2025年のGTWS(ゴールデン・トレイル・ワールドシリーズ)の第3戦「イル・ゴルフォ・デッリーゾラ・トレイル Il Golfo dell’Isola Trail」が5月17日土曜日にイタリアの海岸沿いの町、ノーリ Noliで開催されました。地中海沿岸のテクニカルながらも景観が美しい26km(累積標高1,400mD+)のコースで激しいレースが繰り広げられ、女子はマダリナ・フロレア Madalina Florea (ROU)が、男子はフィレモン・キリアゴ Philemon Kiriago (KEN)が優勝。両選手は今大会の結果、GTWSのシリーズランキング首位に立ちました。
(写真 Il Golfo dell’Isola Trailで二度目の勝利となったマダリナ・フロレア Madalina Florea © GTWS/Rising.Story/JustinGalant)
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フロレアが2023年に続いてノーリで勝利、熾烈な戦いを制して総合首位へ
女子のレースは午前11時30分にスタート。序盤から有力選手たちが集団で激しくプッシュする展開となりました。ケニアのフィラリーズ・ジェルト・キサン Philaries Jeruto Kisang (KEN)とヴァレンタイン・ジェプコエチ・ルト Valentine Jepkoech Rutto (KEN) が序盤をリードし、この日のレースのペースを決めるかに見えましたが、この日のコース上で最もテクニカルなセクションであるヴェッタ・カポ Vetta Capoへの登りで、マダリナ・フロレア Madalina Florea (ROU)がケニア勢の間に割って入りました。
14.5km地点まではケニア勢の2選手との間の駆け引きが続きましたが、二度目のエイドステーションを通過すると、フロレアは一気にギアを上げ、力強い走りで両選手を追い抜きます。最終盤にはキサンが再び差を詰めるスリリングな展開となりましたが、フロレアの鮮やかな下りのスキルと持久力が勝り、2時間22分29秒のタイムでトップでフィニッシュ。フロレア Madalina Florea (ROU) は2023年にこの地で行われたGTWSファイナルに続く優勝となり、シーズン3戦目でシリーズ総合首位に躍り出ました。
2位には2時間22分56秒でキサン Philaries Jeruto Kisang (KEN)、3位には2時間25分33秒でルト Valentine Jepkoech Rutto (KEN)が入りました。ローザ・ララ・フェリウ Rosa Lara Feliu (ESP)が素晴らしい追い上げを見せて4位、ミリアム・チェプキルイ Miriam Chepkirui (KEN)が5位に続きました。
優勝したフロレアはフィニッシュ後、「家族、パートナー、そしてルーマニアで応援してくれる全ての人に感謝します。レースはコントロールしていましたが、何かしっくりこない感じがありました。良い日もあればそうでない日もあります。エネルギーはありましたが、何かが気になっていました。胃の調子が悪かったのですが、最後まで持ちこたえることができました。2023年のファイナル以来、GTWSで再び優勝するのを待っていました」と喜びを語りました。
一方、激しい優勝争いを演じたキサンは、「マダリナとはレース中ずっと戦っていました。結果は2位でしたが満足しています。最後の登りで苦戦し、歩かなければなりませんでした。マダリナとの戦いは本当に厳しかったです」とレースを振り返りました。
3位のルトは「レースは非常にハードで複雑でした。特に岩場の登りは、ミスをしたり滑ったりすると転倒する可能性がありました。最初の数ループは私がリードしていましたが、このペースを維持すると完走できないと思い、ペースを落として自分の順位を受け入れることにしました。これからケニア Kenyaに戻って世界選手権に向けてトレーニングし、その後シエール・ジナール Sierre-Zinalに戻ってきます」とコメントしました。
髙村貴子 Takako Takamura は2:39でフィニッシュし、12位でした。
キリアゴが圧巻の走りで逆転優勝、総合リーダーに
男子は、ケニアのフィレモン・キリアゴ Philemon Kiriago (KEN)、ポール・マチョカ Paul Machoka (KEN)、マイケル・セレロ・サオリ Michael Selelo Saoli (KEN)の3選手が序盤から猛烈なペースでレースを引っ張り、エルハウジン・エラザウィ Elhousine Elazzaoui (MAR)とレミ・ボネ Rémi Bonnet (SUI)が僅差で追う展開で始まりました。序盤に積極的に動いていたボネは、レース後半に徐々に順位を落とし、テクニカルでタフな地形に苦んだ結果、この日はトップ10圏外でのフィニッシュとなりました。
14.5km地点までに、キリアゴとエラザウィが先頭集団から抜け出しました。その後、エラザウィが一時的にリードを奪いましたが、最終盤の下りでトラブルに見舞われて数秒間コース上で立ち止まります。このチャンスを逃さなかったキリアゴ Philemon Kiriago (KEN)が2時間1分47秒でフィニッシュラインを駆け抜け、勝利を勝ち取りました。エラザウィ Elhousine Elazzaoui (MAR)は2位をキープしてフィニッシュ、マチョカ Paul Machoka (KEN)は安定した力強い走りを維持し、3位で表彰台に立ちました。
優勝したキリアゴは、「今日は僕にとって素晴らしい日でした。ライバルたちは手強かったですし、常に勝てると信じていたわけではありませんでした」と語りました。
2位のエラザウィは、「下りで数秒間止まらなければなりませんでした。フィレモン(・キリアゴ)が力強く迫ってきて、私を追い抜きました。彼を祝福します」とアクシデントを認めました。
シリーズ初参戦で3位に入ったポール・マチョカは、「初めてのGTWSのレースで表彰台に立てて、本当に嬉しいです。下りは非常に厳しかったですが、全力を尽くしました」と笑顔でインタビューに応えました。
近江竜之介 Rynosuke Omi は2:20でレースを終え33位でした。
リザルト
全体のリザルトはこちら。
女子トップ10
- マダリナ・フロレア Madalina Florea (ROU – Scott Running) – 2:22:29
- フィラリーズ・ジェルト・キサン Philaries Jeruto Kisang (KEN – Run2gether On Trail) – 2:22:56
- ヴァレンタイン・ジェプコエチ・ルト Valentine Jepkoech Rutto (KEN – Atletica Saluzzo) – 2:25:33
- ローザ・ララ・フェリウ Rosa Lara Feliu (ESP – Compressport) – 2:27:48
- ヴィヴィアン・ボンツィ Vivien Bonzi (ITA – Brooks Trailrunners) – 2:31:25
- アリーチェ・ガッジ Alice Gaggi (ITA – Brooks Trailrunners) – 2:32:17
- マリー・ニヴェ Marie Nivet (FRA – Nike Trail) – 2:33:14
- ミリアム・チェプキルイ Miriam Chepkirui (KEN) – 2:35:36
- シルヴィア・シュヴァイガー Silvia Schwaiger (SVK – Salomon Running Team) – 2:36:47
- セリーヌ・アエビ Céline Aebi (SUI – LV Langenthal) – 2:37:24
男子トップ10
- フィレモン・キリアゴ Philemon Kiriago (KEN – Run2gether On Trail) – 2:01:47
- エルハウジン・エラザウィ Elhousine Elazzaoui (MAR – NNormal) – 2:02:06
- ポール・マチョカ Paul Machoka (KEN – Atletica Saluzzo) – 2:02:44
- チェザーレ・マエストリ Cesare Maestri (ITA – Nike Trail) – 2:03:10
- マイケル・セレロ・サオリ Michael Selelo Saoli (KEN – Run2gether On Trail) – 2:03:11
- リチャード・オマヤ Richard Omaya (KEN – Run2gether On Trail) – 2:03:16
- ロリ・ドミニク Rolli Dominik (SUI) – 2:03:40
- ロベルト・デロレンツィ Roberto Delorenzi (SUI – Brooks Trailrunners) – 2:06:52
- ヤン・トレジャ Jan Torella (ESP – Salomon Future International Team) – 2:07:13
- ピエール・ガルブルダン Pierre Galbourdin (FRA – Brooks Trailrunners) – 2:08:31
ライブ中継は放送パートナーのチャンネルでの配信へ、YouTubeでは時間をおいて視聴可能に
GTWSではシリーズの各レースの迫力あふれるライブ中継が魅力の一つですが、今年のシーズン開幕前にサロモンとWBD Sportsの間で結ばれたパートナーシップにより、ライブ中継やオンデマンド配信が欧州や北米、アフリカの放送プラットフォームにより行われることがアナウンスされていました。
このことを反映して、今回のシリーズ第3戦はこれまでのYouTubeでのライブ配信は行われませんでした。YouTubeでは大会開催から二日後の5月19日にライブ中継の録画がプレミア配信(日本時間では18時30分から)で視聴可能となります。
今後、GTWSの全レースが今回の第3戦と同様の配信スタイルとなるのか、あるいは放送プラットフォームがまだカバーしていないエリアでのレースでは違う形の配信となるのか、注目されるところです。
次戦はトレイルランニングの聖地、ゼガマへ
フィレモン・キリアゴとマダリナ・フロレアが総合ランキング首位に立った今シーズンのGTWSの次戦、第4戦はシーズン中で最も注目されるレースの一つであるゼガマ=アイスコリ Zegama-Aizkorriへと舞台を移します。5月25日にバスク地方の中心で開催されるこの象徴的なマウンテンマラソンは、42km、累積標高2,700m以上のコースで、再びテクニカルで激しいレースが繰り広げられ、伝説的な観客の熱狂によってさらに盛り上がります。
GTWS 2025 カレンダー
2025年のGTWS(ゴールデン・トレイル・ワールドシリーズ)を構成する9つのレースは以下の通りです。
- 4月19日 – 神戸トレイル Kobe Trail – 21.3 km / 2,109 m D+ – 神戸, 日本
- 4月26日 – 金山嶺長城トレイルレース Jinshanling Great Wall Trail Race – 24.2 km / 1,800 m D+ – 承徳 Chengde, 河北省 Hebei, 中国 China
- 5月17日 – イル・ゴルフォ・デッリーゾラ・トレイル Il Golfo dell’Isola Trail – 26 km / 1,400 m D+ – ノリ Noli, イタリア Italia
- 5月25日 – ゼガマ=アイスコリ Zegama-Aizkorri – 42 km / 2,736 m D+ – ゼガマ Zegama, スペイン Spain
- 6月22日 – ブロークン・アロー・スカイレース Broken Arrow Skyrace – 21.7 km / 1,433 m D+ – オリンピック・バレー Olympic Valley, アメリカ USA
- 6月29日 – テペック・トレイル Tepec Trail – 32 km / 1,800 m D+ – ワスカ・デ・オカンポ Huasca de Ocampo, メキシコ Mexico
- 8月2日 – サロモン・ピッツ・アルパイン・グレイシャー・トレイル Salomon Pitz Alpine Glacier Trail – 23.5 km / 1,700 m D+ – ピッツタール Pitztal, オーストリア Austria
- 8月9日 – シエール・ジナール Sierre-Zinal – 31 km / 2,200 m D+ – シエール Sierre, スイス Switzerland
- 10月 – グランドファイナル Grand Final – ヴァッレ・ディ・レドロ Valle di Ledro, ガルダ・トレンティーノ Garda Trentino















