【Mt. FUJI 100 2025】清宮由香里 Yukari SEIMIYA「今年は支えてくれたみんなのために走る」 大会前インタビュー

昨年、2024年のMt. FUJI 100で、初めての100マイルレースながら女子2位(23時間36分)という好タイムで衝撃的なデビューを飾ったのが清宮由香里 Yukari SEIMIYA さんです。地元・山梨県での快挙は多くのトレイルランナーに感動を与えました。その後も奥信濃50k優勝、信越五岳100マイル優勝(21時間35分)と破竹の勢いを見せましたが、昨年末からは体調を崩して思うようにトレーニングができない時期がありました。

マウントフジ100 Mt. FUJI 100 2025 プレビュー

2025.04.04

困難を乗り越え、再びMt. FUJI 100のスタートラインに立とうとしている清宮選手のインタビューをお送りします。今年のMt. FUJI 100をを目前に控え、現在の心境やレースへの思い、そして今後の目標について、お話しを聞きました。

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昨年2位の快挙と、今年直面した試練

DogsorCaravan (以下DC):昨年はFUJI100miのみならず100マイルが初挑戦という中で、女子2位という素晴らしい結果でした。タイムも23時間36分と、歴代でも屈指の記録です。今年は2回目の挑戦となりますが、現在の準備状況はいかがですか?

清宮由香里さん(以下YS): 昨年は初めての100マイルだったので、とにかく完走することが目標でした。タイムは全く意識しておらず、自然体で走った結果があのような形になりました。

今年は、昨年末くらいから貧血に悩まされていて、なかなか回復が進まない状態でした。1月、2月、3月と、ほとんどトレーニングを積めていなくて、3月の後半くらいからようやく本格的なトレーニングを再開できた状況です。正直に言うと、レース直前にできることを詰め込んだ「突貫工事」のような準備になってしまいました。

不調の原因と、走ることへの変わらぬ情熱

DC:昨秋以降、アジアパシフィック選手権や香港100など、少し苦しいレースが続いた印象です。貧血が原因とのことですが、ご自身で思い当たる理由はありますか?

YS: アジア選手権が不調の始まりだったという自覚があります。信越五岳が終わってからアジア選手権まで1ヶ月ちょっとしかなく、そこで結果を残したいという気持ちで、トレーニングを詰め込みすぎたんだと思います。普段やらないような高強度の練習を入れすぎて、疲れが出てしまったのがアジア選手権だったかなと。そこから調子が悪くなり、1月の香港では全く走れなくなってしまいました。香港が終わってからは、1~2ヶ月ほど走るのをお休みしていました。

DC:昨年注目されたことで、周囲の期待や環境の変化もあったかと思います。思うように走れない時期は精神的にも辛かったのではないでしょうか?

YS: アジア選手権で結果が出せず、ITJや香港でも途中棄権となり、うまくいかないレースが続いたので、悔しい気持ちと、どうしてうまくいかないんだろうという悩みで過ごした3、4ヶ月間でした。でも、その辛い時期を支えてくれた仲間や周りの人たちが本当にたくさんいて。そのおかげで、走ることが嫌いにはなりませんでしたし、トレーニングが好きという気持ちも変わっていません。今でも走ることはすごく楽しいですし、練習する時間も大好きです。

「今年はみんなのために」- レースへの新たなモチベーション

DC:今回は準備期間も短く、体調も万全ではない中で、レースに出場することを選ばれました。休むという選択肢もあったかと思いますが、それでも走ろうと思った決め手は何だったのでしょうか?

YS: 確かに、無理せず休むという考え方もあると思います。でも、私にとっては、このMt. FUJI 100という場で、支えてくれたチームのみんなや、一緒に走る仲間たち、応援してくれる方々と時間を共有することに大きな意味があると感じています。

昨年は「100マイラーになりたい」という自分のために走りました。でも今年は、自分のためというよりは、チームのみんな、アジア選手権で一緒に戦った仲間、いつも支えてくれる人たち、応援してくれる全ての人たちのために走りたい。みんなのために走る100マイルにしたいと思っています。結果がどうであれ、その時間を大切にしたいという思いで、スタートラインに立ちます。

コース試走で見えたもの – 過去の経験と未来へのイメージ

DC:地元ということもあり、コース試走はされましたか?

YS: はい、特に後半部分、山中湖きらら以降は去年も重点的に試走しましたが、今年もチーム100マイルの練習に参加させてもらって、2回ほど走りました。練習期間が短かったので回数は少なくなってしまいましたが、今年もコースを走って、今は良いイメージを持てています。

DC:レース本番で走るのとはまた違う感覚があるかと思いますが、試走ではどんなことを感じましたか?

YS: 練習のペースは速いので「きついな」と思いながら必死でしたが、一方で、去年のレース中に経験したことを思い出していました。私は昨年、きらら辺りから少しペースダウンしてしまったのですが、「去年はここで苦しかったな」「あの人が応援してくれていたな」「こんなことを考えながら走っていたな」とか、色々なことを思い出して、少し感慨深い気持ちになりました。今年はどんな状況になっても平常心でいられるように、本番をイメージしながら、自分と向き合って準備ができたと思います。

1年で芽生えた「世界で戦いたい」という思い

DC:この1年で、清宮さんは日本のトレイルランニング界で広く知られる存在になりました。ご自身の走ることへの向き合い方や意識に変化はありましたか?

YS: 昨年はトレイルランニングを始めてまだ1、2年という段階で、何も知らない状態でした。本当にただ「100マイラーになりたい」という気持ちだけでした。でも、この1年で色々な大会に出させていただき、アジア選手権で日本代表に選んでいただいたり、香港100に出場したりと、海外レースも経験する中で、日本だけでなく、世界に出て活躍したいという気持ちが芽生えてきました。もっと上のレベルで戦いたい、と思うようになったのが、去年と大きく違うところです。

今年のFUJI100miで目指す3つのこと

DC:世界を見据える中で、今回のFUJI100miはどのような位置づけになりますか? 目標があれば教えてください。

YS: 今回、結果がどうなるかは本当にやってみないと分かりません。でも、良かったとしても悪かったとしても、次につながるレースにしたいと思っています。

目標は3つあります。一つ目は、何があっても絶対に「やめないこと」。二つ目は、よく「楽しそうに走っている」と言っていただくのですが、その「楽しむ姿勢」を絶対に忘れないこと。そして三つ目は、今の自分がこれだけできたら良いと思える、「自分が満足するレース」をすることです。去年の、ある意味「怖いもの知らず」で自由に走った自分とは、少し違う気持ちで臨みます。

目指すはUTMB – 世界への挑戦と100マイルへのこだわり

DC:世界で活躍したいというお話がありましたが、具体的に挑戦したいレースや目標はありますか? また、得意な距離やカテゴリーなどはありますか?

YS: 具体的に「これに出ます」と計画しているレースはまだありませんが、目指すところとしては、やはりUTMBかなと思っています。それがまず一つ目の目標です。

出てみたい海外レースはたくさんあって、オーストラリアのレースや、ワールドトレイルメジャーズのケープタウン(南アフリカ)、アメリカのレースにも行ってみたいです。私は「楽しそうだな」という印象でレースを決めるタイプなのですが、目標に向かって計画的に進むことも大切だと感じています。

専門としてやっていきたいのは、ブレずに100マイルです。できれば走れるコースの方が得意かなとは思いますが、色々な分野に挑戦したい気持ちもあります。世界選手権のような80kmくらいの距離も、早く走れるようになれたらいいなと思っています。

清宮由香里を惹きつける100マイルの魅力とは

DC:学生時代は陸上競技でトップレベルを目指しながらも挫折を経験されたと伺いました。スピードが求められる陸上競技とは異なる、100マイルという長い距離のレースに、なぜそれほど惹かれるのでしょうか?

YS: 100マイルの魅力は、まず「日常ではできない体験ができる」ことです。夜通し走って朝を迎える瞬間が、私は一番好きです。次に、「自分の限界を超えたその先が見れる」というか、まだ自分が知らない自分に出会えること。そしてもう一つは、「経験したことのない、見たことのない世界が見れる」こと。それがロングレースの魅力だと思って走っています。

昨年走ったMt. FUJI 100と信越五岳でも、それぞれ違う景色が見えましたし、たぶん今年のMt. FUJI 100を走っても、また違った景色が見れるはずです。スタートしてみないと結果はどうなるか分からないワクワク感や、レースが進んでみないと最後までどうなるか分からないところも、長い距離の魅力だと思います。

DC:ありがとうございました。不調という試練を経て、新たな決意でスタートラインに立つ清宮さんの走りを楽しみにしています。

YS: ありがとうございます。頑張ります!

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