2018年 UTMB®︎ プレビュー #UTMB18

UTMB-2016-logo-Columbia大方の予想通りにキリアン・ジョネット Burgadaジム・ウォルムズレイ Jim Walmsleyの勝負となるのか。昨年4位になった丹羽薫 Kaori Niwaはさらに上位を目指せるのか。

明日から始まるUTMB®︎ウィークのメインイベントは、8月31日金曜日午後6時(日本時間9月1日土曜日午前1時)にスタートする171km 10,000mD+のUTMB®です。UTMB®︎始まって以来の選手層の厚さといわれた昨年に比べると、有力選手はTDS®︎やCCC®︎に分散しましたが、それでも世界最高峰のトレイルランニングレースとして、世界一を決めるハイレベルなレースとなることには変わりありません。今年もUTMB®︎はUltra-Trail® World Tourのシリーズ戦第17戦、獲得ポイントが増える”Serie Bonus”レーベルのレースです。

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2018年のUTMB®︎のコース概要図。

当サイトは編集人の岩佐幸一が大会期間中に配信されるインターネットのストリーミング番組が「UTMB®︎TV」の日本語チャンネルのMCを務めます。水曜日のTDS®︎から始まるUTMB®︎TVは、日本時間の金曜日深夜からUTMB®︎のライブ中継をお送りします。日本語チャンネルで一緒にMCを務める神田翔大さん、途中でお迎えするゲストと一緒に視聴者の皆さんと一緒にUTMB®︎を楽しみたいと思います。

UTMB®︎TV日本語チャンネルの配信はTDS®︎のスタート直前の日本時間の8月29日水曜日の正午ごろから下でご覧いただける予定です。

さらに今回はSalomonのご協賛により、UTMB®︎TVへの出演の合間にDogsorCaravanのTwitterアカウント / @DogsorCaravanFacebookページで大会の様子をご紹介していきます。

UTMB®︎で開催される主なイベントとその日程については当サイトの記事をご覧ください。

今年のUTMB®は日本語でもライブ配信。当サイトの中の人が出演します。 #UTMB18

2018.08.23
UTMB®︎に先立って行われるPTL®︎、TDS®︎、OCC、CCC®︎のプレビューは以下からご覧ください。

2018年 TDS®︎、OCC、CCC®︎ プレビュー #UTMB18

2018.08.25

順当にいけばキリアンとウォルムズレイのレースをキリアンが制する、のかもしれないが

UTMB®︎の歴史の中で、有力選手が勢揃いして最もコンペティティブなレースとなったのが昨年2017年でした。その2017年、フランソワ・デンヌ François D’Haeneに勝利を譲って2位でフィニッシュしたキリアン・ジョネット Kilian Jornet Burgada(スペイン)。序盤から余裕で先頭を走ったものの、100kmを過ぎてLa Foulyへの下りで後続に引き離され、フランソワから70分遅れの5位でフィニッシュしたジム・ウォルムズレイ Jim Walmsley(アメリカ)。現時点のITRA成績指数ではウォルムズレイが1位、キリアンが2位であり、文字通り世界で一、二を争う二人が今年のUTMB®︎で勝負するというのが大方の味方です。

2017年UTMB®︎でCol des Montetsを通過するキリアン Kilian Jornet。

2017年UTMB®︎のSaint Gervais 21kmでのジム・ウォルムズレイ。エイドでは後に続く先頭集団を待っていた。

昨年、キリアンは7月のHardrock 100で肩を脱臼しながら優勝しましたが、シーズンオフには、これまでの重ねてきた肩のケガの治療のため手術を受けています。そして今年の春先にはスキーマウンテニアリングのレース中に脚の腓骨を骨折。リカバリーを経てトレイルランニングの競技に復帰したのは7月1日のMarathon du Mont Blancでした。その後のSkyrace Comapedrosa、Sierra Zinalでいずれも優勝。Comapedrosaでは大会記録を更新するなどレース内容もよく、現在のキリアンに死角はないといえそうです。2008年に20歳でUTMB®︎に初出場で優勝。2009年、2011年にも優勝し、昨年6年ぶりに出場して2位。初めての優勝からちょうど10年、30歳となった今年に4回目の優勝を飾りたいという気持ちがあるのかもしれません。

一方のウォルムズレイは、昨年のUTMB®︎の後、10月にはレユニオン・Diagonale des Fousに参戦してDNFとなったのち、今年は4月のLake Sonoma 50を大会新記録で優勝。そして6月のウェスタンステイツでは3度目の挑戦で優勝、大会記録を更新と大きなタイトルを手にしました。昨年までのウェスタンステイツでは大会記録を上回るペースで独走しながらもコースをロストしたり、胃腸のトラブルで勝ちを逃すという破天荒ぶりでした。今年はスマートなレースをするようになった、ということであれば今年のウォルムズレイがシャンペ Champex Lac(121km)から先もキリアンを寄せ付けずに優勝する可能性は十分にあります。

ただ、天候がよくコンディションに恵まれた昨年と異なり天候が崩れたりすれば、ヨーロッパアルプスを熟知しているキリアンが有利かもしれません。本稿を執筆している26日日曜日の時点では、UTMB®︎が開催される週末の天気は金曜日の夜にところにより雷雨の可能性があるものの大きく崩れることはなさそう。ウォルムズレイが優勝して新しいヒーローが誕生するのを見たいとは思うものの、キリアンがUTMB®︎で敗れるとも考えにくく、やはり最後にはキリアンが制するのでは、というのが当サイトの考えるシナリオです。

ワイルドカードがあるとすれば

しかし、2016年のUTMB®︎でベテランのルドビック・ポムレ Ludovic Pommeretが最終盤に順位を上げて優勝したように、19時間以上かかるレースに番狂せやワイルドカードとなる選手が現れることもあるはずです。キリアン、ウォルムズレイがもし途中でペースを落としたら。あるいは二人に続いて表彰台に登るのは。そう考えて、当サイトが推す有力選手を主観的に選んでみました。

ティム・トレフソン Tim Tollefson(アメリカ)はアメリカのアスリートの中でUTMB®︎で最も成功している選手の一人です。2015年のCCC®︎でザック・ミラーに続いて2位、2016年のUTMB®︎ではルドビック・ポムレ、ゲディミナス・グリニウスに続いて3位。そして昨年はフランソワ・デンヌとキリアンに続いて3位。ここ3年のリザルトをみればむしろ本命とすべきかもしれません。この間も2017年のUltra-Trail Australia 100kで優勝、2018年のLavaredo Ultra Trailで3位、Speedgoat 50kで3位。

今年2月のTransgrancanariaでのティム・トレフソン Tim Tollefson。

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ハビエ・ドミンゲス Javier Dominguez Ledo

バスクの44歳、ハビエ・ドミンゲス Javier Dominguez Ledo(スペイン)はベテランらしい安定感と粘り強さが印象的なウルトラランナーです。2013年のグザビエ・テベナールが初めて優勝したUTMB®︎で3位に。以後、2014年に21位、2016年に5位。昨年はトル・デ・ジアンで優勝、今年に入ってMIUT®︎で5位、Penyagolosa Trails 107kmで2位になっています。

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アメリカの33歳、アレックス・ニコルス Alex Nichols(アメリカ)は2015年、2016年にPikes Peak Marathonで連覇するなど、80kmくらいまでのレースに強い選手でしたが、2016年に初めての100マイルレース、Run Rabbit Run 100で優勝、2017年のウェスタンステイツでは2位。今年1月のHong Kong 100でも2位に。今回がUTMB®︎のレースに初挑戦です。ヨーロッパでの100マイルでどんなパフォーマンスを見せるかは未知数ですが、初挑戦であることが幸いする、ということもあるかもしれません。

地元シャモニーで山岳レスキューを仕事としているミシェル・ランヌ Michel Lanne(フランス)は一昨年2016年にCCC®︎、昨年2017年にTDS®︎で優勝しています。となれば今年はUTMB®︎で優勝、というのは気が早すぎるかもしれません。しかし、この2年でUTMB®︎のコースやレースの特徴については十分に熟知することになったでしょう。三冠を達成できればグザビエ・テベナールに続いて3人目となります。

2016年のCCCで優勝した際のミシェル・ランヌ Michel Lanne。

ステファン・ヒューゲンシュミット Stephan Hugenschmidt(ドイツ)もUTMB®︎のレースには今回が初参戦です。ドイツの32歳で2014年にZugspitz Ultratrail、Transalpine Runで優勝、2016年、2017年にはScenic Trail、Eiger Ultra-Trailなどドイツやドイツ語圏に近いところで活躍してきました。今年のLavaredoではヘイデン・ホークス、パウ・カペル、ティム・トレフソンに続いて4位に。今回のUTMB®︎ではダークホースと呼ぶべき存在です。

一方、上の当サイトの推す選手リストに上げなかった選手はこちら。あくまで主観的な評価ですので、大きく外れるかもしれません。

  • ルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Hernando Alzaga(スペイン): 、Zegama-Aizkorri、Marathon du Mont-Blancなどで活躍してきたルイス。特にTransvulcania 73kでは2014-16年に三連覇。最近ではトレイル世界選手権を三連覇中です。UTMB®︎では2015年に2度目の優勝を果たしたグザビエ・テベナールに48分差で2位。今回の優勝候補の一角ではありますが、やはり100マイルという距離は苦手なのかも。
  • ザック・ミラー Zach Miller(アメリカ): アメリカの30歳。2015年のCCC®︎で優勝、その後の2016年のUTMB®︎では6位、昨年は9位。しかし、序盤から積極的にレースをリードしていくガッツあるスタイルは、UTMB®︎ファンの間で人気です。ただ、今年のトレイル世界選手権(スペイン・Penyagolosa Trails)でも同じような展開で8位になったのをみた当サイトとしては今年のUTMBも似た展開になるのでは、という連想が浮かびます。最も決してレース下手なわけではなく、TNF 50mile Champsでは2015年、2016年に優勝、2017年は2位という結果を残しています。
  • (フランス): フランス・ジュラ県在住の30歳。UTMB®︎では2013年と2015年に優勝し、2010年のCCC®︎優勝、2014年のTDS®︎優勝、2016年のOCC優勝と合わせて三冠を達成しています。UTMB®︎ではスター的な存在です。しかし、2016年のHardrock 100では3位、昨年のUTMB®︎では4位と、同世代のライバルであるキリアンとのレースでは一歩譲っています。今年7月にはHardrockでトップを走りながら残りわずかというところで失格になるという出来事がありました。この悔しさが良い方向に向かえばキリアンをしのいで優勝、ということもあるかもしれません。
  • ゲディミナス・グリニウス Gediminas Grinius(リトアニア): UTMB®︎では2014年に5位、2016年に2位、2017年に8位。ただ、多くのレースに精力的に出て上位を占め続けた昨年の反動か、今シーズンのレースの結果はやや控えめです。日本のファンにとっては2015年のUTMFで優勝したことも記憶に残っているでしょう。

なお、今回のUTMB®︎への有力選手の集まり具合を昨年と比較すると次のようになります。ITRA成績指数で850点以上(UTMB®︎でトップ20位以内に入るレベル)に昨年は23人で、今年は17人。800点以上まで含めると昨年は60人、今年は48人、750点以上まで含めると昨年は118人で今年は85人です。

女子はミンミ・コトカのレースになるか

女子のレースでは2013年CCC®︎、2016年UTMB®︎のチャンピオンで、特に2016年は圧倒的な強さをみせた女王、カロリーヌ・シャヴェロ Caroline Chaverot(フランス)がエントリーしていますが、今回のUTMB®︎に向けて自身のコンディションが整っているかどうかは疑問符が付きます。2017年春に体調を崩し、夏にはMaxi-Race 113k、Lavaredo、Hardrock 100と優勝を重ねましたがその後のUTMB®︎ではリタイア。今年に入ってからもTransgrancanaria、90km du Mont-BlancでDNFとなっていて万全の体調ではない様子。

シャヴェロよりも前に、トレイルランニング、スカイランニングで勝利を重ねていたヌリア・ピカス Núria Picas(スペイン)も今回のUTMB®︎にエントリー。2013年、2014年にUTMB®︎で2位となっていたピカスは昨年のUTMB®︎で咳に苦しみながらもついに優勝を手にしました。その後、昨年9月には地元・カタルーニャのUltra Pirineu 109kでマイテ・マイオラに12分差の2位、今年6月にはUltra SkyMarathon Madeira 55kで優勝したラグナ・デバッツに12分差の3位となっています。今回のUTMB®︎で二連勝を狙っているなら優勝候補となるでしょう。【追記・ピカスはケガのため出場を見送ります。2018.08.27】

昨年2017年、UTMB優勝を果たしたヌリア・ピカス Nuria Picas。

当サイトとしては今回はミンミ・コトカ Mimmi Kotka(スウェーデン)がリードするレースになるのでは、と予想します。2016年のCCC®︎で優勝したのが国際的なレースでの活躍の始まりで、昨年はTDS®︎でも男女総合10位で圧勝。今シーズンも春のMIUT®︎、Maxi-Race 117k、6月の90km du Mont-Blancと勝利を重ねています。今回のUTMB®︎で女子で初めてのUTMB®︎三冠達成へ期待がかかります。

2017年のTDS®︎を笑顔で快走するミンミ・コトカ。

一方、アメリカのトップ選手にも注目です。次の4選手とも、昨年のUTMB®︎に参戦して実力を出しきれずに終わりましたが、その経験を生かして今回は上位に入ってくることが期待されます。

ステファニー・ビオレ Stephanie Howe Violett(アメリカ)は2014年、マグダレナ・ブーレ Magdalena Boulet(アメリカ)は2015年、ケイシー・リックタイ Kaci Lickteig(アメリカ)は2016年。いずれもアメリカの名レース、ウェスタンステイツの女子優勝者です。ステファニー・ビオレはUTMB®︎では2015年に8位、2017年に16位。その実力をもってすれば3回目の今回はさらに上位を狙えるでしょう。今シーズンはカリフォルニアのFormidable 50kで優勝、ウェスタンステイツで6位。

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マグダレナ・ブーレ Magdalena Bouletは2015年のCCC®︎で2位。2016年UTMB®︎では5位、2017年に19位。今シーズンはMarathon des Sablesで優勝したことも話題になりました。ケイシー・リックタイ Kaci Lickteigは昨年のUTMB®︎がおそらく外国での初レースでしたが、ブーレと一緒に18位でフィニッシュという結果でした。今年のウェスタンステイツでは12位。

上記の3人とは異なり今回がUTMB®︎に初挑戦となるのが27歳のクレア・ギャラハー Clare Gallagherです。昨年のCCC®︎では2位のマイテ・マイオラに13分差でリードして優勝。その後も12月のTNF 50mile Champsでは2位、今年5月のトレイル世界選手権で8位、6月のLavaredoで9位と勢いを感じさせます。昨年のCCC®︎のような活躍がみられるかもしれません。

丹羽薫は今年もミラクルを起こす?

日本のUTMB®︎ファンにとっては、丹羽薫 Kaori Niwaが今年どんな活躍を見せるかが最も気になることでしょう。初の100マイルレースとなった2014年のUTMFで8位、翌年4位となったあと、2016年のUTMB®︎で8位になり表彰台に立ちました。さらに翌2017年には4位に。日本人女子選手の活躍は大いに注目を集めました。

昨年のUTMB®︎で4位でフィニッシュした丹羽薫 Kaori Niwa。

自身も認めるように丹羽は走るスピードに恵まれたアスリートとは必ずしもいえません。実際、ITRAの成績指数でみれば昨年のUTMB®︎の女子選手の中でも丹羽はけっして上位ではなく、トップ20を目指すのも難しいのでは、というレベルでした。しかし、昨年のUTMB®︎についていえば、レース後半に入って女子の有力選手がそれぞれの理由で軒並みペースを落としていった中で、丹羽は自分のペースを守って後半もしっかりと進み続けたことで4位まで順位を上げることになりました。今年4月のUTMFでも丹羽は同じスタイルで、序盤は周りに合わせてペースを上げないようにして、後半に着実に順位をあげて行くことで2位になっています。

100マイルのトレイルレースであってもスピードの争いになって久しいですが、コンディションによってはスピード以上に持久力やメンタルな強さが試される場合が出てきます。丹羽薫はそのような場面で俄然強さを発揮するタイプといえそうです。

今のところ、UTMB®︎当日は最初の金曜日の夜にところにより雷雨となるほかは概ね天候には恵まれそうな天気予報です。ただ、昨年2017年も天候には恵まれたので、コンディションを決めるのは天候だけとはいえません。昨年、自分の走りをできなかった有力選手たちの多くが今年のUTMB®︎に再びエントリーしています。再び丹羽薫が後半にドラマを見せるかどうか、注目したいと思います。今シーズンの丹羽は3月のGaoligong by UTMB 168kでクリッシー・メールに7分差の2位、UTMFで2位、5月のひろしま恐羅漢63kで3位、Lavaredoで12位、Hardrock 100で4位となっています。

2018年UTMB®︎有力選手

ITRA成績指数の高い順。名前の後の数字はITRA成績指数。

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