山頂コースは悪天候のため大会当日の朝になって短縮と発表に。五合目でフィニッシュとなった第72回富士登山競走 Fuji Mountain Race山頂コースの女子は吉住友里 Yuri Yoshizumi (MEDIFOAM)が優勝して三連覇。男子では昨年の五合目コース優勝の21歳、山田雄喜 Yuki Yamada(東京農業大学)が制しました。初参戦で注目された上田瑠偉 Ruy Ueda(Columbia Montrail)は終盤のトレイルで順位を上げて2位、山頂コース二連覇の五郎谷俊 Shun Gorotani(コモディイイダ)は3位でした。
(写真・山頂コースで三連覇を果たした吉住友里。Photo by Koichi Iwasa)
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大会前日夕方の富士吉田市は土砂降りの夕立の後もポツポツと雨が降っていましたが、深夜には雨は上がっていた様子。大会当日の7月26日金曜日は午後から雨という予報で、大会開催中は大きく天気が崩れることはなさそうでした。
しかし、早朝午前5時40分過ぎからはコースとなる富士山吉田口登山道を始め、富士吉田に強い雨が降りました。この雨はまもなく上がったものの、午前6時に大会は山頂コースの五合目打ち切りを発表。この後、結果としては富士山に強い雨が降ることはありませんでした。しかしこの日の富士山北麓の大気は不安定な状態が続いていたことや早朝の雨で濡れた七合目より上のコース上の溶岩は滑りやすくなっていたことを考えれば、五合目打ち切りはやむを得ない判断でした。
五合目打ち切りが発表された1時間後の午前7時に予定通り山頂コースはスタート。コースは富士吉田市役所前から馬返し(約11km)まで標高差600m強の舗装路の登りとここから五合目までの約5km、標高差800m強のトレイルの登りからなる16kmです。
女子のレースは吉住友里が馬返しを53分で通過、続いて立石ゆう子が3分差、さらに3分差で3番手に荻原真紀。トレイル区間に入って吉住友里 Yuri Yoshizumiがさらに差を広げて1時間37分23秒でフィニッシュ。一方の立石ゆう子 Yuko Tateishiは前週の海外レースの疲れが残ったかトレイルに入ってペースを落としましたが、吉住から8分半差で2位に。続いていた荻原真紀 Maki Ogiharaは立石に28秒差まで詰め寄って3位となりました。
優勝した吉住友里は初めて出場した2016年の五合目コースでの優勝も含めれば4年連続で富士登山競走の優勝を勝ち取る快挙。昨シーズンに続いて、今年も富士吉田を中心に富士山北麓に滞在してトレーニングに励んでおり、今シーズンはバーティカルキロメーターの世界シリーズ戦、Vertical Kilometer World Circuitで現在ランキング2位。続くシリーズ戦に加えて8月にはUTMB®︎の55kmのレース、OCCにも出場予定です。立石ゆう子は昨年のハセツネCUPで3位に。今シーズンは高層ビルを階段で駆け上がるバーティカルランの世界シリーズ戦、Vertical World Circuitに取り組んでいて、富士登山競走の前週にはロンドンでのレースで2位に。吉住と同じくOCCに出場予定です。荻原真紀は地元の山梨県のロード、トレイルのレースでは常に上位に入る選手で富士登山競走ではトップ3に常に入る実力の持ち主。突然に五合目打ち切りとなった今年のレースでも3位になりました。
一方男子のレースは山田雄喜 Yuki Yamadaが序盤からレースをリードし、馬返しを43分で通過。続く五郎谷俊は39秒差で続きますが、3番手のクリスティアン・マティスは山田から1分35秒差、4番手の上田瑠偉は同じく1分49秒差とやや差が開きました。山田は馬返しからのトレイル区間でもペースを落とすことなく、1時間17分26秒で優勝。昨年の自身の五合目コース優勝タイム(1時間18分38秒)を上回りました。続く選手の中ではスカイランニング、トレイルランニングの世界的な大会で上位に入る実力で知られる上田瑠偉 Ruy Uedaが馬返しからのトレイルで一気にペースを上げて先行する選手を抜き去って2位でフィニッシュ。優勝した山田との差は1分14秒差。しかし馬返しから五合目のタイムは33分40秒と山田の34分15秒を上回り、山の第一人者としての力を発揮しました。3位には五郎谷俊 Shun Gorotaniが入り、優勝の山田とは2分38秒差でした。
男子優勝の山田雄喜は現在21歳。千葉・流山南高からコモディイイダの実業団アスリートとなります。コモディイイダのチームメイトである五郎谷俊が山頂コースを連覇した昨年の富士登山競走の五合目コースで優勝。その後、10月の尾瀬岩鞍VKで男子総合6位に。今春、東京農業大学に進学して陸上部へ。箱根駅伝出場、とりわけ箱根の山登りの五区での出場を目指しています。今シーズンは8月2-4日にイタリアで開催されるスカイランニング・ユース世界選手権に日本代表選手として出場します。2位となった上田瑠偉はトレイルランニング、スカイランニングで日本を代表するトップアスリート。今シーズンはスカイランニングの世界シリーズ戦であるMIGU RUN Skyrunner World Seriesで現在ランキング2位。2014年にはハセツネCUPを大会新記録で優勝、2016年にUTMB®︎の101kmのレース、CCC®︎で準優勝した経歴も。今回のレース後には「五合目打ち切りでロードが中心のレースとなったとしても、日本の選手には負けたくなかった」と悔しさをにじませましたが、馬返しから五合目のタイムからもわかるように、日本のトップ選手としての強い決意のあふれる走りを見せました。3位の五郎谷俊は山頂コースで一昨年、昨年と二連覇。一昨年の2017年で2時間31分34秒は大会記録に3分53秒差まで迫る好タイムでした。今回の五合目のタイムは2017年の自身の五合目ラップと比べると4分のビハインドでベストのコンディションではありませんでしたが、「もう一度、富士山で記録に挑戦したい」と話しました。このほか、4位になったクリスティアン・マティス Christian Mathysはスイスから参加した32歳。今年6月のトレイル世界選手権(ポルトガル)では3位となっています。富士山に来るのは3回目で、今回は念願の富士登山競走への参加でした。この日は五合目打ち切りになったと知らずにコースを走っていたところ、突然レースが終わってしまうことに。実は五合目で打ち切りになったと聞いてからもそのまま山頂まで2時間33分で登ったとのこと。非凡な力の持ち主であることは間違いなさそうです。
富士登山競走・リザルト
(以下は大会会場で掲示された速報より。正式なリザルトが公表され次第リンク先として紹介します。)
山頂コース
男子
- 1.山田雄喜 Yuki Yamada (東京農業大学) 1:17:26
- 2.上田瑠偉 Ruy Ueda (Columbia Montrail) 1:18:40
- 3.五郎谷俊 Shun Gorotani(コモディイイダ) 1:20:04
- 4. クリスティアン・マティス Christian Mathys(スイス) 1:21:15
- 5.江本英卓 Suguru Emoto 1:23:39
- 6.牛田美樹 Miki Ushida(inov-8) 1:23:43
- 7.加藤聡 Satoshi Kato 1:24:15
- 8.三浦裕一 Yuichi Miura(Columbia Montrail) 1:25:44
- 9.佐藤傑 Masaru Sato 1:26:17
- 10.青木純 Jun Aoki 1:27:06
- 11.東徹 Toru Higashi 1:28:07
- 12.高瀬裕行 Hiroyuki Takase 1:28:17
- 13.大塚良軌 Yoshiki Otsuka 1:28:29
- 14.村田稔明 Toshiaki Murata 1:28:29
- 15.柳原真人 Masato Yanagihara 1:28:59
- 16.宮川朋史 Tomofumi Miyagawa 1:29:01
- 17.大沢正和 Masakazu Osawa (inov-8) 1:29:15
- 18.宮川鉄也 Tetsuya Miyagawa 1:29:20
- 19.藤岡啓 Kei Fujioka 1:29:38
- 20.藤飛翔 Tsubasa Fuji (Salomon)1:30:04
このほか、当サイトのプレビューで紹介した選手では菊嶋啓が23位、近藤敬仁が24位、岡嶋智己が32位、吉原稔が86位、城武雅がDNSでした。
女子
- 1.吉住友里 Yuri Yoshizumi (MEDIFOAM)1:37:23
- 2.立石ゆう子 Yuko Tateishi 1:45:49
- 3.荻原真紀 Maki Ogihara 1:46:17
- 4.廣瀬光子 Mitsuko Hirose 1:48:19
- 5.長坂恵子 Keiko Nagasaka 1:49:34
- 6.木下久美 Kumi Kinoshita 1:50:12
- 7.星野由香理 Yukari Hoshino 1:52:14
- 8.野本有紀子 Yukiko Nomoto 1:54:29
- 9.三浦可奈美 Kanami Miura 1:56:45
- 10.倉田優子 Yuko Kurata 1:57:10
このほか、遠藤麻美が12位、石川純子が13位、仲田光穂が14位、大庭知子が15位、浅原かおりが18位、田中真紀が46位、福島舞が63位、大石由美子がDNSでした。
五合目コース
男子
- 1.齋藤拓也 Takuya Saito 1:22:10
- 2.井下裕貴 Yuki Inoshita 1:25:26
- 3.板垣辰也 Tatsuya Itagaki (TEAM RxL) 1:26:07
- 4.加藤淳一 Junichi Kato 1:25:58
- 5.須賀暁 Satoru Suga (GONTEX) 1:27:32
- 6.薬師寺裕人 Yuto Yakushiji 1:29:56
- 7.谷口公基 Koki Taniguchi 1:31:15
- 8.加藤拓馬 Takuma Kato 1:31:45
- 9.清水慎也 Shinya Shimizu 1:32:48
- 10.佐々木跡武 Atomu Sasaki 1:33:04
女子
- 1.吉田香織 Kaori Yoshida(TEAM RxL) 1:37:10
- 2.小林玲子 Reiko Kobayashi 1:39:35
- 3.田中礼美 Yoshimi Tanaka 1:42:19
- 4.長谷川奈々 Nana Hasegawa 1:45:45
- 5.川西美穂 Miho Kawanishi 1:46:41
- 6.中村美香 Mika Nakamura 1:49:22
- 7.リチ・クローパ Richi Kroupa(アメリカ) 1:49:29
- 8.篠崎理沙 Risa Shinozaki 1:50:43
- 9.藤本麻里 Mari Fujimoto 1:51:52
- 10.松尾智子 Tomoko Matsuo 1:54:19