[DC] 3位に入賞・原良和/Yoshikazu Haraさんの2015年タラウェラ・ウルトラマラソン/Tarawera Ultra Marathonレースレポート

Yoshikazu Hara 2015 Tarawera Finish

先週末の2月7日(土)にニュージーランドで開催された100kmのトレイルランニング・レース、タラウェラ・ウルトラマラソン/Tarawera Ultra MarathonUltra-Trail World Tourのシリーズレースです。今年のTarawera Ultra Marathonで3位となった原良和/Yoshikazu Haraさん(HOKA OneOne)にレースレポートを寄稿していただきました。

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Yoshikazu_Hara_Faceプロフィール:原 良和(はらよしかず) 1972年8月生まれ。京都大学で陸上部に所属してランナーとしてのキャリアをスタート。2012年サロマ湖100kmウルトラマラソン6時間33分32秒は同年世界ランキング3位。2013年ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)で優勝。昨年は信越五岳トレイルランニングレースで10時間17分と大会新記録で優勝、12月の台湾・東呉大学24時間走(Soochow International Ultramarathon)を285.366kmで優勝し、日本記録を更新、世界歴代2位に。

昨年に続いてTaraweraへ

今年のタラウェラ・ウルトラマラソン/Tarawera Ultra Marathonは、エントリーこそ2014年秋の段階でしていたものの参加するかどうかは2014年12月末まで決めていませんでした。なぜなら12月上旬に台湾の東呉国際ウルトラマラソンでの24時間走で285kmを走り、リカバリーできるかわからなかったからです(参考・[DC] 24時間走で285kmで日本新記録、世界歴代2位・原良和/Yoshikazu Haraさんの東呉国際ウルトラマラソン/Soochow University International Ultra Marathonレースレポート | DogsorCaravan.com)。

昨年もTarawera Ultra Marathonにエントリーしていましたが、24時間走からの故障が完治せずDNS。Taraweraについては「走れるコース」ということはわかっていたので何とかリカバリーを図るべく試行錯誤しました。最終的には12月下旬からキロ5分以内のジョグが出来たので航空券を手配し、スタート地点であるロトルア/Rotoruaでの宿泊を予約しました。

しかし、1月17日に参加したVibram® Hong Kong 100(100km)はリカバリーが8割程度で体も十分に動かず、75kmあたりでのミスコースにて気持ちが切れてDNFに(参考・[DC] Yan Long Fei、Pui-Yan Chow Wyan/周佩欣が優勝・2015 Vibram® Hong Kong 100 Ultra Trail Race リザルト #hk100ultra #HK100 | DogsorCaravan.com)。2月1日の別府大分毎日マラソンはまずまず走れたもののタイムは2時間32分と絶好調にはほど遠く、Taraweraでの優勝争いは厳しいと考えていました。UTMBやUTMFほど強豪は集まりませんがロードレースにも強いメンバーでしたので、目標は5位以内、あわよくば3位以内でした。

レースは豊かな自然に恵まれたコースでスピーディな展開

ニュージーランドは南半球なのでこの時期、真夏になるのですが、日本ほど四季の移り変わりがはっきりしません。夏は暑すぎず、冬も寒すぎない穏やかな気候です。滞在中も朝は10℃前後でやや肌寒いですが、日中は20℃~25℃程度で日差しは厳しいもののさわやかな暑さでした。

Tarawera Ultra Marathonの100kmのコースの概要図。大会ウェブサイトからより詳細なGPXファイルやPDFファイルがダウンロードできる。

Tarawera Ultra Marathonの100kmのコースの概要図。大会ウェブサイトからより詳細なGPXファイルやPDFファイルがダウンロードできる。

2月5日木曜日の午後に現地入りして、序盤のアップダウンの区間を17kmほど試走しました。標高が最高となる707mの地点を含む区間でも歩くような登りがなく、下りもテクニカルなところがあまりない、いわゆる走らないといけないコースでした。体調はまずまずでキロ5分くらいで楽に走れました。金曜日に選手受付とブリーフィングがあり、ドロップバッグを預けることができます。

レースは2月7日土曜日の朝6時にスタート。気温は10℃くらいなので整列でじっとしているとランパン、ランシャツだけでは寒く、上に着込んでいる人が多かったです。

この日のレースプランは次のように考えてしました。序盤の最高点を通過するパートはアップダウンが多いものの大きなピークはないので、ここである程度上位につける。中盤以降はなだらかなコースなので調子が良ければペースアップして順位を上げる。終盤のなだらかな所はおそらく林道と考えていました。

実際にスタートすると、トップの選手は緩い登りでもキロ4分くらいでガンガン飛ばします。私は後方待機といきたいところですが、あまり離されると絶望的な差がつくので10番手以内をキープできるように飛ばしました。

スタート直後は暗いのでみんなヘッドライトかハンドライトを持ちます。ただ20分もしないうちに明るくなるので4km地点でライトを回収してくれます。クルーがサポートできるエイドは8カ所ありますが、今回サポートしてくれる妊娠後期の妻と4歳の息子にはレンタカーですべて回るのは大変なので、17.8km地点のOkareka、37.3km地点のOkateina Lodge、70.1km地点のTitoki、90.8km地点のFisherman’s Bridgeでのサポートをお願いしていました。

Okareka(17.8km)には1:22で予定通り到着、いや想定より5分ちょっと早かったのです。それでも「先頭と5分差」と聞き、厳しい展開を覚悟しました。最高点は707mで、35km地点の手前にあります。そのあたりでは5~7番くらい。そこから少しずつ順位を上げていましたが、やがて前後に人が居なくなり単独走が続きます。Okateina Lodge(37.3km)には2:57で到着。最高点を通過してここからはきつい登りは少なくなるので安心しますが、想定通りで走っているのに先頭はずっと先を行かれているという焦りもありました。ここからはLake Okareka沿いのシングルトラックを走るのですが、適度にテクニカルで緩い登りで派手に転倒しました。左前腕、大腿を擦りむき流血しました。気を取り直し、前を追います。

このレースの面白く難しいところは、60km、85kmのレースもリレーのレースもみんな同時にスタートするところです。リレーの中継ポイントとなるOkateina Lodgeからはランナー2人にすごいスピードで抜かれました。驚いて様子をみると装備が少なくスピードも違いすぎます。背中にはゼッケンがないのではっきりとはわかりませんが、スタートしたばかりのリレーのランナーだったのでしょう。

さらになだらかなトレイルが続き、60kmのゴールまではうっそうとした森林もあります。以前からあるマーキングやレースでのマーキングでコースとわかりますが、コース上は落ち葉も多く踏み跡が不明瞭な所もあります。見落とすとロストする可能性もありました。私はVibram® Hong Kong 100でのミスを繰り返さないために慎重に確認しました。60.6km地点ののTarawera Fallsを過ぎるとスムーズな林道が多くなります。このあたりで5番手。ここで先行していたユン・ヤンキャオ/Yun Yanquiao選手(中国)が故障でリタイア。私が4番手に上がりました。先頭とは30分差とのこと。まだ余力は十分にあったので諦めずに追います。

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ここからは平坦な所ではキロ4分、下りはキロ3分台、登りでもキロ5分以内で走れました。ひたすらまっすぐな林道もあるのですが、前は全く見えず、振り返っても後続もみえません。時折音がするのは鳥などの動物の音でした。

驚いたのは、林道のわだちに小さな鳥が止まっていたのです。じっとして動かず1m位まで近づいてようやく逃げました。こちらがジャンプしようかと思ったくらいです。それくらい豊かな自然があふれていました。

70.1km地点のTitokiには5:52で到着。想定は5:45~6:00でしたので予定通り。ここからもややアップダウンのある林道ですが、ひたすら単独走が続きます。77.8km地点のAwaroaからループに入り、再度Awaroaに(82.7km)。同じエイドを2回通り、トレイルと林道になります。一回目のエイドに私が入ると、トップのディラン・ボウマン/Dylan Bowman(アメリカ)が出ていくところでした。ここで絶望的な差があるとわかりました。

Yoshikazu Hara 2015 Tarawera Tikoki

Tikoki(70km)のエイドを5位で出発し、先行するランナーを追う原良和さん。Photo courtesy of Bryon Powell of iRunFar

一回目のAwaroaのエイドでは「差は3分」と教えられましたが、それが直前の選手(ロビー・ブリトン/Robbie Britton<イギリス>)との差だったことはトレイルの登りでわかりました。その選手を追い越すとき、ペーサーが一緒でしたが明らかに元気がなく歩いていました。自分の気配を消し、しっかり水分とジェルを補給、相手の様子をうかがいながら絶対に負けないという確信を持ってパスしました。案の状すぐに見えなくなりました。ここで3番。想定していた最後のサポートを受けるエイド、Fisherman’s Bridge(90.8km)には7:27で到着。前との差は10分と教えられます。ここからは残り10kmもないので相手が潰れない限り逆転は困難です。

ここからも林道が多く基本的に走らないといけません。ただ私も余裕がなくなり、平坦なところでもキロ4分半くらいかかるようになります。大幅にペースダウンすると後続に追いつかれるので何とかペースをキープできるように補給、飲水を心がけますが、ここまでくると体がジェルを欲しがらなくなります。最後のエイドとなるRiver Road(95.7km)には7:49で到着。前との差が詰まっていないことが分かったので自分のペースでゴールを目指します。

きついアップダウンはなくなだらかなコースが続きます。最後もゴルフ場の横、川の近くを走り、ゴールを目指します。フラットな芝生を走って長かった100.7kmの旅が8:12:11で終わりました。

Yoshikazu Hara 2015 Tarawera Finish

家族に迎えられてTarawera Ultra Marathonをフィニッシュした原良和さん。Photo courtesy of Bryon Powell of iRunFar

Yoshikazu Hara 2015 Tarawera podium

表彰台に上った上位選手と原良和さん。Photo courtesy of Yoshikazu Hara

レースを終えて

最後に上位5人の経過表をまとめてみましたご参照ください。ゴールしてからわかりましたが、上位の2人とは60km以降ほとんど差が変わりませんでした。やはり序盤のアップダウンで付いた差が大きかったようです。

Compare-Tarawera2015

Tarawera Ultra Marathonでのトップ5のラップタイムの比較。クリックすると数字などが読み取れる画像が表示されます。大会ウェブサイトより。

Tarawera Ultra Marathonのコースは、印象としては信越五岳と良く似ていますが、さらに走りやすくした、いや歩くべき登りのほとんどない超高速コースでした。ヨーロッパのような堅い路面がなく、アスファルトのロードや木階段もあまりありません。今後このレースを走られる方のタイムの設定としては、野辺山高原100kmウルトラマラソンのタイムに+30~40分が目安になりそうです。

ゴール後に測った体重は55.1kgで、前日が57kgでしたので少しの減で済みました。体重が減った方がスピードは出ますが、ロングレースでは脱水のせいで失速するリスクもあるのでしっかりした補給が大切です。

今回のシューズはロードモデルのHOKA / Cliftonで、25.0cmだと200g未満になる軽量シューズです。今回の路面との相性もよく、終盤足腰がきつくなる局面でもしっかりサポートしてくれました。

今後はしばらくお休みして4月11日のIAU24時間走世界選手権(2015 IAU 24hr World Championships)に照準を合わせたいと思います。日本チームのために最善を尽くしますので、応援をよろしくお願いします。

装備

(編者注・下のリンク先の商品はご参考までに付したもので、原さんが実際に使用したものとはカラーやサイズが異なるものがあります。)
– シューズ:HOKA OneOne / Clifton(Citrus.Black.Silver)
– ソックス:Tabio / レーシングランエアー3D 23~25cm(黒)
– バックパック:Ultimate Direction AK Race Vest 2.0
– ボトル:Hydrapak Soft Flask SF500 2個
– 時計:Suunto Ambit3 Peak, HRベルトを装着
– グローブ:OnYoNeパフォーマンスグローブ BKA96903
– ハンドライト:EagleTac D25C Mini

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