トレイルランニング界の夏のビッグイベントといえば、モンブランで開催されるUTMB®です。世界のトレイルランナーを引きつける100マイルのレースを中心とするコンセプトはそのままに、今年は大会名称を「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン / Ultra-Trail du Mont Blanc®」から改めるなど、新しい試みにも積極的にチャレンジしている、世界最高峰のトレイルランニング・イベントです。
当サイトは今シーズンからUTMB®︎の大会メディアパートナーに加わり、今年も8月22日月曜日から28日日曜日まで開催される大会の模様を現地からお届けします。
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この記事では、2016年UTMBの見どころをご紹介します。有力アスリート紹介は明日以降にお届けする予定です。
今年もCCC、UTMBをライブ速報します
当サイトはこれからUTMBの開催されるシャモニーへ向かい、日本から参加する有力選手のインタビューや、101kmのCCC、170kmのUTMBのレース開催中は日本の有力選手の状況をライブ速報します。さらに今年は当サイト・岩佐自身が55kmのOCCに参加。3年ぶりに自らUTMBのレースを走ってその魅力を改めてお伝えする予定です。
大会期間中は当サイトの記事のほか、速報についてはTwitterアカウント / @DogsorCaravanやFacebookページも合わせてご覧ください。
当サイトのUTMBの現地レポートは、大会パートナーのMountainHardwear、montrailのご協賛によりお送りします。
主な日程とイベント
今年も170kmのUTMBなど5つのレースとキッズ、ユース向けイベントが開催されるほか、関連するカンファレンスなどのイベントも行われます。
8月21日日曜日
- ウルトラ・エンデュランススポーツにおける医学国際会議(International Congress for Medicine and Science in Ultra-Endurance Sports)がシャモニーで開催されます(23日火曜日まで)。高負荷の運動を過酷な自然環境の中で、時には長時間にわたって行うことになるトレイルランニングというスポーツにおいて、ランナーの健康を守るために必要な知見や研究結果、対策が発表され、討論されます。テーマには低ナトリウム症の予防、睡眠不足と周囲への注意の程度との関係といったものも含まれますが、最大のテーマはドーピングへの対策です。会議の中ではITRA(国際トレイルランニング協会)が今シーズンから試行しているQUARTZプログラムについてその内容の説明がなされる予定です。QUARTZプログラムは従来の大会がその前後に選手のドーピング検査を行うのに代えて、ITRAのような競技団体が取りまとめ役となり、アスリート自身が要請に応じて自主的に医学検査を受け、服薬の状況などを申告するというもの。反ドーピングのための全体的なコストや効果を見極めたのち、このQUARTZプログラムがトレイルランニングにおける反ドーピング対策の世界的なスタンダードとなることも考えられます。
8月22日月曜日
- PTL® (La Petite Trotte à Léon)が午前9時(日本時間同日午後4時)にスタート。290km / 26,500mD+のルートを2人または3人のチームで走破するイベント。公式のタイム計測や順位付けは行われない山岳アドベンチャーという位置付けで、他のUTMBのレースとは異なりコースマーキングがされておらず、氷河の横断やテクニカルな岩場での登り下りなど、難度の高いコースです。過去にこのPTLやUTMBなどを完走した経験のあるランナーを含む100チームのみが参加可能で制限時間は151時間30分。
8月24日水曜日
- TDS® (Sur les Traces des Ducs de Savoie)がクールマイユール / Courmayeurをスタート(午前6時、日本時間同日午後1時)。今年で7回目となる119km / 7,250mD+のレースの制限時間は33時間、参加者の上限は1600人というのは昨年と同じ。日本から58人のランナーがエントリーしています(昨年はも35人)。コースはモンブランのイタリア側・クールマイユールから時計回りに進んでシャモニーでフィニッシュですが、170kmのUTMBの前半部とはコースが大きく異なり、UTMBよりもテクニカルで山岳的な要素が強い上級者向けのコースといわれています。
- 同じ24日水曜日の午前10時(日本時間同日午後5時)には#YCCがクールマイユールで開催されます。昨年初開催の16歳から19歳のユース世代を対象としたイベントで前日のシャモニー市内での700mの周回コース3周に続き、水曜日には15km / 1,000mD+のレースが行われます。
- 水曜日の午後3時から4時半にはシャモニーで3歳から13歳の子どもたちを対象にしたMini UTMB®も開催されます。年齢に応じて400mから3kmまでの6つのミニレースが開催されます。
8月25日木曜日
- 今年で3回目の開催となるOCC (Orsières – Champex – Chamonix) がスイスのオルシエール / Orsièresをスタート(午前8時15分、日本時間同日午後3時15分)。55km / 3,500mD+のレースで制限時間は14時間30分(昨年から30分伸びています)。定員は1200人で日本からも18人がエントリー(昨年は8人)。UTMB、CCCの後半のポイントとなるシャンペ / Champexの最寄の都市となるオルシエールをスタートし、最初はシャンペへの登り。そこからはUTMB、CCCと同じ大きい登り下りを経てトリアン / Trient、ヴァルロシーヌ / Vallocineへ。ここからコル・デ・モンテ(37.5km)地点まで行き、ここから45km地点のフレジエール / FlégèreまではUTMB、CCCとは違うトレイルを経由します。
8月26日金曜日
- CCC® (Courmayeur Champex Chamonix)が午前9時(日本時間同日午後4時)にクールマイユールをスタート。今回が11回目の開催となる101km / 6,100mD+のレース、定員は1,900人で制限時間は26時間45分(昨年から15分延びています)。 日本からは65人がエントリー(昨年は53人)。スタート直後にUTMBには含まれない尾根沿いのコースを経由してからはUTMBと同じコースを辿ります。制限時間は26時間30分。UTMBのコースの中でも最も美しいといわれるグラン・コル・フェレを日中に楽しめるのが魅力です。
- 大会全日程の中心となる170km / 10,000mD+のUTMB®が午後6時(日本時間27日土曜日午前1時)にシャモニーをスタート。定員は2,300人で制限時間は46時間30分は昨年から変わりありません。日本からは144人がエントリーしています(昨年は155人)。今年のUltra-Trail® World Tourのシリーズ戦第10戦で、注目度の高いセリエレーベルのレースです。コースはシャモニーから反時計回りで西へ。午後6時スタートという他ではあまりない夕方のスタートとなるため、トップ選手も普通の市民ランナーも夜のトレイルを進むことになります。上位のランナーは約60km地点のコル・デ・ラセーニュを超えてから朝日の中を美しいトレイルと左手に並ぶ山々を眺めながら進むことになります。トップの選手のシャモニーへのフィニッシュは21時間15分、27日土曜日の午後3時15分(日本時間同日午後8時15分)頃と見込まれています。
今年のUTMB豆知識
- 7,500人が参加、年齢は20歳から84歳まで。資格を満たし、抽選を経て参加権を得たランナーはUTMB®︎、CCC®︎、TDS®︎、PTL®︎、OCCの五つのレースで計7,500人。最高齢はOCCに参加する84歳、最年少はTDS®︎に参加する20歳。全体では男性が87%、女性が13%という内訳です。
- 87カ国から参加、日本は参加者数で5番目。国際的なトレイルランニング大会として知られるだけあり、世界各国から参加者を集めるUTMB。国別で最も参加者が多いのはフランスで3,771人(全体の40.5%)を占めます。2番目にスペイン(941人、10.2%)、3番目にイタリア(863人、9.3%)、4番目にイギリス(543人、5.9%)と続き、5番目には日本が294人、3.2%で続きます。そして6番目には中国で285人(3.1%)が続きます。中国からの参加さははここ3年で急増していて、CCCやOCCの参加者が比較的多いことから考えると、来年には日本からの参加者数を上回ることになりそう。ちなみに中国の285人のうち、100人が香港からの参加者です。
- 第一回大会は「International Ultra-Trail of the tour du Mont-Blanc」としてスタート。2003年の第一回大会ではまだUTMBの名前は大会の名称になってはいませんでした。19カ国から711人が参加して第一回大会は開催されました。
- 環境保護のための積極的なアクション。UTMBではコースとなっているエリアの環境保護のため、環境保護アンバサダーに依頼してコースの環境評価のため、コース全体を2回以上実際に歩いて評価。そののべ距離数は1,230kmに達します。こうした評価のためにコース周辺で農業や山小屋を営む人たち98人にヒアリング調査を実施。2016年中だけで3箇所の環境修復工事を行なっています。
- 参加者の安全のために。UTMBの各レースの必携装備の一つに携帯電話があります。大会側から参加者に発信されたメールでは、この携帯電話についてフランス、イタリア、スイスの3カ国のいずれにおいても、レース中だけでなくその前後も連絡が取れる状態にしておくことを求めています。特にスイッチの入った状態にしておくこと、機内モードにしないこと、必要に応じて外部バッテリーを用意すること、を注意するようにとの内容です。今年1月の香港での出来事を考えると十分に注意を払いたいところです。大会側では参加者から救護依頼やリタイアの連絡をしやすくするスマートフォンアプリ(L EVENT LOCATE ME、iOS版、Android版)の利用が奨励されています。