[DC] 原良和 / Yoshikazu Hara 2015年サロマ湖100kmウルトラマラソン レポート〜最終盤で逆転優勝〜

Yoshikazu-Hara-2015-Saroma100k

【編者より・ / Yoshikazu Haraさんは2013年のUTMFでの優勝や、昨年の信越五岳で優勝し、大会記録を大幅に更新したことでトレイルランナーの間でも有名な存在ですが、ロードのウルトラマラソンでも昨年12月に24時間走で歴代世界2位を達成するなど世界的に活躍しています。その原さんが先週末の6月28日に開催されたサロマ湖100kmウルトラマラソンで優勝。しかも、中盤でトップから7分の7–8位から残り5キロでトップに躍り出てそのまま優勝という鮮やかなレースでした。原さんから今年のサロマ湖を振り返るレポートを寄稿していただきました。なお、今年のサロマ湖では海外のトレイルランニングレースで活躍する永田務 / さんが最後に原さんに交わされて2位となっています。】

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最後の30キロからの鮮やかな逆転、トップを捉えたのは95キロ地点

6月28日に100km世界選手権の選考会も兼ねたレースを走ってきました。

実はウエスタンステイツ、UTMBにもエントリーしており、4月のIAU24時間走世界選手権で結果を出していれば、サロマを走っていない可能性もありました。ただ、全く結果を出せず、また世界大会でリベンジしたいという思いが大きくなりました。あと、一番の問題が4才と0才の子供を含めた家族の渡航でした。費用は勿論のこと、妻も子供連れだと私のサポートどころではなくなってしまいます。4月中旬にサロマを走る決心をしました。

サロマにしては珍しい寒い気候の曇り空、やや東よりの風はありましたが中盤以降は気になりませんでした。定刻の午前5時にスタート。

体調は良く、練習も予定通りこなせていましたが、50km地点で3時間15分を大きく切る上位集団のハイペースは無理だと判っていたので、先頭の15人程度の集団には敢えてつかずに10km40分の集団に入りました。その集団も三里番屋の折り返しあたりでペースアップ、10km39分くらいになりました。例年のサロマではスタートから3時間を過ぎると暑さを感じますが今年は曇り空で、太陽も顔を出しそうで出さないといった具合。丁度走りやすいコンディションが続きました。

サロマは3ヶ所にスペシャルドリンクを置くことができます。30km、63.5km、80km。
最初は30km関門の先にあります。大集団で通過すると取れないことがありますので、集団の前に出たり、係りの人にゼッケンが見えやすい位置を心がけます。幸い、見やすい位置にドリンクを置いていただき、無事にゲット。ジェルを3個補給します。

42.195kmの通過が2時間45分で、先頭とは7分もあると聞いて厳しいレースを覚悟しました。異例に走りやすい気候なので暑さで上位が崩れることは期待できません。とにかく自分のベストを尽くすことに集中しようと思いました。

コースは45km地点あたりから小刻みなアップダウンが続きます。ここは自分が気持ちのいいペースをキープします。ハイペースに耐えられず落ちてこられる方を一人ずつパスして徐々に順位を上げます。50km通過は3時間15分12秒、想定が3時間14分~15分だったのでほっとひと安心しました。

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53km付近を走る原良和さん。 courtesy of Tomoko Hara

54.5km地点には手荷物を預けることができますが、荷物のやり取りでタイムロスがでるので何も預けていません。そのままスルーします。しばらく、前年4位の高田由基選手と話しながら並走しました。彼とは色んな大会で並走しています。

60kmのスペシャルもジェルを3個ゲットしてキロ4分前後をキープして走っていると、なんと森の中で前年優勝の能城秀雄選手をパスします。なにかトラブルがあったのか心配しましたが、声をかけることができませんでした。妻には上位の様子を教えてもらい、先頭とのタイム差が縮んでいることがわかりました。しかし、まだ前には7、8人のランナーがいて、トップとのタイム差も3分以上あります。正直なところ、がっかりしながら走っていました。

70km関門の係の方には「(先行するランナーの)頭が見えてるよ」と言っていただきますが、私には先導車が地平線の彼方にかすかに見えるだけでした。自分の腕時計ではタイム差も計測できません。その時点で7位。

一人ずつかわしていきますが、75kmあたりで同じ関西から参戦の前田洋輔君に追い付きます。少ししんどそうだったので「順位わかってますか?僕らで3、4位、諦めたらアカンで」と関西弁で話しかけました。76kmでもう一人かわして2位に浮上。はじめて優勝を意識しましたが、先導車は地平線の彼方にわずかに見えるだけでほとんど距離が縮まっていません。

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苦しみながらも鮮やかな逆転劇で2015年サロマ湖100kを優勝した原良和さん。Photo courtesy of Tomoko Hara

ワッカに入るあたりでタイムをみましたが2分以上もありました。ここで残りは20km!撃沈して5位以下に落ちると世界大会の代表から漏れるので順位を守りに入ります。ワッカ特有の小刻みなアップダウンとカーブで足腰がしんどくなってきますが、88km過ぎの折り返しまでひたすら粘ります。折り返しで先頭の表情を伺いますが余裕がありそうではなく、距離も縮まっていることがわかりました。あと10kmあるので追い付けそうな気がしました!最後の余力を振り絞ってペースを上げます。

91km過ぎワッカ原生花園あたりで沿道の応援者からタイム差を教えていただき追い付けることを確信。ついに95km手前でトップの永田務さんの背後に迫りました。90kmエイドでジェルをとっていて、残りの距離が少ないので失速しないとは思いましたが、念のためジェルをもう一個流し込んでから追い付き、そのまま追い抜きました。

あとはひたすら逃げます。足には余裕があるものの、心肺はギリギリで呼吸はかなり荒くなっていました。ラップはキロ4分前後まで上げられましたので勝利を確信。すれ違う知り合いにもエールを送ります。ワッカ出てからもキロ4分ペースは保ち、そのまま2度目の優勝!【編者注・原さんの優勝タイムは6時間35分49秒でした。】

振り返ってみればレース前の想定通りのペースで自分のレースを走りきった

今年で30回目という伝統と歴史のあるレース、日本最高峰のレースで40才を越えた私がもう一度優勝できるとは思いませんでした。先頭は6時間30分を切ってくると予想していました。5月の野辺山100kmでは力を出しきったものの、7時間24分かかりましたので、サロマでの自己ベスト(6時間33分)の更新は困難、うまく走れて6時間35分前後と想定していました。そうするとペース配分としては前半50kmを3時間15分、後半は3時間20分が理想的です。その通り走れた訳ですが、上位陣が想定以上に崩れたので私に優勝が転がり込みました。本当に運が良かったと思います。

今回のレースでは一度もトイレに行きませんでした。これまで100kmロードレースは10回以上走っていますが、トイレに行かずに完走したのは初めてでした。結果論ですが、2位とのタイム差が50秒だったのでトイレロスがあったら負けていたかもしれません。

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表彰台で満面の笑みを浮かべる原さん。Photo courtesy of Tomoko Hara

準備した補給はスタートでジェル4個と塩サプリ10個、スペシャル3ヶ所にジェルを3個ずつ、サンエットを150mlずつでした。これまでの100kmレースではジェルを9~10個取っていますが、今回は11個とりました。スペシャルを1回は取れない事を想定して準備していましたが、ジェルは2個余っただけでした。余分に準備して正解でした。

トップアスリートこそマナーを尊重しよう

私と並走するようなランナーでもジェルのゴミを道端にポイ捨てされる方がおられるということ。トップランナーだからこそ人の手本になるように、自分で出したゴミは持って走り、エイドごとにゴミ箱があるのだからゴミ箱に捨ててほしかったです。ゴミ箱に捨てようとして入らなかったゴミは、まあ仕方ないでしょう。エイドでもない道端に落ちたゴミはどうなるのでしょう。ちょっと想像力を働かせてみたいですね。

日本の若手ウルトラランナーに奮起してほしい

ここ数年、日本の男子選手はロードの100kmで6時間30分を切れておらず、これでは世界選手権で戦うには少し実力不足です。若くて勢いのあるランナーが増えてきてサロマの上位争いが激しくなってきたのは日本男子にとって喜ばしいことですが、来年こそは誰かが6時間30分を切ってほしいですね。えっ、「私が切ったらいい?」今年8月には43才となります。そろそろ100kmレースは一線から引退させてください!

今年のIAU100km世界選手権はオランダのウィンスホーテン/Winschotenで9月12日に開催されます。日本代表選手は男女各4名で戦ってきますので、応援よろしくお願いします

今回の装備

  • シューズ:HOKA OneOne / Clifton
  • ウェア:アシックス
  • アンダーウェア:Finetrack / スキンメッシュ・ノースリーブ
  • ソックス:Tabio / レーシングラン
  • サポート:Zamst / LC–1
  • アームカバー:Finetrack / アクティブスキン

おまけ・原さんの今回と2012年優勝時とのラップタイム

【編者注・「データが好きな方に分析していただきたいです」(原さん)とのこと。】

2015年(今回、優勝)
Start 00:00:03
10k 00:40:05 0:40:02
20k 01:18:54 0:38:49
30k 01:57:57 0:39:03
40k 02:36:49 0:38:52
42.195k 02:45:12
50k 03:15:23 0:38:34
60k 03:54:21 0:38:58
70k 04:34:28 0:40:07
80k 05:14:03 0:39:35
90k 05:55:13 0:41:10
Finish 06:35:49 0:40:36

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2012年(優勝、自己ベストのタイム)
Start 00:00:02
10k 00:40:00 0:39:58
20k 01:18:38 0:38:38
30k 01:57:31 0:38:53
40k 02:36:09 0:38:38
42.195k 02:44:29
50k 03:14:00 0:37:51
60k 03:52:25 0:38:25
70k 04:32:53 0:40:28
80k 05:13:00 0:40:07
90k 05:52:52 0:39:52
Finish 06:33:32 0:40:40

Yoshikazu_Hara_Faceプロフィール:原 良和(はらよしかず) 1972年8月生まれ。京都大学で陸上部に所属してランナーとしてのキャリアをスタート。2012年サロマ湖100kmウルトラマラソン6時間33分32秒は同年世界ランキング3位。2013年ウルトラトレイル・マウントフジ()で優勝。昨年2014年は信越五岳トレイルランニングレースで10時間17分と大会記録を49分更新して優勝したのち、12月の台湾・東呉大学24時間走(Soochow International )を285.366kmで優勝、日本記録を更新し世界歴代2位の記録となった。

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