日本から参加した二人がフランスの歴史あるトレイルランニングレースで大活躍をみせました。5月4日(日)にフランス・ヴォグラン(Voglans)で開催された51kのトレイルランニングレース、ニボレ・リバード/Nivolet-RevardでYoshihito Kondo/近藤敬仁(La Sportiva)が日本の姉妹大会である神流マウンテンラン&ウォークからの招待選手として初優勝。女子のYumiko Ohishi/大石由美子(La Sportiva)も2位に入る快挙をみせました。
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- 当サイトによるニボレ・リバード/Nivolet-Revardの紹介記事はこちら。
- 当サイトのレース当日を中心にした写真集・2014 Nivolet Revard Race Day – a set on Flickr
- [DC] Yoshihito Kondo / 近藤敬仁 2014 ニボレ・リバード/Nivolet Revard 優勝インタビュー | DogsorCaravan.com
- [DC] Yumiko Ohishi / 大石由美子 2014 ニボレ・リバード/Nivolet Revard レース後インタビュー | DogsorCaravan.com
今年で12回目となる51kのニボレ・リバードは4日日曜日の午前8時(日本時間同日午後3時)にスタート。「新しいシーズンに向けて気持ちを切り替えて、いいコンディション作りができた」とレース前に話していた近藤敬仁は序盤は周囲の様子をみるように先頭集団の中で走ります。市街地を抜けるMery/5.0km、Mentens/11kmでもAurelien Pallaz、Alexandre Daumと前後しながら進みます。
一方、女子は2013年IAUトレイル世界選手権/75kmで6位のStephanie Ducが前評判通りにレースをリード。大石由美子は数分の差で続きます。
異変は長い登りを終えて高原上の起伏のあるトレイルに入るRevard/20.5kmのチェックポイント付近で起こります。近藤、Pallaz、Daumの順で互いに先行するランナーの背中を捉えていたところから、わずか数百メートル先のピークではトップでDaumが通過した後、近藤、Pallazの姿はみえず。さらにその先数キロ先では近藤がトップ、+5分でPallaz、さらに+2分でDaum。近藤、Pallazがそれぞれ少しずつコースをショートカットしてしまった模様。
先行するランナーの姿がみえなくなった近藤は「フィニッシュするまで2人の選手に差をつけられて3位を走っていると思っていた」といい、温存していた脚を使って徐々に加速。高原から下りてきたCol de la Doria/34.5kmではPallazに7分のリード。エイドステーションのあるPragondran/41kmでも7分のリードを保ったのち、残り10kmの下りを38分という快走で2位のAurelien Pallazに17分の大差を付けてフィニッシュ。
フィニッシュ後、各選手が落ち着いたのちに大会主催者による選手へのコースのショートカットについての聴き取りが行われ、近藤に15分、Pallazに10分をフィニッシュタイムに加算するペナルティが加えることが決まりました。結果、順位は変わらずに近藤敬仁が優勝、+2分でPallazが2位となり、わずか7秒差で3位にYannick Pierratが続きました。
女子はStephanie Ducが優勝、2位には大石由美子。トップから23分、3位にも23分のリードという健闘をみせました。
11月の姉妹大会である神流マウンテンラン&ウォークへの招待権は男子2位のAurelien Pallaz、女子優勝のStephanie Ducの両選手が手にしました。
トレイルランニング大国・フランスで優勝した近藤の快挙。タフな登り下りに挟まれた美しい高原のトレイル、足下は雪やぬかるみも。
ふもとの町をスタートして、一気に標高差で800m近くを登り、比較的小さなアップダウンを繰り返した後に一気にふもとの町へと駆け下りる。レースの概要は姉妹大会である神流マウンテンラン&ウォークとよく似ています。街から少し離れただけなのに深い山の中にいる感覚がするのも共通している気がします。 ただ、ニボレ・リバードの高原上のトレイルは牧草地やスキー場のような開けた空間が随所に広がります。開放的な雰囲気がある一方、ふもとは晴れでも1500m付近の高原ではしっとりと濃い霧が付近を覆ったこの日は吹きつける風が体温を奪い、ルート上のコースマークが見つけづらくなります。さらに春が訪れたばかりのトレイルでは美しい樹氷に目を奪われる一方、コースには雪とぬかるみが多く、多くのランナーが尻もちをつきながら進みました。
こうした中で日本から招待選手として参加した近藤敬仁さん、大石由美子さんの活躍は大会会場でもひときわ注目を集めました。特に近藤敬仁さんは、世界で最もトレイルランニングが盛んな国の一つであるフランスの大会で、後半に一気に加速する華麗なレース展開で優勝。日本人によるフランスでの優勝は山本健一さん(2012年Grand Raid Pyrenees)以来の快挙です。この大会での日本からの招待選手の優勝は大会創設者で昨年6月に不慮の事故で亡くなられたベルナール・ドンゼルさんの悲願だったとことで、夫人のマリー・フランソワ・ドンゼルさんが目に涙を浮かべながら優勝した近藤さんの手を取っていたのが印象に残りました。
このニボレ・リバードは大会としては51kの部に500人弱、27kmの部と新設の13kの部をあわせて約1500人が参加しました。フランスのトレイルランニングの大会というと、当方にはウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)のような大規模な大会のイメージが強いですが、このニボレ・リバードはずっとローカルでアットホームな雰囲気。レース当日に受付が行われて、レース後には会場で皆で振舞われるランチを摂る様子はアメリカのトレイルランニングレースによく似ていると感じました。
今回は上位を走る選手がコースをロストしてショートカットするという出来事がありました。フィニッシュ地点でショートカットしたことを知った近藤さんが恐縮することしきりだったのに対して、会場は穏やかな雰囲気のまま続いてフィニッシュした選手たちが互いの健闘を讃えあう姿も印象に残りました。当方が関係者に聞いたところでは、少しコースを間違えたからといって即失格ということはなく、事情に応じてペナルティを加えるだけという考え方が定着しているとのこと。こうした合理的な考え方と対応にもトレイルランニング大国・フランスの懐の深さをみた気がしました。
参考
- 大会の公式リザルト(51kの部)
- 仏・Trails Endurance誌の結果紹介記事・Nivolet–Revard 2014, Y. Kondo et S. Duc vainqueur de cette 12e édition –
謝辞
今回のニボレ・リバードの取材に当たっては、マリー・フランソワ・ドンゼル様はじめ大会主催者の皆様、シャンベリー日仏友好協会のグジョー英子様、近藤、大石の両選手、RUN+TRAIL鈴木様、仏Trails Endurance誌のご協力を得ました。ありがとうございました。