コロナ禍の海外レース挑戦記・スペイン Val d’Aran by UTMB(その4)受付、ブース、インタビューと大会に向けて気分が高まる【久保信人】

【編者より:久保信人 Kubo Nobuhitoさん(フィールズオンアース)の連載、Val d’Aran by UTMBの参加レポートの第4回。7月9-11日にスペイン・カタルーニャで開催された大会で100マイルのレースに自ら参加する直前の経験を通じて、久保さんがこの大会を通じてトレイルランニングについて考えたことが今回のトピックです。】

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大会受付は快適、スタートが近づいているのを実感

7月7日大会2日前。いよいよ大会の受付へ。丹羽さんもビエイヤ(Vielha)入りしたので、一緒に受付に行きます。受付会場はスタートゴール地点から石畳の美しい旧市街を抜けて200m程にある体育館に設置されていました。

UTMBのような混雑を警戒して、大会2日前の午前中、受付開始直後の時間帯に行くと、まだガラガラでした。(笑)

受付会場

受付会場

受付の入り口

受付の入り口

全てのカテゴリーを合わせた参加者は約4000人と主催者のクララさんから聞いていたので、出来るだけ混まない時間帯を狙いましたが、警戒しすぎたようです。

受付会場もUTMBなどと比較するとコンパクトです。まず入り口でパスポートを確認、コロナ対策の誓約書類をスタッフに見せて、確認済の書類をもらいます。

次には入り口で受け取った書類を見せて、ゼッケンパック(ICチップつきゼッケン、安全ピン、ザック用ゼッケンタグ、ドロップバック用ゼッケンシール、ドロップバッグ)を受け取ります。

自分の名前とゼッケンが間違いないか確認し、書類にサインして、ドロップバックと参加証のTシャツ、ランニングポーチをもらいました。

必携装備チェックがあるかと思いましたが、ここでは装備チェックはありませんでした。

確かにコロナ対策を考慮すると、装備チェックが最も受付で時間がかかるうえに、スタッフも多数必要となり、多少なりとも屋内で密になる時間が増えますし、受付渋滞の最大の要因は装備チェックになりますから、感染予防策としては、装備チェックを別で行った方が良いというのは納得がいきます。

おかげであまりにもあっけなく、ものの5分ほどで受付は完了します。本当に久しぶりに受け取ったゼッケンとドロップバックに、なんだか胸が熱くなります。「本当に走れるんだなあ!」その実感がわいてきます。

受付会場から出ると、丹羽さんとお決まりのゼッケンフォトセッション「使用前」写真撮影をしました。ここで改めて、絶対ゴールするぞ!と気持ちが入ります。

大会前日のモーニングランに参加、ジョルディ・ガミト選手と一緒に走る

7月8日の朝は、モーニングランというイベントがあり参加してみることに。

おそらくUTMBなどでも各メーカーなどが企画してエリート選手がアテンドする軽いランニングセッションイベントが開催されています。私は今までツアーのアテンドなどでなかなかこうしたイベントに参加する機会がなかったのですが、今回は参加できるので楽しみです。

朝8時にスタートゴール地点のビエイヤの教会前の広場に行くと、黒く日焼けして引き締まった体つきのランナーさんがたくさん集まっています。体格の小さな日本人である私や丹羽さんは「みんなすごい強そうに見えるね〜」と顔を見合わせます。

この時まではまだそれほど町にもランナーらしき人々の姿は少なかったのですが、いよいよ大会が近づいていることを強く感じる瞬間でした。

2019年のUTMBで3位に入り、一気に注目を集めたスペインのジョルディ・ガミト選手も来ています。

Val d’Aran by UTMBは「KinetikSports(キネティックスポーツ)」というスイスのメーカーにスポンサードされており、このモーニングランイベントはキネティックスポーツのエリート選手たちがアテンドして開催されていました。ジョルディ・ガミト選手もその一人です。

日本にはまだ入荷していないメーカーなので、なじみが薄いですがなかなか力を入れてプロモーションしているようです。

たくさんのランナーたちの中に大きな金属製の鐘を持っている選手がいました。よく見るとその鐘には「Val d’Aran by UTMB」と刻印されています。

この大会の為に、金型から造形して鋳造された重さ約15㎏ほどの立派な鐘です。実際に持ってみましたが、めっちゃ重かった!この鐘はゴールに設置されて、ゴールしたフィニッシャーだけが鳴らすことができる「栄光の鐘」だそうです!

モーニングランをアテンドするエリート選手が「みなさん、今は絶対にこの鐘を鳴らしてはなりません!でもレースをゴールした時には力一杯この鐘を鳴らしてください!」とモーニングラン参加者にアピールしています。

私も「絶対にこの鐘をゴールで鳴らすぞ!」と心に誓います。

しかしこの立派な鐘を大会のために作るなんて、Val d’Aran by UTMBがいかに力を入れているかを感じる重みのある立派な鐘です。これはこの大会が今後何十年にもわたって、この鐘が大会のシンボルとしてアラン谷に鳴り響きつづけることを願って作り上げられたのだろうと思いました。

エリート選手たちとランニング前の動的ストレッチを行った後、美しい旧市街を抜けて、街をぐるっと一周してから、我々の宿泊するホテルのすぐ近くからビエイヤの街を見下ろす気持ちのよいトレイルに入っていきます。

せっかくなので2019年UTMB3位のジョルディ・ガミト選手と一緒に走り、色々英語で話しながら走りました。ジョルディ選手は「日本の山々を是非走ってみたい」「日本のよいレースがあったらぜひ参加したい」と日本のレース参加にもとても興味を持っていました。

またUTMBにも2021年再挑戦し、ベストな走りをしたいと意気込みを聞かせてくれました。とてもかわいいワンちゃんを連れていて、犬好きの丹羽さんとは特に話に花が咲いてとても仲良くなることができました。

ジョルディ選手は元キックボクサーで、全身のタトゥーがなかなかいかつい風貌ですが、実に気さくで話しやすい方で、今でも私のSNSにいいね!してくれたりしています。

ジョルディ選手とモーニングラン後に

ジョルディ選手とモーニングラン後に

モーニングランは結構ペースが速くて、なかなかいい刺激が入り、レース前の最終調整には最高でした。

思いがけず、多くのエリートランナーや海外の参加者と仲良くなることもできて、将来この大会に参加される方には是非参加してほしいと思います。

大会ブースには地元の名産品も

実に楽しいモーニングランの後は一旦宿に戻ってシャワーを浴びてから、大会のブースエリアを見にいきます。

Val d’Aran by UTMBのブースはUTMBと全く同じようにログハウス調のかわいらしい屋根付きのブースです。シャモニーから運んできたのでしょうか?いずれのブースもとてもきれいで新しいので、この大会のために作ったものかもしれません。

「by UTMB」の大会は全てにおいてUTMBのロジスティックス、ノウハウが投入されており、非常に高いクオリティを初回開催ながら見て取れました。

Val d’Aran のサラミソーセージやローカルフードのブース

Val d’Aran のサラミソーセージやローカルフードのブース

UTMBのカトリーヌ・ポレッティさんやご主人のミッシェルさんからもお話を伺いましたが、「世界最高峰のUTMBの姉妹大会として、私たちの持っているノウハウを可能な限り提供して、最高のクオリティのレースを世界に広めたい、世界のランナーの皆さんがUTMBクオリティの中で同じ感動を味わってもらいたい」とのこと。その想いが感じ取れるブースです。

日本にはまだあまりなじみのないメーカーもたくさんあり、夢中になって見て回ります。ビエイヤはそこまで大きな都市ではない為、それほど多くのお土産専門店があるわけではありませんが、このブースにはVal d’Aran の名産品のブースなどもあり、お土産を購入するのにも最適です。

人気の大会グッズやTシャツなどはUTMBでもすぐに売り切れるので、出来るだけ早めに行くのがポイントですね!

私も日本にまだ展開していない大会スポンサーである「Kinetik」のブースに開店一番に乗り込み、定価の半額セールされていたレインウェアをゲットしました!あとから調べてみると、非常に高額なハイクオリティウェアとのことで、もう一枚買おうと午後に行ったらもうすべて完売していました。

UTMBのメディアチームにインタビューを受ける

ブースで買い物を楽しんでいると、UTMBのメディアスタッフの方に、夕方インタビュー撮影をしたいと声をかけられました。

Val d’Aran by UTMBにはUTMB Mont-Blancのメディアチームが来ていて、YouTubeや現地テレビ局を通じて様々な動画やインタビューを配信して、大会を世界にアピールします。コロナ禍で今回の大会にはアジアからの参加者は極僅かなので、是非インタビューを撮影したいとのことで、引き受けることにしました。

Val d’Aran by UTMBのゴールの大きな鐘をもってコメンテーターの質問に答えたり、ビエイヤの教会の前を走ったりと、いろいろ撮影していただきました。どうやら地元のテレビニュースで流れたらしく、街中の子供に「テレビで見たよ!」と声をかけられました。(笑)

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こうして様々な角度からメディアに発信し、世界への注目度を高めていく活動も、さすがUTMBクオリティだなと感じます。

UTMBの様々な取り組みは時に賛否両論を呼ぶこともありますが、やはりトレイルランニングという業界を牽引して、世界的なメジャースポーツに育てていこうという想いを感じます。

スポーツ競技が発展していくためには、より大きな経済効果をもたらし、そのスポーツに興味を持って投資してくれる企業がたくさん出てきて、大きなお金の流れが生まれることが必要不可欠です。それによって創生期のファミリアルなよさが失われることもありますが、より多くのプロアスリートやオーガナイザーが、そのスポーツで生きていけるようになることが、発展には欠かせません。

UTMBは様々な挑戦をしながらトレイルランニングというスポーツを世界中に広め、世界で愛されるスポーツに広めていきたいという目標を持っています。細部にわたって多くの人員を投入し、高いクオリティの大会を開催しようという意気込みがとても強く感じられました。

スタート・ゴールのアーチが素晴らしい

大会前日、街のもっとも中心にスタートゴールのアーチが設営されました。

私は車の通行を妨げないように、教会前の広場の中に設営されるのだろうと思い込んでいましたが、なんとスタートゴールアーチは街の中心を抜ける幹線道路にドカン!と設営されました。そのため車は街を迂回して通らなくてはならず、結構渋滞していますが、主役はVal d’Aran by UTMBでした。

これは圧倒されました。UTMFで言うならば、河口湖大橋に通じる国道にスタートゴールのアーチが設営され、車は迂回させられているような状態です。

アーチ全面がLEDスクリーンになっており、様々な映像が映し出される素晴らしいアーチです。このアーチ一つだけでも 否が応でもテンションが上がります。明日はこのアーチから、100マイルの旅が始まると思うと、胸の高鳴りを抑えきれません。

盛り上がった大会プレゼンテーション

7月8日の夕方18時から、Val d’Aran by UTMBのエリート選手プレゼンテーションが開催されました。

ビエイヤの教会前広場にはマスクをしたたくさんの観衆が集まり、本当に久々の海外レースの雰囲気にあふれています。スペイン語、カタルーニャ語、フランス語、そして英語の実にテンポの良いMCたちの掛け合いでエリート選手たちが紹介されていきます。

UTMBやグランレイドレユニオンなどの海外レースでいつも感心するのはこの大会を盛り上げるMCたちの素晴らしさです。MC自身がトレイルランニングを楽しんでいることも多く、選手たちのことをよく知っていて、実にうまく盛り上げます。日本でもこんなふうにMCが大会を盛り上げてくれたら、もっともっと盛り上がるだろうな!と、いつも思います。

そして日本を代表する100マイルトレイルランナーの丹羽さんも名前が盛大にコールされて壇上へ。一際小柄な丹羽さんはここでも注目の的です。コロナ禍での開催となる今回、アジアからの招待選手は丹羽さん一人の為、人一倍注目度が高く、大会からも歓迎されていることがよくわかります。

一部の都市ではアジア人へのヘイトが問題視されていましたが、ここでは本当に歓迎されたと感じました。とても良い雰囲気に包まれたプレゼンテーションでした。

コロナ対策のためか、非常にテンポよくシンプルに約40分程度でプレゼンテーションが終了したのも、好印象でした。

VIP Dinnerに参加

プレゼンテーションのあと、大会前夜ですがディナーに参加しました。クララさんのご好意でVIPパスを持つ人のみ参加できるというディナーに招待されていたのです。

こうしたディナープログラムはUTMBなどでも実施されており、大会に協賛するスポンサー企業や、ブース出展しているメーカー、またVIPパスを所有する参加者などが招かれます。自転車ロードレースのツールドフランスなどでも、ゴール目の前のエリアや絶好の観戦ポイントなどに設置され、有料で販売されるVIPエリアがあります。こうしたより付加価値の高い経験を提供するプログラムを導入するようです。

スペインのディナータイムはどんなに早くても20時からなので、日本と比べるととても遅いのですが、せっかくの機会なので参加してみました。

UTMBのカトリーヌさん、ミッシェルさんのポレッティ夫妻をはじめ、Val d’Aran by UTMBの主催者のグザビエさん、クララさんやスポンサーの方々が参加しました。

私はミシェル・ポレッティさんの隣の席になり、今でも現役でトレイルを走るミシェルさんとたくさん話すことが出来ました。ミシェルさんは日本にも是非「by UTMB」の大会を作りたいと考えているとのこと。そのためにどのような条件が必要であるか、大会が長くその地域に根付いて発展するために重要なことは何か、日本の文化や背景などもとてもよく理解されており、驚きの連続です。大変有意義なお話ができました。私も微力ながら「by UTMB」のレースが日本に生まれるお手伝いが出来たらよいな!と思いました。

ディナーでちょっと食べ過ぎてしまいましたが、100マイル走ればそれなりに消化されるはず。。いよいよ明日スタートです。

(続く)

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