ミドルレンジの製品に先端的な新機能を盛り込んできました。
オーディオ機器ブランド「1MORE」は完全ワイヤレスイヤホン「1MORE Aero」(ワンモア エアロ)を発売しました。片耳4.9gのコンパクトなスティック型イヤホンにヘッドトラッキングによる空間オーディオ機能、小さい音量でもダイナミックなリスニングを可能にするスマートラウドネス機能を搭載。独自技術「QuietMax」によるアクティブノイズキャンセリング機能も周囲の環境に応じてモードを自動的に切り替えるアダプティブANCへと進化しています。10月25日発売で価格は税込16,990円。発売記念セールとして、Amazon.co.jpと楽天市場の1MORE公式ストアでは11月18日までの期間限定で3,000円の割引クーポンが配布されています。
Sponsored link
|
1MOREの製品は、片耳3.7gで寝るときや近くのランニングで愛用している完全ワイヤレスイヤホン「ComfoBuds Mini」や、質感や装着感が高いワイヤレスヘッドホン「SonoFlow」をレビューしてきました。今回もメーカーの「1MORE INTERNATIONAL LIMITED」から「Aero」のサンプルをご提供いただき、1週間にわたっていろんなシーンで試してみました。
耳に収まりのいいイヤピースでストレスなく普段使いできる
スペックシートによれば「Aero」のイヤピースは片耳が4.9gでケースが45.2g、合計て55.1g。筆者が日常的に使っているAppleのAirPods Proとだいたい同じようなサイズ感です。イヤホン本体はIPX5の規格を取得した防水仕様となっています。
ケースを開けると左右のイヤピースが横に寝た状態になっています。この状態でケース本体内蔵のバッテリーから充電されています。このケース自体の充電はUSB-Cケーブルのほか、Qi規格のワイヤレス充電が可能です。バッテリーはノイズキャンセリングがオンの状態でイヤホン本体で5時間、ケースでの充電により追加で15時間の合計20時間の音楽再生が可能。このほか、高速充電によりケース内で15分の充電で3時間の音楽再生が可能です。
ケースで横になったイヤピースをつまんで取り出します。耳に入れる部分からステムが下に伸びる形状は、指でステムをつまみやすいのとイヤホンが耳介にしっかり収まる感じがして好印象。耳に入れる部分も小さめでこれも好印象。有体にいえばAppleのAirPodsやEarPodsが快適ならAeroも快適に使えそうです。このイヤピースは耳への着脱を感知するセンサーがついているので、音を聞いている途中でもイヤホンをどちらかの耳から取り外せば音楽の再生が止まります。
スマートフォンとはBluetoothで初回のペアリング後は自動で接続します。他の1MOREの製品と同じく、スマホの「1MORE MUSIC」アプリで細かい設定が可能。二つのデバイスに同時にBluetooth接続するマルチポイント接続が可能です(「1MORE MUSIC」アプリの「実験的な機能」の中にある設定を有効にする必要があります)。スマホで音楽を聴いたまま、PCでビデオ会議を始めるとPCからの音に切り替わる、という便利な機能です。
独自のノイズキャンセリング技術「QuietMax」によるアクティブノイズキャンセリングは、左右それぞれ三つの内臓マイクによって周囲のノイズを消し去るというもの。この「Aero」ではノイズキャンセリングの三つのモード(ストロング、マイルド、WNR<風切音軽減>)に加えて、周囲の環境音に合わせて自動的にモードを切り替えるアダプティブモードが使えるようになって一層便利になっています。
「10mmダイヤモンドライクカーボンドライバーユニット」から聞こえるAeroの音質の評価は筆者が使っているAirPods Proとの比較では、全体に落ち着いた感じ。よく言えば聴き疲れしない、悪く言えばキラキラした音のキレが少ない。ただ、日常的に持ち歩いて使うオールマイティなイヤホンと考えれば好ましい特徴でしょう。先日レビューした1MOREのワイヤレスヘッドホン「SonoFlow」と同じくノイズキャンセリング・オンと外音取り込み、ノイズキャンセリング・オフのそれぞれで低音の強調度合いに少し差があります。筆者としてはノイキャン・オンが一番バランスがよく感じます。
音質に関わるところでは、イコライザーでカスタム設定が可能になっています。これまでレビューした「ComfoBuds Pro」や「SonoFlow」では音楽ジャンル別のプリセットしかありませんでしたが、「Aero」では高低別で10帯域をそれぞれ±3dB以内で設定してアプリ内で保存することができます。
ここで「Aero」について筆者の気になる点を一つ。Aeroはイヤホンを耳につけた状態で2回タップすると再生・停止を切り替え、3回タップすると音声コントロール(iPhoneならSiri)を呼び出せます(呼び出す機能の設定は音量のアップ、ダウンなどに変更可能)。さらにタップした状態で保持するとノイキャン・オン、外音取り込み、ノイキャン・オフを切り替えます。このタップの認識がされないことがあったり、切り替わりに一呼吸置く感じがします。このあたりはもう少し改善を期待したいところです。どうしても気になるなら、スマホ本体で操作することになりそうです。
空間オーディオは確かに音楽への没入感を感じる
以上前置きが長くなりましたが、「Aero」の目玉となる機能は空間オーディオです。聴いている音楽の楽器や声などの音源がまるで立体的に存在しているかのように聞こえる空間オーディオは、最近アップルやソニーが対応するヘッドホンやイヤホン、デバイス、音源を展開するようになって注目されています。
1MOREの「Aero」もイヤホンに内蔵したジャイロスコープと独自のダイナミックヘッドトラッキング技術により、全ての音源を聴き手を中心とした360度の球形に配置する、としています。この結果、音楽やビデオ、ゲームをしたりするときに劇場にいるような没入感が感じられることになります。
iPhoneの「1MORE MUSIC」アプリで「空間オーディオ」をオンにして、YouTube Musicで音楽を聴いてみると、確かに普通のステレオとは違って音に急に広がりが生まれます。そして、iPhoneに対して右を向けば左耳から、左を向けば右耳から音がします。ヘッドトラッキングがしっかり効いているのがわかります。
ただ、筆者の手元のAirPods Proで聴く空間オーディオに比べると音楽を聴くときの没入感が少ないように感じます。もともと、空間オーディオというのは単にイヤホンだけで実現できるものではなく、再生する音源やデバイスとの組み合わせで実現するはずです。この辺りを自らデザインできるアップルやソニーと比べると、1MOREがイヤホンだけで空間オーディオを実現しているのはすごいことといえるでしょう。なおiPhoneで同じ曲をApple MusicのDolby Atmos対応の音源でも聴いてみましたが、Aeroの空間オーディオで聴く限りではYouTube Musicの音源とあまり変わりませんでした。
スマートラウドネスは意外と実用的で便利
「Aero」の機能の中でもう一つユニークなのが「スマートラウドネス」。音量を絞った状態でイヤホンで音楽を聴くと、元の音楽と比べて高音と低音が欠けてしまうのですが、これを補うことで元のダイナミックな聴こえ方にするというもの。この機能はデフォルトではオフになっているので「1MORE MUSIC」アプリで有効にすることで使えるようになります。
実際に音量を下げてから、スマートラウドネスを有効にしてアプリの中でスライダーを+の方向に動かすと、ドラムやベースの低音やシンバルの高音がグッと大きくなります。
ただ、これだけだと元の楽曲とのイメージが違うというか、変に低音が強調されただけのような気がして、この機能の意味がよくわかりませんでした。
しかし、その後この機能を試すうちに外出先とか何か作業をしながら音量を絞って音楽を聴くにはなかなかいい機能だと思うようになりました。コツとしては最初に音量を絞った状態にしてから、スライダーを動かしてスマートラウドネスを効かせる度合いを控えめにすると違和感なく楽しめます。
手軽でカジュアルに使えるのに尖った機能で他とは違うイヤホン
今年、1MOREからはハイレゾ音源に対応した完全ワイヤレスイヤホンのフラッグシップモデル「EVO」が登場しています。今回発売された「Aero」は「EVO」が持つハイレゾ対応やデュアルドライバーといった特徴は備えていませんが、より小さく軽くなり、外出や電車の中でも気軽に使えるカジュアルなモデルとなりました。
上でも紹介したように目玉となる新機能のうち「空間オーディオ」については、アップルやソニーのように劇的な効果ではないかもしれません。ただ音源やデバイスに頼らずイヤホンだけで実現していることを考えれば、これだけの効果があるのは驚きです。
スマートラウドネスは、腰を据えてハイレゾを楽しむといった音楽の楽しみ方とは違って、人がいる場所やちょっとした空き時間、何かの作業の途中といったちょっと小さな音で音楽を聴いて息抜きしたいというときにピッタリです。「Aero」の強み、個性がよく表れた機能だといえるでしょう。