上のレースを完走しているといった参加資格が設けられていました。コースは全体に標高2000m前後の高地となります。100kmのレースは午前9時にスタート。9つのチェックポイントが設けられており、事故の原因となった天候の急変があったのはCP2からCP3のエリア。この間の約8kmは人里から離れた山岳エリアで、自動車でアクセス可能なのはCP2まででした。
【追記】大会参加者だという投稿者による捜狐の記事によると、この大会のコースは100kmの距離に対して累積獲得高度は3000m以内で、テクニカルなセクションの少ない走れるコース。しかし、コース全体が標高2000m前後の高所となるほか、人が住むエリアから非常に離れていること、さらに制限時間が20時間とやや厳しく設定されている点がレースを難しいものにしています。ジャケットは必携装備となっていないものの推奨装備となっていて、投稿者も62km地点のチェックポイントのドロップバッグにジャケットを入れ、夜間に備えていたとのこと。CP2からCP3の8kmは1000mD+の急な登りセクションで、CP3には補給のできないチェックポイント。休憩もできないため、選手は補給のできるCP4まで先を急ぐことになります。そこで天気の急変に襲われたため、選手は急な下りでコースを引き返すことを躊躇する人も多かった模様。
【追記】大会の競技規則によれば必携装備にはナンバーカード、タイミングチップ、電子的なルートマップ、GPSトラッカー、照明器具、水1リットル以上、エマージェンシーブランケット、ホイッスル、携帯電話が挙げられています。ウィンドブレーカー、ジャケットについては推奨装備とされていました。
【追記】中国語メディアの記事のリンクを紹介します。
- 参赛者讲救人细节:带人钻峡谷躲4小时冻雨大风 遗憾只救回1人 参加した選手による状況の振り返り
- 甘肃马拉松事故亲历者:摔倒昏迷2小时 被村民抬进窑洞死里逃生 同じく参加した選手による振り返り
- 白银“致命马拉松”中途退赛女选手:大风吹走路标,没补给点只能徒步救援 CP2でリタイアした選手の振り返り、当日は暑い1日が予想されていて選手も暑さを警戒していたこと、コースが砂利道で走りにくいこと、を説明
- 甘肃马拉松事故21人遇难 退赛选手:下山时见很多选手倒在路上 選手によるコメント、「完走者全員に1,600元の報奨金が与えられることが、選手のリタイアを妨げた」(エントリー料は1,000元)
- 白银马拉松惨剧9问:事发后救援效率如何,是否及时? 大会の運営体制などについてのコメンタリー
- 白银山地马拉松21人遇难,多部门称不清楚赛事医疗保障细节 大会の運営体制についてのコメンタリー
- 涉事公司回应马拉松事故致21人遇难:天气骤变,天气预报未显示恶劣天气 大会主催者スタッフは悪天候は「天気予報では予想されていなかった」
【追記】今回亡くなった有力選手では、上で紹介したリャン・ジンのほか、聴覚障害を持つアスリートで中国パラリンピック選手権でフルマラソン優勝のフアン・ガンジュン Huang Guanjun 黄关军やトレイルランニングレースで活躍するカオ・ペンフェイ Cao Pengfei 曹朋飞、ファン・インビン Huang Yinbin 黄印斌がいる模様です。
【追記】中国語メディアの記事(甘肃白银山地马拉松前六名中唯一幸存者:一位放羊的大叔救了我)に、今回のレースで上位6人の中で唯一、命を取り留めた張小濤のインタビューが紹介されています。スタート直前から風が強く、スタート後に山から下った時にはすでに雨風が強く、今回の事故が起きた登りを進むにつれてさらに強くなり、転倒して体のコントロールを失い、GPS端末のSOSボタンを押したのを最後に2時間40分も意識を失っていたといいます。その後、羊の放牧をしていた男性に介抱されて命を失わずに済んだという経緯を話しています。