2018年トレイル世界選手権 Trail World Championships ペニャゴロサ・トレイルズ Penyagolosa Trails プレビュー

山の上の聖堂への参詣道を再生し、地域の歴史と自然を世界に知ってもらう。そんな地域の熱意が生んだ大会が今年前半のトレイルランニングの最大の注目イベントとなります。今週末の5月12日土曜日にスペインのカステリョー・デ・ラ・プラーナ Castelló de la Planaで2018年のトレイル世界選手権 Trail World Championshipsが開催されます。

この地で開催されるトレイルランニング大会、Penyagolosa Trails ペニャゴロサ・トレイルズの中で、これまで開催されているUltra-Trail World Tourのシリーズ戦でもある108kmのレース、この大会の起源となっている60kmのレースと並んで、85km 5,000mD+のレースが世界選手権として開催されます。今回の世界選手権には選考レースを通じて選ばれた、荒木宏太 Kota Araki、川崎雄哉 、吉原稔 Minoru Yoshihara、斎藤綾乃 Ayano Saitoの4人が日本代表として出場します。世界選手権の名にふさわしく今回の世界選手権にもUTMB®︎などと同様に世界トップレベルの選手が集結します。また、年々参加国数が増えており、今回のカステリョーは世界的に人気が高まっているトレイルランニングの国際的な交流の場となるでしょう。

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当サイトでは昨年、Penyagolosa Trailsイタリア・バディーアプラタリアで開催されたトレイル世界選手権も現地からレポートをお送りしました。今年の世界選手権も現地からレポートしますので、どうぞお楽しみに。世界選手権のレースは12日土曜日午前6時(日本時間同日午後1時)にスタートします。

トレイル世界選手権とは

国際ウルトラランナーズ協会(International Association of Ultrarunners, IAU)はロードの100km、トラックの24時間走などで知られるウルトラマラソンの国際競技団体です。IAUがトレイルでのウルトラマラソンの世界選手権をアメリカで初めて開催したのは2007年のことで、以来2年ごとにトレイル世界選手権が開催されてきました。2016年大会(ポルトガル・ペネダ・ジェレス)からは国際トレイルランニング協会(International Trail Running Association, ITRA)が協力し、世界選手権は毎年開催されるようになります。現在のところトレイル世界選手権は50km前後の中距離コースと80km前後の長距離コースが交互に開催されており、来年2019年の世界選手権は6月8日にポルトガル中部のミランダ・ド・コルヴォ Mirandha do Corvoで開催されるTrilhos dos Abutres®の中で50km前後のレースとして開催されることがIAUからすでに発表されています。

このほか普通のトレイルランニングのレースと異なる点として、トレイル世界選手権は各国の陸上競技競技団体によって選考された選手のみが参加可能。世界選手権となるレースは一般参加者が出場するオープンレースとは別に開催されます。既存の大会の中に一般のレースとは異なるコースを設定する場合、一般のレースとコースは同じだがスタート時間が異なる場合、既存の大会ではない世界選手権のためだけのイベントを開催する場合がこれまでありました。

  • これまでのトレイル世界選手権の歴史は次のようになります。
    • 2007年:Sunmart Texas Trail、50マイル(アメリカ・テキサス州ハンツビル、12月8日開催)。日本代表の櫻井教美 Norimi Sakuraiが女子優勝、男女総合4位に。
    • 2009年:Merrell Sky Race、68km(フランス・セレシュバリエ、7月12日開催)。トーマス・ロルブランシェ Thomas Lorblanchet(フランス)、セシリア・モラ Cecilia Mora(イタリア)がそれぞれ男女優勝、日本代表の櫻井教美が女子5位。
    • 2011年:世界選手権、71.5km(アイルランド、コネマラ山地、7月9日開催)。エリック・クラバリー Erik Clavery、モー・ゴベール Maud Gobert(ともにフランス)が男女それぞれで優勝。
    • 2013年:世界選手権、75km(イギリス。ウェールズ、コンウィ、7月6日開催)。優勝はリッキー・ライトフット Rickey Lightfoot(イギリス)、ナタリー・マクレア Nathalie Mauclair(フランス)。
    • 2015年:Maxi Race、85km(フランス・アヌシー、5月30日開催)。優勝はシルバン・コー Sylvain Court、ナタリー・マクレア Nathalie Mauclair(ともにフランス)。
    • 2016年:Trans Peneda-Geres、85km(ポルトガル、10月29日開催)。優勝はルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Hernando(スペイン)、カロリーヌ・シャヴェロ (フランス)。日本からは男子4人、女子3人が参加し、大杉哲也 Tetsuya Osugiが男子24位、 Yuri Yoshizumiが女子13位に。
    • 2017年:Trail Sacred Forests(イタリア、バディーア・プラタリア、6月10日開催)。優勝はルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Hernando(スペイン)、アデリーヌ・ロシュ Adeline Roche(フランス)。日本からは近藤敬仁 Yoshihito Kondoが男子17位。川崎雄哉 Yuya Kawasakiが30位、荒木宏太 Kota Arakiが40位。女子は斎藤綾乃 Ayano Saitoが64位。
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山の上の聖堂への参詣道をトレイルランニングで現代に復活

奥に見えるペニャゴロサ山への参詣道が大会のコースの元になっている。Photo courtesy of Penyagolosa Trails

この大会の舞台となるカスティリョン(バレンシア州カスティリョン県)は地中海の海岸に面すると同時に背後には高い山々が控えます。その中でも標高1814mのペニャゴロサ Penyagolosa(巨大な岩、の意)は周囲から独立した気高い山容を持ち、カスティリョンを代表するという山として愛されてきました。そのペニャゴロサの山中にあるサンホアン・ペニャゴロサ聖堂 Ermitorio de Sant Joan de Penyagolosaは14世紀から信仰の対象として親しまれ、地域の村々から山を登って多くの人たちが詣でてきたといいます。こうして「ペニャゴロサ参りの道」(Camins de Penyagolosa)と呼ばれる参詣道が生まれました。

忘れられていたペニャゴロサ参りの古道を再生しようと地元の登山家やハイカーが立ち上がったのは1950年代のこと。古道をつないだカステリョー・デ・ラ・プラーナからペニャゴロサ山頂までのロングトレイルが生まれました。当時は途中で一泊して二日間の登山ルートでした。1990年代にはこのロングトレイルを1日で走るというイベントが生まれます。こうした試みを経て、1998年にMarató i Mitja(マラト・イ・ミトジャ、マラソン+ハーフマラソンの意)というトレイルランニング大会が生まれます。これがペニャゴロサ・トレイルズのMiM(63km)の始まり。2013年にはMiMのコースを元に距離を延ばしたCSP(115km)が誕生。昨年2017年からUltra-Trail World Tourに加わり、今回のトレイル世界選手権開催に至ります。

世界選手権のコースとオープンレース(108kmのCSPと60kmのMiM)

85kmの世界選手権のコースは海辺の街、カステリョー・デ・ラ・プラーナのハイメ一世大学のスタジアムをスタートし、コースは地中海に面したカステリョー・デ・ラ・プラーナ Castelló de la Plana(バレンシア州カスティリョン県)をスタートし、このエリアを代表する山であるペニャゴロサ Penyagolosa(巨大な岩、の意)の山中にあるサンホアン・ペニャゴロサ聖堂 Ermitorio de Sant Joan de Penyagolosaにフィニッシュします。中世に聖堂への参詣道として親しまれていたトレイルをたどるコースは概ね上り基調の85.3kmで、累積高度は獲得高度が4,900mD+、喪失高度が3,690mD-。途中は山の上にある小さな町である、ウシェレス Useres、アツェネータ Azteneta、ビスタベラ Vistabellaのエイドをたどるほか、4箇所の給水所が設けられます。コース最終盤には、ペニャゴロサの頂上から南側に広がる巨大な岩の絶壁を右手にみながらフィニッシュを目指すことになります。

このほか一般から参加申し込みを受け付けるオープンレースとして、1998年の第一回大会から続く60kmの「MiM」、2013年にスタートして昨年2017年からはUltra-Trail World Tourのシリーズ戦ともなっている108kmの「CSP」も、世界選手権と並行して同じ週末に開催されます。当サイトでは昨年のこの大会を取材し、大会の背景にあるエピソードやコースの特徴をご紹介しています。

今年も現地からトレイル世界選手権をレポートします

当サイトではトレイル世界選手権が行われるスペイン・カステリョー・デ・ラ・プラーナから、現地の様子やトレイル世界選手権のレースについてお伝えする予定です(コースへのアクセスが難しい箇所が多いため、レースの速報についてはいつもよりもかなり限定的な内容となる見込みです)。日本代表選手のみなさんの表情やインタビューもお届けする予定です。当サイトのレポートをどうぞお楽しみに。

昨年のPenyagolosa Trails 115kmに参加、今年は世界選手権に出場する吉原稔。

今回のトレイル世界選手権についての情報には次のものがあります。

今回の有力選手

トレイル世界選手権にはIAAF(国際陸連)の傘下にある各国競技団体によって選ばれた各国代表選手のみが参加します。今回は50カ国から男子213人、女子142人の合わせて355人の代表選手がエントリーしています。前回は25カ国から男女合わせて約270人だったので、さらに国際的な大会となっています。

以下では今回のトレイル世界選手権の有力選手を紹介します。

なお、国別表彰の決め方は次のようになっています。

  • 各国からは男女それぞれ最大9人の代表選手が出場可能。
  • 国別チーム戦にはスタート前日の朝までに各国が指名した男女6人までが参加可能。指名された以外の選手は個人戦としてレースに出場。
  • 各国チーム戦に参加した選手のうち、各国の男女上位3人のタイムを合計して国別の順位を男女それぞれについて決める。

女子 Women

開催国スペインの女子チームは今回も有力選手が揃います。マイテ・マイオラ Maite Maioraはスカイランニングでの活躍している印象がありますが、昨年はCCCで2位、Ultra Pirineuで優勝と100kmのレースにも挑戦していて好成績をあげています。アサラ・ガルシア Azara GARCIA DE LOS SALMONESは2016年はスカイランニング世界選手権・ Epic Trail 42kで2位、トレイル世界選手権で2位、昨年のTransgrancanariaでも優勝している第一人者。スペインチームからはヘマ・アレナス Gemma ARENASライア・カニェス Laia Cañesもエントリーしています。

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アザラ・ガルシア Azara García De Los Salmones

ヘマ・アレナス Gemma ARENAS ALCAZAR

アデリーン・ロシュ Adeline Roche

フランスは昨年3秒差で優勝、準優勝を分け合ったアデリーヌ・ロシュ Adeline Rocheアマンディーヌ・フェラート Amandine Ferratoが今年もエントリー。2013年、2015年のトレイル世界選手権で優勝し、16年は4位だったナタリー・マクレア Nathalie MAUCLAIR(フランス)、若手のルーシー・ジャムシン Lucie Jamsinと層が厚いチームです。このほか、アメリカのクレア・ギャラハー Clare Gallagher、オランダのラグナ・デバッツ Ragna Debats、ポーランドのマグダレナ・ラチャック Magdalena Laczakが上位を走ることになるでしょう。スイスのジャスミン・ニュニジ Jasmin Nunigeはリストに名前がありますが出場を見送ります。

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日本代表の斎藤綾乃 Ayano Saitoは昨年のハセツネCUPで2位になるなど最近国内での活躍が著しい選手です。とはいえ、世界選手権の選手層の厚さから考えるとまずはトップ30位が一つの目標になるでしょう。

男子 Men

ルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Hernando

Cristofer Clemente

クリストファー・クレメンテ Cristofer Clemente

今回のトレイル世界選手権でルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto HERNANDO(スペイン)の3連覇達成なるかが大きな注目を集めるでしょう。スカイランニングでも世界選手権では2014年80km du Mont-Blanc、2016年のBuff Epic Trail 105kと連覇しています。このほか、スペインからは昨年のイタリアでの世界選手権でルイス・アルベルトと僅差で2位になったクリストファー・クレメンテ Cristofer CLEMENTE、今年のTransgrancanaria 64kで優勝したパブロ・ビラ Pablo Manuel VILLAが出場します。

ルドビック・ポムレ / Ludovic Pommeret

優勝争いにはフランス・チームの選手たちも関わってくるでしょう。2016年世界選手権で3位のシルバン・コー Sylvain COURT、昨年のTempliers 76kで優勝のセバスチャン・スペーラー Sebastien SPEHLER、2016年UTMB®︎優勝のルドビック・ポムレ Ludovic POMMERETといったメンバーで、チーム表彰ではスペインを上回る可能性は高そうです。2016年世界選手権2位のニコラ・マルタン Nicolas MARTINはケガのためレース出場は見送る見込みです。

アメリカからはTNF 50mileで2016年優勝、2017年2位のザック・ミラー Zach Millerや昨年の世界選手権で9位のマリオ・メンドーザ Mario Mendoza。リストに名前があったティム・フレイリクス Tim Freriksとティム・トレフソン Tim Tollefsonは出場を見送ります。イギリスからはスカイランニングでもおなじみのジョナサン・アルボン Jonathan Albonトム・オーウェンス Tom Owens、アメリカ在住のライアン・スミス Ryan Smith、昨年のMDS以来UTWTのレースで活躍するトム・エバンス Thomas Evans

荒木宏太 Kota Araki

川崎雄哉 Yuya Kawasaki

日本の荒木宏太 Kota Araki川崎雄哉 Yuya Kawasaki吉原稔 Minoru Yoshiharaにとって上位入りには厚い壁が待ち受けますが、トップ20に入ることができれば大金星といえるでしょう。

CSP、MiMの有力選手

世界選手権と並行して行われる108kmのCSPはUltra-Trail World Tourのシリーズ戦です。男子ではハビエ・ドミンゲス Javier Dominguez(スペイン)、ソンドル・アムダール Sondre Amdahl(ノルウェー)がエントリー。女子はアンドレア・ヒューザー Andrea Huser (スイス)、エンマ・ロカ Emma Roca(スペイン)、フェルナンダ・マシェール Fernanda Maciel(ブラジル、スペイン在住)、メラニー・ルセ Melanie Rousset(フランス)が上位を走るでしょう。もう一つの60kmのレースであるMiMには昨年CCCで優勝したヘイデン・ホークス Hayden Hawks(アメリカ)、ジョルディ・ガミト Jordi Gamito Baus(スペイン)が参加します。

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