[DC] プレビュー トルデジアン/Tor des Geants が今週末8日スタート 4000m峰四座を眺めながらの330kmの旅 #tor13

日本では八ヶ岳スーパートレイル100マイルレースが開催される今週末、モンブランからみて南のイタリア側、ヴァッレ・ダオスタ自治州を舞台に330km、24,000mD+、制限時間150時間のトルデジアン/Tor des Geants(以下、TdG)がスタートします。

この記事ではTdGの概要と有力選手について紹介します。

Sponsored link


トルデジアン/Tor des Geantsの概要

TdGが行われるのはモンブランの南側、イタリアのヴァッレ・ダオスタ自治州。スタート地点のクールマイユール/Courmayeurから反時計回りにヴァッレ・ダオスタ自治州の山々をぐるりと一周するルートで行われます。同州のトレッキングルートであるAlta Via 1とAlta Via 2をつなぐコースの総距離は距離は336km、累積獲得高度は24,000mD+。標高1200mのCourmayeurから最高で標高3296m(Col Loson、90km地点)を超える山や谷をいくつも越えていきます。コースからはモンブラン(4810m)、グラン・パラディーゾ(4061m)、モンテローザ(4634m)、マッターホルン(4478m)と4000m級の名峰四座を臨みながら進みます。

途中のエイドステーションは実に48カ所。うち、5カ所はドリンクのみの簡易エイド、約50キロおきに置かれる6つの「ライフベース(Base Vita)」と呼ばれる大型のエイドでは食事などのほか、シャワーを浴びたり簡易ベッドで眠ることもできます。

TDG-OVERVIEW

TdGの コース概要図。左上のCourmayeurをスタートし、反時計回りでヴァッレ・ダオスタ自治州を一周する。tdg2011.blogspot.itより。

このレースのスタートは9月8日(日)の午前10時(日本時間同日午後5時)。制限時間は150時間で途中でフィニッシュとして再度スタートするステージレース形式ではなく、全部でひとつながりのレースとなります。今回で4回目となるこのレースのコースレコードは昨年、オスカー・ペレス/Oscar Perez(スペイン)が出した75時間56分31秒。3日に渡って一睡もしなかったといいます。オスカー・ペレスがフィニッシュしたのは水曜日の午後1時56分(日本時間同日午後8時56分)。一方制限時間となる150時間後は9月14日(土)の午後4時(日本時間同日午後11時)。丸々一週間にわたるという破格のレースです。八ヶ岳スーパートレイルが終わってから、信越五岳トレイルランニングレースが開催される15日日曜日の前夜まで続きます。

参加するランナーと注目の選手

今年のTdGには740人を超えるランナーが参加予定。地元イタリアから379人のほか、フランスから129人、スペインから41人、ドイツから17人、イギリスから17人、スイスから13人、アメリカから11人。日本からは24人のランナーが参加します。

そうした中、このイベントをレースとしてみた場合には、回を重ねるごとに有力なランナーが顔を揃えるようになってきたことがわかります。

男子では昨年優勝のOscar Perez Lopez。スペインの40歳で昨年のAndorra Ultra Trail/Ronda dels Cims(170km)で優勝。今年に入ってからも欧州の100km超のトレイルレースで何度も優勝しており、Andorra Ultra Trailの118kmのUltra miticでは2位。今年もTdGをリードする存在となりそう。そして今年はスペインの39歳、Iker Karrera(Salomon)が参戦。2011年のUTMBで終盤までKilian、Sebastien Chaigneauと一緒に後続を大きくリードして2位でフィニッシュしたことで有名ですが、その後も2012年のTransvulcania(5月)で5位となったほかは、同年6月のLavaredo Ultra Trail(118km)など出場するレースでいずれも優勝。直近ではスイスで7月20日に開催されたEiger Ultra Trail(101km)で優勝。このレースで5位となったOscarを破っています。この夏。Ikerはコース全体を試走しており、TdGにかけた意気込みが伝わります。

さらに昨年2位のフランスの51歳・Gregoire Millet、先ほど行われたばかりのTDSで優勝したスペインの39歳・Arnaud Julia Bonmatiも参加。2009年TDS優勝で2011年UTMB6位のPatrick Bohard(フランス・49歳)も注目。

2013 08 28 22 10 47

先週のTDSで優勝したArnaud Julia Bonmati。Photo by Koichi Iwasa/DogsorCaravan.com

また、今年のUTMFに来日していたChristophe Le Saux(フランス・Hoka One One・41歳)、Lionel Trivel(LaFuma)も参戦。ChristopheはUTMFで13位、その前の4月に行われたサハラマラソン(MdS)で9位。TdGでは昨年2012年3位、2011年2位と上位の常連です。Lionelは5月のUTMFで10位となってからはレースを控えてTdGに備えている模様。ちなみにLionelはTDSで2011年、2012年に2位。

そして今年のTdGの話題の一つは、今年約10年振りにトレイルレース、マウンテンレースに復帰した伝説のランナー・Bruno Brunodの参加。1996年と1998年のSkyrunning World Championshipの優勝者であり、モンテローザ、アコンカグア、キリマンジャロなどの最速登頂記録(FKT)を打ち立てた当時最強のランナーです。彼が1995年に作ったマッターホルンのイタリア側ルートの最速登頂記録(3時間14分)を、今月、キリアン/Kilian Jornetが更新した(2時間52分2秒)ことでも話題になりました。キリアンにとって憧れの存在であったことが一昨年の Kilian’s Questのストーリーでも紹介されました。

これも読む
DC Weekly 2023年8月7日 富士登山駅伝、野沢トレイルフェス、ユース・スカイランニング世界選手権、KAT 100 by UTMB、Fjällmaraton

そして、日本からはShogo Mochizuki/望月将悟さん(La Sportiva)が参戦。2011年のTdGで男子12位、100時間2分でフィニッシュした望月さん。国際的なレースでは2012年のUTMFで4位。2010年、2012年のトランスジャパン・アルプス・レース(TJAR)を連覇していることでも有名です。昨年2012年のTdGではリタイア、今年2013年のUTMFでも故障でリタイアしていますが、今回のTdGではどんな活躍がみられるか。2011年の時のようにTJARが行われない年だけに同じような活躍がみられるかもしれません。

女子では昨年優勝で地元・ヴァッレ・ダオスタ在住のFrancesca Canepa(イタリア、42歳)が今年も参戦。昨年2012年は100kmに短縮されたUTMBで2位となった翌週にTdGで優勝という離れ業でファンを驚かせた彼女。今年に入ってからも有力選手が集まった今年6月のAndorra Ultra Trail/Ronda dels Cims(170km)、7月のEiger Ultra Trail(101km)で優勝。Eigerの翌週にはアメリカにわたり、Speedgoat 50kに参戦(10位)。ただ今回は先週末に行われたUTMBをリタイア。その理由によっては今回のTdGでは苦戦するかもしれません。

そして日本からはHiroko Suzuki/鈴木博子さん(Salomon)が今年も参戦します。UTMFで2012年に2位、今年2013年に5位でTdGでも昨年2012年は4位と活躍。今年もUTMFの後に5月のThe North Face 100 Australia(100k)で9位、6月にAndorra Ultra Trail/Ronda dels Cims(170km)で6位と海外レースで活躍。今回のTdGでも上位入りが期待されます。

トルデジアン/Tor des Geantsの他サイトでの関連記事、情報など

そして当サイト・岩佐も

さて、当サイトの中の人、岩佐もこのTdGに参加します。昨年のTdGのレース中や東京での日本からの参加者の皆さんの報告会をみているうちにこのイベントの盛り上がりに巻き込まれ、抽選があると聞いてならば試しに、と応募したら当選。その後も果たして自分がこんなビッグイベントに参加していいものか、完走できるのかと半信半疑だったものの、UTMB取材に行く今回がやはり最高のチャンス、と自分を言い聞かせて参加する次第です。

TdGは上記のように、当方がこれまで経験したUTMBやUTMF、あるいはWestern Statesのような100マイルレースとは形式こそ似ても、全く異なるゲーム。最大の違いは一日ではどうやっても完走できない距離と時間なので、途中のライフベースで落ち着いて休憩や睡眠、食事をとりながら進むことを前提に考えなければならない点。

トップ選手はともかく当方にとっては、これは「330kmのトレイルランニングレース」ではなく、「途中で最低5泊する早足ハイキングイベント」と考えたい。いや、そう考えなければとても最後までたどり着けそうにない。考え方としては、途中の6カ所にあるライフベースでいずれも休息、睡眠をとる。その間の約50kmを朝から夕方までの行動で一区切りにしてしまうと、制限時間に間に合わなくなりそうなので、行動時間10-12時間+ライフベース滞在時間8時間を自分にとっての「一日」のサイクルにして、早朝や深夜の行動もいとわないようにする、というもの。装備としては基本的にはUTMBと同様だが、より高所が多いので、防寒対策は強化。

いろいろ考えてはみたが、6日にもわたる野外でのイベントで、一泊ごとにシャワーが浴びられてベッドで寝られるとはとても贅沢なイベント。その間に必要な着替えやタオルなどの生活道具はバッグに入れて次のライフベースに運んでもらえて、ライフベースにはコンセントがあって充電もできる(これ重要)というのだから、これほど贅沢なことはない。

さて、どうなることやら。可能であればライフベースから当方の状況の速報をお伝えするつもりです。

この記事が気に入ったらDogsorCaravanをBuy Me a Coffeeで直接サポートできます!

Buy Me a Coffee

Sponsored link