マイク・フート Mike Foote・弾みで挑戦した100マイル、危機を乗り越えて見つけたトレイルランニングの魅力【THE NORTH FACEアスリート・インタビュー】

今年、2023年のウルトラトレイル・マウントフジ Ultra-Trail Mt. Fujiに参加する3人のTHE NORTH FACEアスリートのインタビュー・シリーズの最終回です。

トレイルランニング界の世界のトップ選手が集結した2014年のウルトラトレイル・マウントフジで3位となったマイク・フート Mike Footeが9年ぶりに来日します。ハードロック100で3度にわたって2位となるなど、100マイルのトレイル、しかも厳しいコンディションのレースで強みを発揮してきたアスリートです。インタビューではTHE NORTH FACEアスリートとしてトレイルを走るうちに生じた心境の変化、マイクが住むモンタナ州ミズーラのトレイルランニング・コミュニティについて話してくれました。

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ウルトラトレイル・マウントフジ Ultra-Trail Mt. Fujiは4月21日金曜日から23日日曜日の日程で開催されます。マイク・フートは今回は69kmの「KAI」に出場します。

THE NORTH FACEではウルトラトレイル・マウントフジの開催にあわせて「NEVER STOP _ING」キャンペーンを開催します。「Exploration(エクスプロレーション) = 探求」の素晴らしさをより多くの人々と見出し、共有しようというキャンペーンです。4月20日(木)~2023年4月23日(日)の期間内に、ULTRA-TRAIL Mt. FUJI会場内にある特設フォトスポットで撮影した写真に、ハッシュタグ「#neverstop_ing」をつけて、あなたの「NEVER STOP _ING」に纏わる想いをFacebook、Instagramのいずれかに投稿。オリジナルステッカーに加えて抽選でTHE NORTH FACEの商品のプレゼントも。詳しくはTHE NORTH FACEのウェブサイトでご覧ください。

弾みでエントリーした100マイルでウルトラランニングの魅力のとりこに

マイク・フート Mike Foote

マイク・フート Mike Foote

2011年のUTMBでアメリカ人選手としては最高位の11位となり、THE NORTH FACEアスリートとなったのは27歳の時。マイク・フートは夏はバックパッキングのガイド、冬はスキーパトロールとして働きながら、モンタナの大自然の真っ只中のキャビンで寝起きするアウトドア・ガイでした。

でも、意外にも生まれた時からアウトドアに親しんでいたわけではありません。「オハイオで野球やアメリカンフットボールをやって育ちました。高校生の時にはクロスカントリーのチームに入ったけどすぐに辞めてしまって」。

しかし2003年に数々の山に恵まれた西部に移ると、マイクは山の魅力に取り憑かれます。「ハイキングをしたり、トレイルランニングをするようになりました。あの角を曲がったら何があるか、尾根を越えたら何が見えるか、一日でいくつ山頂を踏むことができるか。一日の行動範囲を広げて多くのものを見るために走っていたけれど、その頃はトレイルランニングという言葉も知りませんでした。」と当時を振り返ります。「僕の持久力は好奇心によって養われたんでしょうね。」

やがて友達に勧められて地元のロードやトレイルのレースを走ってみると、それが意外と楽しい。それでもまだウルトラマラソンを走るには至りません。「ウルトラはクレイジーな人たちのものだと思っていたんです。」

真冬のある夜、誰かから聞いた100マイルのレースについて調べようとその大会のウェブサイトを開きます。「抽選への申し込みは今日で締め切りと書いてあるのを見て、つい申し込んでしまった。」抽選に当たって走ったのは2009年のワサッチ100。歴史あるこのレースを23時間11分、9位で完走します。「それからウルトラを走るのに夢中になったんだ。こんなの走るのはクレイジーな人たちだと思っていたけど、実際にウルトラランニングで出会ったのは、信じられないほど素晴らしい人たちだった。」

それ以来、ハードロック100、UTMB、ウルトラトレイル・マウントフジといった、長く険しい登り下りの難コースで有名な100マイルのレースで活躍して、その名前を世界に知られるようになります。マイクになぜタフなコースの100マイルに強いのか、聞いてみました。

「自分自身を省みると、難しいことに向き合うと気持ちが高ぶる傾向があると思います。加えて、挑戦している途中で止めたくないという気持ちも強い。その結果、厳しい課題やコンディションを受け入れて、ベストを尽くすことができるんだろうと思っています。」

豊富なトレイルと切磋琢磨するランニングコミュニティに恵まれたモンタナ州ミズーラ

マイクが住むモンタナ州ミズーラは多くのウルトラランニングのエリート選手を輩出しています。このインタビューシリーズにも登場したセス・スワンソンもミズーラに住んでいて、二人は旧知の仲とのこと。

「ミズーラにはたくさんのトレイルがある。標高は2000mくらいまでの山だけれど、標高差1000mの大きな登りが続くコースもある。街のどこに住んでいても、すぐに登山口から山に行けるんだ」

「でも、ミズーラを全米で有数のトレイルランニングの町にしているのはトレイルランニングのカルチャーがしっかり根付いているからだと思う。トレイルランナーがたくさんいて、お互いを高め合い、成功を讃えあうコミュニティがあるんだ。僕自身も初めの頃はミズーラの経験豊富なランナーから多くを学んだし、今は僕自身もこの町の若いランナーの良きメンターでありたい。」

マイクは毎年9月にミズーラから近いローン・ピークやその周りをコースとする「The Rut マウンテンラン」のレースディレクターを務めています。さらに10年にわたってコーチしてきた若い選手、アダム・ピーターマンが昨年のウェスタン・ステイツで優勝。ミズーラのトレイルランニングコミュニティはますます活気に満ちているといいます。

危機を乗り越えて新しいプロジェクトに挑戦するように

現在、妻と2年前に産まれた長男の三人家族で充実した生活を送るマイクですが、最近はアスリートとして苦しい経験をしました。2018年3月にスキーで登りと滑降を繰り返して24時間の累計獲得標高差の世界記録に挑戦した時のこと。準備は順調に進んでいましたが、必ず新記録を達成しなくてはならないという重圧を感じるようになります。失敗への不安から胸が締め付けられるのを感じ、不安から逃れようと暴食を繰り返してしまう。そして挑戦に成功したのちも、マイクの気持ちは晴れません。独り悩み、楽しみのはずのハードロック100のスタートが迫ったある日、SNSでマイクは摂食障害に苦しんでいてハードロックは走れない、と告白しました。その告白の投稿には多くの人たちから共感と励ましのコメントやメッセージが寄せられました。

「ストレスに負けて暴飲暴食をするようになったことを恥ずかしく思っていた。孤独で不安で、本当に辛かった。思い切って打ち明けたことで、自分は独りぼっちじゃないことを実感できた。完全に克服できたかはわからないけれど、今はずっと健康になれたし、これからもメンタルを強くする努力を続けていきたいと思う。」

メンタルの危機を経験したマイクは、アスリートとしての自らのモチベーションにも変化を感じるようになりました。「THE NORTH FACEのチームに入ったばかりの頃はレースで表彰台に立つことを目的にしていた。今もレースは気にしているけど、ここ数年は自分が大切にしている冒険のプロジェクトに取り組んでいる。THE NORTH FACEは成熟した僕の関心の変化を、好意的に受け止めて大事にしてくれる。だからこそ長い間、パートナーシップを築いてこられたんだ。」

マイクの冒険のプロジェクトはメキシコ人、メキシコにルーツを持つアメリカ人のアスリートと3人でテキサス、ニューメキシコ、アリゾナ、と国境に沿って走る「The Invisible Wall」(2019年)のほか、モンタナ州のグレーシャー国立公園を舞台としたプロジェクトのムービーもまもなく公開が予定されています。

今回のウルトラトレイル・マウントフジでマイクは69kmのレース「KAI」を走ります。マイクには距離が短すぎるのではと聞くと、今年は雪が多くて冬の間は走れるトレイルを見つけるのが大変だったから69kmはちょうどいいんだ、と答えてくれました。

「僕たちアメリカのアスリートにとって日本のレースに参加するのはワクワクする体験で、一度経験するとみんな日本のファンになる。そういえば、9年前のマウントフジは衝撃的なレベルの急な登りがあったのを思い出した。またあれが経験ができるだけでも楽しいよ。」

(協力・THE NORTH FACE)

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