愛知県の北東部にあたる奥三河(新城市、設楽町、東栄町、豊根村)の山岳エリアを舞台に、4月24日日曜日に70kmのトレイルランニングレース、奥三河パワートレイルが開催されました。今年10月にポルトガルで開催されるIAUトレイルランニング世界選手権の日本代表選考レースとしても有力選手が集まったレースは、特に男子では順位が大きく入れ替わる劇的な展開に。優勝を勝ち取ったのは小原将寿 / Masatoshi Obaraと大石由美子 / Yumiko Ohishiで、二人は日本代表の内定基準を満たしました。
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前半と後半でそれぞれにランナーを試すタフなコースに加え、この日は朝晩と日中の寒暖の差も大きく、走りがいのある大会となりました。また、途中のエイドステーションではおにぎりやしし汁などの郷土食が振る舞われたほか、子供たちから年配の方まで地元の皆さんの声援が雰囲気を盛り上げました。
大会前日は湯谷温泉での受付や各種ブースの出展が終わって日が暮れた頃から、弱い雨が降りはじめました。深夜には少し雨脚が強まりましたが、翌朝には雨が上がっていました。レースは曇り空で霧が立ち込める茶臼山高原を6時30分にスタート。この日は9時頃には太陽が姿を見せるようになりましたが、10時頃からは強い日差しで体感気温は一気に上昇。その後、午後になると曇り空となってじっとしているとTシャツでは肌寒いほど。こうした天候の変化も70kmのコースに挑むランナーにとってチャレンジとなりました。
ドラマティックな逆転で見応えあった上位の展開
奥三河パワートレイルのコースの特徴は当サイトのプレビュー記事でご紹介したように、前半の下り基調の比較的スムーズなコースのあと、AS3小松長江(37.3km)のエイド以降は以降は岩古谷山、鞍掛山と大きなアップダウンをくり返すトレイルがあるコースが続くこと。
当サイトの予想通り序盤はハイペースで有力選手が僅差で続きます。リードしたのは、30–70キロのトレイルランニングレースでは圧倒的な成績を持つ近藤敬仁 / Yoshihito Kondoと、昨年のこの大会チャンピオンの平澤賢市 / Kenichi Hirasawaでした。近藤はこの奥三河のトレイルを下見してこの日に備えていたとのこと。二人は昨年の平澤のタイムを上回るタイムで小松長江のエイドまではほぼ並走してやってきます。後続は菊嶋啓 / Kei Kikushima、小原将寿 / Masatoshi Obara、大瀬和文 / Kazufumi Oose、望月将悟 / Shogo Mochizukiが5分差以内に続いていました。
AS2 笹暮(25.8km)を経て、タコウズ川沿いの林道の長い下りを経て経てたどり着くAS3小松長江のエイドからコースは後半に入り、岩古谷山、鞍掛山と二つのピークを越えます。この辺りで上位選手は強い日差しを浴びるようになり、朝から一転して暑さを感じるように。こうした変化が重なったせいか、先行していた近藤、平澤がペースダウン。リードを奪った小原に近藤はしばらくついていきますが、ペースは戻らず、結局次のエイド、AS4 四谷千枚田(48.4km)でリタイア。小原に13分差でAS4四谷千枚田に続いた大瀬も4分の休憩を取るほどでやや消耗気味。平澤、菊嶋も大幅に後退。一方、AS4四谷千枚田に3位で到着した吉原稔 / Minoru Yoshiharaは疲れを見せず、トップの小原を追います。
その後も小原将寿は堅調な走りで鳳来寺山のピークを越えて、7時間20分で湯谷温泉にフィニッシュ。昨年の平澤の優勝タイムを18分上回り、続く吉原にも18分差という圧勝でした。2位には23歳で昨年からトレイルを走り始めた吉原稔が続きました。3位には後半にもう一度立て直してフィニッシュにたどり着いた大瀬和文。4位の望月将悟は上位陣が入れ替わる中でマイペースで着実に順位を上げるというベテランらしい走りでした。5位には木村隼人 / Hayato Kimura、6位に谷川照樹 / Teruki Tanikawaでした。
女子は終始、大石由美子 / Yumiko Ohishiがリードし、8時間57分で優勝。当サイトの2013年、2014年のトレイルランナー・オブ・ザ・イヤー(TROYJ)稲葉賞受賞で日本のトレイルランニング界のクイーンと呼べる存在です。その大石とのレースが注目された昨年のTROYJ稲葉賞の丹羽薫 / Kaori Niwaはレースをリードする大石と少しずつ離れながらも2位を走っていましたが、後半にペースを上げた太田美紀子 / Mikiko Otaに先を譲ることになりました。2位の太田は昨年のサロマ湖100kで7時間57分で5位、IAU100k世界選手権で13位などロードのウルトラでの実績豊富です。3位の丹羽に続く4位に湯浅綾子 / Ayako Yuasa、5位に芦澤ひとみ / Hitomi Ashizawa。表彰台の6人目には野間陽子 / Yoko Nomaが入りました。
今回は多くの上位選手が後半に入ってペースを落とす中で、レースをリードした小原将寿の活躍が光りました。昨年は峨山道、ITJで優勝、UTMFでは日本人最高位となる5位となる活躍でしたが、今年も昨年を上回る活躍を目にすることになりそうです。そして男子2位の吉原稔の名前に注目した人は少なかったでしょう。現在23歳で大学(東京学芸大)までは陸上部でトラック競技をしていたといい、ロードやトレイルを走るようになったのはつい最近のこと。昨年は東丹沢宮ヶ瀬で8位、野沢温泉65kで3位でした。今回は「とにかく登りでも走るのを止めないように」と力が入りましたが、最後まで崩れないで走りきったのは相当の力量の持ち主である証拠です。女子では大石由美子の強さが光りました。これまでの実績からすれば今回も優勝候補の筆頭でしたが、2014年秋の膝のケガから回復は一進一退だったとのこと。今後も今回3位だった丹羽薫とともに日本の女子トレイルランニング界をリードする存在となるでしょう。
なお、今回男女でそれぞれ優勝した小原将寿、大石由美子は今年10月にポルトガルで開催されるIAUトレイルランニング世界選手権の日本代表選考の内定基準を満たしました。今のところ、二人とも選ばれれば世界選手権に出場したいとのこと。日本代表選考レースはこの後、5月28日に比叡山50k、5月29日にOSJ奥久慈が開催されます。
奥三河パワートレイル リザルト
参加者全員のリザルトは大会ウェブサイト(PDFへのリンク)からご覧ください。
男子 / Men
- 小原将寿 / Masatoshi Obara(HOKA OneOne) 7:20:35
- 吉原稔 / Minoru Yoshihara 7:38:55
- 大瀬和文 / Kazufumi Oose (Salomon) 7:47:06
- 望月将悟 / Shogo Mochizuki (La Sportiva) 7:50:11
- 木村隼人 / Hayato Kimura 8:09:56
- 谷川照樹 / Teruki Tanikawa 8:11:23
- 高橋和之 / Kazuyuki Takahashi (HOKA OneOne) 8:13:19
- 宮川朋史 / Miyagawa Tomofumi 8:19:39
- 石田賢生 / Kensei Ishida (Team RxL) 8:24:01
- 工藤晃一 / Koichi Kudo 8:28:21
- 及川耕太郎 / Kotaro Oikawa 8:29:50
- 五十嵐勝治 / Masaharu Igarashi 8:32:57
- 前田浩一 / Koichi Maeda 8:38:21
- 山本健文 / Takefumi Yamamoto 8:38:43
- 大作健次郎 / Kenjiro Osaku 8:41:00
- 別府浩司 / Koji Beppu 8:43:22
- 佐幸直也 / Naoya Sako 8:44:48
- 千坂充宏 / Atsuhiro Chisaka 8:45:26
- 西村広和 / Hirokazu Nishimura 8:45:51
- 大川裕之 / Hiroyuki Okawa 8:46:06
女子 / Women
- 大石由美子 / Yumiko Ohishi (La Sportiva / UltrAspire)8:57:18
- 太田美紀子 / Mikoko Ohta 9:23:12
- 丹羽薫 / Kaori Niwa (Salomon) 9:35:51
- 湯浅綾子 / Ayako Yuasa (inov–8 / MONTURA) 9:45:30
- 芦澤ひとみ / Hitomi Ashizawa 10:11:52
- 野間陽子 / Yoko Noma 10:15:37
- 三浦枝利子 / Eriko Miura 10:24:09
- 柳田麻利江 / Marie Yanagida 10:25:56
- 田村真由美 / Mayumi Tamura 10:39:02
- 折戸小百合 / Sayuri Orito 10:40:24
参考
- 大会ウェブサイト
- 当サイトのプレビュー記事・奥三河パワートレイル 2016 プレビュー #奥三河70k | DogsorCaravan.com トレイルランニングのオンラインメディア
- 当サイトがお送りしたレース中のライブ速報・ライブ速報はこちらで・2016 奥三河パワートレイル70k