2017年トレイル世界選手権 Trail World Championships バディーア・プラタリア Badia Prataglia・Trail Sacred Forests プレビュー

今年はイタリアの歴史を静かに見守ってきた聖なる山林が舞台です。今週末の6月10日土曜日にイタリアのバディーア・プラタリア Badia Pratagliaで今年のトレイル世界選手権 Trail World Championshipsが開催されます。世界選手権はこの週末に開催されるトレイルランニング大会、Trail Sacred Forestsの中で49km 2,700mD+のレースとして開催されます。日本代表として、川崎雄哉 、近藤敬仁 Yoshihito Kondo、荒木宏太 Kota Araki、福地(斎藤)綾乃 Ayano Fukuchi, née Saitoの4人が出場する世界選手権は10日土曜日午前8時(日本時間同日午後3時)にスタート。近年、欧米の各国代表として出場するトップ選手の層が厚くなり注目度が高まっている2017年トレイル世界選手権を当サイト・DogsorCaravan.comは現地からレポートします。

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Trail Sacred Forestの舞台はアペニン山脈のカゼンティーノ森林国立公園

Trail Sacred Forestが開催されるのはイタリアのトスカーナ州とエミリア=ロマーニャ州にまたがるカゼンティーノ森林国立公園。イタリアを南北に貫くアペニン山脈の一部となります。スタート・フィニッシュ地点となるのはバディーア・プラタリア Badia Pratagliaという小さな山村で、かつてはこのエリアで営まれた林業の中心地であり、現在は自然に恵まれたリゾート地、ハイキングなどの拠点となっています。パディーア・プラタリアからも程近いカマルドリ修道院 Monastero di Camaldoliは11世紀から続く歴史を持ち、この山と森の恵みを活かしながら守ってきました。大会のコースはこうした歴史をもつ山と森の中に設けられます。

昨年の大会の模様。Photo courtesy of Trail Sacred Forest

トレイル世界選手権のコースとなる49kmのコースはバディーア・プラタリア Badia Pratagliaをスタートすると左右に山が切り立つ中の谷間を進んで標高差500mを登ります。最初のエイド(Eremo di Camaldoli, 9km)を過ぎるとコースは北へ。3つ目のエイド(Diga di Ridracoli, 23km)のあるダム湖の北端までは標高差800mの下り基調となります。ここからは標高差500mの登りを経て4つ目のエイド(Pietrapazza, 35km)へ。ここから標高差700mを登りかえすと、あとは残り5kmで500mを下ってバディーア・プラタリア Badia Pratagliaへフィニッシュします。昨年初めて開催されたこの大会では男子が4時間40分、女子は5時間40分で優勝しています。世界選手権として開催される今回の男子の優勝タイムは4時間10-20分くらいとなりそうです。(追記・3つ目のエイドの手前のダム湖の付近の土砂崩れのリスクを避けるためコースが一部変更となり、迂回路を通ることからコース全長は50kmになります。2017.6.6)

トレイル世界選手権のコースマップ。より詳しくはTracedeTrailのウェブサイトから。

Trail Sacred Trailでは各国の代表選手のみが出場するトレイル世界選手権以外にも、一般選手が参加して行われる80km(4,200mD+)、49km(2,700mD+)、25km(1,500mD+)、13km(700mD+)のレースが世界選手権と同じ6月10日土曜日に開催され、世界選手権とあわせると約1000人が参加します。

トレイル世界選手権とは

国際ウルトラランナーズ協会, IAU)はロードの100km、トラックの24時間走などで知られるウルトラマラソンの国際競技団体です。IAUがトレイルでのウルトラマラソンの世界選手権を初めて開催したのは2007年のことで、以来2年ごとにトレイル世界選手権が開催されてきました。2015年大会(フランス・アヌシー)からは国際トレイルランニング協会(International Trail Running Association, ITRA)が協力し、世界選手権は毎年開催されるようになります。

来年2018年の世界選手権はスペインで開催のペニャゴロサ・トレイルズ Penyagolosa Trailsにおいて5月12日に開催されることが決まっています。なお、今年2017年(イタリア)は中距離カテゴリーの世界選手権、来年2018年(スペイン)は長距離カテゴリーの世界選手権と位置付けられ、それぞれ次回の開催は2020年とされています。

  • これまでのトレイル世界選手権の歴史は次のようになります。
    • 2007年:Sunmart Texas Trail、50マイル(アメリカ・テキサス州ハンツビル、12月8日開催)。日本代表の櫻井教美 Norimi Sakuraiが女子優勝、男女総合4位に。
    • 2009年:Merrell Sky Race、68km(フランス・セレシュバリエ、7月12日開催)。トーマス・ロルブランシェ Thomas Lorblanchet(フランス)、セシリア・モラ Cecilia Mora(イタリア)がそれぞれ男女優勝、日本代表の櫻井教美が女子5位。
    • 2011年:世界選手権、71.5km(アイルランド・コネマラ山地、7月9日開催)。エリック・クラバリー Erik Clavery、モー・ゴベール Maud Gobert(ともにフランス)が男女それぞれで優勝。
    • 2013年:世界選手権、75km(イギリス・ウェールズ・コンウィ、7月6日開催)。優勝はリッキー・ライトフット Rickey Lightfoot(イギリス)、ナタリー・マクレア Nathalie Mauclair(フランス)。
    • 2015年:Maxi Race、85km(フランス・アヌシー、5月30日開催)。優勝はシルバン・コー Sylvain Court、ナタリー・マクレア Nathalie Mauclair(ともにフランス)。
    • 2016年:Trans Peneda-Geres、85km(ポルトガル、10月29日開催)。優勝はルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Hernando Alzaga(スペイン)、カロリーヌ・シャヴェロ Caroline Chaverot(フランス)。日本からは男子4人、女子3人が参加し、大杉哲也 Tetsuya Osugiが男子24位、吉住友里 Yuri Yoshizumiが女子13位に。
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当サイトではトレイル世界選手権が行われるバディーア・プラタリアに入り、現地の様子やトレイル世界選手権のレースについて現地からお伝えする予定です(コースへのアクセスが難しい箇所が多いため、ライブ速報はいつもよりもかなり限定的な内容となる見込みです)。また、日本代表選手のみなさんの表情やインタビューもお届けする予定です。当サイトのレポートをどうぞお楽しみに。

昨年の大会の模様。Photo courtesy of Trail Sacred Forest

トレイル世界選手権は10日土曜日午前8時(日本時間同日午後3時)にスタートします。

今回のトレイル世界選手権についての情報には次のものがあります。

今回の有力選手

トレイル世界選手権として開催される49kmのレースはIAUの傘下にある各国競技団体によって選ばれた各国代表選手のみが参加します。今回は25カ国から男女合わせて約270人の代表選手が出場する予定です。日本では国内で予め指定された昨年秋の3つの代表選考レースの結果をもとに決まった男子3人、女子1人の代表選手が出場します。

以下では今回のトレイル世界選手権の有力選手を紹介します。

なお、国別表彰の決め方は次のようになっています。

  • 各国からは男女それぞれ最大9人の代表選手が出場可能。
  • 国別チーム戦にはスタート前日の朝までに各国が指名した男女6人までが参加可能。指名された以外の選手は個人戦としてレースに出場。
  • 各国チーム戦に参加した選手のうち、各国の男女上位3人のタイムを合計して国別の順位を男女それぞれについて決める。

女子 Women

2013年、2015年のトレイル世界選手権で優勝し、昨年の世界選手権では4位だったナタリー・マクレア Nathalie MAUCLAIR(フランス)が今年の世界選手権にも出場します。2013年、14年のレユニオン Diagonale des Fousで優勝、2015年UTMB優勝の第一人者は今回も世界チャンピオンに一番近い一人でしょう。今年4月のサハラマラソンでは昨年に続いて2位になっています。一方、昨年のポルトガルでの世界選手権でカロリーヌ・シャヴェロに6分差で2位だったのがアサラ・ガルシア Azara GARCIA DE LOS SALMONES(スペイン)です。2014年のUTMBで5位になり、翌年のZagama-Aizkorriでは優勝。昨年2016年はスカイランニング世界選手権・ Epic Trail 42kで2位となり、今年は2月のTransgrancanariaで優勝しています。今回大きなタイトルを手にする可能性は高そう。そしてもう一人注目したいのはアメリカ代表のメーガン・ロシュ Megan ROCHE。カリフォルニア在住の27歳の医大生で走っているのは専らカリフォルニアの大会ですが、注目度の高いWay Too Cool 50kでは今年まで3連覇中で2015年のタイムは大会記録となっています。その実力を発揮すれば欧州の実力者を凌ぐレースを見せることになるでしょう。

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ナタリー・マクレア / Nathalie Mauclair

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アザラ・ガルシア Azara García De Los Salmones

上位が見込まれるアスリートとして次の名前が続きます。

  • アナリス・ルセ Anne-Lise ROUSSET(フランス):2014年CCC優勝、2015年トレイル世界選手権(フランス)4位、Templiers 75kで3位、2016年Transvulcaniaで2位、The Rut 50kで2位。
  • ラグナ・デバッツ Ragna DEBATS(オランダ、スペイン在住):2016年トレイル世界選手権(ポルトガル)3位、Limone Extreme 25kで5位、Pyrenees Stage Run 258k優勝、2015年Goretex TransAlpine-Run 293kmで優勝。
  • ヘマ・アレナス Gemma ARENAS(スペイン):2016年トレイル世界選手権(ポルトガル)5位、Ultra Pirineu 110kで優勝、Ultra SkyMarathon Madeira 55k優勝、スカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 105kで9位。
  • シルビア・ランパソ Silva RAMPAZZO(イタリア):先週末のZegama-Aizkorriで2位。
  • セリーヌ・ラファイエ Céline LAFAYE(フランス):2016年トレイル世界選手権(ポルトガル)3位、Limone Extreme 25kで3位、2015年Marathon du Mont Blancで3位。
  • アマンディーヌ・フェラート Amandine FERRATO(フランス):2016年MIUT 43kで優勝。
  • ジョー・ミーク Joanna MEEK(イギリス):2016年CCCで2位、2016年トレイル世界選手権(ポルトガル)7位。
  • アニタ・オルティズ Anita ORTIZ(アメリカ):2016年Pikes Peak Marathonで2位。2009年ウェスタン・ステイツ優勝。53歳のベテラン。
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日本代表の福地(斎藤)綾乃 Ayano Fukuchi, née Saitoは昨年秋の熊野古道トレイルランニングレースで丹羽薫に3分差をつけて優勝。今年に入ってからは3月のOSJ新城32kで3位でした。初めてとなる海外でのトレイルランニングレースへの挑戦の結果に期待です。

男子 Men

今回のトレイル世界選手権の男子のレースの優勝候補はルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto HERNANDO(スペイン)の一択といって間違いはないでしょう。IAUトレイル世界選手権では2015年のフランス、昨年のポルトガルと連覇。スカイランニング世界選手権では2014年80km du Mont-Blanc、2016年のBuff Epic Trail 105kと連覇。Transvulcaniaは2014年から16年まで3連覇。2015年UTMBでは2位。ここ数年の安定したパフォーマンスをみれば今回のトレイル世界選手権で3連覇は固いというほかありません。ヘルナンドの独走を許さない選手がいるとすれば、まず挙げたいのはマルコ・デ・ガスペリ Marco DE GASPERI(イタリア)です。スカイランニングでは若きキリアンのよきライバルとして何度も優勝争いをしてきたガスペリの昨年2016年はTrofeo Kima 52kで2位、WMRAマウンテンランニング長距離世界選手権(40k, スロベニア)で2位。先週末にはZegama-Aizkorriで2位になったばかりです。(追記・マルコ・デ・ガスペリは今回出場を見送ります。2017.6.9)そしてスペインのミゲル・ヘラス Miguel Angel HERASは欧州の数々の山岳レースでの優勝だけでなくアメリカのTNF 50mile championshipを2010年、12年に制しています。現在41歳ですが、昨年はUltra Pirineu 110k、Templiers 76kで優勝とその強さは健在。最近はエントリーしていても自らのコンディションをみて出場を見送ることが少なくありませんが、今回出場すれば上位を争うことになるでしょう。 (追記・ミゲル・ヘラスはスペイン・チームの補欠選手となっています。2017.6.7)

ルイス・アルベルト・ヘルナンド / Luis Alberto Hernando

Marco De Gasperi skyrunning pic

マルコ・デ・ガスペリ/Marco De Gasperi(イタリア)

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ミゲル・ヘラス / Miguel Angel Heras Hernandez

これらの経験豊富な欧州のトップ選手に対してアメリカからはそのスピードで注目される若手アスリートが挑みます。ヘイデン・ホークス Hayden HAWKS(アメリカ)は現在25歳。南ユタ大学ではクロスカントリー走で活躍し、卒業直後の昨年夏にトレイルランニングにデビュー。Speedgoad 50kで優勝、TNF 50mile championshipでは最後まで激しく競り合って2位に。今年に入ってからも2月のRed Hot Moab 55kで優勝、3月のChuckanut 50kで2位。欧州のトップ選手との初めてのトレイルランニングレースでどんな結果を出すかが注目されています。同じくアメリカの若手で注目されるのがアンディ・ワッカー Andy WACKER。こちらもコロラド大でクロスカントリー走のトップ選手としての実績を持つ27歳。ロードマラソンやマウンテンランニングで活躍しており、ヨーロッパでは2015年のツェルマット・マラソンで2位になった経験を持ちます。

さらに、トップ10圏内を争うことになりそうなのは次の選手たち。

  • ベヌワ・コリ Benoit CORI(フランス):2014、15年Templiers 76kで2連覇。2015年Saintelyon 72k優勝。2016年トレイル世界選手権(ポルトガル)4位。
  • シルバン・コー Sylvain COURT(フランス):トレイル世界選手権では2015年フランスで優勝、2016年ポルトガルで3位。昨年はLavaredo Ultra Trailで4位。
  • ニコラ・マルタン Nicolas MARTIN(フランス):2015年はTempliers 76kで2位、Saintelyon 72k優勝、CCCで3位、トレイル世界選手権(フランス)で7位。2016年トレイル世界選手権(ポルトガル)で2位、Transvulcaniaで2位。
  • セドリック・フルールトン Cédric FLEURETON(フランス):2014年、2015年のトレイルランニング全仏選手権・短距離カテゴリーで2連覇。2016年 Marathon du Mont-Blanc優勝、Templiers 76kで3位。
  • ルドビック・ポムレ / Ludovic Pommeret

    ルドビック・ポムレ Ludovic POMMERET(フランス):昨年のUTMBチャンピオン。トレイル世界選手権では2015年フランス、昨年のポルトガルでともに5位に。

  • マリオ・メンドーザ Mario MENDOZA(アメリカ):2015年Cayuga Trails 50で優勝、2016年Lake Sonoma 50で3位、Chuckanut 50kで2位。今年に入ってRocky Raccoon 100で4位に。
  • ダニエル・ガルシア Daniel GARCIA(スペイン):2015年Transvulcaniaで2位。
  • クリストファー・クレメンテ Cristofer CLEMENTE(スペイン):2016年Rut 50k優勝、Ultra SkyMarathon Madeira 55k優勝、Ultra Pirineuで3位。
  • コディ・リード Cody REED(アメリカ):2016年Miwok 100k、Tamalpa Headlands 50k優勝、2017年Way Too Cool 50k優勝。
  • 近藤敬仁 Yoshihito KONDO(日本):スカイランニング世界選手権では2014年の80km du Mont-Blancで18位、2016年のBuff Epic Trail 42kで16位。2015年Templiers 75kでは13位。今年に入って国内ではOSJ新城32k、比叡山50kで優勝しています。日本代表選手の中では欧州でのレース経験が豊富でトップ10に最も近いといえそうです。
  • ダニエル・ガルシア Daniel GARCIA(スペイン):2015年Transvulcaniaで2位。
  • デヴィッド・ロシュ David ROCHE(アメリカ):Tamalpa Headlands 50kで2015年3位、2016年2位、Way Too Cool 50kで2016年優勝。

日本代表の3選手の中ではこれまでの実績から考えると近藤敬仁が最もトップ10に近い存在といえます。昨年のハセツネCUPで優勝した川崎雄哉 Yuya KAWASAKIは今回が初めての海外レース。今年は平尾台40kで2位、多良の森優勝。荒木宏太 Kota ARAKIは昨年の熊野古道50kで優勝し、ハセツネCUPでは3位。国際的なレースへのデビューとして臨んだ昨年のSTYではトップを走りながらもレースが中止となる不運もありました。川崎、荒木がその実力を発揮すれば今回の世界選手権でのトップ10入りも可能なはず。3選手の活躍に注目です。

Yoshihito Kondo Square

近藤敬仁 / Yoshihito Kondo

川崎雄哉 / Yuya Kawasaki

荒木宏太 / Kota Araki

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