金曜日のバーティカルキロメーター(VK)に続いて4日日曜日も日本のアスリートの活躍が際立ちました。香港・ランタオ島で開催されたスカイランニングアジア選手権 Asian Skyrunning Championshipの27kmのレースでは日本のスカイランニングの第一人者・松本大 Dai Matsumotoが優勝してSkyカテゴリーでアジア選手権チャンピオンとなりました。女子でも高村貴子 Takako Takamuraが3位に。あわせて開催された50kmのレースは欧州のトップ選手がそろう中で三浦裕一 Yuichi Miuraが7位に入る健闘をみせました。アジア諸国の選手が対象となる表彰においては松本、高村、三浦が金メダルを獲得。VKでの宮原徹、吉住友里とあわせ、今回日本勢が5個の金メダルを獲得しました。
(写真・MSIG Lantau 50で優勝したニコラ・マルタン Nicolas Martin。Photo courtesy of Action Asia Events)
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27kmで松本大が2年連続アジア選手権チャンピオンに、50kmは欧州勢が好レースを展開
27km
MSIG Lantau 50の27kmのレースは今年のスカイランニングアジア選手権 Asian Skyrunning ChampionshipのSkyカテゴリーのレースとして開催。ランタオ島の玄関口で鉄道の駅や大きなショッピングセンターに隣接するMan Tung Road Parkを午前7時半にスタートしました。昨年二月に開催された2015年のスカイランニングアジア選手権で優勝している松本大 Dai Matsumotoは終始リードを維持して、アジア選手権連覇を達成しました。松本は「シーズン終盤でこの大会に向けた自分のコンディションの調整が難しかった」と振り返りました。今回はスカイランナー世界シリーズ(SWS)で上位を占める欧州のアスリートが参加していないこともあって松本の勝利は固いというのが当サイトの見込みでしたが、周囲の期待に応えて確実にアジア選手権チャンピオンの座を守りました。
この日、日本の23歳、吉原稔 Minoru Yoshiharaは松本の背中を追って、前半の難所であるランタオ・ピークを超えた後のCP4(14km)では松本から4分差の2位。しかし、ここから二つの目の大きなピークとなるサンセット・ピークを越えるパートでキム・ジンワン Jinwan Kim、エティエンヌ・ロドリゲス Etienne Rodoriguezに先を譲ることとなりました。吉原が2位になった九月に開催されたスカイランニング日本選手権・Zao Skyrunning 22kでキム・ジンワンは7位となっていましたが、今回はキム・ジンワンが吉原に競り勝ちました。3位のロドリゲスは大会が開催されたランタオ島に住むランナーで、なじみのトレイルで3位を獲得しました。
女子のレースはオーストリアのトライアスリートでアジアのトレイルを走るのは初めてというサンドラ・コブルミュラー Sandra Koblmullerが序盤をリード。しかしこの日の香港の蒸し暑さで水分不足に苦しみはじめ、CP4(14km)を過ぎてからこの大会で昨年優勝している地元香港在住のザイン・ウィリアムズ Zein Williamsがリードを奪い、そのまま3時間37分で二連覇を果たしました。2位になったコブルミュラーに続いて3位になったのは日本の高村貴子 Takako Takamura。「スタートから上位選手のペースが速いので驚いた」という高村はCP1(9.5km)を4番手で通過。コースのハイライトとなるランタオ・ピークを経てCP4(14km)には先行していた韓国のパク・スージ Sooji Parkを捉えます。パクは高村が優勝している今年のスカイランニング日本選手権・Zao Skyrunningで5位になっている実力の持ち主。高村は1位、2位の二人を捉えることはできなかったものの、4位のパクとの差を広げて3位でフィニッシュ、優勝のウィリアムズから11分差でした。
27kmのレースでは4位に吉原稔 Minoru Yoshihara 、5位に山本大賀 Taiga Yamamoto、7位に星野和昭 Kazuaki Hoshino、8位に長田豪史 Goshi Osada、9位に竹原直矢 Naoya Takeharaと日本勢は6人がトップ10に入る活躍でした。アジア人を対象とした上位3人の表彰では男子は松本大が金、キム・ジンワンが銀、吉原稔が銅メダルを獲得。女子は高村貴子が金、パク・スージが銀、女子総合5位のツアン・インフン Yin Hung Tsang(香港)が銅メダルでした。
50k
アジア選手権のULTRAカテゴリーのレースとなった50kmのレースは欧州の有力選手が出場して注目を集めました。27kmのスタートに先立って、午前6時半にMan Tung Road Parkでレースが始まります。
この日、最初に先頭に立ったのはフランスのティボー・バロニアン Thibaud Baronian。今年のTempliers 76kで6位、OCCで3位と50kmという距離には強い選手です。長い登りが続いた後のCP1(9.5km)には昨年この大会優勝のフランソワ・デンヌ François D’Haeneとほぼ同じペースでバロニアンが到着。バロニアンからわずか15秒で10月のIAUトレイル世界選手権2位のニコラ・マルタン Nicolas Martin 、8月のUTMB優勝のルドビック・ポムレ Ludovic Pommeret、SWS・ULTRAカテゴリー年間チャンピオンのクリストファー・クレメンテ Cristofer Clementeと錚々たるメンバーが続きます。4人の順位はCP3(32.1km)でも変わらず、差は1分以内。
4人の明暗が分かれはじめたのはランタオ・ピークを越えたCP4(41.7km)でした。マルタンがリードして、3分遅れでバロニアンが続きましたが、バロニアンの表情は明らかに苦しそうで補給に時間をかけます。トップから7分半でポムレ、さらに1分でクレメンテが通過。ここからサンセット・ピークを越えるセクションでバロニアン、ポムレがペースを落とし、クレメンテが2位に浮上。フィニッシュまでオリンピック・トレイルの3kmを残すだけのCP5(50.9km地点)でクレメンテはトップのマルタンに12秒差まで迫ります。
残り3kmでニコラ・マルタン Nicolas Martinがリードを守りきり、5時間41分でフィニッシュ。初めてのアジア遠征で勝利を収めました。2位には2分半の差でクリストファー・クレメンテ Cristofer Clemente。ルドビック・ポムレ Ludovic Pommeretと ティボー・バロニアン Thibaud Baronianは一緒にフィニッシュして3位、4位となりました。5位にアメリカのコディ・リンド Cody Lind 、6位にジュリアン・ショリエ Julien Chorierが続きました。
日本の選手では三浦裕一 Yuichi Miuraが序盤から安定した走りで7位、6時間44分でフィニッシュ。CP3まででコースをロストする出来事があったものの持ち直して後半も走りきりました。続く8位に6時間53分で町田知宏 Tomohiro Machida。今シーズンの日本のレースで活躍する町田が好成績で海外デビューを果たしました。
女子では今シーズンはUTMB優勝、スカイランニング世界選手権優勝、IAUトレイル世界選手権優勝、SWS・ULTRAカテゴリー年間チャンピオン、UTWT年間チャンピオンと圧倒的な成果を上げたカロリーヌ・シャヴェロ Caroline Chaverot(フランス) が最後までレースをリードして6時間27分で優勝しました。2位のスンマヤ・ブッダ Sunmaya Budha (ネパール) はこの日、最も注目を集めたアスリートでした。現在18歳でレースを走るのは、同じネパール出身のミラ・ライ Mira Raiに見出された今回が初めて。大勢の観衆に囲まれてはにかんだ笑顔を見せたスンマヤ・ブッダは金曜日のVKでの2位に続いての活躍でした。
3位には昨年のこの大会で優勝しているモー・ゴベール Maud Gobert (フランス)、4位にはこちらもネパールのプルナ・レクシミ・ネウパリ Purna Leximi Neupani、5位にケニアのスーザン・チェプクオン Susan Jemvtai Chepkwon 、6位に韓国のジ・ヘオンジュ Hyeonju Jiが続きました。
アジア人を対象とした上位3人の表彰は、男子の金に三浦裕一、銀に町田知宏、銅に総合9位のノ・ヘセオン Heeseong Noh(韓国)。女子はスンマヤ・ブッダ、プルナ・レクシミ・ネウパリ、ジ・ヘオンジュ Hyeonju Jiがそれぞれ金、銀、銅に輝きました。
アジアでのスカイランニングの人気の高まりを示した今回のアジア選手権・MSIG Lantau 50
金曜日のバーティカルキロメーターでの宮原徹、吉住友里の優勝に続いて、日曜日の27km、50kmでも日本のアスリートが結果を残しました。27kmでは松本大がスカイランニングのアジアにおける第一人者として存在感を示したほか、女子3位の高村貴子、男子4位の吉原稔をはじめ、日本チームが上位を占めたことが会場でも話題を集めました。50kでも欧州の実力ある選手が揃う中、それらのトップ選手に続いて7位に三浦裕一、8位に町田知宏が続いたことは日本勢の実力を示すことになりました。好成績で海外レースにデビューした三浦、町田の活躍に今後期待が高まります。
昨年に続き、アジアのスカイランニング、トレイルランニングのホットスポットである香港で開催されたスカイランニングアジア選手権。50kmのレースに集まった欧州勢の活躍が素晴らしかったのはもちろんですが、リザルトや大会会場で各国ごとに自国の選手のフィニッシュに歓声をあげる様子からは、スカイランニングがアジア各国で少しずつその根を広げつつあることを実感することができました。いつか日本でアジア選手権、世界選手権が開催され、日本の山が世界各国のスカイランナーの交流の場となるのが楽しみです。
MSIG Lantau 50 – 27km / スカイランニングアジア選手権・Skyカテゴリー リザルト
全体のリザルトはこちら。
男子 Men
- 松本大 Dai Matsumoto (Salomon、日本) 3:01:23
- キム・ジンワン Jinwan Kim (Salomon、韓国) 3:04:20
- エティエンヌ・ロドリゲス Etienne Rodoriguez (GONE Running、ニュージーランド・香港在住) 3:06:41
- 吉原稔 Minoru Yoshihara (TENICA、日本) 3:16:01
- 山本大賀 Taiga Yamamoto (XEBIO、日本)3:16:25
- ケビン・スキャラン Kevin F. Scallan(GONE Running、イタリア・香港在住) 3:20:46
- 星野和昭 Kazuaki Hoshino(Salomon、日本) 3:23:35
- 長田豪史 Goshi Osada(東京国際大、日本) 3:24:14
- 竹原直矢 Naoya Takehara(Japan Skyrunning Team、日本) 3:25:56
- ジャスティン・アンドリュース Justin Andrews(オーストラリア・香港在住) 3:29:54
女子 Women
- ザイン・ウィリアムズ Zein Williams (Raidlight、イギリス・香港在住) 3:37:59
- サンドラ・コブルミュラー Sandra Koblmuller (オーストリア) 3:40:11
- 高村貴子 Takako Takamura(日本) 3:49:38
- パク・スージ Sooji Park (Salomon、韓国) 3:59:37
- ツアン・インフン Yin Hung Tsang (香港) 4:10:31
- サンディ・アバハン Sandi Menchi Abahan(フィリピン) 4:18:49
- デルフィネ・リシェフランツ Delphine Riche-Franz (フランス) 4:22:15
- ウェンディ・ポターフィールド Wendy Porterfield(オーストラリア) 4:25:02
- チェン・シューチン Hsui-Ching Chen(台湾) 4:31:50
- レイチェル・アンドリュース Rachel Andrews(イギリス) 4:41:57
MSIG Lantau 50 – 50km / スカイランニングアジア選手権・Ultraカテゴリー リザルト
全体のリザルトはこちら。
男子 Men
- ニコラ・マルタン Nicolas Martin (Sigvaris / HOKA OneOne、フランス) 5:41:51
- クリストファー・クレメンテ Cristofer Clemente(Rand、スペイン) 5:44:38
- ルドビック・ポムレ Ludovic Pommeret(HOKA OneOne、フランス) 5:55:49
- ティボー・バロニアン Thibaud Baronian(Salomon、フランス) 5:55:49
- コディ・リンド Cody Lind (SCOTT、アメリカ) 5:59:54
- ジュリアン・ショリエ Julien Chorier(HOKA OneOne、フランス) 6:35:19
- 三浦裕一 Yuichi Miura(montrail / MountainHardwear、日本) 6:44:13
- 町田知宏 Tomohiro Machida(日本) 6:53:10
- ノ・ヘセオン Heeseong Noh(韓国) 6:56:47
- ジャッキー・レオン Chun Keung “Jackey” Leung(Salomon、香港) 6:56:56
女子 Women
- カロリーヌ・シャヴェロ Caroline Chaverot (HOKA OneOne、フランス) 6:27:09
- スンマヤ・ブッダ Sunmaya Budha (ネパール) 6:52:30
- モー・ゴベール Maud Gobert (Adidas、フランス) 7:28:49
- プルナ・レクシミ・ネウパリ Purna Leximi Neupani (ネパール) 7:45:00
- スーザン・チェプクオン Susan Jemvtai Chepkwon (ケニア) 8:16:05
- ジ・ヘオンジュ Hyeonju Ji (Adidas、韓国) 8:33:38
- タヒラ・ナジムニサ・ムハンマド・ザイド Tahira Najmunisaa Muhanmmad Zaid(マレーシア) 8:38:55
- リン・ヤンフェン Yanfeng Lin(中国) 8:45:53
- サマンサ・チャン Samantha Chan(香港) 8:53:35
- ニッキ・ハン Nikki Han(イギリス) 9:19:54