Garmin Enduro レビュー・ウルトラ&トレイルにフォーカスしてGPSモードで最長80時間記録可能【外観・スペック編】

最近は幅広い用途に向けて多様なスマートウォッチを展開しているGarmin。今回の新モデルでウルトラ・トレイルを走るアスリートのニーズに真正面から応えます。

ガーミン・ジャパンはマルチスポーツGPSウォッチの新製品、「Enduro(エンデューロ)」を3月25日に発表、4月8日から発売します(4月1日から予約開始)。ベゼルがステンレスのモデル(104,500円<税込>)とDLCコーティングの施されたチタンのモデル(115,500円<税込>)がラインナップされます。バッテリー持続時間はGPSモードで70時間とfenix 6シリーズと比べて大幅に強化。加えてソーラー充電機能により最大10時間のバッテリー持続時間の延長が可能。これにより最長で80時間のアクティビティを連続で記録可能となっています。

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Garmin Enduro。写真はDLCチタンモデルだが、ステンレスモデルとはベゼルの材質と重量、カラー、価格の違いのみで機能に差はない。

Garmin Enduro。写真はDLCチタンモデルだが、ステンレスモデルとはベゼルの材質と重量、カラー、価格の違いのみで機能に差はない。

このほか、ディスプレイに地形図を表示する機能や音楽プレーヤー機能は持たないものの、高低差のあるコースで計測するVO2Max(最大酸素摂取量)の精度が向上し、登りセクションのプロファイルをリアルタイムに表示するClimbPro機能を下りセクションにも拡張。さらにエイドステーションなどでの滞在時間を記録する休憩タイマーといった機能を搭載しました。

行動中にバッテリーの心配をしないでアクティビティを記録し続けてくれることは、100kmや100マイル(あるいはもっと長い距離)を走るウルトラマラソン、トレイルランニングのファンにとって待望の機能です。Garminによれば、世界中がコロナ禍に見舞われる中でトレイルランニングに取り組むアスリートは増えているといい、この「Enduro」はそうした市場の動きを受けて開発されたとのこと。

Garminから提供していただいた「Enduro」をみながら、今回は外観やスペックを中心にレビューしていきます。実際にトレイルやロードを走ってみた印象をレビューの後編として後日公開する予定です。

この記事ではEnduroの発売前にガーミン・ジャパンにお借りした、外観やデザインの評価用モデルに基づいてレビューしています。

外観は見慣れたデザインだが長距離・長時間のトレイルランニングに最適化した新モデル

というわけで手元に届いたEnduroをみると、、その見た目はfenix 6にそっくり。実際にソーラー充電機能搭載のシリーズのトップモデル、fenix 6X Pro Dual Power Ti Black DLC(以下fenix 6X Pro Dual Power)と比べると、51 x 51 x 14.9 mmというサイズとデザインは同じ。ディスプレイのサイズと解像度も変わりありません。重量もEnduroのチタンモデルが55gに対してfenixの方は54gとほぼ同じ(いずれもケースのみ、Eunduroのステンレスモデルは65g)。Enduroのディスプレイ外周が黄緑色で縁取られていなければfenixとは見分けがつかないほど。

新製品のEnduro(左)と筆者が16ヶ月肌身離さず身につけ、転倒して傷もつけてしまったfenix 6X Sapphire Black DLC(右)。Enduroとの比較では、ベゼルが同じDLCコーティングでもチタンのEnduroとfenix 6Xのステンレスでは光沢に違いがある。

新製品のEnduro(左)と筆者が16ヶ月肌身離さず身につけ、転倒して傷もつけてしまったfenix 6X Sapphire Black DLC(右)。ベゼルが同じDLCコーティングでもチタンのEnduroとfenix 6Xのステンレスでは光沢に違いがある。

Enduro(上)とfenix 6X Sapphire Black DLC(下)。本文中でふれているfenix 6X Pro Dual Powerとは、ソーラー充電機能がなくベゼルがステンレスである点が異なるがサイズは同じ。

Enduro(上)とfenix 6X Sapphire Black DLC(下)。本文中でふれているfenix 6X Pro Dual Powerとは、ソーラー充電機能がなくベゼルがステンレスである点が異なるがサイズはfenix 6X Sapphire Black DLCと同じ。

一方、ストラップは伸縮性のある「UltraFit Nylon Strap」。Apple Watchのスポーツループに似た感じですが、ストラップの両端で長さを調節できます。肌触りがよく汗抜けもよさそうなので、アクティビティ中は快適に使えそう。fenix 6X Pro Dual Powerのシリコンバンドが28gに対してこのナイロンストラップは6gと軽量化にも貢献しています。どちらも26mmのQuickFitウォッチバンド互換で、fenix 6ユーザーもナイロンストラップにつけかけることが可能です。

Enduroのナイロンバンドは正確には「UltraFit ナイロンストラップ」の製品名でGarmin純正品として別売りもされている。

Enduroに付属する「UltraFit Nylon Strap」はGarmin純正品として別売りもされている。

伸縮性があって着け心地がよい。

伸縮性があって着け心地がよい。

新登場のEnduroはfenix 6のマイナーチェンジ版のようにみえるかもしれません。でもGarminによれば、Enduroはエンデュランス・スポーツに打ち込むアスリートが本当に必要とする機能、とりわけバッテリーの持続時間を強化した新モデル、なのです。

バッテリーを大幅に強化、太陽光によってGPSモードで最大10時間バッテリー持続時間が延びる

同じサイズのfenix 6X Pro Dual Powerと比べて大幅に強化されたのはバッテリーの持続時間。

Enduro Enduro
+ソーラー充電
fenix 6X Pro
Dual Power
fenix 6X Pro
Dual Power
+ソーラー充電
通常のGPSモード* 70時間 80時間 60時間 66時間
バッテリー最節約時のGPSモード* 200時間 300時間 120時間 148時間
エクスペディションGPSモード** 65日間 95日間 46日間 56日間
通常のウォッチモード** 50日間 65日間 21日間 24日間
バッテリー節約ウォッチモード** 130日間 1年間 80日間 120日間
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*50,000ルクスの条件下で使用した場合
**一日中着用し、野外の50,000ルクスの条件下で1日3時間置いた場合

一般に販売されているGPSスポーツウォッチとしてはEnduroが最も長いバッテリー持続時間を誇ることは間違いないでしょう。ソーラー充電機能はfenix 6X/6/6Sにそれぞれ「Pro Dual Power」の名を冠したモデルに導入されているもの。ディスプレイの見やすさを損なうことなくソーラー充電機能を備えた「Power Glass」はウォッチのバッテリーをフル充電することはできないものの、バッテリー持続時間を大幅に延長します(ちなみに50,000ルクスは概ね、晴れの日の昼間に日差しを受けた状態に相当)。

Enduroのディスプレイをよく見ると周囲のわずかな隙間の色が異なっており、ここでバッテリーにソーラー充電するというのがPower Glassの仕組み。

Enduroのディスプレイをよく見ると周囲のわずかな隙間の色が異なっており、ここでバッテリーにソーラー充電するというのがPower Glassの仕組み。

GPSモードでバッテリーの持つ時間が66時間から80時間になっても、それほど長時間のレースやFKTを走り続ける機会は実際にはあまりないかもしれません。とはいえ、どんな長時間であっても走り終えるまで充電する必要がないという安心感はトレイルランニング、特にウルトラトレイルを走るアスリートにとっては何物にも代えがたいのは確かです。

トレイルランVO2 Maxなどトレイルランニング向けの新機能も追加

バッテリーの他にも、Enduroではトレイルランニング向けの機能が追加されています。

レース中のエイドステーション滞在時間を記録する「休憩タイマー」機能

100kmや100マイルのレースとなればエイドステーションでしっかり補給してトイレに行って、さらには仮眠して、と結構な時間を歩き回りながら過ごすかもしれません。この間もウォッチはエイドにいる時間や歩いた距離もレース中と同じようにGPSで記録してしまいます。これを嫌ってウォッチを一時停止にするとGPSの記録は止まりますが、エイドを出るときに一時停止を解除し忘れると次に気づくまでGPSのログは記録されないことになります。これは結構ありがちな悩みではないでしょうか。

アクティビティで「ウルトララン」を選ぶと、右下ボタンを押すことでレストタイマーが起動。再び押してランに戻すまではウォッチの表示も変わる。

アクティビティで「ウルトララン」を選ぶと、右下ボタンを押すことで休憩タイマーが起動。再び押してランに戻すまではウォッチの表示も変わる。

Enduroで導入された「休憩タイマー」機能では、アクティビティの種類を「ウルトララン」に設定すると、これまではラップの記録に当てられていたウォッチ右下のボタンに休憩タイマーの開始・終了を当てることができます。休憩タイマーが動いている間、ウォッチはアクティビティの間に休憩の時間がはさまったと記録すると同時に、GPSログの記録は続けます。アクティビティの後にGarmin Connectで記録を確認すると、休憩の時間と距離はアクティビティとは別に記録されているので、エイド滞在を除いたタイムや距離を計算することができます。

レース以外でも、例えばトレイルツーリングの途中に見晴らしのいいところで休憩を取ったりしながらも、ランニングの距離と時間は正確に記録しておきたい、といった時にもこの「休憩タイマー」機能が役立ちそうです。

登り下りがあるコースでより正確に計測する「トレイルランVO2Max」機能

VO2Max(最大酸素摂取量)はアスリートの運動能力の客観的な指標で、トレーニングが効果を上げるにつれて少しずつ数字が大きくなっていきます。Garminのウォッチではランニングなどのアクティビティ中のデータからアルゴリズムでその値を算出します。ところが、トレイルランニングでアップダウンがあったりテクニカルだったりするところを走るときには、運動の強度は同じでもスピードが落ちるためにロードを走る時よりも算出されるVO2Maxが低くなりがちでした。この点がEnduroでは修正されました。

Enduroではトレイルランニングの特性に応じてVO2Maxを算出するようにアルゴリズムがアップデートされている。

Enduroではトレイルランニングの特性に応じてVO2Maxを算出するようにアルゴリズムがアップデートされている。

ウォッチが算出するVO2Maxの数値はトレーニングレベルの評価機能やリカバリーに必要な時間の算出機能にも利用され、これらの機能もより正確なアドバイスをアスリートに与えてくれることになります。

ダウンヒルのセクションにも拡張された「ClimbPro」機能

「ClimbPro」はGPSログなどからあらかじめスマホアプリまたはPCのGarmin Connectで「コース」として設定しておき、実際に走る場合にその「コース」を設定してスタートボタンを押すと、登りのセクションに入るとその登り区間の距離や獲得高度、平均斜度を高低図とともにディスプレイに表示する機能。走っている時にこの登りがこの後どれくらいキツくなるかとかどこまで続くかを教えてくれる便利な機能です。

従来は登りセクションでしかこうした表示はされませんでしたが、Enduroでは下りでも同様の表示がされるようになりました。

Garmin Connectから「コース」をEnduroに転送して、ランニング開始前にそのコースを走ることを設定する。すると「ClimbPro」によりコース上の登りセクションの距離や平均斜度、獲得高度を表示してくれる。

Garmin Connectから「コース」をEnduroに転送して、ランニング開始前にそのコースを走ることを設定する。すると「ClimbPro」によりコース上の登りセクションの距離や平均斜度、獲得高度を表示してくれる。

Enduroでは登りだけでなく、下りについても「ClimbPro」により距離や平均斜度、獲得高度が表示されるようになった。

Enduroでは登りだけでなく、下りについても「ClimbPro」により距離や平均斜度、獲得高度が表示されるようになった。

加えて、登りのセクションが始まる前にアラートを出して予告する機能も加わりました。登りの開始ポイントの何百メートル手前で予告するかも設定できます。

自転車だと下りのセクションがどれだけ続くかはあまり意識しないのかもしれませんが、トレイルランニングでは下りがどこまで続くかは気になるところ。下りでペースを上げすぎると後の走力に関わるのはもちろん、長時間走った後では下りで足にかかる衝撃の方が登りの辛さを上回りますからね。新しいClimbProはトレイルランナーにフレンドリーな機能です。

ウルトラランナーのニーズを見極めて削られた機能も

他方で、Enduroではfenix 6シリーズに比べて削られた機能もあります。最も大きいのは等高線や主な登山道などが表記された地形図を含めた地図が省かれたことでしょう。世界中の道路地図や等高線を含む地形図がウォッチ本体のメモリに搭載されていて、電波が届かない場所でも現在地を確認できるのは、GarminのGPSスポーツウォッチの上位機種の他にはない魅力です。地形図が入っていないEnduroには乗り換えられない、というfenixシリーズのユーザーもいるでしょう。

ちなみに地図は表示できないものの、GPSログなどをGarmin Connectを通じて読み込んだ「コース」に沿って進む方向が変わるたびに知らせてくれるナビゲーション機能はEnduroでも利用することができます。

Enduro(左)ではfenix 6X(右)のようにコースを地形図に重ねることはできないものの、ナビゲーション機能は利用できる。

Enduro(左)ではfenix 6X(右)のようにコースを地形図に重ねることはできないものの、ナビゲーション機能は利用できる。

この他では、Fenix 6シリーズにあるSpotifyなどのミュージックアプリと連携してウォッチ内部のメモリーに保存した曲を聴く音楽プレイヤー機能や、WiFiを経由してGarmin Connectに同期する機能がEnduroには搭載されていません(スマホの音楽再生をウォッチからリモートコントロールする機能や、Bluetoothを経由した同期機能はEnduroにも搭載されています)。

ただ省かれた機能はそれくらいで、心拍数や呼吸頻度、睡眠のトラッキング、ボディバッテリーやストレスレベルのモニタリングなどライフログ関係の機能や、転倒時に自動で緊急連絡先に通知を送信するセキュリティ機能、GarminPayやSuicaによる非接触決済機能は搭載されています。

まとめ:長距離、長時間のトレイルを走るアスリートに必要なのはバッテリー、それとも地形図?

fenixシリーズはGarminのトレイルランニング向けウォッチの最上位機として信頼を集めてきました。そのfenix 6シリーズに見た目がそっくりのEnduroについてはGarminはfenixシリーズの一員ではなく新しい機種だと位置付けています。

上記のレビューを突き詰めると、fenix 6XとEnduroの大きな違いはバッテリーの持続時間と地形図の有無というところになります。バッテリーの持続時間はfenix 6Xで「十分長かった」ものが、Enduroで「ものすごく長くなった」ので、アスリートに格別の心理的な安心を与えてくれます。

一方、地形図についてはトレイルランニングに加えて登山やトレッキングでもGPSウォッチを活用したいユーザーにはなくてはならないものかもしれません。Garminはハンドヘルド型のGPSナビゲーション端末などで市場をリードしていることもあって、GarminのGPSウォッチに地形図を期待するユーザーも多いでしょう。しかしトレイルランニングに限っていえば、走りながらウォッチ上の地形図をナビゲーションに活用する場面はあまり多くないように思います。レースであればコースにマーキングがされているでしょう。トレイルツーリングでコースを確認する必要がある場合には小さなGPSウォッチの画面に頼らず、いつも携帯しているスマホの地図アプリや紙の地図を活用した方が便利。コスト面でも地図の著作権利用料は小さくないはずです。ちなみにEnduroのチタンモデル (115,500円<税込>)に対してfenix 6X Pro Dual Power Ti Black DLC(143,000円<税込>)の販売価格は3万円弱高くなっています。

トレイルランニングに必要なのはバッテリー持続時間か、地形図か?Enduroが提案する圧倒的なバッテリー時間を選んだ方が幸せになれるランナーは少なくないように思います。

当サイトでは、Enduroをこれから日々のご近所ランやトレイルランニングで試用して、その印象をレビュー記事の後編としてお届けする予定です。

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