2016年も国内外で話題が続き、ますます注目を集めたスカイランニング。今年のスカイランニングを締めくくることになるスカイランニングアジア選手権 Skyrunning Asian Championshipsが12月2日、4日に香港で開催されます。今年のアジア選手権の舞台となるのは香港・ランタオ島で開催されるMSIG Lantau 50で、2日(金)にバーティカルキロメーター、4日(日)に27km、50kmのレースがそれぞれSkyカテゴリー、Ultraカテゴリーのアジア選手権となります。宮原徹、松本大、吉住友里など今年の日本のスカイランニングを盛り上げたアスリートが揃って参加するほか、欧州からもトップクラスのアスリートが参戦します。
当サイトでは現地からMSIG Lantau 50 / スカイランニングアジア選手権の模様をお伝えする予定です。DogsorCaravanのツイッターアカウント(@DogsorCaravan)、DogsorCaravanのFacebookページをフォローしてお楽しみください。
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(写真・昨年のMSIG Lantau 50で優勝したフランソワ・デンヌ François D’Haene。Photo courtesy of Action Asia)
自然豊かなランタオ島のトレイルは高度感あり
今回、スカイランニングアジア選手権となるMSIG Lantau 50のレースの概要を見ていきましょう。
MSIG Lantau VK
コースはランタオ島の南側に位置する海岸のリゾート地、Tong Fuk Beachをスタートしてランタオ・ピーク Lantau Peakに至る距離5km、累積獲得高度950mD+のコース。このレースがスカイランニングアジア選手権・VKカテゴリーとなります。大会記録は男子が37分45秒(Joe Gray、2014年)、女子が48分32秒(Mira Rai、2014年)となっています。
レースは12月2日(金)の午後3時(日本時間同日午後4時)から順次スタートし、現在67人がエントリーしています。
MSIG Lantau 50
VKの開催から1日おいて、4日日曜日に16km、27km、50kmのレースが開催され、27kmがSkyカテゴリー、50kmがUltraカテゴリーのアジア選手権となります。スタート・フィニッシュはランタオ島の玄関口となるTung Chungで、午前6時半(日本時間午前7時半)に50km、午前7時半(日本時間午前8時半)に27kmがスタートします。
コースはスタートから最初のチェックポイントとなるCP1 Ngong Pingまで9.5km。27kmのレースはここから東へ向かい、ランタウ・ピーク Lantau Peak(914m)、CP4 Pak Kung Au(14.3km地点)を経てサンセット・ピーク Sunset Peak(787m)へ。ここからは長い下りとなり、CP5 Pak Mong(23.5km地点)からはほぼ海沿いのフラットなコースとなってフィニッシュへ。27.3km / 1,922mD+のコースとなります。
50kmのコースは27kmのコースに、CP1から西方向に向かってからCP1に戻る27kmのループが加わります。このループにあるCP2 Catch Water(24.3km地点)、CP3 Shek Pik BBQ(32.1km地点)を経てCP1に戻ります(正確にはCP1は経由せず付近を通過してCP4に直行)。CP4 Pak Kung Au(41.7km地点)、CP5 Pak Mong(50.9km地点)を経てフィニッシュへ。正確なコース全長は54.8kmで累積獲得高度は3,500mD+。
昨年の優勝タイムは次の通りでした。
- 27km: 男子2時間43分50秒(Gregory Vollet、France)、女子3時間46分31秒(Zein Williams、UK/HK)
- 50km: 男子5時間42分40秒(Francois D’haene、France)、女子7時間8分42秒(Maud Gobert、France)
スカイランニングアジア選手権の有力選手
今回のMSIG Lantau 50 / スカイランニングアジア選手権に登場する有力選手をみてみましょう。
Vertical Kilometer
男子 Men
12月2日金曜日午後に開催されるバーティカル・キロメーターでの優勝候補の最右翼はバーティカルの皇帝・宮原徹 Toru Miyaharaといって間違いなさそうです。今シーズンは国内の上田VK、Mt. Awa、蔵王温泉VK、尾瀬岩鞍VKを制してスカイランナージャパンシリーズ(SJS)VKカテゴリーチャンピオンに。海外では2013年のPikes Peak Marathonで優勝、2014年スカイランニング世界選手権・Chamonix KVで5位、2015年Pikes Peak Ascent優勝、今年は5位。ジョー・グレイ Joe Grayの大会記録(37分45秒)にどこまで迫れるかに注目です。
宮原に迫る可能性がありそうなのは長距離のトレイルランニングレースで実績を持ち、今回も27km、50kmのレースにも出場するアスリートたち。例えばアメリカの21歳のコディ・リンド Cody Lind、フランスのニコラ・マルタン Nicolas Martinは登りの速さにも自信があるはず。2015年のスカイランニング世界選手権・MSIG Sai Kung 50kで優勝しているサミル・タマン Samir TamangもVKでどんな走りを見せるか注目です。このほか、アジアのレースで実績を残しているハロン・ボア Haron Bor(ケニア)、エイリク・ホグネス Eirik Haugsnes(ノルウェー)、ジンワン・キム Jinwan Kim(韓国)もVKに出場します。
ベテラン勢では今年のUTMBで優勝のルドビック・ポムレ Ludovic Pommeret(フランス)、日本でもUTMFでの活躍で知られるジュリアン・ショリエ Julien Chorier(フランス)が登場します。
日本からは今年の蔵王VKで3位、尾瀬岩鞍VKで5位となり、今年のSJS4位の柳澤隼人 Hayato Yanagisawaが上位にどこまで食い込めるか。このほか、27kmにも出場する星野和昭 Kazuaki Hoshino、竹原直矢 Naoya Takeharaがエントリーしています。
女子 Women
VKの女子のレースの優勝争いを占うにはかなり想像力が必要とされますが、今年のトレイルランニングで80kmから100マイルのレースで勝利を重ねたカロリーヌ・シャヴェロ Caroline Chaverot(フランス)の名前を挙げないわけにはいかないでしょう。今年のSJSで上田VK、蔵王VK、尾瀬岩鞍VKで優勝して年間チャンピオンを獲得した吉住友里 Yuri Yoshizumiがシャヴェロに挑むことになります。ちなみに10月に開催されたIAUトレイル世界選手権(85km)では優勝したシャヴェロに80分差の13位でした。さらに日本からは27kmに出場する高村貴子 Takako TakamuraがVKにもエントリーしています。
27k, Skyrace
12月4日日曜日午前7時半(日本時間同日午前8時半)にスタートするのが27kmのスカイレース。今回は欧州から参加するエリートアスリートは50km以上の長距離レースで実績を持つ選手が多く、27kmのレースは選手層がやや薄くなりそう(大会直前に50kmのレースからの振り替える選手があった場合にはこの項を随時更新します)。
そうなると昨年2015年のスカイランニングアジア選手権・Sai Kung 26kで優勝している松本大 Dai Matsumotoがアジア選手権二連覇を果たすことになるでしょう。昨年はアジア選手権の他にも欧州のトップ選手が揃った香港でのLantau 2 Peaksは8位、スペインでのゼガマ・マラソン13位でスカイランナー世界シリーズ(SWS)年間10位。今シーズンはスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 25kで8位となっています。
今年の日本のスカイランニング・トレイルランニングで頭角を現した吉原稔 Minoru Yoshiharaも今回は27kmのスカイレースにエントリーしています。今シーズンは奥三河70kで2位、OSJ奥久慈50kで優勝、神流50kで2位。SJSのシリーズ戦では経ケ岳VLで8位、菅平42kで5位、蔵王スカイで2位となり年間ランキング4位。この勢いで海外でもその実力を示すことに期待したいところ。昨年秋の香港でのLantau 2 Peaksで9位の星野和昭 Kazuaki Hoshinoは今シーズンは故障などでレースの結果からは遠ざかっていましたが、11月の日光マウンテンランニングでは3位となっており、今回のLantau 50でも復活ぶりを見せてくれるかもしれません。
女子では今注目を集めている若手、高村貴子 Takako Takamuraが27kmのスカイレースにエントリーしていて、上位がねらえそうです。今シーズンのSJSでは上田VKで2位、AWA優勝、蔵王VK3位、蔵王スカイ優勝。夏のスカイランニングユース世界選手権・Gran Sasso Skyraceでは2位となり好成績で海外デビュー。10月のハセツネCUP優勝でも話題になりました。
このほか、27kmの男子のレースで注目の選手は次の皆さん。
- ジャスティン・アンドリュース Justin Andrews(アメリカ、香港在住):2015年スカイランニング・アジア選手権・MSIG Sai Kung 26kで8位、同年のTransLantau 50kで優勝。
- ジェイ・キアンチャイパイファナ Jantaraboon “Jay” Kiangchaipaiphana(タイ):アドベンチャーレースで活躍し、MSIG Lantau 50と同じくAction Asiaが開催するMTBの大会では上位常連。トレイルランニングでは2013年のTNF Hong Kong 50kで優勝。
- キム・ジンワン Jinwan Kim(韓国):今年のZao Skyrunningに韓国から来日した有力アスリートの一人で、蔵王スカイで7位に。今年はこのほかTNF 50 Koreaで4位。
- 竹原直矢 Naoya Takehara(日本):今シーズンは西米良スカイランニングクエストで5位。
- 山本大賀 Taiga Yamamoto(日本):西米良スカイランニングクエストで8位。
50k, UltraSkyMarathon
27kmのスカイレースに先立って、午前6時半(日本時間同日午前7時半)に50kのウルトラスカイマラソンがスタートします。こちらは欧州のトップクラスのアスリートが登場し、レース展開は見応えあるものになりそうです。
男子 Men
昨年、2015年のスカイランニングアジア選手権・MSIG Sai Kung 50kで優勝し、初代アジア選手権チャンピオンとなったのはサミル・タマン Samir Tamang(ネパール)でした。今年もサミル・タマンが50kのレースに出場しますが、優勝争いはさらに激しいものになりそうです。
当サイトが注目するのはまずスペイン・カナリア諸島のアスリート、クリストファー・クレメンテ Cristofer Clemente。昨年のアジア選手権・MSIG Sai Kung 50kでは優勝のサミル・タマンから17分差の3位でフィニッシュしていましたが、今シーズンはSWSのシリーズ戦となっているUltraSkymarathon Madeira 55k、The Rut 50kで優勝、Ultra Pirineu 110kで3位となり、SWS・ULTRAカテゴリーで年間チャンピオンとなり、その成長を印象付けました。今回の優勝候補の筆頭といってよさそうです。
もう一人注目株を挙げるなら、ニコラ・マルタン Nicolas Martin(フランス)でしょう。昨年2015年にCCCで3位、Templiers 73kで2位、SaiteLyon 72kで2位とフランス国内の注目レースで上位に。今年はSWSのシリーズ戦でTransvulcaniaで2位、High Trail Vanoiseで優勝。10月に開催されたIAUトレイル世界選手権・Trans Peneda Gerez 85kで2位になっています。
今年のUTMBで鮮やかな勝利をおさめたルドビック・ポムレ Ludovic Pommeretも今回の50kに参戦します。10月のIAUトレイル世界選手権では5位に。先週末にはすでに中国に入っており、Maxi Race China 60kで2位でした。同じくMaxi Race China 60kに出て優勝しているグレッグ・ヴォレ Greg Volletにも注目です。昨年来日した際には尾瀬岩鞍VKで3位になっています。そして日本のトレイルランニングファンにはおなじみのジュリアン・ショリエ Julien Chorier(フランス)。今年も春のTransgrancanariaで7位、夏のUTMBで8位、秋のEcoTrail Madeiraで優勝とその強さは健在。今年は中国の高山地帯で開催されたUltra Tour Mt. Siguniangにも出場しています。
さらに注目の選手は次の通り。
- ティボー・バロニアン Thibaud Baronian(フランス):今年のTempliers 76kで6位、OCCで3位。
- エイリク・ホグネス Eiric Haugsnes(ノルウェー):今年のTromso 53k、Glen Coe Skyline 55kでそれぞれ10位でSWS・Extremeカテゴリーランキング7位。昨年のMSIG Lantau 50kで2位。
- コディ・リンド Cody Lind(アメリカ):今年のMoab Red Hot 55kで2位、Broken Arrow Skyrace 54kで3位、Power of Four 50kで2位。
- ヤン・バルタス Jan Bartas(チェコ):今年のSWSシリーズ戦であるHigh Trail Vanoiseで8位。
- ハロン・ボア Haron Bor(ケニア):今年のMSIG Singapore 50kで優勝、昨年のLantau 50kで7位。
- ジャッキー・レオン Jacky Leung(香港):2015年Lantau Trail 70kで2位。
-
三浦裕一 Yuichi Miura(日本):2015年ハセツネCUP2位、2016年美ヶ原45kで3位、スカイランニング日本選手権・志賀高原エクストリームトレイル2位。
- 町田知宏 Tomohiro Machida(日本):今年のスカイランニング日本選手権・志賀高原エクストリームトレイル3位。
- 新名健太郎 Kentaro Shimmyo(日本):2015年OSJ新城64kで6位、峨山道73kで6位。2016年OSJ山中温泉70kで4位。
- ヤン・ニルセン Jan Nilsen(ノルウェー、タイ在住):今シーズンのAsia Trail Masterのレースで入賞多数。
女子 Women
今シーズン、UTMB優勝、UTWT年間チャンピオン、SWS・Ultraカテゴリーチャンピオン、スカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 105k優勝、IAUトレイル世界選手権優勝と圧倒的な結果を残しているのはフランスのカロリーヌ・シャヴェロ Caroline Chaverot。彼女がシーズン最終盤のこの50kでも優勝を勝ち取ることになるか。
この大会で昨年優勝しているモー・ゴベール Maud Gobertも今年のLantau 50kに戻ってきます。今年はSWSのシリーズ戦であるHigh Trail Vanoiseで2位、スカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 105kで4位、IAUトレイル世界選手権で14位といった結果を残しています。一方、中国の若手として注目を集めているドン・リー Dong Liも今回の優勝をねらいます。今年は1月にHong Kong 100で優勝、春のTransgrancanariaで9位、6月の80k du Mont Blancで3位となってからはレースにはあまり出ていない様子。昨年のアジア選手権・MSIG Sai Kung 50kでは2位でした。
そのほかの有力アスリートは以下の通りです。
- マリー・マクノートン Marie McNaughton(ニュージーランド、香港在住):昨年のMSIG Lantau 50kで2位。
- サンドラ・ケブルミュラー Sandra Koblmuller(オーストラリア):今年のGrossglockner Trail 50k優勝。
- ザイン・ウィリアムズ Zein Williams(イギリス):昨年のアジア選手権・MSIG Sai Kung 50kで6位、2014年Lantau 50k6位。
- パク・スージ Sooji Park(韓国):今年の蔵王スカイ3位。
- チャン・ボヨン Boyoung Jang(韓国):今年のKorea 50kで4位、TNF 50 Koreaで3位、蔵王VKで6位。