今年で4回目となるウルトラトレイル・マウント・フジ/Ultra Trail Mt. Fuji(UTMF)は昨年までの春の開催から今年は秋の開催となり、9月25日(金)にスタートします。Ultra-Trail® World Tourの第10戦となるUTMFの開催まであと2週間を切りました。この記事では今年のUTMFで注目されるランナーを紹介します。【追記・最新の情報を加筆・修正しました。2015.9.24】
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今回のUTMFは昨年とは反対回り、一昨年と同じ反時計回りで天子山地が前半となるコースで開催。河口湖八木崎公園をスタート・フィニッシュとするコースは168.6km、累積獲得高度は8,337mD+。コースは昨年との比較では、主に次の点に違いがあります。
- 天子山地で天子ヶ岳を経由せずに手前の長者ヶ岳で田貫湖へと降りる
- 富士山こどもの国(90km地点)からロードで富士山資料館(98km地点)へ向かいそこにエイドが置かれる
- 富士小学校(156.7km地点)からは尾根に登った後に尾根沿いのトレイルを南下するため終盤の長いロードがない
9月25日(金)の午後1時にスタートで制限時間は46時間。2015年のUTMFのチャンピオンは男子は26日(土)の午前7時過ぎ、女子は同日午後1時過ぎに誕生する見込みです。
一方STYは富士山こどもの国を26日(土)正午にスタート、反時計回りに須走、山中湖とUTMFのコース後半をたどって河口湖八木崎公園までの80.5km、累積標高差は4610mD+。制限時間は20時間。チャンピオンは男子が26日(土)の午後9時すぎ、女子は同日午後11時頃にフィニッシュする見込みです。
UTMFでは男子約1250人(うち海外から30%)、女子約250人(うち海外から21%)、STYでは男子約870人(うち海外から11%)、女子約210人(うち海外から17%)が参加する中で当サイトが注目するランナーを紹介します。
UTMF 女子
今年の女子のレースで最も優勝に近いのはウシュエ・フライエ / Uxue Fraile Azpeitia(Vibram)でしょう。先月のUTMBを2位でフィニッシュしたばかりのウシュエ・フライエはスペイン・バスク出身。欧州で有力選手が集結する春のTransvulcaniaでは2012–2014年に5位、3位、3位。昨年のUTMBで5位、Grand Raid Reunionで3位。今年に入ってからも42kmのZegamaで7位、Eiger Ultra Trailで4位など、欧州の山岳レース、特に長距離に強い実力あるアスリート。8月末に開催されたばかりのUTMBからのリカバリーが順調なら、UTMFの優勝を狙うことになるでしょう。
ウシュエとともに優勝に近いランナーとしては、まず昨年のUTMFで2位だったフェルナンダ・マシェール / Fernanda Maciel(The North Face)が挙げられます。昨年はUTMFの他にもTransgrancanariaとTNF100 Australiaで3位、UTMBで4位、今年に入ってもLavaredo Ultra Trailで3位。先月のUTMBで130kmまで来てリタイアとなった雪辱を富士で果たせるか。そしてアメリカ・バーモント州から来日するアライザ・ラピエール / Aliza Lapierre(Salomon)はWestern Statesで2012年に3位となるなど、アメリカでの実績豊富。足のケガでレースから遠ざかっていた昨年でしたが今年に入ってからは1月のBandera 100kで優勝、3月のTransgrancanariaで8位、6月のWestern Statesでは4位。UTMFに向けた調整が順調なら栄冠をつかむ可能性は高そうです。
さらに日本のトレイルランナーにも昨年のハセツネ・カップの優勝でおなじみのエイミー・スプロストン / Amy Sproston(Montrail / MountainHardwear)もUTMFを走ります。2013年のWestern Statesで3位、今年はHURT 100で優勝、TNF100 Australiaで2位。彼女も先月のUTMBで体調を崩してリタイアしています。そして若手の注目は中国のドン・リー / Li Dong (Salomon)です。26歳のドン・リーは中国のトレイルランニングレースであるYishan 100kで2013年に優勝して注目され、2014年にはスカイランニング世界選手権となったMont Blanc 80kで9位。今年に入ってからVibram HK 100、スカイランニングアジア選手権のSai Kung 50kでそれぞれ2位、Transgrancanariaで3位、TNF100 Australiaで優勝と国際的なレースで活躍。初めての100マイルレースでどんな結果を見せるか期待したいところ。そしてオーストラリアのショナ・ステファンソン / Shona Stephenson(inov–8)はUTMFで2013年に2位、2014年に6位。今年もTNF100 Australiaで3位になっています。UTMFを二度走っている経験は強みでしょう。
このほか、表彰台に上るトップ5を狙えそうなのは次のみなさん
- 高島 由佳子 / Yukako Takashima:昨年2014年の信越五岳で大会記録を大きく更新して優勝。今年の峨山道トレイルラン優勝。
- 小川 比登美 / Hitomi Ogawa (HOKA / patagonia / UltrAspire) :2013年UTMFで3位。OSJおんたけウルトラ100kで2012、2015年優勝、2015年峨山道トレイルラン2位。
- 福田 由香理 / Yukari Fukuda (Altra) :2014年ハセツネ・カップ2位、UTMFで12位。今年はIzu Trail Journey優勝、スカイランニング日本選手権・美ヶ原80k優勝、HURT 100で5位。
- 西田 由香里 / Yukari Nishida:2014年UTMFで7位。2012年ハセツネ・カップ3位、2013年Swiss Iron Trail T201で2位。2014年トランスジャパンアルプスレース(TJAR)完走。
- 丹羽 薫 / Kaori Niwa:2014年UTMFで8位。今年はTransvulcaniaで9位、スカイランニング日本選手権・美ヶ原80kで2位。
- 大庭 知子 / Tomoko Oba:2014年ハセツネ・カップで4位2015年はIzu Trail Journeyで4位、スパトレイル72kで3位。2013年UTMBで18位。
- 山ノ内 はるか / Haruka Yamanouchi (The North Face):2013年ハセツネ・カップ8位。スパトレイルで2014年、2015年と二連覇。2015年の王滝50k優勝。
ルーリン・シン / Ruling Xing(The North Face、中国):TNF100 China (Beijing)で2013–15年に3位、2位、優勝。【追記・出場を見送り。2015.9.24】
(出場者リストに名前があるものの参加を見送るランナー)
- ジェニファー・ベンナ / Jennifer Benna (HOKA、アメリカ)
UTMF 男子
男子で注目が集まるのはやはりロブ・クラール / Rob Krar (The North Face)。Western Statesを14時間台で走り、2014–15年に連覇しているその実力は今回の男子選手では群を抜いているといえます。しかし、故障から先月のUTMB参加を見送っており、富士にやってきたとしても体調の仕上がりは十分ではないかもしれません。しかし北米で今最も注目を浴びるロブ・クラールが蓄えた髭をなびかせて富士山麓を走る姿を見たいファンは多いはず。【追記・すで来日していますが、ケガのため自身は出場せず。妻のクリスティーナ・バウアー / Christina Bauerのサポートをするとのこと。2015.9.24】
もしロブ・クラールの仕上がりがベストでないとすれば、優勝争いは混戦となりそうな予感です。まずは今シーズンのUTWTで活躍するディドリク・ヘルマンセン / Didrik Hermansen (Asics、ノルウェー)。ウルトラマラソンでの活躍からトレイルのレースを走るようになったのは昨年。そして今年はこれまでTransgrancanariaで2位、Lavaredo Ultra Trail優勝。富士に向けた仕上がりについてはスウェーデンで8月に3位となったUltraVasan 90kからのリカバリー次第でしょう。ゲイリー・ロビンス / Gary Robbins(Salomon、カナダ)は2013年のUTMFで4位となっていて、今回が3回目のUTMFです。ハワイで開催されるHURT 100で2013–14年に二連覇し、昨年Cascade Crest 100で3位、今年のGorge Walterfalls 100kで4位。今年の夏は第一子誕生でレースから離れていました。UTMFのコースを知っていることも考えれば今回はいい結果となる予感がします。同じく2013年から連続3回目の出場となるのはブレンダン・デイビス / Brendan Davies(inov–8、オーストラリア)で、2013年は5位、2014年は6位。昨年はWestern Statesで8位などの結果を残しています。ただUTMFの2週前となる今週末にオランダで開催のIAU100k世界選手権に出場しているのでそこからのリカバリーが気になるところです。
ジェディミナス・グリニウス / Gediminas Grinius(inov–8、リトアニア)は昨年のUTMBで5位、Grand Raid Reunionで4位、今年に入ってからはTransgrancanariaで優勝、Western Statesで4位など、今回のUTMFでも優勝候補といえる実績の持ち主です。しかし先月のUTMBでは残り20km足らずでリタイア。積極的にレースに出てきた疲労からの回復がどこまで進んでいるか。そしてフルマラソンPRが2:15というスピードランナー、中国のヤン・ロンフェイ / Longfei Yan(Salomon)がUTMFに出場します。トレイルやウルトラマラソンに転じて中国国内のレースで優勝したヤン・ロンフェイは昨年のスカイランニング世界選手権・Mont Blanc Marathonの16位で国際的なトレイルレースにデビュー。今年は1月のVibram HK 100で優勝、2月のスカイランニングアジア選手権・MSIG Sai Kung 50kで2位、5月のTNF100 Australiaで4位。今回が初めての100マイルレースとなりますが、26歳の若さとスピードでレースをリードする場面もあるでしょう。【追記・ヤン・ロンフェイは出場を見送り。2015.9.24】
そしてトップ10で表彰台を狙えるポジションには次の皆さんが続きます。
- ソンドル・アムダール / Sondre Amdahl (GORE、ノルウェー):今年1月のVibram HK 100で2位、Transgrancanariaで4位。昨年のUTMBで7位。
- ジェイソン・ルーティット / Jason Loutitt (カナダ) :2013年にHURT 100で2位、Squamish 50で2位。今年5月のChuckanut 50kで4位。
- ジェフ・ブラウニング / Jeff Browning (UltrAspire / Altra / patagonia、アメリカ) :2013年のSan Diego 100、2014年のGrindstone 100、Zion 100でそれぞれ優勝。2014年のHardrock 100で4位。アメリカの100マイルレースのベテランだが、先月のUTMBで足を捻挫してリタイアしており、回復が気になるところ。
- アルノー・レジューン / Arnaud Lejeune (HOKA、フランス) :UTMBで2012年8位、2013年9位。2012年Grand Raid Reunionで3位。その後、ケガによりレースから遠ざかっていましたが、2015年に入ってTrail Verbier St-Bernard 111k、Ultra Tour des 4 Massifs 90kmで優勝。UTMFでその復活をアピールすることになるかもしれません。
- アルヌルフォ・キマーレ / Arnulfo Quimare(メキシコ):世界的なベストセラー「Born to Run」に登場するメキシコの「走る民族」、ララムリの代表的なランナーで現在34歳。2006年に第一回のCopper Canyon Ultramarathon(現・Ultra Caballo Blanco)でスコット・ジュレクに競り勝って優勝したエピソードはあまりにも有名で、その後も同レースでは2007年2位、2008年5位、2009年3位。アメリカやヨーロッパのレースにも出場しています。
- シルビーノ・クベサーレ / Silvino Cubesare(メキシコ):こちらも「Born to Run」に登場するララムリのランナーで現在36歳。アスヌルフォとはいとこ同士の関係です。Ultra Caballo Blancoでは2013年に3位、2014年に2位で、最近では6月末のスペインで開催されたTrail Peñalaraの60kで優勝しています。
- サンゲ・シェルパ / Sange Sherpa (ネパール):ネパールのシェルパ族の出身で現在はフランス在住。山岳ガイドをしながら山岳レースで活躍しています。昨年のEchappee Belle 145kmで優勝。今年のTransju’Trail 72kmで3位、Eiger Ultra Trail 101kで4位。
ジェズ・ブラッグ / Jez Bragg (The North Face、イギリス):2011年のやり直しUTMB 100kで優勝。2009年Western Statesで鏑木毅と激しい競り合いの末に3位。2013年にニュージーランドのTe Araroaトレイルの3054kmを走破。 2013年UTMBで10位、2014年のVibram HK 100で10位、Western Statesで11位。【追記・出場を見送り。2015.9.24】- シン・ジュドク / Jae Duk Sim (韓国):韓国のウルトラランナーで日本でも2006年にハセツネ・カップで優勝したことで知られています。世界各地のウルトラマラソン、トレイルランニングのレースに精力的に参加しており、その中には2007年Western Statesで10位、2013年の柴又100kで2位、昨年のSTYで2位といった実績も残しています。
- セバスチャン・ナイン / Sebastien Nain(Vibram、フランス):モロッコのUTAT 105kで2013年に3位。昨年のTDSで14位。
- 野本哲晃 / Tetsuaki Nomoto(日本):昨年のUTMFで7位。OSJおんたけウルトラで2009年、2011年優勝。今年のTNF 100 Australiaで12位。
- 小原将寿 / Masatoshi Obara (inov–8、日本): 今年はITJ、峨山道で優勝。昨年のUTMFで17位、UTMBでは46位。
- 小川壮太 / Sota Ogawa (Salomon、日本):今年の王滝50kで優勝、スカイランニング日本選手権・美ヶ原80kで2位、スカイランニングアジア選手権・MSIG Sai Kung 50kで9位。
- 大瀬和文 / Kazufumi Oose (Salomon、日本):昨年のUTMFで19位、UTMBで22位。今年はスカイランニングアジア選手権・MSIG Sai Kung 50kで10位。Vibram HK 100で11位、TNF 100 Australiaで18位。
- 山田琢也 / Takuya Yamada (Montrail / MountainHardwear、日本):昨年の信越五岳で2位。2010年ハセツネ・カップ3位。
- 小林慶太 / Keita Kobayashi (The North Face、日本): 昨年のUTMFで8位。今年はITJで8位、スパトレイル2位、TNF 100 Australiaで22位。
- 山屋光司 Koji Yamaya (HOKA、日本):UTMFで2012年に6位、2013年に8位。その他2013年OSJおんたけ100kで3位、今年のVibram HK 100で10位、Bighorn 100で16位。
- 渡邊鉄王 / Tetsuo Watanabe (日本):2012年のSTY8位、2013年のUTMF12位。2013年のOSJおんたけ100kで優勝。
- 鬼塚智徳 / Tomonori Onitsuka (The North Face、日本): 2014年にSTYで3位、神流50kで優勝。2015年にスパトレイル優勝、OSJおんたけ100kで2位、王滝50kで4位。
- 須賀暁 / Satoru Suga (The North Face、日本):2013年のSTYで4位。昨年のハセツネ・カップでは9位。今年のTNF 100 Australiaで26位。
- 荒木宏太 / Kota Araki(Asics、日本):今年はスカイランニング日本選手権・菅平42kで2位、王滝50kで9位。2013年おんたけスカイレース優勝。2014年ハセツネ・カップで16位。
- 貝瀬淳 / Jun Kaise(Asics、日本):2013年の上州武尊山50kで2位、2014年STYで5位。
- 井原知一 / Tomokazu Ihara (日本):2015年のHURT 100で4位、2014年Antelope Island Buffalo Run 100で2位、2013年Angeles Crest 100で5位。
STY
STYに出場するランナーでは、男子でブラド・イクセル / Vlad Ixel (The North Face)に注目したいところ。オーストラリア出身で現在香港在住のブラド・イクセルは2014年にVibram HK 100で3位、TNF100 ThailandとTNF100 Singaporeで優勝などアジアのレースで活躍しています。そしてUTMFファンなら誰もがご存知、セバスチャン・セニョー / Sebasiten Chaigneau(The North Face)もSTYに出場します。UTMFでは2013年に3位でした。女子では信越五岳で2013年と2014年に2位、今年のOJSおんたけ100kで3位の上宮逸子 / Itsuko Uemiya(Montrail / patagonia)、今年のIzu Trail Journeyとスパトレイルでそれぞれ2位、昨年のハセツネ・カップで11位の宮﨑喜美乃 / Kimino Miyazaki(The North Face)が出場します。
参考
- [DC] ウルトラトレイル・マウントフジ/Ultra Trail Mt. Fujiのコースマップが公開(改訂版差し替え済み) #UTMF15 | DogsorCaravan.com
- 大会ウェブサイトの出場選手一覧(UTMF – 男子、UTMF – 女子、STY – 男子、STY – 女子)