今年4月24−26日に予定されていたウルトラトレイル・マウントフジ Ultra-Trail Mt. Fujiは3月12日に東京都内で記者会見を行いました。会見の中で、新型コロナウィルスの感染が国内外で拡大していることから2020年大会を中止することを発表。年内の大会延期も行わないこととなりました。
2020年大会に出場予定の選手全員に次回2021年大会の優先エントリー権が与えられます。また特例として、参加資格(過去3年以内に獲得しているITRAポイント)が2021年大会への参加申込み時点で失効していても、参加申込みが認められます。この場合の2021年大会への参加にあたってはエントリー料が減額されます。また2021年大会への参加をエントリーを希望しない場合には、2021年のエントリー料の一部が返金されます。減額、返金の具体的な内容は4月下旬までに発表される予定です。
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大会運営を縮小して開催を目指すも、リスクを抑えられないと判断
記者会見では大会副実行委員長で医師である福田六花さんが大会中止を決めるに至った経緯を説明。東京マラソンが一般参加者のレースを行わないと発表した2月17日に検討を開始。新型コロナウィルスの状況を見極めながらもエイドステーションをはじめとする大会運営を大幅に縮小、変更して開催することを目指すことに。
2月26日には安倍晋三首相が2週間程度の大規模イベントの中止を要請。その直後、ウルトラトレイルマウントフジでは2週間後の状況をみて判断することを決め、2月28日に大会としての方針を発表しました。その後、3月9日に国の専門家会議はイベント中止や学校休校の効果を見極められるのは3月19日頃と会見で説明。翌10日に安倍首相は3月19日をめどにあと10日のイベント中止の継続を要請。
この間、大会では運営を縮小して開催するための準備を進めたものの、大会スタッフの安全を守るためのマスク5000枚や薬品類の確保の目処が立たず。さらに「屋外のスポーツとはいえ100マイルレースは長時間にわたる。特に多くの選手はレースの後半のエイドステーションで休みを取るので、エイドステーションの休憩施設は100人以上の選手が集まるだろう。これは新型コロナウィルスに感染するリスクが高いというほかない」(福田六花副委員長)という見通しが明らかに。一度は想定していたプライベートサポートの禁止やエイドで提供する補給食などの見直しといった運営体制の縮小が現実には難しいことがわかったことで、この日の大会中止という判断に至りました。コースが通る各自治体やエイドステーションの責任者の方々の多くは、厳しい情勢下でも「大会を開催することには好意的だった」とのこと。
大会実行委員長の鏑木毅さんは、「昨年秋の台風被害、今年の新型コロナウィルス感染拡大と逆風が続くなかでトレイルランニングの火を消したくないという思いから、なんとしてもUTMFを開催したかった」と今回の判断に至った心情を話しました。さらに「各地の大会主催者の皆さんには、周囲にあわせてむやみに開催を自粛するのではなく、主体的に開催の可否を検討していただくよう呼びかけたい」とメッセージを送りました。
世界各地のトレイルランニング大会が相次いで大会の中止や延期を発表
【追記・Penyagolosa Trailsについて中止して延期となったことを加筆しました。その後Whalers’ Great Route Ultra-Trailについても中止して延期となったことを加筆しました。2020.03.14】本稿執筆時点で日本の4月前半までのマラソンやトレイルランニング大会はほとんどが中止、以降の大会にも中止とするところが増えています。そしてコロナウィルスへの感染は世界中に広がっています。UTMFも参加しているUltra-Trail World Tourの大会についてみると、次の通り。
- 3月23日 Gaoligong by UTMB(中国)中止を決定、12月18-20日に延期
- 4月4日 Patagonia Run(アルゼンチン)中止を決定、今年10−12月への延期を検討
- 4月17日 100 Miles of Istria(クロアチア)中止を決定、9月24-27日に延期
- 4月18日 Penyagolosa Trails(スペイン)
リスクは中程度と評価して開催準備を継続中止を決定、今年10月16-18日に延期 - 4月24日 Ultra-Trail Mt. Fuji(日本)中止を決定
- 4月25日 Madeira Island Ultra-Trail, MIUT(ポルトガル)中止を決定
- 5月8日 Whalers’ Great Route Ultra-Trail(ポルトガル)
状況を注視しつつ開催準備を継続中止を決定、10月30日 – 11月1日に延期
このほか、4月にモロッコで開催される砂漠のステージレース、サハラ砂漠マラソン Marathon des Sablesは4月3-13日に予定していた大会を9月18−20日に延期。アメリカにおいても3月21日にワシントン州ベリンハムで開催予定のChuckanut 50kが延期(開催日未定)、4月4日にカリフォルニア州フォルサムで開催予定のAmerican River 50が中止に。6月27-28日に開催のWestern Statesも状況を注視しながら開催準備を進めていることを発表しています。
参考・大会発表資料「ウルトラトレイル・マウントフジ2020の開催中止について」
2020年3月12日
ウルトラトレイル・マウントフジ2020の開催中止について
ウルトラトレイル・マウントフジ実行委員会
実行委員長 鏑木 毅
この度の新型コロナウイルスにより亡くなられたみなさまに謹んでお悔みを申し上げます。また、罹患されたみなさま、そして困難な状況におられる全てのみなさまの回復を心よりお祈り申し上げます。
さて、当実行委員会では新型コロナウイルスの状況を注視しながら開催の検討を進めてまいりましたが、残念ながら国内外とも収束の兆しが見えておりません。私たちはこのような状況下では、様々な対策を施して開催したとしても、本大会特有の長時間のエイド内での活動(飲食物の提供・救護活動・仮眠所等)やコース上での救助活動、受付・装備品チエック等での選手及びボランティア・スタッフの接触機会をなくす事は困難であり選手・ボランティア・スタッフのみなさまに安心して大会に参加する環境を提供できないと判断いたしました。また海外選手の日本への渡航も困難な状況が予測される事から、2020年大会の開催は中止せざるを得ない結論に至りました。
本大会のために、トレーニング・準備を進めてこられました選手の皆様、そして事前のコース整備や当日のボランティア活動を表明して頂いた皆様、多大なご協力頂いておりますスポンサー・出展社・協力団体の皆様、地域の皆様には大変なご迷惑をおかけする事深くお詫び申し上げます。
今回の困難な状況を鑑み、特例ではございますが、選手の皆様には次回大会のエントリー権やエントリー費用の減額を含めた対応を別紙の通り予定しております。詳細については4月下旬までをめどに、エントリーの際にご登録いただいております、メールアドレス及び大会公式サイト・Facebookにてご連絡、発表させていただきます。
引き続き私たちは、世界中の皆様に自らに挑戦することの大切さと、トレイルランニングの魅力を美しい富士山の文化と自然環境の中で伝えて行けるよう取り組んでまいります。何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
(別紙)
ウルトラトレイルマウントフジ 2020中止対応について
1) 中止対応について
1 全ての選手に次回大会(2021 年大会)の優先エントリー権(有料)を付与いたします。
・2021 年大会のエントリー費用は本大会の出費を算出した上で減額いたします。(金額は4月下旬までに確定)
・寄付エントリーの方には次回大会のエントリー費用は無料となります。
2 次回大会の優先エントリー権は参加資格が失効したとしても特例で認めます。
・2020 年大会参加資格:大会エントリー開始日の3年前から前日までの間に、国際トレイルランニング協会(ITRA)がポイントを認定しているレースに出場・完走し、最大3レースで 10 ポイント以上を獲得すること。ただし最低1レースはエントリー開始日の1年前から前日までに開催されるレースとする。
3 次回大会の優先エントリー権を望まない方へは参加費一部返金を実施
・返金者には、次回大会の優先エントリー権は失効いたします。尚、寄付エントリーの方への返金はいたしません。
4 参加Tシャツ(THE NORTH FACE 製)は事務局より全選手へ送付させていただきます。
5 新型コロナウイルスの全世界での収束傾向が確認された上で、アスリート向けのソーシャルネットワークアプリ STRAVAを活用した、「Virtual UTMF(仮称)」を開催いたします。(現状では6月以降で検討中)
2) 今後のスケジュールについて
2020年4月下旬までに上記の中止対応の詳細を確定し、エントリーの際にご登録いただいております、メールアドレス及び大会公式サイト、Facebookにてご連絡、発表させていただきます。