「DogsorCaravan Award」(ドッグスオアキャラバン・アワード)はトレイルランニング、スカイランニング、マウンテンランニング、ロードを含むウルトラマラソンにわたる幅広い分野において、日本を拠点に活動した選手で最も優れたパフォーマンスをみせた選手を称える賞です。選考にあたるのは当サイトの編集人である岩佐幸一です。
今年も女性、男性についてそれぞれ「本賞」を一名、「特別賞」を若干名、選出。加えて昨年まで本賞に先立って発表していた候補者を「ノミネート」として選びました。
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この記事では特別賞、本賞の順に発表し、続いてノミネート対象者のリストを示します。
参考・これまでのDogsorCaravan Award
2019年に「日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー」(Trail Runner of the Year in Japan)から改称しました。
- 2013年:原良和さん、大石由美子さんが本賞、山ノ内はるかさん、宮原徹さん、神流町のうめこさんが特別賞を受賞(ノミネート、受賞者発表)
- 2014年:上田瑠偉さん、大石由美子さんが本賞、西田由香里さん、星野由香理さん、松本大さん、望月将悟さんが特別賞を受賞。貢献に対する特別賞は相馬剛およびFuji Trailheadさん(ノミネート、受賞者発表)
- 2015年:土井陵さん、丹羽薫さんが本賞、星野由香理さん、宮﨑喜美乃さん、松本大さん、小原将寿さんが特別賞を受賞。貢献に対する特別賞はパワースポーツ・滝川次郎さん(ノミネート、受賞者発表)
- 2016年:大杉哲也さん、吉住友里さんが本賞、高村貴子さん、丹羽薫さん、上田瑠偉さん、川崎雄哉さんが特別賞(ノミネート、受賞者発表)
- 2017年:上田瑠偉さん、丹羽薫さんが本賞、高村貴子さん、吉住友里さん、小川壮太さん、三浦裕一さんが特別賞を受賞(ノミネート、受賞者発表)
- 2018年:三浦裕一さん、高村貴子さんが本賞、吉住友里さん、立石ゆう子さん、荒木宏太さん、城武雅さんが特別賞を受賞(ノミネート、受賞者発表)
- 2019年:吉住友里さん、上田瑠偉さんが本賞、高村貴子さん、立石ゆう子さん、星野由香理さん、浅原かおりさん、藤澤舞さん、石川佳彦さん、小原将寿さん、大瀬和文さん、喜多村久さんが特別賞を受賞(受賞者発表)
- 2020年:コロナ禍により中止
- 2021年:仲田光穂さん、上田瑠偉さんが本賞、吉住友里さん、板垣成美さん、秋山穂乃果さん、森下輝宝さん、近江竜之介さんが特別賞を受賞(ノミネート、受賞者発表)
- 2022年:髙村貴子さん、土井陵さんが本賞。秋山穂乃果さん、向井成美さん、吉住友里さん、上田瑠偉さん、西村広和さん、吉野大和さんが特別賞(ノミネート、受賞者発表)
- 2023年:仲田光穂さん、川崎雄哉さんが本賞。秋山穂乃果さん、髙村貴子さん、宮﨑喜美乃さん、小田切将真さん、長田豪史さん、山口純平さんが特別賞(ノミネート、受賞者発表)
特別賞
2023年に素晴らしい成績を挙げた選手として、7人のアスリートを選びました。男女別に五十音順で紹介します。
女性の部
- 岩井絵美 Emi IWAI さん
- 清宮由香里 Yukari SEIMIYA さん
- 髙村貴子 Takako TAKAMURA さん
男性の部
- 上田瑠偉 Ruy UEDA さん
- 小笠原光研 Koken OGASAWARA さん
- 近江竜之介 Ryunosuke OMI さん
- 吉野大和 Yamato YOSHINO さん
岩井絵美さんは4月のMt. FUJI 100のレース、KAI70kで女子準優勝、総合でも12位となる快挙ののちに、5月の阿蘇ボルケーノ109km、7月の志賀高原100kmで優勝。昨年6位となって注目されたハセツネCUPでは準優勝。10月のAPTRC選手権・ロングでも8位となりました。岩井さんは2024年にアスリートとして最も鮮烈なブレイクを見せました。
2023年のシーズンに信越五岳110km優勝で頭角を現した清宮由香里さんは、今年4月のMt. FUJI 100で初の100マイルに挑戦してコートニー・ドウォルターに続いて2位でフィニッシュ。信越五岳では再び100マイルを走り、コースレコードとなる21時間35分で女子優勝。日本の女子選手の100マイルのレベルを引き上げる存在となりました。このほかにも短い距離からウルトラまで多くのレースを制しています。
このDogsorCaravan Awardでは2018年、2022年に本賞を受賞している髙村貴子さんは、今年のAPTRC選手権・ショートで金メダルを獲得したことはアスリートとしてのキャリアのマイルストーンとなりました。今シーズンはKobe Trailで9位、Marathon du Mont-Blanc、Sierre-Zinalで20位以内と世界トップクラスの選手が集結するレースにも果敢に挑戦して成果を残しました。
上田瑠偉さんはこの10年で4度にわたってDogsorCaravan Award本賞を受賞しており、現在の日本のトレイルランニング界のトップ選手。ケガからのリカバリーに充てた昨年後半を経て、今年は海外のスカイランニングのレースでその復活ぶりを示しました。スカイランナー・ワールドシリーズのMercantour 30kで2位、Kaiserkrone Skyraceで3位、2 Peaks Skyraceで2位。9月にスペインで行われたスカイランニング世界選手権でも銅メダルを獲得しています。加えて11月のTsaigu Trail 50kで中国のトップ選手を相手に優勝して中国でその名を高めました。今年の特別賞受賞者の中では最も本賞に近い活躍でした。
若手アスリートの注目株である小笠原光研さんはシーズン後半に好成績を連発して注目を集めました。スカイランニング世界選手権・スカイウルトラでの4位、APTRC選手権・ショートでの2位で国際レースでの成果を挙げたほか、国内でも昨年準優勝のハセツネCUPでは3位、ITJ70kで優勝と存在感を示しました。
近江竜之介さんはハセツネ30Kで優勝、富士登山競走で昨年に続く連覇を成し遂げましたが、シーズンの大半を充てた欧州での遠征でも結果を残しました。5月のTransvulcania VKでの優勝、6月のHochkonig Skyraceでの5位、11月のカタルーニャでのPrades Epic Trail 25kでの優勝を経て、スカイランナー・ワールドシリーズ・ファイナルのMarato dels Dements 42kでは7位に入りました。スペインのトップ選手とのレースの経験が今後花開くことに期待が高まります。
吉野大和さんも昨シーズンのケガから復活を遂げて2022年に続く特別賞となりました。今年は春のハセツネ30Kで近江さんに続く2位となった後、ゴールデントレイルシリーズの日本シリーズの3戦(中央アルプス、野沢温泉、白馬)でいずれも優勝。ハセツネCUPでは歴代4位となる7時間20分で2度目の優勝を飾りました。2025年シーズンの海外での活躍が期待されます。
DogsorCaravan Award 本賞・女性の部
2024年のDogsorCaravan Award受賞者は吉住友里 Yuri YOSHIZUMIさんに決まりました。今年は4月のKAI70kで優勝、総合5位となる8時間7分でのフィニッシュという快挙でした。続いて比叡山50マイル、Tokyo Grand Trail 50k、奥信濃100kmで男女総合でも上位に入る好タイムで優勝。富士登山競走での六連覇を経て、10月には初挑戦のハセツネCUPを歴代2位の8時間49分で優勝。APTRC選手権・ロングでは銅メダルという成績を残しました。日本の女子トレイルランニング界のフロントランナーとして確固とした地位にある吉住さんですが、ここ数年は42kmを超えるウルトラディスタンスへの挑戦で試行錯誤を重ねていた時期でした。2024年はそうした努力が実を結び、2019年に続くDogsorCaravan Award受賞につながりました。
DogsorCaravan Award 本賞・男性の部
DogsorCaravan Award本賞は、ロードウルトラマラソンで世界チャンピオンとなった山口純平 Jumpei YAMAGUCHIが受賞しました。国士舘大学駅伝部を経てアパレルブランド、ELDORESOに所属しながらランナーとして活動する山口さんは、100kmウルトラマラソンにで頭角を現し、2022年のIAU100km世界選手権(ドイツ・ベルナウ)で銀メダルを獲得。2023年にはサロマ湖100kmで6時間6分7秒を記録して優勝し、日本新記録となったほか同年5月に記録されたばかりのアレクサンドル・ソロキンの6時間5分35秒に32秒まで迫ったことが注目を集めました。2024年の山口さんは八ヶ岳野辺山ウルトラの68kで優勝ののち、サロマ湖100kmでは6時間10分2秒で優勝。インド・ベンガルールでのIAU100km世界選手権で6時間12分17秒を記録して金メダルに輝きました。山口さんは2023年の特別賞に続く本賞の受賞です。
2024年の「ノミネート」対象者
昨年までは本賞に先立って発表していた本賞の選考対象者を、今回は「ノミネート」として以下のように発表したします。
ノミネート・女性の部
- 秋山穂乃果 Honoka AKIYAMA :KAI70Kで3位、スカイランニング世界選手権・スカイウルトラで2位、APTRC選手権・ショート3位
- 安曇樹香 Konoka Azumi :Tarawera Ultra-Trail by UTMB TUM 100milerで優勝
- 枝元香菜子 Kanako EDAMOTO :Tokyo Grand Trail 50kで2位、APTRC世界選手権・ロング5位
- 小川咲絵 Sae OGAWA :KAI70Kで4位
- 徳本順子 Junko TOKUMOTO :Tokyo Grand Trail 100マイルで優勝
- 向井成美 Narumi MUKAI :奥信濃100 100kで2位
(五十音順)
ノミネート・男性の部
- 小田切将真 Shoma OTAGIRI :スカイランニング世界選手権・スカイウルトラで銅メダル、スカイランナーワールドシリーズの2 Peaks Skyraceで4位、ファイナルで10位。ハセツネCUPで4位タイ。
- 甲斐大貴 Hiroki KAI :APTRC選手権・ロングで銀メダル
- 川崎雄哉 Yuya KAWASAKI :ハセツネCUPで4位タイ。
- 田村健人 Kento TAMURA :ハセツネCUPで準優勝。
- 松本翔汰 Shota MATSUMOTO :野沢温泉37Kで2位、白馬国際28kで2位
(五十音順)