前週末の主な大会のリザルトと、今週末の国内外のトレイルランニング大会の予定をお伝えしているニュース記事・DC Weeklyを今年もお届けします。このDC Weeklyへ皆様からの情報や写真の提供を歓迎します。国内、海外の主なトレイルランニング、ウルトラマラソンの大会日程を網羅する当サイトのレースカレンダーにもぜひご利用ください。
(写真・フランスで開催されたMaxi Raceの85kmで優勝したセバスチャン・スペーラー Sebastien Spehler(フランス)。Photo ©Cyrille Quintard Maxi-Race)
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トレイルランニング関連ニュース
- キリアン、1週間で2回目の無酸素・ロープなしでのエベレスト登頂に成功:先週のこのコラムでキリアン・ジョネット KIian Jornetが5月22日月曜日に最小限の装備でのスピードクライミングでエベレストに登頂したことをお伝えしました。キリアンはその後、5月27日土曜日に同じ無酸素。ロープなしでの登頂に挑戦し見事成功しました。最小限の装備によるスピードクライミングで登頂することに成功しました。キリアンは1週間のうちに2度、エベレストに登るという前代未聞の偉業を達成したことになります。キリアンは2012年から世界の高峰で最速登頂記録に挑戦するプロジェクト、Summits of My Lifeに取り組んでいます。
- 前回のキリアンの挑戦を振り返ると次の通り。キリアンは5月20日土曜日午後10時にベースキャンプ(5100m)を出発。15.2kmの道のりを経てアドバンスト・ベースキャンプ(6400m)に到着したのは4時間35分後。2時間の休養ののち、スタートから26時間後の21日の深夜0時に、快晴で風もない深夜のエベレスト山頂に到着。しかし、登山中から胃痛を感じ始めており登山中も一時休養を取ったほど。下山では当初予定したいたベースキャンプ(5100m)まで下りずに、アドバンスト・ベースキャンプ(6400m)で挑戦を打ち切っていました。ベースキャンプから頂上までの登りを26時間(通常のエベレスト登山では数泊するのが普通)というのは大記録ですが、登山の基本は登りと下りの組み合わせだとすれば、下山をアドバンストベースキャンプで打ち切ったことで今回のチャレンジは少し臥龍点睛を欠く面もありました。
- 前回日曜日にアドバンスト・ベースキャンプに戻ってからも、キリアンは今回の滞在中に2回目のエベレスト登頂を考えているのではという憶測が流れていた模様。結局27日土曜日に2度目の挑戦を結構。午前2時にアドバンスト・ベースキャンプを出発。通常のヒマラヤ登山ではここから3泊(ビバーク)を得て山頂に立ちますが、キリアンは1回目とは違って強い風が吹く中を一気に進み、同日午後9時にスタートから17時間で山頂に到着。その後、アドバンスト・ベースキャンプには28日日曜日の午前6時30分に帰還、スタートから28時間30分後でした。ちなみに上記の1回目はアドバンスト・ベースキャンプから山頂へは19時間30分かかったことになります。
?? @kilianj firsts impressions after summiting Mount Everest for 2nd time in a week / Declaracions KJ / Declaraciones KJ #oureverest pic.twitter.com/zbBcqheeS1
— Summits of My Life (@SummitsofMyLife) May 28, 2017
- ウェスタン・ステイツ Western Statesは今年6月の大会でドーピング検査を実施すると発表:ウェスタン・ステイツは「ドーピングにより処分を受けたことのある選手の出場を認めない」とするゼロ・トレランス・ポリシーを発表していましたが、今年6月に開催される大会では上位選手を中心にドーピング検査を行うことを発表しました。欧州のトレイルランニング、スカイランニングの大会ではドーピング検査は広く実施されていますが、アメリカの大会ではほとんど行われていないのが実情で、全米で最も歴史と名声に恵まれたウェスタン・ステイツも例外ではありませんでした。アメリカのトレイルランニング界ではドーピングに対してとりわけ厳しい声が目立ちますが、ドーピング検査が一般的になることで欧州のように、ドーピング違反の事例が現れて処分される事例が増えるのか、それに伴いドーピングへの厳しい声も軟化するのか、気になるところです。
先週末のイベント
5月22日月曜日 – 26日金曜日:Dragon’s Back Race
- Berghaus Dragon’s Back Race: イギリス・ウェールズで開催された山岳コースのステージレース。22日月曜日から26日金曜日まで、5つのステージからなるコースは合計315kmで累積獲得高度15,500mD+で、ウェールズ北部のコンウェイ Conwyから南部のランデイロ Llandeiloに向かいます。1992年に一度だけ開催された伝説のレースが2012年に復活。その後、2015年に開催され、復活してからは今回が3回目の開催となりました。トップでフィニッシュしたマーカス・スコットニー Marcus Scotneyの合計タイムは37時間58分でした。前回優勝のジム・マン Jim Mannが39時間38分で2位、3位はニール・タルボット Neil Talbott(41時間53分)。男子トップ3はイギリス勢が占めました。女子はキャロル・モーガン Carol Morgan(アイルランド)が48時間43分で優勝。2位はサブリナ・バージ Sabrina Verjee(49時間28分)、3位はキャロリーン・マクルロイ Caroline Mcllroy(50時間23分)でした。トレイルランニング関連では5位にジェズ・ブラッグ Jez Bragg(44時間10分)、アメリカのニック・ホロン Nickademus Hollon(46時間25分)。日本からは小畑賢士 Kenshi Obataが総合25位(53時間53分)でした。次回は2年後の2019年5月に開催されることが発表されています。
5月26日金曜日 – 28日日曜日:Maxi-Race
- Salomon Gore-Tex Maxii-Race (110k, 83k, 42k, 15k, VK): フランス・アヌシー Annecyを拠点に開催されるトレイルランニング・イベントです。金曜日の深夜にスタートした110km 7,000mD+のレースは晴天に恵まれましたが翌日土曜日の日中は気温が上がって厳しいレースになりました。男子のレースはフランソワ・デンヌ François D’Haeneが45km地点過ぎから単独でリードし、12時間55分で優勝。2位はアメリカのマックス・キング Max Kingが39分差で続きました。3位は40代のベテラン、セドリック・セラリエ Cedric Celarier(フランス)でした。女子では昨シーズンに各種タイトルを総なめにしたカロリーヌ・シャヴェロ Caroline Chaverotが15時間8分、男女総合5位という好タイムで優勝。シーズン初めは体調が優れず予定していたレースをキャンセルしていましたが今回は圧倒的な実力を発揮。シャヴェロの今シーズンの最大の目標は7月のHardrock 100となります。2位は71分差でアンドレア・ヒューザー Andrea Huser(スイス)でした。83kmのレースはセバスチャン・スペーラー Sebastien Spehler(フランス)がリード、途中で脱水症状でエイドで休むうちにミシェル・ランヌ Michel Lanne(フランス)に追いつかれるほどでしたが、その後もリードを守って8時間47分で優勝。2位のランヌは9分差の8時間56分でフィニッシュして2位でした。女子はレユニオンのペリン・トラモニ Perinne Tramoniが10時間50分で優勝、2位はリサ・ボルザニ Lisa Borzani(イタリア)でした。リザルトはこちら。
5月26日金曜日:KV Zegama-Aizkorri
- KV Zegama-Aizkorri: 今週末にスペインで開催されたゼガママラソン Marathon Zegama-Aizkorriの最初のイベントとして開催された5.2kmで1015mを登るバーティカルキロメーターのレースでVertical Kilometer World Circuitの第3戦でした。男子で優勝したのはスティアン・アンゲルムント Stian Angermund-Vik(ノルウェー)で34分55秒。アンゲルムントは後述のとおり日曜日のマラソンでも優勝しています。2位はスペインの若きスカイランナー、ヤン・マルガリト Jan Margaritでした。女子はこちらもスペインのスカイランニング、バーティカルキロメーターの女王、ラウラ・オルゲ Laura Orgue Vilaが41分40秒で勝利、2位はマイテ・マイオラ Maite Maiora Elizondoでした。リザルトはこちら。
- Azorez Trail Run(126k, 70k, 48k, 25k, 22k, 10k, VK):北大西洋のアソーレス諸島(ポルトガル)で開催されたトレイルランニング・イベント。日本から藤飛翔 Tsubasa Fujiが参加し、VKと22kmのレースで優勝しています。リザルトはこちら。
5月27日土曜日 – 28日日曜日:たかやしろ、The Beast Trail
- たかやしろトレイルランニングレース(12k, VK):長野県の木島平スキー場で開催されました。今年初開催の土曜日のバーティカルキロメーターはスカイランナー・ジャパンシリーズのレースとして開催。宮原徹 Toru Miyahara、吉住友里 Yuri Yoshizumiと日本のVKの第一人者が出場して男女それぞれで優勝しています。タイムは宮原が30分53秒、吉住が38分47秒でした。男子は2位が馬場直人 Naoto Baba(33分24秒)、3位が柳澤隼人 Hayato Yanagisawa(35分1秒)、女子は小林由貴 Yuki Kobayashi(41分56秒)、竹内美琴(45分46秒)が続きました。翌日日曜日の12kmのレースは馬場直人が1時間2分57秒で優勝。28秒差の2位には宮川鉄也 Tetsuya Miyagawa、3位に吉野大和 Yamato Yoshinoが入りました。女子は中学生の渡部春雅 Kasuga Watabeが優勝し、2位に小林由貴となりました。リザルトはこちら。
- The Beast Trail (100k, 50k, 26k, 12k): 台湾北部、新北市郊外の長城溪森林 Great Wall Creek Forestを拠点に開催されるトレイルランニング・イベント。100kmのコースは7,600mD+という本格的なコースです。100kmは塙翔太 Shota Hanawaが29時間3分で優勝、50kmのレースでは松山優太 Yuta Matsuyamaが10時間49分で優勝した模様です。リザルトはこちら。
5月28日日曜日:ゼガマ Zegama、奥久慈、櫛形、恐羅漢、宮崎鏡洲など
- ゼガママラソン Zegama-Aizkorri Mendi Maratoia (42k):スペイン・バスクで開催される人気の山岳マラソンで、今年もスカイランナー・ワールドシリーズのSky Classicカテゴリーの大会でした。例年悪天候に見舞われる大会ですが、今年は風こそ強かったものの天候に恵まれました。キリアンが不在の中でスタートしたレースは、アリツ・アヘア Aritz Egea(スペイン)、上田瑠偉 Ruy Ueda、マルコ・デ・ガスペリ Marco De Gasperi(イタリア)の3人が序盤をリード。しかしコースが下り基調に転じてからトップに躍り出たのはスティアン・アンゲルムント Stian Angermund(ノルウェー)でした。アンゲルムントは前半はトップから3分後ろを走っていましたが次第に差を詰めて、3時間45分08秒で優勝。2位に続いたマルコ・デ・ガスペリとは4分まで差を広げたほか、キリアンが持つ大会記録(3時間48分38秒、2014年)も上回りました。昨年のスカイランニング世界選手権・Buff Epic Trail 42kでも優勝しているスカイランニングのニューヒーローは金曜日のVKとあわせて今回のゼガマでも大活躍でした。3位にはゼガマで優勝経験もあるマルク・ローレンシュタイン Marc Lauenstein(スイス)、4位にアリツ・アヘアが続きました。上田瑠偉は今回も前半に思い切ってトップ選手について行きましたが、コース最大のピークを超えた20km付近からペースを上げ始めた上位選手に追いつけず順位を落としたものの、トップから17分差の4時間2分21秒でフィニッシュし、8位となりました。松本大 Dai Matsumotoは序盤のペースを抑えて50位前後を走ったのち後半の下りで順位を上げていき、4時間19分13秒で26位のフィニッシュでした。ちなみに松本は一昨年2015年のこの大会で4時間13分4秒で13位となっています。女子はマイテ・マイオラ Maite Maiora(スペイン)が4時間34分27秒で優勝。3分差でシルビア・ランパソ Sivlia Rampazzoが2位、3位はシェイラ・アビレス Sheila Avilés。メーガン・キンメル Megan Kimmel(アメリカ)は6位、ルース・クロフト Ruth Croft(台湾在住、ニュージーランド)が7位、エミリー・フォレスバーグ Emelie Forsberg(スウェーデン)は8位、アンナ・フロスト Anna Frost(ニュージーランド)は23位という結果でした。リザルトはこちら。
- OSJ奥久慈トレイルレース(60k, 30k):茨城県大子町など。袋田の滝から竜神大吊橋、東金砂神社というコースはテクニカルなトレイル、10キロ以上続く林道と様々な顔を持つ国内屈指の難コースです。50k男子は名取将大 Masahiro Natoriが7時間25分で優勝、30k男子は町田知宏 Tomohiro Machidaが優勝しています。リザルトはこちら(公開され次第リンクします)。
- Kushigata Wind Trail (28k、15k):新潟県胎内市。今年もAsia Trail Masterのシリーズ戦として開催されました。リザルトはこちら(公開され次第リンクします)。
- ひろしま恐羅漢トレイル in 安芸太田(65k / 27k): 広島県安芸太田市。65km、3,720mD+という本格的なトレイルランニングレースで男子は東徹 Toru Higashiが7時間24分4秒で優勝しました。リザルトはこちら(公開され次第リンクします)。
- カムイの杜トレイルラン(42k, 23k):北海道旭川市神居富沢で開催。10kの部で高村貴子 Takako Takamuraが女子優勝でした。リザルトはこちら。
- 狩勝トレイルランニング(20k/10k):北海道新得町。旧狩勝線の線路跡と林道を使用して開催される大会は今年で7回目の開催です。リザルトはこちら。
- 宮崎鏡洲の森トレイル(20k, 13k, 10k):宮崎市鏡洲の宮崎自然休養林で開催。リザルトはこちら。
今週末のイベント
6月3日土曜日 – 5日月曜日:オックスファムトレイルウォーカー東北
- オックスファム・トレイルウォーカー東北 (100k, 50k): 福島県安達太良山。4人一組で長距離のトレイルを走破するというイベントで、その参加をきっかけに募金を集めるチャリティ・イベントでもあります。世界各地で開催されるオックスファム・トレイルウォーカーですが日本では2015年にそれまでの富士山麓から福島県・安達太良山で開催されるようになりました。コースは岳温泉をスタートし、安達太良山を経て磐梯熱海温泉までの50km(制限時間24時間)と、そこから額取山、大名倉山を経て岳温泉に戻る100km(制限時間48時間)となっています。
6月3日土曜日 – 4日日曜日:Madeira、Grand Raid 6666など
- Ultra SkyMarathon® Madeira (55k):北大西洋のマデイラ島(ポルトガル)で開催。55km 4000mD+のレースがスカイランナー・ワールドシリーズのSky Ultracカテゴリーの大会となっているほか、20km、13km、VKが開催されます。エントリーリストはこちら。
- Grand Raid 6666 (118k / 45k /12k):南フランスの118km 6900mD+などのコースで開催。フランスのトレイルランニング界の鉄人、アントワン・ギュイヨン Antoine Guillonがプロデュースする大会です。今回もフランスの大会で構成されるシリーズ戦、Ultra Mountain National Tourの一つとなっています。
- Kettle Moraine 100:アメリカ・ウィスコンシン州で開催の100マイルトレイルランニングレース。
6月3日土曜日:戸隠マウンテンなど
- モントレイル 戸隠マウンテントレイル(20k, 12k):長野市戸隠で開催。今回は20km、10km、キッズ2kmのそれぞれで「相馬剛CUP」が開催され、「相馬剛CUP」参加のための追加の1500円は写真集「BEYOND TRAIL」の購入費用となり、Fuji Trailheadに全額寄付されます。2014年7月にマッターホルン登山中に遭難した相馬剛さんの名前を冠した今回の大会には「BEYOND TRAIL」に寄稿したアスリートも多数集まります。
- Cayuga Trails 50:アメリカ・ニューヨーク州イサカで開催。今回もUTATFのトレイル50マイル全米選手権となっています。
- Cranmore Mountain Race :アメリカ・ニューハンプシャー州。5kmの周回コースで開催され、2周10kmのレースがUTATFのマウンテンランニング全米選手権となっています。
6月4日日曜日:七時雨山、奥武蔵、富士忍野、信州峰の原など
- CALDERA TRAIL(33k, 10k):岩手県七時雨山で開催の七時雨(ななしぐれ)マウンテントレイルフェスの中で開催されます。
- 奥武蔵ウルトラマラソン(78km):埼玉県毛呂山町。今回で24回目となる78km 2127mD+のウルトラマラソン。
- 富士忍野高原トレイルレース(36k/25k/14k):山梨県忍野村。富士山麓の杓子山、立ノ塚峠、二十曲峠などを通るコースで開催。
- 信州峰の原トレイルランニングコースサマー大会(36k/25k/13k)長野県・峰の原高原に設けられたトレイルランニング・コースで開催。
- T2T Tower Climb:アメリカ・ニューヨークのワンワールド・トレードセンタービルで開催されるビルを一気に駆け上るバーティカル・ランのイベント。Vertical World Circuitのシリーズ戦です。