2019年トレイル世界選手権 Trail World Championships・トリオス・ドス・アブトレス Trilhos dos Abutres プレビュー

地元の若者たちが作ったフットサルチームがきっかけで、トレイルランニングチームができ、レースができ、子どもたちのためのトレイルランニングスクールができ、トレイルランニングセンターができた。今回はこのスポーツを愛する町が世界のファンの注目を集めることになります。2019年のトレイル世界選手権 Trail World Championshipsは6月8日土曜日にポルトガル中部のミランダ・ド・コルヴォ Miranda do Corvoで開催されるトレイルランニング大会、トリオス・ドス・アブトレス Trilhos dos Abutresの中で行われる44.6km 2,150mD+のレースで行われます。

(Photo © Trilhos du Abutres)

Sponsored link


近年の世界選手権は40km前後と80km前後のレースがそれぞれ隔年で開催されており、参加国そして各国代表選手の数は年々増加。今年は51ヶ国の424選手がポルトガルに集まります。そして日本からは昨年秋から今年初めにかけて行われた代表選考レースの結果を受けて、女子5人(髙村貴子、宮﨑喜美乃、吉住友里、斎藤綾乃、秋山穂乃果)、男子6人(三浦裕一、城武雅、川崎雄哉、牛田美樹、森本幸司、横内佑太朗)の代表選手団が出場します。

トップ選手による世界チャンピオンの座を賭けたレースはもちろん、世界各国のトレイルランニング・アスリートの交流の場としても年々大きなイベントとして成長しているトレイル世界選手権。当サイトでは一昨年(イタリア、バディーア・プラタリア)昨年(スペイン、カステリョー・デ・ラ・プラーナ)に続いて、今年の世界選手権はTHE NORTH FACEにご協賛いただいて現地からレポートします。レースは6月8日土曜日午前9時(日本時間同日午後5時)にスタートします。

トレイル世界選手権とは

トレイルランニングの世界選手権が初めて開催されたのは2007年。まだITRA(国際トレイルランニング協会、International Trail Running Association)は設立されておらず、ウルトラマラソンの国際競技団体であるIAU(国際ウルトラランナーズ協会、International Association of Ultrarunners)が主管となってアメリカの50マイルのレースとして初めての世界選手権が行われました。

以来2年ごとにトレイル世界選手権が開催されていましたが、2016年大会からはIAUにITRAが協力する、という枠組みとなり、世界選手権は毎年開催されています。今後はマウンテンランニングの世界選手権と合流し、2021年から「IAAF Trail and Mountain Running World Championships」が2年おきに開催されることがすでに発表されています。新しい世界選手権はIAAF(国際陸連)が主管し、ITRAとWMRA(世界マウンテンランニング協会)がテクニカル・パートナー、IAUがコンサルタンシー・パートナーとなってさらに大きな大会へと進化することになります。

2018年のトレイル世界選手権・Penyagolosa Trails(スペイン)

2018年のトレイル世界選手権・Penyagolosa Trails(スペイン)

トレイル世界選手権は陸上競技の各国競技団体によって選抜された選手のみが参加可能。世界選手権となるレースは一般参加者が出場するオープンレースとは別に開催されます。

これまでのトレイル世界選手権の歴史は次のようになります。

  • 2007年:Sunmart Texas Trail、50マイル(アメリカ・テキサス州ハンツビル、12月8日開催)。日本代表の櫻井教美 Norimi Sakuraiが女子優勝、男女総合4位に。
  • 2009年:Merrell Sky Race、68km(フランス・セレシュバリエ、7月12日開催)。トーマス・ロルブランシェ Thomas Lorblanchet(フランス)、セシリア・モラ Cecilia Mora(イタリア)がそれぞれ男女優勝、日本代表の櫻井教美が女子5位。
  • 2011年:世界選手権、71.5km(アイルランド、コネマラ山地、7月9日開催)。エリック・クラバリー Erik Clavery、モー・ゴベール Maud Gobert(ともにフランス)が男女それぞれで優勝。
  • 2013年:世界選手権、75km(イギリス。ウェールズ、コンウィ、7月6日開催)。優勝はリッキー・ライトフット Rickey Lightfoot(イギリス)、ナタリー・マクレア Nathalie Mauclair(フランス)。
  • 2015年:Maxi Race、85km(フランス・アヌシー、5月30日開催)。優勝はシルバン・コー Sylvain Court、ナタリー・マクレア Nathalie Mauclair(ともにフランス)。
  • 2016年:Trans Peneda-Geres、85km(ポルトガル、10月29日開催)。優勝はルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Hernando(スペイン)、カロリーヌ・シャヴェロ Caroline Chaverot(フランス)。日本からは男子4人、女子3人が参加し、大杉哲也 Tetsuya Osugiが男子24位、吉住友里 Yuri Yoshizumiが女子13位に。
  • 2017年:Trail Sacred Forests(イタリア、バディーア・プラタリア、6月10日開催)。優勝はルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Hernando(スペイン)、アデリーヌ・ロシュ Adeline Roche(フランス)。日本からは近藤敬仁 Yoshihito Kondoが男子17位。川崎雄哉 Yuya Kawasakiが30位、荒木宏太 Kota Arakiが40位。女子は斎藤綾乃 Ayano Saitoが64位。
  • 2018年:Penyagolosa Trails(スペイン、カステリョー・デ・ラ・プラーナ、5月12日開催)。ルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Hernando(スペイン)が三連覇。女子はラグナ・デバッツ Ragna Debats (オランダ)。日本からは荒木宏太 Kota Arakiが男子12位、川崎雄哉 Yuya Kawasakiが27位、吉原稔 Minoru Yoshiharaが50位。斎藤綾乃 Ayano Saitoは女子75位。
これも読む
【プレビュー】 HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB 2025、「HMONG 50」で世界最高峰のスピードスターが激突する(第三回)

「ハゲワシ」の仲間たちが作ったトレイルランニング・レース

世界選手権が行われる大会、トリオス・ドス・アブトレス Trilhos dos Abutresへのゲートウェイとなるのはポルトガル中部、セントル地方の中心都市であるコインブラ Coimbrão。首都リスボンから北に約200kmに位置する人口15万人の都市で、13世紀に設立された世界最古の大学の一つ、コインブラ大学を擁するポルトガルの文化の中心都市です。世界選手権の開会式などのイベントはコインブラで開催されます。

コインブラから内陸側にはエストレーラ山脈や今回の大会のコースとなるロウザン山脈が広がります。大会のスタート・フィニッシュ地点となり、表彰式も行われるミランダ・ド・コルヴォ Miranda do Corvoはロウザン山脈の麓の人口13,000の町。周囲には修道院や修道院に属する森林が広がります。このエリアにはアルデイアス・ド・シスト Aldeias do Xisto(石の村)と呼ばれる集落が点在しており、今回の大会ではその一つであるゴンドラマース Gondramazの村にコース後半のエイドステーションが置かれます。

ミランダ・ド・コルヴォの町の眺め。Photo © Trilhos du Abutres

ミランダ・ド・コルヴォの町の眺め。Photo © Trilhos du Abutres

ロウザン山脈の中には豊かな自然が保たれている。Photo © Trilhos du Abutres

ロウザン山脈の中には豊かな自然が保たれている。Photo © Trilhos du Abutres

ミランダ・ド・コルヴォの若者たちが毎週月曜日に地元で集まってフットサルを始めたのが2003年のこと。この若者たちが試合に出るためにつけたチームの名前が「アブトレス Abutres」(ハゲワシ)。このことがきっかけになってマウンテンバイク・チーム、モータースポーツ・チーム、そしてトレイルランニングの「アブトレス・ランニングチーム」が次々に誕生。2009年にはこうしたチームの集まりである「アブトレス協会 Associação Abutrica」が設立され、2010年にトレイルランニングの大会である「トリオス・ドス・アブトレス Trilhos dos Abutres」(ハゲワシ・トレイル)が初めて開催されました。毎年1月に開催される大会は50km、30km、20km、12kmの四つのレースが開催されていますが、世界選手権のホストとなった今年は特別に6月の開催となり、8日土曜日の世界選手権、翌日9日日曜日のオープンレースがほぼ同じ44kmのコースで行われます。

「石の村」ゴンドラマース。Photo © Trilhos du Abutres

「石の村」ゴンドラマース。Photo © Trilhos du Abutres

ゴンドラマースには宿泊施設もあり、静かに滞在を楽しめる。Photo © Trilhos du Abutres

ゴンドラマースには宿泊施設もあり、静かに滞在を楽しめる。Photo © Trilhos du Abutres

大会では今年初めて大会の公式テーマ曲を発表。会場ではこの曲「O Abtre acordou」(The Vulture woke up、目覚めよハゲワシ)が鳴り渡ることでしょう。

「アブトレス協会」ではAbutres Trail Running Schoolを2013年に開設。子どもたちを対象にしたトレイルランニングの体験教室を通じて自然と向き合い、仲間と助け合うことを学ぶ機会を提供しています。さらに最近ではTrail Running Training Centerを開設。今回の大会のコース上、最初のエイドとなるビラ・ノバ Vila Novaの村にトレイルランニングとマウンテンバイクを楽しむための拠点を設けるというプロジェクトにも取り組んでいます。

世界選手権のコース

今年の世界選手権のコースは44.6km 2,150mD+。スタート・フィニッシュはミランダ・ド・コルヴォの中心に位置するホセ・ファルコン広場。標高108mのスタートから2.7kmのロウザン山脈エコロジーパークセンターを通過すると緩いトレイルの登りへ。給水のみのエイド、ビラ・ノバ Vila Nova(7.1km, 標高233m)を出ると森や畑、村を通りながらの上りが続き、13.4km地点付近で標高680mに到達。尾根を越えて谷沿いを下って「慈悲の聖母マリアのサンクチュアリ Santuário de Nossa Senhora da Piedade」のエイド(16km、標高279m)へ。ここでは私的サポートも受けることができます。

Photo © Trilhos du Abutres

Photo © Trilhos du Abutres

聖堂や滝を前にした木の橋を渡るとコースは再び森の中の登りへ。標高差500mほどの今回のコースで最も長い登りが待ち受けます。標高880m(22.1km)まで登ると今度は緩い見通しのいい下りとなり、発電用の風車が並ぶ中を進みます。登りに転じたところでメストリナス自然公園 Parque das Mestrinhasのエイド(28.9km、標高775m)に到着。こちらは食事なども提供されますが私的サポートはないエイドです。

Photo © Trilhos du Abutres

Photo © Trilhos du Abutres

Photo © Trilhos du Abutres

Photo © Trilhos du Abutres

エイドを出ると再び風車が立つ中を登り、30km付近で標高963mのコース最高点を通過。一気に下りに転じてアルデイアス・ド・シスト Aldeias do Xisto(石の村)の一つ、ゴンドラマース Gondramaz(34.3km、標高531m)に到着。ここは給水のみで最後のエイドです。山の中の下りが続いて39km付近で一旦、町に出てから再び森の中へ。42km付近で高速道路の高架下をくぐると残り2kmの舗装路でミランダ・ド・コルヴォのフィニッシュとなります。

Photo © Trilhos du Abutres

Photo © Trilhos du Abutres

Photo © Trilhos du Abutres

Photo © Trilhos du Abutres

当サイトの机上でのシミュレーションからは、一部にはテクニカルなパートはあるものの全体としてはかなり走れるコースとなるのでは、と予想します。トップの完走タイムは4時間前後と見込まれています。なお、翌日行われるほぼ同じコースのオープンレースは制限時間が11時間となっています。

これも読む
ハセツネ30K 2024 プレビュー

ポルトガルからトレイル世界選手権をレポートします

当サイトではポルトガルに入り、今年も現地の様子やトレイル世界選手権のレースについてお伝えします。日本代表選手のみなさんの表情やインタビューもお届けする予定です。どうぞお楽しみに。

2018年のトレイル世界選手権のスタート。

2018年のトレイル世界選手権のスタート。

今回のトレイル世界選手権についての情報には次のものがあります。

今回の有力選手

以下では今回のトレイル世界選手権の有力選手を紹介します。なお、国別団体表彰の決め方は次のようになっています。

  • 各国からは男女それぞれ最大9人の代表選手が出場可能。
  • 国別チーム戦にはスタート前日の朝までに各国が指名した男女6人までが参加可能。指名された以外の選手は個人戦としてレースに出場。
  • 各国チーム戦に参加した選手のうち、各国の男女上位3人のタイムを合計して国別の順位を男女それぞれについて決める。

女子 Women

女子個人を見ると直近の世界選手権で優勝している2人の選手を中心に4人の選手が優勝争いに加わる展開となりそうです。

一昨年2017年の世界選手権チャンピオンはアデリーヌ・ロシュ Adeline Roche(フランス)。もっぱら40kmくらいまでの距離のレースを得意とするロシュにとっては今回の44kmのコースは有利なはず。昨年のスペインでの世界選手権は85kmのコースで7位でした。一方、昨年の世界チャンピオンはラグナ・デバッツ Ragna Debats(オランダ)。昨年はUltra Skymarathon Madeira、High Trail Vanoise、スカイランニング世界選手権・Ben Navis Ultraで優勝。今年もサハラ砂漠マラソン MDSやTransvulcaniaで優勝。二連覇となるか注目です。

アデリーン・ロシュ Adeline Roche(フランス)

ラグナ・デバッツ Ragna Debats(オランダ)

Azara-García-De-Los-Salmones-square

アザラ・ガルシア Azara García De Los Salmones

ここに加わるのはまずはアサラ・ガルシア Azara Garcia De Los Salmones(スペイン)。2015年のZegama-Aizkorri、2017年Transgrancanariaとスペインの代表的な大会で優勝しており、2016年にはトレイル世界選手権(ポルトガル)、スカイランニング世界選手権(スペイン)でともに2位に。昨年10月にはフランスのTempliers 78kmで優勝という大きなタイトルを手にしたうえ、今年のPenyagolosa Trailsの59kmのレースで優勝してます。そして当サイトとしては今回最も有力な優勝候補と考えるのがルース・クロフト Ruth Croft(ニュージーランド)です。昨年はZegama-Aizkorriで3位、Mont-Blanc Marathonで優勝、Sierra Zinalで4位、そしてOtter Trailで2位となってGolden Trail Seriesの初代年間チャンピオン。この他にも昨年はOCCでも優勝。40km前後のレースはクロフトにとって得意とするところです。2014年には富士登山競走で優勝した経験も持っています。

さらに次のように世界のトップ選手が続いており、トップ10はかなりの混戦となりそうです。

  • シェイラ・アビレス Sheila Aviles(スペイン):2018年Livigno Skymarathon 2位、2019年Mt. Awa Skyraceで4位。
  • ケリー・ウルフ Kelly Wolf(アメリカ):2018年Tarawera Ultramarathon、Lavaredo Ultra Trailで優勝、Transvulcaniaで3位。
  • ヘマ・アレナス Gemma Arenas(スペイン):2018年はトレイル世界選手権(Penyagolosa)で4位、スカイランニング世界選手権・Ben Navis Ultraで2位。今年のPenyagolosa Trails CSPで優勝。
  • 【追記・ホーリー・ページは出場を見送ります。2019.06.04】ホーリー・ページ Holly Page(イギリス):2018年スカイランニング世界選手権・Ring of Steall Skyraceで3位、Otter Trail優勝でGolden Trail Series年間3位。Yading優勝、Run the Rut 28k優勝、Buff Epic Trail優勝でスカイランナーワールドシリーズ年間チャンピオンに。2018年トレイル世界選手権(Penyagolosa)では9位。
  • シルビア・ランパッソ Silvia Rampazzo(イタリア):2017年トレイル世界選手権(Trail Sacred Forests)で3位。2018年Giir di Mont優勝、Transgrancanaria Maratonで優勝。
  • ダニエラ・モレノ Daniella Moreno(アメリカ):2019年FOurmidable 50K優勝、2018年Broken Arrow Skyrace優勝、Run the Rut 28kで2位。
  • ジャスミン・パリス Jasmin Paris(イギリス):2019年Spine Race(420km)で男女総合1位で優勝。2016年にスカイランニング世界選手権 Buff Epic Trail 105kで3位、UTMB®︎で6位、Tromsoで優勝。
  • ドラゴミル・デニサ Dragomir Denisa(ルーマニア):2017年Livigno Skymarathon2位、2018年Zegama-Aizkorriで4位。
  • ライア・カニェス Laia Cañes(スペイン):2018年トレイル世界選手権(Penyagolosa)で2位、スカイランニング世界選手権・Ben Navis Ultraで7位。2017年CCC®︎で3位。
  • アナ・メイ・フリン Anna Mae Flynn(アメリカ):2019年Lake Sonoma 50優勝。2017年Speedgoat 50k優勝、Broken Arrow Skyrace 52kで3位。
  • 吉住友里 Yuri Yoshizumi(日本):2019年Transvulcania Marathonで優勝、2018年STY優勝。2017年OCC4位。2016年トレイル世界選手権(Peneda Geres)で13位。富士登山競走で2017年、2018年に連覇。
  • 高村貴子 Takako Takamura(日本):2019年Mt. Awa Skyraceで3位。2018年Comapedrosaで10位、スカイランニング世界選手権・Ring of Steall Skyraceで10位。ハセツネCUPで現在三連覇中。
これも読む
DC Weekly 2023年8月15日 Sierre-Zinal、オニコウベバーティカル、サンライズヒル穂坂、やっちろドラゴントレイル

国別団体では例年通り、スペインとフランスの選手層は厚く、昨年に続いてスペインが連覇するか2016年、17年に金メダルを得ているフランスがトップに帰り咲くかが注目されます。続くのはアメリカ、イギリスですが、ルーマニアやポーランドも上位をうかがえそうです。

日本代表チームは上記の吉住友里、高村貴子に次の3人を加えた5人の選手が参加します。

  • 秋山穂乃果 Honoka Akiyama:2019年OSJ新城32k優勝、千羽海崖優勝。2018年スパトレイル優勝、STY3位。
  • 斎藤綾乃 Ayano Saito:2018年OSJ新城32kで優勝、2019年に3位。2017年、2018年トレイル世界選手権日本代表。
  • 宮﨑喜美乃 Kimino Miyazaki:2018年ハセツネCUPで2位、UTMFで8位。2019年Aso Round Trailで6位。

男子 Men

男子は2016年から昨年までトレイル世界選手権で三連覇中のルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Hernando(スペイン)が4回目の勝利となるかが注目です。昨年の5月に3度目の世界チャンピオンとなってからはUTMB®︎でDNF、スカイランニング世界選手権・Ben Nevis Ultraでは3位。過去に何度も優勝しているTransvulcaniaでは24kmのレースで6位という結果。42歳のベテランとなり、調整には苦心しているかもしれません。

ルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Heranado(スペイン)

ルイス・アルベルト・ヘルナンド Luis Alberto Heranado(スペイン)

ルイスが本来の調子でないとすれば、同じスペイン代表チームで2017年、2018年に2位となっているクリストファー・クレメンテ Cristofer Clementeが今年のチャンピオンとなると考えるのが道理でしょう。今年はTransgrancanariaで3位、Penyagolosa Trails CSPで2位でした。ルイスに次いで2位だったことからいえば、2016年の世界選手権で2位になったのはニコラ・マルタン Nicolas Martin(フランス)でした。フランスで最もコンペティティブなレースの一つ、Templiers 78kmでは2017年、2018年に2位となっている実力者は今年3月のTrail du Ventoux 45kで3位になっています。

クリストファー・クレメンテ Cristofer Clemente(スペイン)

クリストファー・クレメンテ Cristofer Clemente(スペイン)

ニコラ・マルタン Nicolas Martin(フランス)

ニコラ・マルタン Nicolas Martin(フランス)

さらに優勝候補の選手のリストは続きます。スカイランニングでの活躍で有名で今年4月にMt. Awa Skyraceで3位になったのがジョナサン・アルボン Jonathan Albon(イギリス)です。昨年はUltra Skymarathon Madeiraやスカイランニング世界選手権・Ben Nevis Ultraで優勝、Tromsoで3度目の優勝をしているアルボンは昨年のトレイル世界選手権では4位でフィニッシュしています。【追記・ティム・トレフソンは出場を見送ります。2019.06.04】アメリカからはティム・トレフソン Tim Tollefsonが世界選手権に初参戦。2015年のCCC®︎で2位、2016年、17年はUTMB®︎で3位になったことで欧州でも有名となったトレフソンは今年に入ってFourmidable 50kで優勝、MIUTで3位でした。【追記・アンソニー・コスタレスは出場を見送ります。2019.06.04】アンソニー・コスタレス Anthony Costales(アメリカ)はまだ欧州でのレースの経験はありませんが、昨年のMoab Red Hot 55kでは好記録で優勝してアメリカで注目されています。

さらにイタリアからはスカイランニングのレジェンドで昨年のCCC®︎で4位、今年4月のMt. Awa Skyraceで4位のマルコ・デ・ガスペリ Marco De Gasperi、27歳で2017年のマウンテンランニング長距離世界選手権・Giir di Montで2位のフランチェスコ・パピ Francesco Puppiも上位争いに加わるでしょう。

さらに今回の世界選手権には次のトップ選手たちもエントリーしています。

  • ジュリアン・ランコン Julien Rancon(フランス):2018年Sierra Zinalで6位。
  • ザイト・アイト・マレク Zaid Ait Malek(スペイン):2018年Ultra Pirineuで2位。
  • オーレリアン・デュナン・パラス Aurelien Dunand-Pallaz(フランス):2018年MIUTで2位。
  • ルドビック・ポムレ Ludovic Pommeret(フランス):2016年UTMB®︎優勝、2018年トレイル世界選手権で5位。
  • アレッサンドロ・ランバルディーニ Alessandro Rambaldini(イタリア):2017年のマウンテンランニング長距離世界選手権・Giir di Montで5位。
  • アンドレ・ジョンソン André Jonsson(スウェーデン):2018年スカイランニング世界選手権・Ben Nevis Ultraで2位、Glen Coe Skylineで2位。
  • アンディ・サイモンズ Andy Symonds(イギリス):2018年Templiersで4位。
  • マリオ・メンドーサ Mario Mendoza(アメリカ):2018年トレイル世界選手権で6位。
  • ディミトリス・テオドラカコス Dimitrios Theodorakakos(ギリシャ):2016年、2018年Olympus Marathon優勝。
  • アレックス・ニコルス Alex Nichols(アメリカ):2017年Western Statesで2位、Templiersで3位、2018年Hong Kong 100で2位。
  • アンドリュー・サイモン Andreu Simon(スペイン):2018年スカイランニング世界選手権・Ben Nevis Ultraで5位、Buff Epic Trail 69kで優勝。
  • ロマン・メイラール Romain Maillard(フランス):2018年Trail du Ventouxで3位。
  • エマニュエル・メイサ Emmanuel Meyssat(フランス):2017年Saintelyon 73kで優勝。
  • パブロ・ビジャロボス Pablo Villalobos(スペイン):2019年Transgrancanaria Maraton優勝、2018年OCC4位。
  • アンドレアス・ロイター Andreas Reiterer(イタリア):2018年Rosengarten Schlern Skymarathon 45kで優勝。
  • ダビデ・チェラス Davide Cheraz(イタリア):2019年Vibram Maremontana 45kで2位。
  • ニック・エルソン Nick Elson(カナダ):2018年Broken Arrow Skyrace 52kで2位。
  • 三浦裕一 Yuichi Miura(日本):2018年ハセツネCUP優勝、スカイランニング世界選手権・Ben Nevis Ultraで10位。【追記・三浦裕一はケガのため出場を見送ります。2019.06.01】
  • 川崎雄哉 Yuya Kawasaki(日本):ハセツネCUPで2016年優勝、2017年4位。2018年熊野古道50Kで優勝。トレイル世界選手権では2017年に30位、2018年27位。
これも読む
DC Weekly 2023年4月17日 Istria、Ninghai、Desert Rats、善光寺、チャレンジ富士五湖、平尾台

男子の国別団体は女子と同じくスペインとフランスが有力なほか、アメリカとイギリス、イタリアが続きそうです。そのほかではチェコやルーマニアの選手層が厚いことが注目されます。

日本代表チームは海外での世界選手権を経験している三浦裕一、川崎雄哉に次の4選手が加わります。ただ三浦は5月のAso Round Trailで外傷を負っており、傷の具合によってはベストの走りを望むのは厳しいかもしれません。【追記・三浦裕一はケガのため出場を見送ります。2019.06.01】

  • 城武雅 Masashi Shirotake:2018年ハセツネCUPで2位。
  • 横内佑太朗 Yutaro Yokouchi:2019年OSJ奄美50Kで優勝。
  • 牛田美樹 Miki Ushida:2018年STY優勝、熊野古道50Kで2位、神流MR&Wロング40Kで優勝。
  • 森本幸司 Koji Morimoto:2019年千羽海崖37Kで優勝、2017年Aso Round Trailで優勝。
Sponsored link